2025.10.7

会社設立

マイクロ法人で社会保険料の負担は減らせる?方法やタイミングについても解説

マイクロ法人 社会保険料

読了目安時間:約 6分

近年、フリーランスや個人事業主が法人化(いわゆるマイクロ法人設立)を検討するケースが増えています。

ただし、マイクロ法人を通じて厚生年金に加入する場合には、メリットだけでなく注意点も存在します。制度の仕組みや影響を正しく理解することが重要です。

本記事では、マイクロ法人における社会保険料の取り扱いや、負担の仕組みについて解説します。

制度の特徴を理解したうえで、自社に合った方法を検討する参考としてご活用ください。

マイクロ法人で社会保険料の負担は減らせる?

マイクロ法人で社会保険料の負担は減らせる?

マイクロ法人を活用することで、社会保険制度の仕組みを活用し、個人事業主の場合と比較して制度上のメリットを受けられる場合があります。

通常、個人事業主は国民健康保険と国民年金に加入し、所得に応じて保険料が決まります。一方、法人を設立し、経営者が役員報酬を受け取る形にすると、健康保険(協会けんぽなど)や厚生年金に加入できるようになります。

社会保険料は役員報酬に基づき算定されますので、報酬額の設定や家族の扶養状況に応じて、負担額の調整や節税の効果が得られる場合があります。ただし、報酬の設定には「定期同額給与」のルールがあり、法令に沿った適切な範囲で行う必要があります。

具体的には、次のようなメリットがあります。

  • 保険料の算定基礎が法人制度に沿って計算される
  • 家族を被扶養者として社会保険に加入させられる場合がある

それぞれの項目について解説していきます。

保険料の算定基礎が法人制度に沿って計算される

社会保険料は、実際の給与額をもとに決まる「標準報酬月額」に基づいて算出されるため、収入が高いほど保険料の負担も大きくなります。逆に、収入が少なければ支払い額も抑えられる仕組みです。

個人事業主の場合、一定以上の所得があると、国民健康保険や国民年金の負担が高くなる傾向があります。

しかし、法人を設立し、役員報酬を設定することで社会保険料の負担額を調整できる場合があります。ただし、報酬を低く抑えすぎると将来受け取る年金額が減少するなど、老後の生活に影響が出るリスクもあります。

そのため、社会保険制度の活用を検討する際は、短期的な負担軽減だけでなく、長期的な生活設計や年金額への影響も考慮することが重要です。

参考:全国健康保険協会|標準報酬月額・標準賞与額とは?

家族を被扶養者として社会保険に加入させられる場合がある

個人事業主として活動している場合、原則として国民健康保険や国民年金に加入する必要があります。

一方、法人を設立し、法人の代表者として役員報酬を受け取る形にすれば、厚生年金や協会けんぽなどの社会保険制度に加入できます。
社会保険料は、給与(標準報酬月額)に応じて計算されるため、扶養家族の人数にかかわらず保険料が増減することはありません。この仕組みは、国民健康保険のように扶養家族の人数によって保険料が変わる制度とは異なります。

ただし、法人設立や社会保険加入にはコストや手続きが伴いますので、扶養家族が多い場合でも単純に経済的に有利になるとは限りません。加入の可否やメリット・デメリットについては、税理士や社会保険労務士に相談することをおすすめします。

参考:全国健康保険協会|協会けんぽと社会保険・医療制度について

マイクロ法人で社会保険料を節約する方法

マイクロ法人で社会保険料を節約する方法

マイクロ法人を活用した場合、社会保険料の負担や税金の計算方法に影響が出ることがあります。

具体的な節約方法については、個々のケースによって最適な方法が異なるため、税理士など専門家に相談することが重要です。

一般的なポイントとしては以下のような点が挙げられます。

  • 役員報酬を月額48,000円以下に設定する
  • 法人の所得を90万円以下にする
  • 収入源を法人からの役員報酬と個人事業の売上に分ける

それぞれについて解説していきます。

役員報酬を月額48,000円以下に設定する

マイクロ法人の経営者が加入する社会保険料は、原則として役員報酬の額を基準に算定されます。
そのため、役員報酬の金額が高いほど保険料も高くなる傾向があります。
逆に、報酬が比較的低い場合は、保険料の負担も相応に抑えられる仕組みです。

