2025.09.10

法人化

法人成り(法人化)した年は確定申告は必要なの?流れやポイントについても徹底解説

法人成り(法人化) 確定申告

読了目安時間:約 7分

個人事業主から法人へ切り替えた年には、1月1日から法人設立日までの個人事業に係る所得について、通常どおり所得税の確定申告をおこなう必要があります。

一方で、法人設立後の所得については、法人税の申告を行うことになります。したがって、法人成りした年は「個人の確定申告」と「法人の決算・法人税申告」の両方に対応する点が特徴です。

もし申告を怠ったり、期限を過ぎてしまった場合には、延滞税や加算税などの追徴課税が発生する可能性があります。そのため、申告の流れや必要な書類を早めに確認しておくことが大切です。

本記事では、法人成りした年に必要な確定申告と法人税申告の基本的な流れや注意点について解説します。ぜひ参考にして、法人化の際の税務手続きをスムーズに進めてみてください。

法人成り(法人化)した年は確定申告は必要なの?

法人成りをした年には、個人事業の廃業届を提出するだけでなく、個人事業主としての確定申告も必要になる点に注意が必要です。

具体的には、個人事業から法人へ移行した年は、次のように期間ごとに分けて申告を行います。

確定申告の種類内容
個人事業主としての確定申告その年の1月1日から廃業日までの所得を対象とします。
法人としての確定申告法人設立日から法人の決算期末までの期間に発生した所得を申告します。

また、個人事業主として消費税の課税事業者であった場合は、廃業日までの期間について消費税の申告も必要です。

申告期限は通常と変わらず、次のとおりです。

  • 所得税の申告期限:翌年の3月15日まで
  • 消費税の申告期限:翌年の3月31日まで

期限を過ぎた場合には、延滞税や無申告加算税などが課されることがあります。

一方、法人としての初回の申告は、決算期末から2か月以内に行う必要があります。個人と法人の申告時期が重なることもあるため、法人設立時には決算期を慎重に設定することが望ましいでしょう。

参考:国税庁|所得税の確定申告

法人成りした後の確定申告の流れ

法人成りした後の確定申告の流れ

法人成りをした後は、個人事業としての確定申告(法人成りをした年のみ必要)と、法人としての決算・申告がそれぞれ必要になります。

法人申告の流れは、大きく分けて次の5つです。

  1. 日々の取引を記帳する
  2. 決算整理事項を確認する
  3. 決算書を作成する
  4. 法人税等の確定申告書を作成する
  5. 申告書を提出し、関係書類を保存する

それぞれの項目について解説していきます。

①日々の取引を記帳する

法人成りした後の確定申告の流れとして、まずは1年間にわたる取引記録を整理・記帳することが必要です。

記帳とは、事業活動の中で発生した売上や仕入、経費の支払い、資金の受け渡しなどを帳簿に正確に記録する作業を指します。

取引には現金の出入りだけでなく、掛取引やサービスの提供、未収入金・未払金といった債権債務も含まれます。

記帳を行う際には、以下のような資料を整理して活用すると効率的です。

  • 領収書やレシート
  • 請求書などの帳票類
  • 銀行口座の取引明細や通帳の記録
  • ネットバンキングの取引履歴

また、会計ソフトを導入することで、売上や仕入のデータ集計が自動化され、仕訳や修正作業も効率的に進められるようになります。結果として、決算書作成や申告書作成に向けた準備がスムーズになるでしょう。

②決算整理事項を確認する

次に、決算整理事項の確認をおこないます。

ここでは、帳簿の記録と実際の資産状況を照合し、資産が正しく存在しているかを確認します。特に、銀行口座の残高や所有する固定資産などが主な確認対象です。

確認作業が終わったら、通常の取引記帳では反映できない項目を補足するために「決算整理仕訳」をおこないます。さらに、決算振替仕訳を通じて当期の純利益を確定させれば、決算書作成の準備が整います。

なお、取引の記帳は1年を通して随時行いますが、決算整理や仕訳の処理は年に一度、決算時にしか行えません。そのため、スケジュールを意識して計画的に取り組むことが大切です。

③決算書を作成する

決算書とは、企業が一定期間に行った経済活動の結果や資産・負債の状況をまとめた重要な書類です。決算書を作成することで、企業の経営状況や財務の健全性を客観的に把握できます。

主に作成が求められる決算書には、以下の3種類があります。

書類名内容の概要
貸借対照表企業が保有する資産とその資産をどのように調達したか(負債・純資産)を一覧にした書類
損益計算書一定期間内の売上と費用を集計し、利益(損失)を算出する書類
キャッシュフロー計算書営業・投資・財務活動による現金の流れを記録し、資金の動きを把握するための書類

