2025.09.9

法人化

法人成り(法人化)の際に創業融資は利用できる?創業融資の種類や受けるポイントも解説

創業融資 法人成り(法人化)

読了目安時間:約 7分

法人成り(法人化)をした場合でも、条件によっては創業融資を利用できるケースがあります。

ただし注意点として、創業融資の審査では「事業開始からの経過年数」が基準の一つとされているため、すでに一定期間個人事業を営んでいる場合、法人設立時点を創業と見なされず、対象外となる場合があるので注意が必要です。

本記事では、法人成り後に創業融資を利用できる可能性や、利用しやすくするためのポイントについて解説します。あわせて、法人成りでも検討できる融資制度の種類についてもご紹介します。

法人成りをご検討中の方は、ぜひ参考にしていただければ幸いです。

法人成り(法人化)の際に創業融資は利用できる?

法人成り(法人化)の際に創業融資は利用できる?

法人成り(法人化)の場合でも、創業融資を利用できる可能性はありますが、申請条件によっては利用できないケースも見られます。

多くの創業融資制度では「創業してから一定年数以内であること」が重要な条件の一つとされています。そのため、事業を始めたばかりの方や創業直後に法人を設立した方であれば、申請要件を満たしやすい傾向があります。

一方で、個人事業として数年活動した後に法人化した場合、金融機関や制度によっては「創業時期」を個人事業開始時点とみなすことがあります。その場合、法人設立を「新規創業」とは認めず、既に創業から一定年数が経過していると判断される可能性があります。

したがって、法人成りを検討している方は、創業融資の条件を満たせるかどうかを事前に確認しておくことが重要です。

参考:日本政策金融公庫|新規開業・スタートアップ支援資金

法人成りで利用できる創業融資の種類

法人成りで利用できる創業融資の種類

法人成りした場合でも、条件を満たせば以下のような創業融資を利用できる可能性があります。

  • 新規開業・スタートアップ支援資金
  • 制度融資
  • 銀行融資
  • 信用金庫の融資

新規開業・スタートアップ支援資金

新規開業・スタートアップ支援資金は、日本政策金融公庫が提供する、これから事業を始める方や、創業からおおむね7年以内の方を対象とした融資制度です。

借入資金は、開業に必要な資金や設備の購入費用、日々の運転資金などに利用できます。ただし、具体的な用途や融資額は、事業計画や担保状況によって変わる場合があります。

融資の上限額は制度上7,200万円とされていますが、運転資金として利用できる金額は最大4,800万円となっています。返済期間は、設備投資の場合は最長20年、運転資金の場合は最長10年が目安ですが、条件により変更されることがあります。

金利は、日本政策金融公庫が定める基準利率が基本で、時期や経済状況に応じて変動します。最新の利率や詳細条件については、日本政策金融公庫の公式サイトでご確認ください。

新規開業・スタートアップ支援資金は、以下のような条件に該当する場合に利用できます。

  • 女性、若者/シニア起業家支援関連
  • 中小企業経営力強化関連
  • 再挑戦支援関連

参考:日本政策金融公庫|新規開業・スタートアップ支援資金

女性、若者/シニア起業家支援関連

日本政策金融公庫が提供する「新規開業・スタートアップ支援資金(女性、若者/シニア起業家支援関連)」は、新たに起業を目指す方、あるいは起業してからおおむね7年以内の方を対象とした支援プログラムです。

対象者は、女性の方、若年起業家(おおむね35歳未満)、シニア起業家(おおむね55歳以上)に限られています。

この制度では、開業資金や設備資金、運転資金など用途が明確に定められた資金に対して融資を受けることが可能です。融資額の上限は合計で7,200万円で、そのうち運転資金として利用できる金額は目安として最大4,800万円となっています。

返済期間は資金の用途によって異なり、設備資金は最長20年、運転資金は最長10年まで設定可能です。また、一定の条件を満たす場合には、通常の基準利率よりも低い「特別利率」が適用されることがあります。

対象者が限定されているため、条件に該当する場合は、一般的な融資に比べて有利な金利で資金調達できる可能性があります。

参考:日本政策金融公庫|若者/シニア起業家支援関連

中小企業経営力強化関連

「新規開業・スタートアップ支援資金(中小企業経営強化関連)」は、資金調達が必要な中小企業の経営安定や成長を支援するための融資制度です。

利用にあたっては、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

条件①・経営革新や異業種との連携によって、新たな分野の市場を創出または開拓する計画を立てていること
・中小企業等経営強化法に基づく「認定経営革新等支援機関」から、事業計画書についてのアドバイスや支援を受けていること
条件②・「中小企業の会計に関する基本要領」または「指針」をすでに導入している、あるいは今後導入予定であること
・事業計画書を作成していること

