2025.10.14

会社設立

法人登記とは何か?個人事業主が法人登記までにやるべきことや申請方法について紹介

法人 登記 と は

読了目安時間:約 8分

会社を設立する際には、法務局で法人登記を行う必要があります。
これは、会社の名称・所在地・役員などの基本情報を国に正式に登録する手続きで、登記をもって初めて「法人」として認められるものです。

法人登記を行うことで、会社の存在が公的に証明され、取引先や金融機関からの信頼を得やすくなる傾向があります。また、将来的な資金調達や契約面でも有利に働く場合があります。

本記事では、法人登記の概要に加えて、登記までの準備事項や申請の流れについても詳しく解説します。
会社設立を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

法人登記とは何か?

法人登記とは何か?

法人登記とは、株式会社・合同会社・一般社団法人などの法人について、名称、所在地、代表者氏名、事業目的などの基本情報を法務局に登録し、社会に対して公開する制度です。

法人は、設立登記の完了をもって法人格を取得し、法律上の権利や義務の主体となる資格を得ます。この登記を行うことで、法人の存在や代表者情報が公的に確認できるようになり、取引先や金融機関などからの信頼を得やすくなる傾向があります。

登記が完了すると、法務局から「登記事項証明書(履歴事項全部証明書など)」が発行され、登記内容を正式に証明する公的書類としてさまざまな手続きに利用できます。

また、法人登記の際には実態に即した正確な情報を登録することが求められ、定款や資本金の払い込み証明書などの必要書類を提出する必要があります。

なお、虚偽の内容で登記を行った場合や、正当な理由なく登記を怠った場合には、会社法に基づき過料などの罰則が科される可能性があります。
そのため、登記内容の正確性と手続き期限の管理には十分な注意が必要です。

参考:商業・法人登記申請手続 – 法務局 – 法務省

個人事業主が法人登記までにやるべきこと

法人登記までにやるべきこと

個人事業主が法人登記までにやるべきことについては、以下の5つが挙げられます。

  1. 会社の概要を決定する
  2. 会社印を作成する
  3. 定款作成後に認証を受ける
  4. 資本金を発起人の口座に払い込む
  5. 登記申請書類の作成し法務局へ申請をおこなう

それぞれの項目について解説していきます。

①会社の概要を決定する

会社を設立する際は、まず法人登記に必要となる基本情報を整理します。
この段階で検討すべき主な項目は次のとおりです。

  • 会社名(商号)
  • 事業内容(定款に記載する目的)
  • 本店所在地
  • 資本金の額
  • 設立日(登記申請日)
  • 株主および役員の構成
  • 会計年度(決算期)

とくに会社名(商号)を決める際は、他社と紛らわしい名称を避けることが大切です。既存の商号と類似していないかどうかを調べるには、法務省が提供するオンライン検索サービスの活用や、所轄の法務局に設置されている専用の検索端末を使って確認することができます。

税理士に相談すれば、登記に必要な情報整理や資本金の設定、定款作成の流れも併せてサポートしてもらうことが可能です。

②会社印を作成する

2015年の制度改正により、法人設立の登記申請をオンラインで行う場合は、法人印(代表者印)の提出が不要となりました。
ただし、実際のビジネスの現場では、印鑑を求められる場面が今なお多くあります。
たとえば、金融機関での融資手続きや、取引先との契約書への押印などが代表的です。

そのため、社名が決定した段階で法人印を用意しておくことが望ましいでしょう。法人印には主に次の3種類があります。

  • 代表者印(実印):登記や重要な契約など、会社を代表して押印する際に使用
  • 銀行印:法人口座の開設や金融機関との取引で使用
  • 角印:請求書や見積書など、社外文書への押印に使用

電子契約の導入が進んでいるとはいえ、多くの企業ではこれらの印鑑を揃えておくことで、各種手続きや取引にスムーズに対応できます。

③定款作成後に認証を受ける

次に、会社の基本ルールを定める「定款」を作成します。

定款は、会社の運営ルールをまとめた重要な書類で、前の段階で決定した会社情報をもとに内容を整理します。定款には、法的に必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」があり、主に以下の5点が該当します。