例えば、役員報酬が月48,000円以下であれば、全国健康保険協会が提示する「標準報酬月額」の最低等級に該当し、保険料が最も低い区分に分類されます。

ただし、報酬を極端に低く設定すると、生活費の確保に支障が出る場合があります。
役員報酬の額は、法人の財務状況や個人の生活費、今後の社会保険料負担などを総合的に考慮して決定することが大切です。

参考:国税庁|No.5211 役員に対する給与

法人の所得を90万円以下にする

マイクロ法人の運営において、税金や社会保険料の負担をできるだけ軽減するには、法人の課税所得を年間90万円以下に抑える方法が効果的です。

法人の所得が年間90万円以内であれば、法人税や地方法人税、法人住民税といった課税項目の合計額を最小限に抑えられる場合があります。

法人税や地方法人税、法人住民税は、法人の所得や資本金の状況に応じて計算されます。赤字であっても法人住民税の均等割は発生しますが、その他の税負担は所得の額に応じて変動するため、年間の法人維持コストを抑えることも可能です。

このように、法人の売上から経費および役員報酬を差し引いた結果、課税所得を90万円以下に抑えることは、マイクロ法人を社会保険料対策として有効活用する上で有効です。具体的な金額や運営方法については、税理士など専門家に相談することをおすすめします。

収入源を法人からの役員報酬と個人事業の売上に分ける

社会保険料や税金の負担に関して、マイクロ法人と個人事業を併用する方法もあります。
この運用では、法人から受け取る役員報酬と個人事業で得る収入を分けて管理することで、報酬の設計や所得の分散により、場合によっては社会保険料や税負担の調整に役立つことがあります。

具体的には、法人からは適切な額の役員報酬を受け取り、厚生年金や健康保険に加入しつつ、実際のビジネス活動やフリーランスの仕事は個人事業主として行う、といった形です。

この方法により、法人での社会保険加入や個人事業との所得分散を活かして、税率や消費税の条件を調整するなどの工夫が可能となる場合があります。また、各種控除制度の活用範囲が広がることで、柔軟な資金設計につなげることもできます。

ただし、法人と個人の会計記録は明確に分け、税務上の整合性を保つことが必須です。運用方法によっては税務上の指摘を受ける可能性もあるため、専門家への相談をおすすめします。

マイクロ法人で社会保険料の節約効果が得やすいタイミング

マイクロ法人で社会保険料の節約効果が得やすいタイミング

マイクロ法人を活用した場合の社会保険料の影響は、個人の収入状況や扶養家族の有無によって異なります。

一般的に、法人化によって社会保険料の負担額が変わるケースとしては、例えば以下のような状況が挙げられます。

  • 扶養家族無しで年収200万円以上
  • 扶養家族がいる個人事業主

それぞれのタイミングについて解説していきます。

扶養家族無しで年収200万円以上

マイクロ法人を活用して社会保険料を抑えられる可能性があるのは、年収200万円以上の方が一つの目安とされています。

個人で国民健康保険や国民年金に加入している場合、年収が一定以上になると保険料の負担が増える傾向があります。そのため、法人化して厚生年金・健康保険に加入することで、場合によっては支出を抑えやすくなるケースがあります。

ただし、法人設立には登記費用や定款認証、印鑑作成などの初期費用が必要であり、設立後も毎年7万円前後の均等割が発生します。したがって、安定した事業収入が見込めない場合は、逆に負担が増える可能性もあります。

また、年収300〜600万円程度のフリーランスや個人事業主は、比較的マイクロ法人による社会保険料の最適化メリットを享受しやすい傾向がありますが、具体的な効果は報酬額や扶養家族の有無などによって変わるため、個別の状況に応じた検討が重要です。

