2025.09.1

法人化

フランチャイズ経営で法人化するタイミングとは?法人成りのメリット・デメリットも解説

フランチャイズ 法人化(法人成り)

読了目安時間:約 7分

フランチャイズ経営を続けていく中で、一定の規模に達すると「法人化」を検討するケースが少なくありません。

フランチャイズ経営で法人化する際には、自分の状況や目指す方向性をよく見極めた上で、ビジネスの規模や将来的な展望によって適切な形態を選ぶことが重要です。

本記事では、フランチャイズ経営における法人化を検討する目安について紹介します。

他にも「個人事業主と法人の違い」「法人化のメリット・デメリット」についても概要を解説します。

法人化の判断はケースバイケースですが、基本的な考え方を知っておくことで検討の参考になります。ぜひこの記事を参考にして、フランチャイズ経営の法人化について理解を深めてみてください。

フランチャイズ経営で法人化するタイミング

フランチャイズ経営で法人化するタイミング

フランチャイズ経営において法人化を検討すべきタイミングとして、一般的には次のようなケースが考えられます。

  • 売上高が1,000万円を超えるとき
  • 所得が800万円以上になったとき
  • 事業拡大したいとき

売上高が1,000万円を超えるとき

フランチャイズ経営で法人化を検討するタイミングの一つに、「売上高が1,000万円を超えるとき」があります。

消費税法上、過去2年間の課税売上高が1,000万円を超える場合や、前年の前半6カ月間で1,000万円を超えた場合には、課税事業者として消費税の納税義務が生じます。

一方で、法人を新たに設立した場合、資本金が1,000万円未満であれば、原則として設立から最初の2年間は消費税の納税義務が免除されます。そのため、個人事業として売上が増加する前に法人化を検討することで、節税の面で有利に働くケースがあります。

また、個人事業の段階で免税事業者であった場合、法人設立後も条件次第ではさらに2年間免税が適用される可能性があります。ただし、これは事業規模や設立時の資本金額などによって変わるため、一概に「4年間免税される」とは限りません。

さらに、令和5年10月にスタートしたインボイス制度により、取引先からの要請で課税事業者として登録せざるを得ないケースもあります。その場合には免税措置が受けられなくなるため、法人化の時期や税務上のメリット・デメリットについては専門家に相談することをおすすめします。

参考:国税庁|納税義務の免除

所得が800万円以上になったとき

フランチャイズ経営で法人化を検討する一つの目安として、所得水準が800万円を超えるタイミングが挙げられます。

個人事業主の場合、所得税は累進課税方式が採用されているため、所得が増えるにつれて税率も高くなります。一方、法人の場合は、法人税に加え、地方法人税や法人住民税・事業税などが課されますが、基本的な法人税率は以下の通りとなっています。

  • 年間所得800万円以下の部分:15%
  • 年間所得800万円を超える部分:23.2%

この違いを踏まえると、年間の所得が800万円を超えるようになった時点で、法人化を視野に入れることで、税負担を軽減できる場合があります。

ただし、実際に法人化によって税負担が必ず軽減されるわけではありません。法人化すると、社会保険料の負担や赤字でも均等割の法人住民税が発生するなど、新たなコストが生じる点にも注意が必要です。

参考:国税庁| 所得税の税率

事業拡大したいとき

法人化を検討する一つのタイミングとして、「事業を拡大したい」と感じたときが挙げられます。

個人事業主のままでも多くの補助金や助成金を活用できますが、中には法人を対象とする制度も存在します。また、法人化することで取引先からの信用力が高まり、資金調達や採用活動において有利に働く場合があります。その結果として、事業の成長を後押しする効果が期待できるでしょう。

一方で、売上が伸びてきたからといって、必ずしも法人化が最適とは限りません。現状の形態で十分にメリットを享受できる場合もあるため、将来の事業展望を踏まえて、もっとも効果的な形態を選ぶことが大切です。

