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創業融資
自己破産後でも日本政策金融公庫から融資は受けられる?債務整理との違いについても解説

読了目安時間:約 8分
自己破産を経験した方であっても、一定の条件を満たせば新たに創業資金の融資を受けられる可能性があります。
たとえば、日本政策金融公庫は中小企業や個人事業主の事業立ち上げ・継続を支援するための公的金融機関であり、事業計画や資金使途が明確であれば、融資の相談をすることが可能です。
ただし、融資の可否は「信用情報の状況」「自己破産からの経過年数」「提出する事業計画の実現性」などによって大きく左右されます。そのため、自己破産後すぐに融資が受けられるわけではなく、状況に応じた準備が必要です。
本記事では、自己破産後に日本政策金融公庫へ融資相談をする際の留意点について解説します。
また、実際に融資が認められたケースの概要融資を検討する際に整えておきたいポイントについてもご紹介しますので、自己破産後の資金調達でお悩みの方は参考にしていただけたら幸いです。
目次
自己破産後でも日本政策金融公庫から融資は受けられる?

自己破産後でも、日本政策金融公庫の融資を受けられる可能性はゼロではありません。
ただし、破産手続きが終了した直後は、融資審査において厳しく見られる傾向があるため、資金調達のハードルが上がる場合があります。
審査では一般的に、申込者の返済能力を確認するために信用情報が参照されます。信用情報には、クレジットカードやローンの利用履歴に加えて、自己破産や債務整理に関する記録も含まれるため、融資判断に影響を与える可能性があります。
一方で、自己破産の履歴があるからといって必ずしも融資が不可能になるわけではありません。現在の収支状況や返済能力、事業計画の実現性など、総合的な要素を踏まえて判断されます。
そのため、自己破産の経験がある方が創業融資を検討する際には、いきなり単独で申請するのではなく、事業計画書の作成や資金繰り計画を税理士などの専門家と整理した上で、公庫へ相談・申請することをおすすめします。
参考:日本政策金融公庫|融資制度を探す
自己破産と債務整理の違い

自己破産とは、借金の返済が極めて困難な状況にある場合に、裁判所へ申し立てを行い、認められれば一定の債務について返済義務が免除される手続きです。
クレジットカードの利用による負債や住宅ローン、奨学金、家賃・携帯料金の滞納分などが対象となることもありますが、税金や養育費などの「非免責債権」は原則として免除されません。
裁判所が免責を認めた場合、その対象となった債務の支払い義務はなくなります。
一方、債務整理とは、借金の返済が難しくなった場合に、法的または私的な手続きを通じて返済負担を軽減・整理する方法の総称です。自己破産のように裁判所を通す手続きも含まれますし、任意整理のように債権者と話し合って返済条件を変更する方法もあります。
手続きの種類によっては裁判所への書類提出や法的なルールの遵守が求められるため、専門家のサポートを受けることで適切に進めやすくなります。
参考:金融庁|多重債務者相談マニュアル
自己破産を検討すべきケース
自己破産を検討すべきケースとして、収入がほとんどなく、今後の返済が現実的に難しい場合などが挙げられます。
この制度を利用すると、多くの借金について返済義務が免除される可能性があります。ただし、税金や養育費など一部の債務は免責の対象外となる点に注意が必要です。
また、任意整理のように特定の借金だけを対象にすることはできず、原則としてすべての債務が手続きの対象となります。さらに、マイホームや高額な財産は処分の対象になる可能性がありますが、生活に必要な一定の財産(自由財産)は手元に残せます。
そのため、資産をお持ちの方は、メリットとデメリットを十分に比較・検討したうえで、専門家に相談しながら判断することが重要です。
任意整理を検討すべきケース
任意整理は、弁護士が債権者と交渉することにより返済額を減額してもらう手続きです。
借金が返済できる見通しが立たなくなっている人や一部の借入先だけでも返済条件を見直したい人は、任意整理により利息制限法に基づき利息を再計算することで、月々の返済額を抑えられる可能性があります。ただし、元本自体が大幅に減額されるわけではなく、借入額が多い方の場合は別の手続き(個人再生や自己破産)を検討する必要が出てくる場合もあります。
いずれの手続きが適しているかは、収入や負債額、今後の返済可能性などを踏まえて判断されますので、専門家に相談すると安心です。
参考:金融庁|任意整理のイメージ
自己破産後も可能な日本政策金融公庫の融資