扶養家族がいる個人事業主

マイクロ法人を活用する際、社会保険料の負担に影響するのが「扶養家族の有無」です。

国民健康保険には扶養という仕組みがないため、家族が増えるとその分だけ保険料が加算される場合があります。特に、配偶者や子どもが複数いる家庭では、保険料が高額になることもあり得ます。

一方、厚生年金や健康保険に加入する場合、一定の条件を満たすことで配偶者や子どもを「被扶養者」として保険に含めることが可能です。この仕組みを利用すると、家族全体の保険料の負担を抑えつつ、医療や年金面での保障を一定程度確保できます。

ただし、被扶養者と認められるには、収入や同居状況など細かな条件があります。加入を検討する際は、社会保険事務所や専門家に確認し、条件を満たしているかどうかを事前に確認することが重要です。

参考:国税庁|No.1180 扶養控除

マイクロ法人を設立する際のポイント

マイクロ法人を設立する際のポイント

マイクロ法人を設立する際のポイントについては、以下の3つが挙げられます。

  • 設立目的を明確にする
  • 個人事業主と法人の違いを把握する
  • 事前にシミュレーションをおこなう

それぞれのポイントについて解説していきます。

設立目的を明確にする

マイクロ法人を設立する際は、設立目的を明確にしておくことが重要です。

法人化には、税制上の優遇措置や社会保険への加入といったメリットがあります。しかし、「節税のみ」「保険料の負担軽減のみ」を目的に設立すると、法人運営にかかる手間やコストを十分に理解せずに進めてしまう可能性があります。

設立の目的がしっかりしていれば、一定の手間やコストがかかっても前向きに取り組むことができ、長期的に見て満足度の高い法人運営につながるでしょう。

個人事業主と法人の違いを把握する

マイクロ法人を設立する際は、個人事業主との違いを理解しておくことが重要です。

個人事業主の場合、事業で得た利益は原則として個人の所得となるため、生活費や貯蓄に充てることが可能です。ただし、税務上の記録は必要で、事業用口座と生活費口座を分ける管理が推奨されます。

一方、法人では会社の資金と個人の資金を明確に区分する必要があります。たとえ社長が1人の小規模法人であっても、会社資金を私的に流用することは原則として認められていません。会社資金を個人が使用する場合は、役員報酬や経費精算など適正な手続きを経る必要があります。

このように、法人化に伴い会計ルールや資金管理の仕組みが厳格になるため、設立前に正しい理解を持つことが大切です。

事前にシミュレーションをおこなう

マイクロ法人を設立する際には、事前に税金や社会保険料の概算を試算しておくことが望ましいです。

また、設立後にかかる維持費も把握しておくことで、予想外の出費による負担を避けやすくなります。
このようなシミュレーションはご自身でも行うことが可能ですが、マイクロ法人の制度や税務に詳しい専門家に相談することで、より正確な情報を得ることができます。

専門家に相談することで、自分では気づきにくいリスクやデメリット、税金・保険料の概算を具体的に確認でき、より現実的な判断につなげることが可能です。

特に、社会保険料の負担や税務面の取り扱いについて理解を深めたい場合は、マイクロ法人に精通した税理士や会計事務所のアドバイスを受けることをおすすめします。

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マイクロ法人の設立は入念に検討しよう!

マイクロ法人の設立は入念に検討しよう!

マイクロ法人を設立して社会保険料の負担を抑えられるケースもあります。
たとえば、役員報酬を一定水準以下に設定することで、社会保険料の計算基準となる標準報酬月額が低くなり、結果的に保険料の負担が軽くなることがあります。

ただし、法人を設立するには登記費用などの初期コストや手続きの手間がかかります。設立後も法人税の申告や社会保険の手続きなど、一定の経理・税務対応が必要です。

そのため、節税効果だけでなく、運営コストや事務負担も含めて総合的に判断することが大切です。
実際にどの程度の効果が見込めるかは、収入状況や家族構成などによって異なります。

マイクロ法人の設立を検討する際は、税理士などの専門家に相談のうえ、自身の状況に合った方法を検討することをおすすめします。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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