  • 発起人の氏名および住所
  • 商号(会社名)
  • 事業目的
  • 本店所在地
  • 出資される財産の額、または最低額

作成した定款は、公証人による確認(認証)が必要です。公証役場に提出し、内容や添付書類に問題がなければ認証手続きが進みます。ただし、書類不備や役場の混雑により時間がかかる場合もあるため、余裕をもって準備することが大切です。

なお、定款の作成や認証に不安がある場合は、税理士や司法書士などの専門家に相談すると、手続きの正確性やスムーズさを確保できます。(合同会社は認証不要です。)

参考:日本公証人連合会|定款等記載例(Examples of Articles of Incorporation etc)

④資本金を発起人の口座に払い込む

定款の認証手続きが完了した後、発起人は自らが引き受けた株式に応じた資本金を入金する必要があります。

この時点では法人登記がまだ完了していないため、会社名義の口座を開設できないケースが一般的です。その場合は、発起人の個人名義口座に一時的に入金し、資本金の払込を行います。

次の法人登記申請では、資本金の払込みが確かに行われたことを示す書類が必要です。入金後は、以下の書類を準備しておきましょう。

  • 通帳の表紙
  • 表紙をめくった最初のページ(口座名義と番号の記載ページ)
  • 資本金の振込が記帳されているページ

これらのページをコピーした上で、「払込証明書」を作成します。必要に応じて発起人の署名や押印を行い、資本金の払込を正式に記録する重要書類として保管してください。

⑤登記申請書類の作成し法務局へ申請をおこなう

資本金の払込みが完了したら、次に法人設立の登記申請を進めます。

登記申請に必要な書類を準備し、管轄の法務局に提出することで、会社は正式に法人格を取得できます。

登記完了後は、税務署や都道府県・市区町村の社会保険関連機関へ各種届出が必要です。

また、従業員を雇用する場合は、労災保険・雇用保険の加入手続きを速やかに行う必要があります。設立直後の対応を早めに行うことで、後の手続きがスムーズになります。

参考:法務局|商業・法人登記の申請書様式

法人登記に必要な書類

法人登記に必要な書類

法人登記を申請する際、株式会社なら代表取締役が、合同会社なら代表社員が申請人となるのが基本です。

具体的に、法人登記に必要な書類については、以下が挙げられます。

書類内容
設立登記申請書商号、本店所在地、登録免許税、添付書類一覧などを記入する様式です。法務局のWebサイトで所定の様式を入手可能です。
登録免許税納付用台紙登録免許税を支払うためのA4台紙です。所定の収入印紙を貼って提出します。株式会社の場合、通常「資本金 × 0.7 %」の額ですが、それが15万円未満なら一律で15万円になります。
定款の謄本認証済みの定款の写しが必要です。
発起人の同意書(発起人決定書・発起人会議事録など)発起人全員が会社設立にあたって諸決定をおこなったことを証明する書類です。
代表取締役の就任承諾書代表取締役就任に同意する旨を記した書類です。取締役が1名の場合は、設立時の取締役就任承諾を兼ねることもあります。
取締役の就任承諾書取締役に就任する旨の合意を示す書面で、複数名いる場合は人数分用意します。
監査役の就任承諾書監査役を設置する場合に必要な同意書で、設置しない会社では提出不要です。
取締役の印鑑証明書設立時取締役の実印登録を証明する書類で、発行から3か月以内のものが有効です。取締役が複数いる会社で、取締役会を設置しない場合は全員分、設置している場合は代表取締役のみ必要です。
出資金(資本金)の払込証明書定款記載どおりの資本金が払い込まれたことを証明する書類です。通帳の表紙、最初のページ、入金記録のあるページをコピーして作成します。
印鑑届書法人実印を法務局に届け出るための書類です。登記申請時に合わせて提出することが多いですが、後日提出することも可能です。
登記すべき事項を記録した別紙または記録媒体定款に記載されていない事項を補足するための資料です。書面形式のほか、CD‑RやDVD‑Rの媒体で提出することも認められています。