フランチャイズ経営における個人事業主と法人の違い

フランチャイズ経営における個人事業主と法人の違い

フランチャイズ経営において、個人事業主と法人にはいくつかの違いがあります。主なポイントとして、以下の4つが挙げられます。

  • 開業手続きの流れ
  • 税金の仕組み
  • 経費として計上できる範囲
  • 社会的信用や契約面でのメリット

開業手続きの流れ

個人で事業を始める場合、税務署に「開業届」を提出することで、事業開始の手続きは基本的に整います。また、同時に「青色申告承認申請書」を提出すると、青色申告による税制上の優遇を受けることができます。なお、帳簿の作成や確定申告など、日常的な税務手続きは必要です。

一方、法人として事業を開始する場合は、定款の作成・認証や登録免許税の納付など、設立時に必要な手続きがいくつかあります。また、法人では毎年の決算書(貸借対照表・損益計算書)の作成や確定申告、納税手続きが必要です。従業員を雇用する場合には、社会保険・労働保険の加入や雇用契約書の整備なども行う必要があります。

これらの手続きは複雑に感じられることもありますが、税理士に相談することで適切に対応することが可能です。

参考:国税庁| 個人事業の開業届出・廃業届出等手続

税金の仕組み

個人で事業を営む場合、主に所得税・住民税・個人事業税・消費税の4種類の税金がかかります。

法人を設立した場合は、法人独自の税金として法人税・法人住民税・特別法人事業税などが課されることがあります。消費税は個人事業主、法人のいずれにも該当する場合がありますが、課税条件や計算方法が異なるため注意が必要です。

また、事業の業種や規模によっては、特別な税金や税の控除・優遇措置が適用されることもありますので、事前に専門家に確認することをおすすめします。

参考:e-Gov法令検索|法人税法(昭和四十年法律第三十四号)

経費として計上できる範囲

事業を運営する上で、法人・個人事業主にかかわらず発生するのが「経費」です。経費とは、事業の遂行に必要な支出であり、例えば打ち合わせのための飲食費や移動にかかる交通費などが該当します。ただし、これらは業務に関連している場合に限られます。

法人と個人事業主の大きな違いの一つに、「自分の給与の取り扱い」があります。法人の場合、代表者(役員)の報酬は、税法上の条件を満たせば法人の経費として計上することが可能です。その結果、会社の利益から支払うことで個人の所得税負担を抑えることにつながります。

一方、個人事業主は、事業の売上から必要経費を差し引いた残りが所得となり、所得税が課税されます。青色申告や各種控除を活用することで税負担を軽減できますが、売上が増えると所得税額も増える傾向があります。

参考:国税庁|必要経費の知識

社会的信用や契約面でのメリット

フランチャイズ経営においては、法人形態を選択することで、取引先や金融機関からの信用面で有利になる場合があります。特に、融資を受ける際や大規模な契約を結ぶ際には、法人であることが一つの安心材料となることもあります。

また、介護事業や看護サービス、障がい者支援施設など、都道府県知事の認可が必要な事業では、法人であるのが条件となる場合が多く、事業開始時に法人化を検討する必要があります。

このように、フランチャイズをスタートする際には、事業内容や規模に応じて法人化を検討することが重要です。

参考:日本政策金融公庫|融資制度を探す

フランチャイズ経営で法人成りするメリット

フランチャイズ経営で法人成りするメリット

フランチャイズ経営で法人成りするメリットには、以下のような点が挙げられます。

  • 節税効果が期待できる
  • 消費税が最大2年間免除になる
  • 役員報酬の設定が可能になる
  • 融資や資金繰り面で有利になる
  • 社会的信用力が高まる

節税効果が期待できる

経費として計上できる範囲が個人事業主より広がる場合があります。
例えば、業務のための出張にかかる交通費や宿泊費、取引先との打ち合わせに伴う交際費などが法人の経費として処理できる場合があります。

また、自宅の一部を事務所として利用する場合など、一定の条件を満たせば家賃や光熱費の一部を経費計上できることもあります。ただし、社宅制度の整備や使用割合の明確化など、税務上のルールに従うようにしましょう。