自己破産後でも、日本政策金融公庫から融資を受けられる可能性があります。代表的なものとして、次の2種類があります。
- 創業融資
- 再チャレンジ支援融資(再挑戦支援資金)
それぞれの融資について解説していきます。
創業融資
過去に自己破産を経験した方でも、申立てから7年〜10年ほど経過し、信用情報機関に登録されていた「事故情報」が削除されていれば、日本政策金融公庫の創業支援融資の利用を検討できる場合があります。ただし、最終的な融資可否は、事業計画や収支見通しなどの審査結果によって判断されます。
創業融資制度は、これからビジネスを立ち上げる方や、創業後間もなく確定申告が2期未満の方を対象に設けられた制度です。担保や保証人が不要の場合もありますが、制度や条件によっては必要になることがあります。融資期間は、最大で5年間の据置期間を設けた長期的な資金調達が可能です。
特に、新規開業・スタートアップ支援資金は、過去に事業を廃業した経験がある方でも、新たに事業を始めたい方を支援する制度で、再チャレンジを後押しする内容となっています。信用情報が回復し、事業計画がしっかりしていれば、過去に債務整理を行った方でも、再スタートのための資金調達を検討できる可能性があります。
参考:日本政策金融公庫|新規開業・スタートアップ支援資金
再チャレンジ支援融資(再挑戦支援資金)
日本政策金融公庫の「再チャレンジ支援融資(再挑戦支援資金)」は、過去の事業での廃業や経営上の失敗からの再出発を支援する制度です。
利用できるのは、廃業歴を持つ個人事業主や、そうした経歴を持つ経営者が代表を務める法人ですが、申込みの可否は審査により決まります。
主な申込み条件は以下の通りです。
- 廃業歴等を有する個人または廃業歴などを有する経営者が営む法人であること
- 廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込みなどであること
- 廃業の理由・事情がやむを得ないものなどであること
融資の対象は設備資金および長期的な運転資金で、据置期間は条件により最大2年となります。
融資額は審査や条件により異なりますが、最大で7億2,000万円まで申込み可能です。
参考:日本政策金融公庫|再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)
自己破産後に日本政策金融公庫の融資を受けられたケース

自己破産後でも、日本政策金融公庫の創業融資を受けられる場合があります。ただし、融資の可否は個別の審査によって決まるため、誰でも受けられるわけではありません。
過去の事例としては、以下のような場合に融資が認められたケースがあります。
- 信用情報に登録されていた事故情報が削除されていた
- 自己資金をある程度確保していた
ただし、これらはあくまで一例であり、融資の審査では事業計画や返済能力など複数の要素が総合的に判断されます。それぞれのケースについて解説していきます。
信用情報に登録されていた事故情報が削除されていたケース
自己破産後に日本政策金融公庫の創業融資を受けられたケースとして、信用情報履歴が削除された例があります。
信用情報は、金融機関が融資審査を行う際の重要な判断材料のひとつです。そのため、信用情報に自己破産の記録が残っていない場合、審査における影響が少なくなる可能性があります。
一般的な信用情報機関における自己破産情報の保存期間は以下の通りです。
信用情報機関名 | 自己破産情報の保有期間 |
---|---|
CIC(株式会社シー・アイ・シー) | 契約中および完了から5年以内 |
JICC(株式会社日本信用情報機構) | 契約中および完了から5年以内 |
全国銀行個人信用情報センター(全銀協) | 破産手続き開始決定日から最大7年以内 |
上記は目安であり、個別の手続き状況や契約内容により前後する場合があります。
なお、日本政策金融公庫の融資審査では、信用情報だけでなく、事業計画や収支見通し、自己資金の有無などを総合的に判断します。そのため、過去に破産を経験していても、信用情報に問題がなければ融資が受けられる可能性はありますが、必ずしも承認されるわけではありません。
自己資金をある程度確保していたケース
過去に自己破産を経験した方でも、日本政策金融公庫の創業融資を検討できるケースがあります。そのひとつとして、自己資金を十分に準備できている場合が挙げられます。
自己資金とは、これから始める事業に対して自身で用意した資金のことで、金融機関にとっては融資審査の際に重要な評価項目のひとつです。そのため、自己資金をある程度確保していた場合には信用力の一つとして評価される場合があります。
ただし、過去の破産歴がある場合は、審査は慎重に行われます。自己資金が多いことは評価の一要素にはなりますが、融資可否は事業計画や返済能力なども総合的に判断されるため、必ず融資が受けられるわけではありません。
参考:自己資金の準備 | 起業マニュアル – J-Net21 – 中小機構
自己破産後に日本政策金融公庫の融資を受けるコツ