決算期には、売上や経費などの取引を正確に記録し、最終的な損益や資産の状況を明らかにすることが重要です。税務申告や経営判断の基礎資料として、適切な作成と管理が求められます。

参考:国税庁|記帳の仕方、決算書・申告書の作成について

④法人税等の確定申告書を作成する

決算書が完成したら、次は法人の確定申告書の作成に進みます。

法人税の申告書は種類も多く、記載内容も複雑になるため、会計ソフトを活用する方法や自力で対応する方法もありますが、専門知識が求められる部分も少なくありません。

そのため、税理士などの専門家に相談・依頼することで、スムーズかつ正確に申告手続きを進めやすくなります。

参考:国税庁| 法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)

⑤申告書を提出し、関係書類を保存する

法人税や法人住民税、法人事業税、消費税などの各種税金の申告書を作成したら、所定の税務署や都道府県・市町村の窓口へ提出する必要があります。

これらの申告および納税の期限は、原則として事業年度終了日の翌日から2か月以内です。期限を過ぎると、延滞税や過少申告加算税などが課される場合がありますので、注意が必要です。

また、税金の種類によって提出先が異なるため、申告時には宛先を確認しましょう。

企業の財務書類は、法律によって一定期間の保存が求められています。会社法では、貸借対照表や損益計算書などの計算書類は少なくとも10年間の保存が必要です。また、法人税法では、帳簿や決算関係書類は原則7年間保存することが義務付けられています。

申告書や各種届出書についても、法的な保存期間の規定はあるものの、企業の経営記録として重要な情報となるため、決算書と同様に慎重に保管することをおすすめします。

参考:国税庁| 帳簿書類等の保存期間

法人成りした年に確定申告をする際のポイント

法人成りした年に確定申告をする際のポイント

法人成りした年の確定申告では、個人事業としての期間と法人としての期間を正しく区別して申告することが重要です。ポイントは主に次の通りです。

  • 法人設立前後で売上と経費を区別する
  • 法人成り前の経費でも法人の経費になる場合がある
  • 個人事業で使用していた資産の法人への引き継ぎをおこなう
  • 役員報酬の確定申告をおこなう
  • 個人事業税の見込控除をおこなう
  • 所得税の減額申請を実施する

法人設立前後で売上と経費を区別する

法人成りした年の確定申告では、法人設立日を起点に、設立前後の売上や費用を個人事業と法人で明確に区分することが重要です。

売上や経費の区分が不明確だと、税務署から確認を受ける可能性があります。そのため、正確な帳簿記録を心がけましょう。

売上の判断基準は「収益が発生した日(サービス提供や商品の引渡し日など)」です。入金日や入金先の口座が個人か法人かに惑わされないよう注意が必要です。

例えば、7月に法人を設立した場合、6月に提供したサービスの対価が7月に入金された場合は、個人事業としての売上として計上します。
また、法人設立後に取引先への口座変更の連絡が遅れ、個人口座に振り込まれた場合でも、取引の内容や契約の状況に応じて、法人の収益として正しく処理することが必要です。

法人成り前の経費でも法人の経費になる場合がある

法人設立前に発生した支出は、すべてがそのまま法人の経費になるわけではありません。ただし、設立準備に直接関係する支出については、「創立費」として法人の資産計上や費用処理が可能な場合があります。

具体的には、以下のような支出が該当することがあります。

  • 印紙代や登録免許税
  • 弁護士・司法書士・税理士など専門家への報酬
  • 設立に関する各種手続き費用

これらの支出は、法人設立の準備活動に必要であり、将来的な事業運営や利益創出に資するものとして取り扱われます。会計上は、発生時点で一括で経費として計上する場合と、資産計上後に償却して費用化する場合がありますので、処理方法については税理士に相談することが推奨されます。

また、領収書や請求書、契約書などの証憑書類を適切に保管しておくようにしましょう。

個人事業で使用していた資産の法人への引き継ぎをおこなう

個人事業で使用していた資産を法人化後も活用する場合、一定の手続きを経て法人に移転する必要があります。

引き継ぐことができる資産には、在庫商品、事業用車両、パソコンや事務机などの備品がありますが、資産の種類や移転方法によって税務上の取り扱いが異なるため、事前に確認することが重要です。

主な移転方法としては、以下のような選択肢があります。

引き継ぎ方法内容
資産の譲渡新たに設立した法人へ資産を売却する方法
賃貸契約個人名義の資産を法人に貸し出す形で活用する方法
現物出資設立時の資本金として資産を提供する方法
贈与対価を取らず、無償で法人に資産を渡す方法