交際費については、中小法人であれば年間800万円までの交際費が損金算入できる場合があります。

このように、法人化によって節税の幅が広がる可能性はあります。ただし、税務ルールを正しく理解した上で無理のない経費処理を行うことが重要です。

参考:国税庁|必要経費の知識

消費税が最大2年間免除になる

法人を新たに設立した場合、一定の条件を満たすと、最初の2年間は消費税の課税事業者とならない「免税事業者制度」を利用できる可能性があります。

この制度を利用するためには、資本金が1,000万円未満であること、かつ年間売上が1,000万円以下であることが条件です。

消費税は事業運営上の負担となることもあるため、事前に制度の適用条件を確認し、適正な申告・納付を行うことが経営上重要です。

参考:国税庁|納税義務の免除

役員報酬の設定が可能になる

法人化すると、役員報酬として受け取る金額に対して所得税が課税される仕組みになるため、報酬額の設定次第で個人の所得税・住民税の負担を調整できます。

個人事業主の場合、所得が増えると段階的に税率が上がる「超過累進課税制度」が適用されます。例えば高額所得の場合、所得税率は最大で45%(課税所得に応じて変動)となり、住民税(約10%)も加わるため、税負担は大きくなります。

しかし、法人化により、役員報酬の額をあらかじめ決めておくことで、個人の所得税・住民税の負担を調整することが可能です。ただし、報酬を抑えすぎると法人の利益が増え、法人税の負担が増える場合もあります。そのため、法人税・所得税・住民税のバランスを考え、適切な役員報酬額を設定することが重要です。

参考:所得税の税率

融資や資金繰り面で有利になる

法人として事業を行うことで、金融機関の審査において信用力が評価されやすく、融資条件が有利になる場合があります。

会社設立直後であっても、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」を利用することで、事業計画が認められれば資金調達の可能性があります。

また、助成金や補助金の活用においても、法人の方が申請できる制度が多く、個人事業主より利用しやすい場合があります。

参考:日本政策金融公庫|新規開業・スタートアップ支援資金

社会的信用力が高まる

法人化することで、事業の信頼性を示しやすくなる場合がある点もメリットです。

法人は登記によって以下の情報が公的に登録され、法務局で第三者が閲覧できます。

  • 会社名
  • 所在地
  • 役員構成
  • 事業の内容

これにより、会社の実在性や事業内容の透明性を示すことが可能です。ただし、借入の有無などの詳細な財務情報は登記情報には含まれないため、信用力を判断する際は財務諸表や取引実績も重要になります。

参考:法務省|登記情報提供制度の概要について

フランチャイズ経営で法人成りするデメリット

フランチャイズ経営で法人成りするデメリット

フランチャイズ経営で法人成りする際には、以下のような注意点があります。

  • 社会保険の加入は義務になる
  • 事務作業に手間がかかる
  • 役員報酬を設定したら1年間変更できない

それぞれの詳しく解説していきます。

社会保険の加入は義務になる

法人を設立すると、社会保険(健康保険・厚生年金保険など)への加入が法律で義務づけられます。そのため、加入を避けることはできません。

社会保険料は、原則として会社と従業員(役員)で折半して負担します。役員1名のみの法人の場合、会社負担分も含めると、実質的に役員本人の負担が一定程度増えることになりますが、会社負担分は法人の経費として計上可能です。

負担額は役員報酬の金額や加入する保険の種類によって異なりますが、概ね報酬の数%〜20%程度が目安となります。法人設立時には、この負担を踏まえて役員報酬を設定することが重要です。

参考:日本年金機構|事業主の方 社会保険事務担当の方

事務作業に手間がかかる

法人化すると、会計処理や各種手続きが個人事業主に比べて複雑化する傾向があります。
具体的には、以下のような事務作業が発生します。

  • 定款の作成
  • 設立登記の申請
  • 代表印の登録
  • 健康保険・厚生年金への加入手続き
  • 労働保険の届け出
  • 雇用保険の申請

これらの手続きをすべて自力で行うことも可能ですが、専門知識や時間を要するため、業務の効率や本業への注力に影響する場合があります。

そのため、法人化に伴う各種手続きや会計業務は、税理士に依頼することで、安心してビジネスの運営に集中できる選択肢があります。

参考:税理士法人松本|会社設立専門の税理士・社労士・行政書士がフルサポート

役員報酬を設定したら1年間変更できない

フランチャイズ経営で法人成りする場合、役員報酬の設定には慎重な判断が必要です。

役員報酬は原則として定期同額給与として設定すると、原則1年間は変更ができません。そのため、売上や利益の変動があった場合でも、報酬額を自由に調整できないことがあります。

