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開業準備で経費として認められる費用とは?開業準備にかかった費用を償却する際のポイントも紹介

読了目安時間:約 6分
開業費とは、事業を始めるために開業前に支出した準備費用のうち、税法上「繰延資産」として認められる費用を指します。これらは任意償却により、開業後の期間中に未償却残高の範囲で経費計上が可能です。
事業に関連する支出は経費にできるものもありますが、中には経費として認められない項目もあるので、開業費として認められる範囲を正しく理解しておくことが重要です。
本記事では、開業準備で経費として認められる費用について紹介します。
他にも「開業準備で経費として認められない費用」や「開業費の仕訳方法」についても解説します。
ぜひこの記事を参考にして、開業準備で経費として認められる費用について理解を深めてみてください。
目次
開業準備で経費として認められる費用

個人事業をスタートさせる際、その準備段階で生じる出費の中で、実際の事業運営に欠かせない支出が開業費として扱われます。
これらの費用は、事業が本格的に始まった後の通常の経費とは異なり、開業費という勘定項目に計上されるのが特徴です。
具体的に、開業準備で経費として認められる費用については、以下の4つが挙げられます。
- 広告宣伝費用
- 備品購入費用
- 賃借費用
- その他費用
それぞれの費用について解説していきます。
広告宣伝費用
開業前に実施した広報活動にかかる費用は、開業費として処理が認められています。
広告宣伝費用の例として、以下が挙げられます。
- チラシ印刷および配布費用
- 店舗ポスターや案内板の制作費
- SNSやGoogle広告などインターネット広告の出稿費
- 開業時用の公式ウェブサイト制作費
上記の費用は事業を円滑にスタートさせるための先行投資と見なされ、税務上も特別な扱いが可能です。
しかし、事業開始後に継続して行う広告活動の費用は、広告宣伝費として経費計上します。
そのため、いつ発生した費用かを正確に記録しておくことが重要になります。
備品購入費用
開業時に必要となる設備や道具にかかる費用は、開業費として計上可能です。
注意点として、備品の購入金額が10万円未満であれば、購入した年度の経費として処理できますが、10万円以上になる場合は原則として固定資産として資産計上し、減価償却の対象になります。(中小企業者向けの少額減価償却資産の特例や一括償却資産の適用もあるため、適宜会計・税務の規定を確認してください。)
また、購入品がプライベート用であると判断されると開業費として認められないので、事業に必要なものとして明確にするのに、レシートや納品書などの証拠を丁寧に保管しておくことが重要です。
具体的には、オフィスや店舗などの業務環境で以下のような備品が対象となります。
- ワークデスク
- オフィス用のチェア
- コンピューター機器
- 印刷機器(プリンターなど)
- 文房具一式
さらに、来客用のテーブルや椅子、店舗内装に使用する道具類なども開業準備の一環として計上が可能です。
賃借費用
事業を始める際にオフィスや店舗の賃貸契約を結ぶ場合、その賃料は開業費として会計処理できます。
例えば、契約時に支払う礼金や仲介手数料、開業前に発生した初期契約費用などは、開業費に含めることが可能です。
一方で、敷金は将来的に返還されることを前提とした「差入保証金」として資産計上するのが原則であり、返還されないことが確定した場合にのみ費用化します。
また、開業後に発生する賃料は日々の運営費用である「経常費用」として処理し、開業費とは区別する必要があります。分割払いの賃料も、開業前に支払った分のみが開業費として認められる点に注意しましょう。
その他費用
事業を始めるための準備段階で発生するさまざまな支出のうち、開業費として扱えるものには、移動や宿泊にかかる費用、専門家との面談費用などが含まれます。(内容によっては一部否認されるケースもあります)
例えば、開業に向けて遠方へ出向いた際の交通費や宿泊代、また税理士や弁護士と事業の方向性や計画について相談した際の費用も対象となります。
さらに、事業用の銀行口座を開設する際に必要となる手数料についても、条件によっては開業費として認められるケースがあります。
こうした費用を正確に計上するためには、領収書や請求書などの証拠を整理・保管しておくことが大切です。
開業準備で経費として認められない費用

開業準備で経費として認められない費用については、以下の4つが挙げられます。
- 領収書がないもの
- 10万円以上のもの
- 資産取得にかかる費用
- 開業準備段階での仕入
それぞれの費用について解説していきます。
領収書がないもの
開業に関わる支出であっても、領収書や明細書が手元に残っていない場合は、開業費として会計処理ができない恐れがあります。
具体的には、支払いの時期や内容が確認できなければ、それが本当に開業に伴う費用であったかどうかを証明するのが困難になることが理由として挙げられます。
そのため、支出の際には必ず領収書や明細書を受け取り、しっかりと保管しておくことが大切です。
また、会社設立時に現物を出資した場合、その出資分は開業費として計上できないので注意が必要です。
10万円以上のもの
経費として認められない費用の一例として、資産計上となる10万円以上の高額備品があります。原則として、購入金額が10万円を超える設備や消耗品については、資産として計上する必要があるためです。
例えば、IT業界で用いられる特殊なソフトウェアなどは場合によっては数百万円になることもあり、導入準備段階で購入した場合であっても、経費ではなく資産として処理することになります。
また、パソコンや応接セットといった高額な有形の固定資産は、取得費用を一度に費用として計上するのではなく、減価償却という方法で耐用年数に応じて複数年にわたって少しずつ経費化する必要があります。
ただし、10万円以上であっても少額減価償却資産の特例が適用される場合は、経費処理が認められることもあります。詳しくは税理士にご相談いただくことをおすすめします。
資産取得にかかる費用
資産として取得する土地や建物などの費用は、開業費として計上できません。
具体的には、以下の費用が挙げられます。
- 商品や材料の購入費用
- 水道光熱費などのインフラ整備費
- 従業員の給与支払い
これらの費用が事業の準備段階における一時的な出費ではなく、資産の購入に直結する支出であることが挙げられます。
また、帳簿上で資産として記録し、定められたルールに従って減価償却をおこなう必要があります。
開業費として誤って処理されやすい支出については、特に慎重に取り扱うことが大切です。
このように、開業費として認められるものと、そうでないものを明確に区別し、適切な会計処理をおこなうようにしましょう。
開業準備段階での仕入
開業前に購入した商品や原材料は、仕入として経理処理されます。
これは、仕入れがすでに事業活動の一部と見なされるためであり、開業前の準備費用とは区別されます。
そのため、会計処理の際には、費用の性質に応じて適切な勘定科目を選ぶ必要がある点に注意しましょう。
開業費の相場