この制度では、最大7,200万円までの資金調達が可能で、対象となる資金は「設備投資」および「長期の運転資金」に限られています。

適用される金利は基準利率で、返済期間は設備資金で最長20年、運転資金で最長10年となっています。

創中小企業経営強化関連の融資は一般的に「事業開始後おおむね7年以内」が利用対象です。ただし、具体的な利用可否や融資額は審査により異なるため、事前に専門家への相談がおすすめです。

参考:日本政策金融公庫|新規開業・スタートアップ支援資金(中小企業経営力強化関連)

再挑戦支援関連

「新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連)」とは、過去に事業を廃業した経験がある方が、再び起業やスタートアップに挑戦する際に利用できる支援制度です。場合によっては金利や返済期間に配慮された条件で利用できることがあります。

再挑戦支援関連の融資の利用には、主に以下の条件が必要です。

  • 過去に廃業した経験がある個人、またはそのような経営者が代表を務める法人であること
  • 過去の廃業に伴う負債などが、再挑戦する事業運営に支障を与えない見込みであること
  • 廃業の理由が、自然災害や健康上の理由など、やむを得ない事情によるものであること

再挑戦支援関連の金利は基本的に基準金利が適用されますが、返済期間が長めに設定されているのが特徴です。設備資金は返済期間20年以内(据置期間5年以内)、運転資金は通常よりも長く15年以内(据置期間5年以内)となっています。

参考:日本政策金融公庫|新規開業・スタートアップ支援資金(再挑戦支援関連)

制度融資

制度融資とは、地方自治体・金融機関・信用保証協会が連携して実施する融資制度です。創業間もない段階から利用できるものや、事業開始から一定期間が経過した後に申請可能なものなど、利用者の状況に応じたさまざまなタイプがあります。

一般的な銀行融資に比べ、条件によっては低金利で融資を受けられる場合もあります。ただし、審査の過程や手続きの進め方は、金融機関と信用保証協会、地方自治体の連携によって行われるため、実際に資金が振り込まれるまでには一定の時間を要することがある点に注意が必要です。

制度融資の内容や利用条件は自治体ごとに異なるため、会社設立予定の地域で提供される制度の詳細を事前に確認し、必要に応じて税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

銀行融資

銀行による融資では、創業から一定期間の事業実績が審査の参考にされることがあります。そのため、創業直後の事業者が資金調達を行う場合、審査が厳しくなるケースも少なくありません。

個人事業として一定期間の実績がある場合、法人化(法人成り)後の財務状況や事業計画次第では、銀行による融資審査で有利に評価される場合があります。ただし、法人成りしたからといって自動的に融資が受けやすくなるわけではないため、事前に金融機関に相談し、必要な書類や事業計画を整えることが重要です。

また、銀行融資は申込みから資金実行までの期間が金融機関や融資の種類によって異なるため、余裕を持ったスケジュールで申請手続きを行うことが推奨されます。借入限度額や金利も金融機関ごとに条件が異なるため、事前に詳細を確認することが大切です。

信用金庫の融資

信用金庫は、地域に根ざした金融機関であり、主に地元の個人や中小・零細企業を支援することを目的とした協同組織です。

市町村ごとに管轄が異なるため、利用者と担当者とのやり取りが密接になりやすく、地域の事情に応じた柔軟な対応が期待できます。一方で、担当者の経験や対応方針によってサービス内容が変わる場合がある点には注意が必要です。

また、民間銀行と比べると、各信用金庫ごとに運営方針や制度に違いがあり、地域特性に合わせたサービスの特色が現れやすい傾向があります。

参考:一般社団法人全国信用金庫協会|融資業務 – 信用金庫とは

法人成りの創業融資の審査項目

法人成りの創業融資の審査項目

法人成りの際に創業融資を申請する場合、金融機関では主に以下のようなポイントが審査の対象となります。

  • 事業計画
  • 信用情報
  • 自己資金
  • 事業経験

事業計画

法人成りで創業融資の審査を受ける際、事業計画は重要な参考資料のひとつと考えられています。

事業計画とは、事業の立ち上げから運営までの構想や方向性を文書化したもので、計画の実行可能性を整理する役割もあります。売上や仕入れコストなどの収支計画を含め、現実的な根拠に基づいた数値を示すことが望ましいです。

面談や書類審査では、こうした計画内容をもとに、事業の方向性や返済の見通しについて質問されることがあります。計画の策定段階では、数字や方針に対して客観的な裏付けを行うことで、より説得力のある内容に整えることができるでしょう。

参考:事業計画書の作成例 | 起業マニュアル – J-Net21 – 中小機構

信用情報

信用情報とは、クレジットカードや各種ローンなどの過去の信用取引に関する記録のことです。
これらの情報はCICやJICCなどの信用情報機関によって管理されており、融資審査などの際に参考にされることがあります。

