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開業資金ゼロで美容室を開業できる?開業資金を抑えるコツや資金調達方法についても紹介

読了目安時間:約 7分
美容室の開業には通常一定の資金が必要ですが、工夫次第で初期費用を大幅に抑えることは可能です。
ただし、全く自己資金がない状態では運転資金の確保や金融機関の審査において不利になる可能性があるため、ある程度の資金準備は推奨されます。
今回は、「美容室の開業資金を抑えるコツ」や「美容室を開業する際の資金調達方法」について解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、安定した運営に役立ててください。
目次
開業資金ゼロで美容室を開業できる?

開業資金ゼロで美容室を開業することは、現実的には非常に難しいといえます。
自己資金がしっかり確保されている場合と、まったくない場合とでは、開業後の運営にかかる負担に大きな差が出てきます。
一般的には、開業資金のうち少なくとも10〜30%程度を自己資金で賄っているケースが多く見られます(※公的融資の条件などにも基づく)。金融機関の融資審査においても、一定の自己資金があるかどうかは重要な評価項目となります。
初期費用を抑えて開業することは可能なケースもありますが、資金的な余裕がない状態でのスタートは、運転資金の確保や予期せぬ支出への対応においてリスクが高まる傾向があります。安定した運営を目指すためには、必要最低限の自己資金を用意することが望ましいといえるでしょう。
美容室の開業で必要な費用

美容室の開業で必要な費用については、以下の5つが挙げられます。
- 運転資金
- 物件取得費
- 設備費
- 内装工事費
- 広告費
それぞれの費用について解説します。
運転資金
運転資金とは、美容室を開業した後、売上が安定するまでの期間に必要となる資金です。
この資金は、主に2つの費用に分類されます。
運転資金の種類 | 内容 |
固定費 | 月々一定の金額がかかる支出 (家賃、水道・光熱費、減価償却費、人件費など) |
変動費 | 売上に応じて増減する費用 (仕入れ費用や材料費など) |
売上が安定するまでの3~6か月分の運転資金を準備することが望ましいですが、店舗規模や場所により必要額は大きく異なるため、具体的な試算が重要です。
物件取得費
美容室での平均的な物件取得費用は、地域や環境によって異なりますが、100万~200万円程度はかかるとされています。
店舗を借りる際には、契約時にまとまった初期費用が必要です。
主な項目としては、敷金や礼金、仲介手数料などが挙げられます。
敷金は貸主に対して預ける保証金ですが、退去時の修繕費用などに充てられ返還されない場合もあります。(地域によっては「保証金」と表現されることもあります。)
一方、礼金は貸主への謝礼のようなもので、基本的に返金されることはありません。
物件取得費のうち、敷金や礼金はとりわけ負担の大きい部分ですが、「敷金・礼金なし」といった条件の物件も存在します。
このような物件では、代わりに月々の賃料がやや高めに設定されているケースがあるので、事前に確認しておくことが重要です。
設備費
美容室を開業する際には、施術に必要な各種機材や設備などの導入が欠かせません。
具体的には、以下が挙げられます。
- シャンプー台
- スタイリングチェア
- ドライヤー
- カット用のハサミ
- 作業用ワゴン
これらの中には保守や維持にコストがかかるものもあり、導入時にはその点も考慮しながら慎重に検討することが重要です。
特に、美容器具は高価な製品が多く、選ぶアイテムの品質や導入数によって初期費用に大きな差が出ます。
そのため、最新機種や高機能な器具を導入するかどうかは、店舗の方針や予算に合わせて選ぶことが重要です。
内装工事費
美容室特有の配管や電気設備の設置、衛生面の配慮などが必要なため、一般的な店舗よりも内装工事費用が高額になることがあります。
また、近年では衛生面への配慮がますます重視されており、着工前に地域の保健所へ相談し、施設に必要な条件や指針を事前に確認しておくことも大切です。
施工業者とは丁寧な打ち合わせを重ね、将来的な維持費や管理のしやすさにも目を向けたプラン作りを行うことが重要です。
さらに、美容師法や地域の規則などの法令面についても事前に確認しておくことをおすすめします。
広告費
新規顧客を呼び込むためには、ある程度の広告費が必要です。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
- チラシやパンフレットの制作
- ホームページの立ち上げ
- 販促イベントの実施
- キャンペーンの実施
広告を実施する際には、店舗のコンセプトを明確にすることが重要です。
コンセプトは単なる店舗の特徴ではなく、経営方針の基盤となる重要な要素です。
開業準備の段階で、時間をかけてコンセプトを練り上げておくことで、その後の事業運営が円滑に進み、継続的な成長へとつながる可能性が高まります。
また、コストを抑えながら効果的な集客を目指すなら、開業前からSNSを活用し、発信とフィードバックを繰り返して市場の反応を探るのも効果的です。
美容室の開業資金を抑えるコツ