開業費の相場は、事業内容によって初期費用は大きく変わります。
例えば、一般的な小規模ビジネスであれば、開業に必要な費用はおおよそ数十万円から多くても数百万円程度が目安とされています。
自宅を拠点にフリーランスとして仕事を始める場合は、必要な投資も比較的少なくて済み、コストを抑えたスタートが可能です。
一方で、物理的な店舗を構えたり、専門的な設備が求められるビジネスを始める場合は、初期費用が高額になりやすい傾向があります。
また、開業費は、会計上と税務上で異なる意味合いを持っており、会計上では開業のために使われたあらゆる準備費用が対象になり、事務所の設置費用、名刺やウェブサイトの作成費、広告宣伝などが含まれます。
一方、税務上の開業費には定められた範囲があり、特定の支出だけが対象となり、専門家への相談料やリサーチにかかった費用などは、一定の条件下で税制上の優遇を受けられるケースがあります。
このように、開業費の計画を立てる際には、自分の事業内容に合った必要経費を正確に見積もることが重要です。
開業準備にかかった費用を償却する際のポイント

開業準備にかかった費用を償却する際のポイントについては、以下の5つが挙げられます。
- 開業前の費用も開業費として償却する
- 領収書はしっかりと保管する
- 任意償却を活用して経費計上する
- 開業費の管理は帳簿等で明確に行う
それぞれのポイントについて解説していきます。
開業前の費用も開業費として償却する
開業費には、事業を始める前に発生した各種の支出も含めることができます。
また、帳簿をつけていない開業前の期間の費用であっても、適切に整理すれば対象とすることが可能です。
期間については明確な法令上の定めはありませんが、税務実務上は開業に直接関連する支出であると合理的に説明できる範囲が必要です。数か月前程度までの費用であれば、領収書や支出目的の記録をもとに認められるケースが一般的です。
しかし、準備を長期にわたって続けていた場合、例えば数年前の支出などは、正当性を疑われる恐れがあるため注意が必要です。
そのため、開業までの準備が長期に及ぶ場合は、購入に関する領収書等をしっかり保存し、購入目的や使用予定なども一緒に記録しておくようにしましょう。
領収書はしっかりと保管する
開業費として計上する予定がある場合は、支出に関する領収書をしっかり保管しておくことが大切です。
実際に、領収書は帳簿づけや税務処理において、その支出を裏付ける証拠として必要になります。
交通費など領収書を受け取れない支出は、日付・内容・金額を記載した出金伝票やメモを残すことが望ましいとされています。ただし、税務調査時に必ず認められるとは限らないため、可能な限り証拠資料を保管しましょう。
任意償却を活用して経費計上する
開業準備にかかった費用を償却する際のポイントとして、「任意償却」を活用して経費計上する方法が挙げられます。
開業費は税法上「任意償却資産」として扱われ、各期において未償却残高の範囲内で償却額を決定することが可能です。
例えば、開業初年度に黒字が出た場合には利益圧縮のために一括償却することもでき、一方で赤字の場合には無理に償却せず、利益が出た年に償却を行う選択も認められています。
ただし、償却額を決定する際には、帳簿記載や根拠資料(仕訳帳、元帳、開業費明細など)を整備しておく必要があります。また、償却を行わずに繰り越す場合にも、未償却残高が明確に管理されていることが求められます。
なお、税法上、開業費は「償却期間5年」とされていますが、これは均等償却の目安であり、5年を超えても未償却分を経費計上すること自体は可能です。ただし、継続性や合理性の観点から、計画的な償却が望ましいでしょう。
開業費の管理は帳簿等で明確に行う
開業費は「繰延資産」として扱われるため、固定資産とは異なりますが、未償却残高や償却履歴を明確に管理する必要があります。
そのため、開業費の償却を行う際には、仕訳帳への記入に加えて、補助簿や管理台帳等で未償却残高や償却履歴を整理しておくことが推奨されます。
これにより、償却額や残高を正確に把握できるほか、税務調査時にも説明がしやすくなります。特に、記録の修正が必要となった場合には、仕訳帳と補助簿の両方を整合させることが重要です。
記入漏れや不一致を防ぐためには、償却や記録作業の都度、帳簿を確実に更新する習慣を身につけると良いでしょう。
開業前後の支出は適切に経費計上しよう!

今回は、開業準備で経費として認められる費用を紹介しました。
開業前の費用は、開業費として適切な条件を満たせば、開業後に経費として処理することが可能です。
開業直後は、手元の資金に余裕がないことも多いので、こうした支出を正しく記帳し、税務上も有利に扱うことが重要です。
開業費の扱い方を理解し、自分のビジネスに合った節税対策を講じることで、健全な事業運営につながります。
今回の記事を参考にして、開業前後の支出は適切に経費計上するようにしましょう。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。