主に、クレジットカードの支払い状況やローンの返済履歴などが信用情報として記録されます。

ご自身の信用情報に不安がある場合は、CICやJICCに開示請求を行うことで、登録内容を確認できます。誤った情報がある場合には、各信用情報機関の定める手続きに沿って訂正を申請することが可能です。

参考:開示を申し込む | 日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関

自己資金

法人成りの創業融資の審査項目のひとつに、自己資金があります。

自己資金とは、起業や事業開始にあたって自ら用意した資金を指し、融資審査において、融資を実行するかどうかの判断材料として、自己資金の状況を確認されることがあります。

特に、銀行口座の入出金履歴が明確な預金は、資金の透明性が分かりやすく、一般的に審査上評価されやすい傾向があります。

一方、銀行口座を通さずに保管していた現金(いわゆる「タンス預金」など)は、資金の出所を示す資料が整っていない場合、自己資金として扱われにくいことがあります。そのため、必要に応じて資金の流れを証明できる書類を用意しておくと安心です。

事業経験

創業融資の審査では、事業に関する経験も一つの判断材料となります。

特に法人として融資を希望する場合には、過去の業務経験が今後の事業運営にどのように活かせるかが確認されることがあります。 事業経験とは、該当業界や職種で積み重ねてきた知識・スキル・実務経験を指し、これまでの経験を整理することで、事業の方向性や運営方針を具体的に説明しやすくなります。

売上実績や取引の経緯がある場合は参考になりますが、創業前であれば関連する職務経験やスキルの整理をするのが望ましいでしょう。

法人成りで創業融資を受けやすくする際のポイント

法人成りで創業融資を受けやすくする際のポイント

法人成りで創業融資を受けやすくする際には、以下のような点が参考になります。

  • 事業規模や必要資金に見合った資本金を設定する
  • 事業目的を明確化する
  • 本店所在地は事業運営上適切な場所を選ぶ
  • 役員の信用情報を確認する

事業規模や必要資金に見合った資本金を設定する

法人成りに伴い創業融資を検討する場合、資本金の額は一つの考慮ポイントとなります。

会社設立は理論上は資本金1円から可能ですが、創業融資の審査では、自己資金の額や経営基盤の安定性も重視されます。そのため、資本金があまりに少ない場合、金融機関からの信用度が相対的に低く評価され、希望する融資額の確保が難しくなる可能性があるので注意が必要です。

そのため、創業時に融資の利用を想定している場合には、数百万円程度の資本金を用意することが望ましいケースもあります。ただし、融資可否は資本金だけで決まるものではなく、事業計画や経営経験、業種の特性など複数の要素が総合的に判断されます。

事業目的を明確化する

法人成りの際は、自社の事業内容を明確にし、適切な事業目的を設定することが望ましいとされています。

事業目的は、会社がどのような分野で活動するかを示すものであり、将来的な業務の拡大や展開も考慮して慎重に設定することが重要です。

事業内容や創業融資の条件を踏まえたうえで事業目的を決定することで、融資審査時に事業計画の説明がしやすくなる場合があります。

本店所在地は事業運営上適切な場所を選ぶ

法人成りで創業融資を受けやすくするためには、本店所在地の選定も重要です。

特に、バーチャルオフィスやレンタルオフィスを登記住所として利用する場合は、金融機関や取引先からの信用度に影響する可能性があるため、事前に確認しておくと安心です。

また、会社名(商号)は既存の法人と混同されないよう、法務局の商号検索を活用して重複や類似がないか確認することが推奨されます。
このように、登記手続きをスムーズに進めるためにも、事前確認をしっかり行いましょう。

参考:法務省|オンライン登記情報検索サービスを利用した商号調査について

役員の信用情報を確認する

法人成りに伴い創業融資を検討する場合、役員の信用情報や財務状況が審査の参考になることがあります。

金融機関は、会社の信用力や返済能力を判断する際、役員の過去の信用情報や債務履歴を確認することがあります。そのため、役員を選任する際には、信用情報に関する基本的な確認を行い、必要に応じて専門家に相談することが重要です。

参考:日本信用情報機構(JICC)指定信用情報機関

創業融資を利用する前に入念な準備をしよう!

創業融資を利用する前に入念な準備をしよう!

法人成り(法人化)の際に、創業融資を利用できる場合があります。ただし、融資の可否は事業内容や資金計画などに応じて個別に判断されます。

創業融資を検討する際は、金融機関や融資担当者に相談し、自分の状況に応じたアドバイスを受けるのが望ましいです。

また、申請には複数の書類が必要となるため、事前に必要書類の一覧を確認し、余裕を持って準備を進めることをおすすめします。

この記事を参考に、創業融資の利用に向けた入念な準備を心がけましょう。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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