自己破産を経験した方でも、日本政策金融公庫の融資を受けられる可能性があります。ただし、過去の破産歴がある場合、融資の審査は厳しくなるため、注意が必要です。
融資を検討する際には、以下のポイントが参考になります。
- 自己破産に至った経緯を整理する
- 自己資金をできるだけ確保する
- 根拠ある事業計画書を作成する
- 資金使途を明確にする
- 面談対策をおこなう
- 専門家からのサポートを受ける
それぞれ詳しく解説していきます。
自己破産に至った経緯を整理する
自己破産の経験がある場合は、過去の経緯や理由について整理し、必要に応じて適切に説明できる準備をしておくことが重要です。
例えば、破産に至った経緯やその後の生活・経済状況の立て直しについて、事実を簡潔にまとめておくと、金融機関や関係者とのやり取りがスムーズになる場合があります。
また、再出発に向けた具体的な計画や対応策を示すことで、誠実さや前向きな姿勢を伝えやすくなります。
自己資金をできるだけ確保する
自己破産を経験した後でも、計画的に資金を積み立ててきたことは、再出発に向けた姿勢や生活基盤の安定性を示すひとつの目安となります。
創業に必要な資金の一部を自己資金で準備しておくことは、金融機関からの評価においてプラスに働く場合があります。
また、地道に貯金を続けてきたことを示す通帳のコピーなどは、必要に応じて提出できる資料のひとつです。
根拠ある事業計画書を作成する
創業融資の審査では、事業計画書の内容が重要な評価材料となります。そのため、計画書には売上予測や経費の内訳、競合環境の分析など、具体的な数字や根拠を示すことが望ましいです。
例えば、売上見通しは市場規模や過去のデータ、ターゲット層の動向に基づいて算出し、経費については仕入れや人件費、家賃などの見積もりを明確に記載します。また、競合分析では同業他社の価格帯やサービス内容を比較することで、自社の強みや戦略を示すことが可能です。
公的機関が提供する統計データ(総務省の統計、経済産業省の白書など)を活用すると、計画書の信頼性が高まります。税理士に相談することで、数値の根拠を整理したり、説得力のある計画書作成をサポートしてもらうことも可能です。
参考:日本政策金融公庫|各種書式ダウンロード
資金使途を明確にする
創業融資を申請する際には、調達した資金を「何に・いつ・どれだけ使うのか」をできるだけ具体的に示すことが重要です。
金融機関にとって、資金の使途が明確でないと返済能力の評価が難しくなる場合があります。
例えば、設備導入や店舗内装にかかる費用については、施工業者からの見積書を添付すると説明がしやすくなります。また、仕入れ費や広告宣伝費についても、具体的な業者プランや見積資料を示すことで、計画の説得力を高めることができます。
個人事業主の場合は、事業用資金と生活費を混同しないよう管理することが大切です。法人の場合は、法人名義での見積書や請求書を整備し、法人口座を通じて資金の流れを管理することで、金融機関にとって信頼性の一つとなります。
面談対策をおこなう
面談では、提出した事業計画書の内容をそのまま読むのではなく、要点を整理して自分の言葉で説明できると理解が伝わりやすくなります。
面談に向けては、想定される質問をまとめておくと回答の準備がしやすく、必要に応じて模擬面談を行うのも有効です。
回答の際には、誠実さや真剣さを示しながら、落ち着いて論理的に説明することを意識すると、面談官に理解してもらいやすくなります。
専門家からのサポートを受ける
自己破産後に日本政策金融公庫から融資を検討する場合、専門家に相談することが有効です。
具体的な相談先としては、以下が挙げられます。
- 税理士
- 中小企業診断士
- 行政書士
- 商工会議所・商工会
第三者の視点から計画内容について助言を受けることで、融資申請書類の信頼性を高めることができます。
また、融資サポートを行う税理士の場合、資金計画に関するアドバイスだけでなく、会社設立や経理・税務の実務面での支援も可能です。設立後も税務申告や経営に関する相談を継続的に行える場合があります。
参考:税理士法人松本
自己破産後に日本政策金融公庫の融資を受ける際の注意点

自己破産後に日本政策金融公庫の融資を受ける際には、以下の2点に注意することが重要です。
- 見せ金をしない
- 必要な額を適切に見積もる
それぞれの注意点について解説していきます。
見せ金をしない
自己資金を多く見せる目的で、一時的に第三者から資金を借り入れ、融資実行後にすぐ返済するような取引は「見せ金」と受け取られることがあります。
金融機関は入出金の履歴や資金の出所を確認することが多く、短期間での不自然な入金・出金があると審査上の説明を求められる可能性があります。
このような行為は審査上の評価を下げる要因になりかねません。場合によっては融資判断に不利に働くことも考えられるため、安易な資金の見せ方は避け、正当な自己資金の準備と透明性のある資金計画を優先してください。具体的な対応策や書類の整え方については、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
必要な額を適切に見積もる
日本政策金融公庫の融資を申し込む際は、必要な資金額を明確にして申請することが重要です。
融資申請では、資金の使途やその根拠を具体的に示すことで、金融機関に納得感のある融資計画を伝えることができます。
また、返済負担や事業計画に無理が生じないよう、必要額を慎重に検討することが大切です。
具体的には、設備費や内装費、人件費など、用途ごとに必要な金額を細かく計算することで、説得力のある融資希望額を算出できます。
さらに、予期せぬ支出に備えて、ある程度の余裕を見込んだ資金計画を立てることも推奨されます。必要に応じて税理士や金融機関の担当者に相談しながら進めると、より安心です。
参考:日本政策金融公庫|創業計画の書き方
融資を受けるにはしっかりとした事業計画が必要!

自己破産を経験した方は、創業融資の審査において一定の制約がある場合があります。しかし、過去の事例を見ると、一定期間が経過していることや、地道に自己資金を積み立てていることなどが審査の参考になるケースもあります。
日本政策金融公庫の創業融資では、具体性と実現性のある事業計画の作成が重要です。自己破産の履歴がある場合でも、事業計画の内容や資金計画をしっかり示すことで、審査の検討対象となる可能性があります。
この記事を参考に、融資を検討される際は、信頼性の高い事業計画を準備し、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。