これにより、法人税や所得税、住民税の負担に影響する可能性があるため、役員報酬は事業計画や税務上の取り扱いを踏まえて戦略的に設定することが重要です。

フランチャイズ経営で法人成りする際の注意点

フランチャイズ経営で法人成りする際の注意点

フランチャイズ経営で法人化する際には、以下の2点に注意しておくことが重要です。

  • 年間所得が少ない場合の法人化
  • 資本金の設定

年間所得が少ない場合の法人化

フランチャイズ経営で法人化を検討する際は、年間所得の水準によってメリット・デメリットが異なります。

所得が一定以上ある場合は、法人化によって税負担を軽減できるケースがあります。一方で、所得が少ない段階で法人を設立すると、法人税や法人住民税、法人事業税のほか、社会保険への加入による保険料負担などが発生するため、必ずしも節税につながらない場合もある点に注意が必要です。

そのため、法人化を検討する際は、必要となる費用や支出を事前に確認し、自身の事業規模や将来の見通しに照らして判断することが重要です。

資本金の設定

会社の信頼性を高めようと資本金の額を高めに設定する人もいますが、資本金が増えるほど登録免許税も比例して高くなる点に注意が必要です。

また、資本金が1,000万円を超える場合は、設立初年度から消費税の免税事業者制度を利用できないため、税務面での影響も考慮して決定するとよいでしょう。

会社の信頼性を高めたい場合、資本金の設定も一つの要素になりますが、事業内容や取引実績、経営体制なども大切です。

参考:国税庁|登録免許税の税額表

フランチャイズ経営で法人成りを検討しよう!

フランチャイズ経営で法人成りを検討しよう!

今回は、フランチャイズ経営における法人化のタイミングについて紹介しました。

フランチャイズ経営を本格的に行い、安定した収益を目指す場合、法人化によって資金調達や取引先からの信用面でのメリットが期待できるケースがあります。

また、事業を将来的に拡大したい場合は、売上や収益の見通しを踏まえて法人化を検討することが一般的です。ただし、法人化には設立費用や事務手続きなどの負担も伴うため、自分の状況や事業計画に応じて慎重に判断することが重要です。

今回の記事を参考にしながら、フランチャイズ経営での法人成りを検討してみてください。


免責事項

当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。内容は記事作成時の法律に基づいています。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

税務・労務等のバックオフィス支援から
経営支援まで全方位でビジネスをサポート

本気で夢を追い求めるあなたの会社設立を全力サポート

  • そもそも個人事業と会社の違いがわからない
  • 会社を設立するメリットを知りたい
  • 役員報酬はどうやって決めるのか
  • 株式会社にするか合同会社にするか
といったお悩みを抱えている方は、まずは初回電話無料相談をご利用ください。
会社設立の専門家が対応させていただきます。

税理士法人松本の強み

  • 設立後に損しない最適な起業形態をご提案!
  • 役員報酬はいくらにすべき?バッチリな税務署対策で安心!
  • 面倒なバックオフィスをマルっと支援!
  • さらに会社設立してからも一気通貫で支援

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

あわせて読みたい記事

会社設立ブログをもっと見る

相見積もり大歓迎!
他社と比べても自信があります。

本気追い求める
あなたの会社設立全力サポート

月間先着10者限定

創業応援 無料キャンペーン

  1. 01

    有料相談11,000無料!

  2. 02

    会社設立報酬実質無料!

  3. 03

    届け出サポート22,000円が無料!

  4. 04

    会計サポート3ヶ月分無料!