また、在庫商品を法人に移す場合は、個人事業の所得計算において棚卸資産として評価額を反映させる必要があります。パソコンや事務機器などの減価償却資産を移転する場合も、取得価額や償却残高に応じて法人側で適切に引き継ぐ手続きを行うことが求められます。

役員報酬の確定申告をおこなう

法人成り後に受け取る役員報酬についても、個人の確定申告が必要です。

個人事業主の期間中は、自分自身に給与を支払うという概念はありませんが、法人化すると会社の資金と個人の資金を明確に区別する必要があります。

そのため、法人設立日までの個人事業における収入(事業所得)と、設立後に役員として受け取る報酬(給与所得)は、それぞれ所得の種類ごとに計算したうえで、合算して確定申告をおこないます。

給与所得については、法人から交付される源泉徴収票を添付して申告書に記載する必要があります。

この手続きを忘れると、後日修正申告や追加納税が必要になる場合がありますので、注意して対応しましょう。

個人事業税の見込控除をおこなう

個人事業を廃止した年におこなう確定申告では、将来的に支払う予定の個人事業税を経費として見込額を計上することが可能です。

個人事業税は、個人事業主がその年の事業所得に応じて都道府県に納める税金で、通常は翌年に請求されますが、申告時に経費として扱うことで所得税の負担を軽減できる場合があります。

この制度を活用するには、事前に見込額を正確に算出し、それを経費として記載することが求められます。

基本的には、都道府県から届く納税通知書を基に金額を算出しますが、通知が届く前に確定申告を済ませる場合には、自ら廃業年の所得を参考にして、予測額を計算しておく必要があります。

参考:個人事業税|東京都主税局

所得税の減額申請を実施する

所得税の予定納税は、前年の所得税額が一定額を超える場合に課される仕組みです。

ただし、廃業や事業規模の縮小などで、その年の所得が大きく減少する見込みがある場合には、「予定納税の減額申請」を税務署に提出することで、納税額の減額や免除が認められる場合があります。

すでに予定納税を行っていて、実際の所得税額がその金額を下回った場合には、過剰に納めた分について還付を受けることが可能です。なお、減額申請や還付には所定の手続きが必要であり、税務署の判断によって認められるため、申告前に正確な所得計算を行い、早めの申請をおすすめします。

参考:国税庁|予定納税

個人事業主が法人成りする際の注意点

個人事業主が法人成りする際の注意点

個人事業主が法人成りする際の注意点については、以下の2つが挙げられます。

  • 法人化後の事業形態の変更には手続きが必要
  • 法人成り後の税務処理には注意が必要

法人化後の事業形態の変更には手続きが必要

個人事業主が法人成りする際の注意点の一つとして、法人化後に再び個人事業として活動を始める場合には、一定の手続きや費用が必要になる点が挙げられます。

法人を解散して個人事業に戻す場合には、会社の解散・清算手続きを適切に実施する必要があります。また、会社を閉じた事実を株主や取引先など関係者に正式に通知するため、官報での公告などの手続きも求められます。

これらの手続きには時間や労力がかかるほか、一定の費用も発生するため、法人化やその後の事業形態については慎重に検討することが重要です。

参考:官報

法人成り後の税務処理には注意が必要

法人成りの際には、個人事業と法人で課税体系が異なるため、個人としての事業を正式に終了する必要があります。

個人事業から法人へ移行する際には、資産の移転や廃業手続きなど、税務上の確認が重要です。例えば、個人所有の資産を法人に引き継ぐ場合、資産の種類や評価方法によっては譲渡所得が生じるケースがあります。

また、手続きが適切に行われていない場合には、後日、個人・法人それぞれの税務上で指摘を受ける可能性があるため、正確な手続きを心がけることが大切です。

法人成りを検討する際には、税務上のリスクや資産移転の方法を専門家に相談しながら進めることをおすすめします。

法人成り後の確定申告はしっかりとおこなおう!

法人成り後の確定申告はしっかりとおこなおう!

今回は、法人成り(法人化)した年の確定申告の必要性について解説しました。

法人化を進める際には、確定申告のほかにもさまざまな手続きが必要です。それぞれの手続きを漏れなく進めることが、トラブルを避けるうえで重要です。

もし確定申告を期限内に行わなかった場合、延滞税や無申告加算税などの追加の税負担が生じる可能性があります。事前に申告期限を確認し、余裕を持って準備を進めることをおすすめします。

この記事を参考に、法人成り後の確定申告について理解を深め、適切な手続きをおこないましょう。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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