美容室の開業資金を抑えるコツについては、以下の3つが挙げられます。
- 居抜き物件を検討する
- 共同経営を行う
- フランチャイズ契約をする
それぞれのコツについて解説していきます。
居抜き物件を検討する
美容室の開業資金を抑えるコツとして、居抜き物件を活用する方法が挙げられます。
居抜き物件を利用することで、前のテナントが使用していた家具や設備をそのまま使用できるので、初期投資を大幅に軽減できる可能性があります。
例えば、自分がイメージしている店舗の雰囲気に近い居抜き物件が見つかれば、既存の内装や設備を上手に活かすことで、大掛かりな内装工事や新たな設備導入が不要になり、コストを抑えた営業をスタートすることができます
しかし、居抜き物件の中には、設備の老朽化が進んでいたり、過去に地域住民との間でトラブルがあったケースもあるため、注意が必要です。
そのため、物件を借りる前には、そうしたリスクについて十分に調査・確認することが重要です。
共同経営を行う
美容室を共同経営することで、初期費用の負担を分け合えるというメリットがあります。
例えば、総額500万円の開業資金が必要な場合でも、2人で出資すれば1人あたり250万円の負担で済みます。
このように共同出資によって、個人で開業するよりも資金面のハードルを下げることが可能です。
また、パートナーと協力することで、それぞれの得意分野を活かしたサービスの提供や経営に関する意思決定の際に意見を交換できるなど個人経営にはない強みを発揮できるでしょう。
しかし、意思決定の過程で意見が分かれたり、利益の分配に関して認識の違いが生じたりすることもあるため、事前に経営ルールや役割分担、収益配分などを明確にしておくことが大切です。
共同経営を考えている方は、開業前にしっかりと話し合いを行い、お互いのビジョンをすり合わせておくことをおすすめします。
フランチャイズ契約をする
フランチャイズ契約を選択することで、初期費用を抑えられる場合があります。
フランチャイズ契約をした場合、本部が開業に向けた各種サポートを提供していることが多いため、開業に必要な費用を抑えられることが多いです。
具体的には、店舗物件の紹介や内外装工事業者の選定支援、備品類の一括手配によってコスト削減が図れることがあります。
さらに、フランチャイズ本部によっては、オープン後の経理や在庫管理、人材採用などの業務を代行してくれる体制を整えている場合もあり、運営の手間が軽減されるメリットも挙げられます。
しかし、フランチャイズという仕組み上、フランチャイズでは設備仕様やサービス内容に厳格な規約があり、自由度が限られるため、独自性を大きく出すのは難しい場合があります。また、ロイヤリティや本部指導料が発生するケースもあるため、十分な契約条件の確認が必要です。
美容室を開業する際の資金調達方法

美容室を開業する際の資金調達方法については、以下の5つが挙げられます。
- 日本政策金融公庫の融資
- 銀行融資(プロパー融資・信用保証付き融資)
- 制度融資
- 補助金・助成金
- クラウドファンディング
それぞれの資金調達方法について解説していきます。
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫は、主に中小規模の企業や個人事業者を対象とした公的な融資機関です。美容室の開業など、自己資金がない場合でも利用可能な創業支援融資や事業の再建を支援する資金など、多様な制度が整っています。
特に、新たに事業を始める際には、融資申請に際して事業計画書の提出が不可欠です。
収支計画や市場分析、競合調査、顧客ターゲットの明確化などを含み、現実的かつ具体的な数値計画を示し、金融機関に信頼される内容にしましょう。
参考:日本政策金融公庫
銀行融資(プロパー融資・信用保証付き融資)
銀行融資のプロパー融資は、信用保証機関を通さず、金融機関が事業者へ直接資金を貸し付ける融資です。
この方式では、融資が返済されないリスクを銀行自身が負うため、審査が厳しい傾向があり、信用力や事業の将来性、十分な担保などが求められます。
一方、信用保証付き融資とは、信用保証協会を利用した銀行融資のことです。
信用保証協会は、中小企業が資金を得やすくするために設立された公的な支援機関です。
この協会が保証を提供し、その保証のもとで銀行が融資を行うのが「信用保証付き融資」です。
万が一、返済が困難になった場合、信用保証協会が銀行に代わって弁済を行う仕組みがあり、銀行からの融資を比較的受けやすくなります。
しかし、この保証を受けるには信用保証協会の審査に合格する必要があり、借入時には保証料の支払いも発生するので注意が必要です。
参考:
プロパー融資借換 特別保証制度のご案内|東京信用保証協会
もっと知りたい信用保証|一般社団法人全国信用保証協会連合会
制度融資
制度融資とは、地方自治体と民間の金融機関、信用保証協会が協力して提供する地域に根ざした融資制度です。
利用を希望する際には、事業所が該当地域内にあることを明示する必要があります。
この制度には、地方自治体独自の支援策として、利子の一部を自治体が負担する「利子補給」や、信用保証協会に支払う保証料の一部を補助する制度などが組み込まれている場合があります。
制度融資を受けるには、金融機関と信用保証協会の双方による審査を受け、承認される必要があります。
参考:東京都中小企業制度融資
補助金・助成金
補助金や助成金は、一定の条件を満たすことで返済義務なく受け取れる資金援助です。
補助金とは、国や地方自治体が掲げる特定の政策目標を実現するために、個人事業主や中小企業などに対して提供される資金援助を指します。
一方で助成金は、主に厚生労働省が中心となって実施している雇用に関する支援策の一環として支給されるものが多く挙げられます。
例えば従業員の採用や育成などに活用されるケースがあります。
しかし、補助金と助成金を利用するには、申請要件を満たすことが前提ですが、必ずしも支給が約束されているわけではありません。
また、申請のタイミングや使途、事後報告義務などが厳格に定められており、不正受給と見なされた場合は返還義務や罰則が科されることもあるため、制度内容を十分に理解したうえで申請を行うことが重要です。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネット上にプロジェクトの紹介ページを設け、自分の想いや計画を多くの人々に向けて発信し、幅広い支援を募る方法です。
個人でも気軽に参加できるサービスが多く、公開から支援達成までの流れも一般化しています。
クラウドファンディングで成功するには、魅力的なリターンの設定や継続的な情報発信、プロジェクト内容の明確化などが求められます。
美容室の開業資金を調達する際のポイント