登記申請の際は、上記の書類を確認し、必要に応じて準備することが重要です。不明点がある場合は、税理士や専門家に相談すると安心です。

参考:商業・法人登記の申請書様式 – 法務局

法人登記に必要な費用

法人登記に必要な費用

会社設立の際には、法務局への登記申請とあわせて登録免許税の納付が必要です。税額は会社の形態や資本金の額によって異なります。

株式会社の場合、登録免許税は原則として資本金の0.7%で計算されます。ただし、資本金の額にかかわらず、最低15万円は納める必要があります。

合同会社の場合も同様に資本金の0.7%を目安として計算しますが、こちらは最低6万円が納付額の下限となります。

さらに、会社が本店以外に支店を設置する場合には、1支店ごとに登録免許税が別途必要になる場合があります。支店の設置を検討している場合は、事前に必要な税額を把握しておくことが大切です。

参考:国税庁|No.7191 登録免許税の税額表

法人登記を申請する方法

法人登記を申請する方法

法人登記を申請する方法については、以下の3つが挙げられます。

  • 方法①:法務局の窓口
  • 方法②:オンライン
  • 方法③:郵送

それぞれの方法について解説していきます。

参考:商業・法人登記申請手続 – 法務局 – 法務省

方法①:法務局の窓口

法人登記の申請は、管轄の法務局に直接出向いて書類を提出する方法で行うことができます。

窓口で職員に書類を確認してもらえるため、手続きに不安がある方や初めて登記を行う方でも安心です。

書類に不備がなければ、通常は申請から概ね1〜2週間程度で登記が完了することが多いですが、状況によっては期間が前後する場合があります。

登記完了の通知は届かない場合もあるため、申請後は自身で状況を確認することをおすすめします。
もし書類に不足や誤りが見つかった場合には、法務局から修正の連絡があります。指摘内容に沿って期限内に修正・再提出することで、手続きを進めることができます。

方法②:オンライン

オンラインで法人登記を申請する場合は、法務局が提供する電子申請システム「登記ねっと・供託ねっと」を利用します。
この方法では、自宅やオフィスから手続きを進めることが可能で、紙の申請書を法務局に直接持参する手間を軽減できます。ただし、添付書類の準備や電子署名の取得などが必要で、手続き完了までに一定の時間がかかる点に注意が必要です。

電子申請を行うには、専用の申請ソフトのダウンロードと、個人または法人の電子証明書の利用が必要です。また、ICカードリーダーなどの機器が必要な場合があります。

申請内容に不備や不足がある場合、システムを通じて補正の通知が届きます。その際は、オンライン上での補正のほか、法務局へ補正書を提出する方法(持参または郵送)でも対応できる場合があります。

方法③:郵送

法人登記の申請方法として、必要書類を所轄の法務局に郵送で提出することも可能です。

郵送する際は、簡易書留や特定記録郵便など、配達状況を確認できる方法を利用すると安心です。
特に法務局が遠方にある場合や、直接訪問が難しい場合には有効な手段となります。

登記完了までの期間は、申請内容や法務局の状況により異なりますが、目安として窓口申請と同程度の期間がかかることが一般的です。

提出書類に不備があった場合は、法務局からの連絡に従い、追加書類の提出や修正手続きを行う必要があります。

法人登記後にやるべきこと

法人登記後にやるべきこと

法人登記の書類を提出した後、通常は法務局での審査が行われ、問題がなければ登記手続きが完了し、法人として正式に設立されます。ただし、万が一不備があった場合は、法務局から連絡が来る場合がありますので注意が必要です。

登記完了後は、法人としての各種手続きを速やかに進めることが重要です。主な手続きは以下の通りです。

  • 健康保険・厚生年金など社会保険の加入手続き
  • 税務署や自治体などへの法人設立届出書の提出
  • 法人口座の開設
  • 法人名義のクレジットカード申請