美容室の開業資金を調達する際のポイントについては、以下の3つが挙げられます。
- 実務経験がある
- 説得力のある事業計画書を作成する
- 資金使途と返済計画を明確にする
それぞれのポイントについて解説していきます。
実務経験がある
美容室を開業するにあたって、金融機関に融資を申請する場合、申請者の職歴や実務経験は重要な審査ポイントとなります。
必ずしも「何年以上の勤務歴が必要」という明確な条件があるわけではありませんが、美容師としてどれほどのスキルを積み重ねてきたか、また業界でのキャリアの長さやその中で習得した技術や知識などが重視されます。
過去の業務実績や、他のサロンで勤務していた際の個人売上データなど能力を裏付ける資料があれば積極的に提出すると信頼性が高まります。
さらに、将来的にはサロン経営者としての立場になるため、店舗の運営経験やスタッフ管理などのマネジメントスキルがある場合は、その実績も併せて伝えることで、より好印象を与えることにつながります。
説得力のある事業計画書を作成する
美容室の開業資金を調達する際には、提出する事業計画書の内容が大きな判断材料となります。
単に事業を続けていくためだけでなく、将来的な発展や拡大に向けた戦略を具体的に盛り込むことが大切です。
実際に、融資を申し込む際の金額の妥当性を裏付ける資料としても、この計画書は重要な役割を果たします。
資金の使途は主に設備投資と運転資金に分かれるので、それぞれの用途に対する詳細な内訳を記載することが望まれます。
また、事業の実現性を高めるためには、市場環境の分析や競合との比較、顧客ターゲットの明確化なども重要になります。
さらに、収支の見通しについても、現実的かつ具体的な数値をもとにした計画を立て、説得力のある資料として完成させるようにしましょう。
資金使途と返済計画を明確にする
融資を受ける際には、その資金をどのように活用し、どのように返済していくかを具体的かつ明確に示すことが求められます。
例えば、設備の導入やスタッフの増員、広告や広報の強化など用途ごとに予算を分けて提示すると、より信頼性を高めることができます。
返済計画は売上予測や利益率を踏まえ、無理のない返済スケジュールを立てることが重要で、予期せぬ支出に備えたリスク管理策も明記すると信頼性が高まります。
説明内容を裏付ける根拠資料(見積書、契約書類など)を添付することで、内容の信憑性を一段と高めることができます。
美容室開業をするならまずは資金準備を始めよう!

今回は、開業資金ゼロで美容室を開業できるかどうかについて紹介しました。
美容室を開業するには、資金準備が欠かせません。無理のない計画を立て、余裕を持ったスタートを切るためにも、まずは資金計画から始めてみましょう。
開業を目指すなら、まずは自己資金の確保を意識して行動することが大切です。
そして、資金を貯めると同時に、融資や助成制度など外部からの資金調達についても事前に情報収集しておくことをおすすめします。
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- さらに会社設立してからも一気通貫で支援
この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。