特に社会保険については、「健康保険・厚生年金保険新規適用届」など、一部の書類は会社設立日から5日以内に提出する必要があります。そのため、登記申請と同時に準備を進めておくとスムーズです。

また、法人設立届出書の提出先には、税務署だけでなく都道府県税事務所や市区町村役場などもあり、提出期限や提出方法は機関ごとに異なります。各手続きを滞りなく行うためにも、事前に各機関の公式情報を確認して準備しておくことをおすすめします。

参考:日本年金機構|事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき

法人登記後に変更登記をおこなう必要があるケース

法人登記後に変更登記をおこなう必要があるケース

法人登記後に会社の情報に変更が生じた場合は、「変更登記」の手続きを行う必要があります。

変更登記が必要になる主なケースは以下の通りです。

  • 商号(社名)を変更した場合
  • 本店の所在地を移転した場合
  • 代表取締役の住所が変わった場合
  • 事業目的を変更したり、新たに事業を始めた場合
  • 取締役や監査役の異動があった場合
  • 法人を解散する場合

変更登記は、法人登記と同様に「法務局の窓口」「郵送」「オンライン申請」のいずれかで行うことができます。
なお、変更登記には申請期限が定められており、原則として変更日から2週間以内に申請する必要があります。期限を過ぎると過料が科される場合がありますので、早めの対応が望ましいです。

株式会社の場合、会社法上、取締役などの任期や登記事項の変更に関する規定があり、変更登記は事業運営上も重要です。会社情報に変更があった際は、適切なタイミングで手続きを行うことをおすすめします。

参考:法務省|スマート変更登記のご利用方法

法人登記をする際の注意点

法人登記をする際の注意点

法人登記をする際の注意点として、以下の3つが挙げられます。

  • 申請書類の不備が無いようにする
  • 収入印紙の貼り付けをする
  • 連絡先電話番号の記載をする

それぞれの注意点について解説していきます。

申請書類の不備が無いようにする

法人登記の申請でよく見られるトラブルの一つは、提出書類の不備です。

小さな記入ミスや情報の不一致であっても、法務局から修正の依頼が届くことがあります。その場合、修正後に再提出する必要があるため、会社設立のスケジュールに若干の調整が生じることがあります。

特に、住所や氏名の表記は印鑑証明書の内容と揃えることが重要です。異体字や表記の違いも、場合によっては確認を求められることがありますので、注意して記入しましょう。

収入印紙の貼り付けをする

登録免許税を収入印紙で納める際は、金額や貼付方法に注意が必要です。

収入印紙の貼り忘れや貼付ミスがある場合、法務局から補正の指示が入ることがあります。

株式会社や合同会社を設立する際には、登録免許税の額に応じた収入印紙を用意する必要があります。株式会社の場合は通常15万円前後、合同会社の場合は6万円前後が目安となりますが、資本金や設立方法により異なる場合があります。

収入印紙は郵便局や一部の法務局内売店で購入できます。申請書に貼付する際は、指定された箇所に正しく貼ることが大切です。また、消印の位置や方法にも注意し、貼付前に金額や位置を確認して作業を行いましょう。(オンライン申請では電子納付も可能です)

参考:国税庁|No.7191 登録免許税の税額表

連絡先電話番号の記載をする

登記申請書には連絡先電話番号を記入する欄があり、申請後に法務局から補正の依頼があった場合の連絡先として使用されます。

そのため、日中に比較的連絡が取りやすい電話番号を記載することが望ましいでしょう。
つながりにくい番号や、不在がちな連絡先は避けることをおすすめします。

書類に不備がある場合、法務局から電話や文書で連絡が入ることがあります。連絡を受けた際には速やかに対応することで、会社設立の手続きへの影響を最小限に抑えやすくなります。

また、登記手続きを司法書士に依頼している場合は、本人の代わりに司法書士の連絡先を記載するのが一般的です。

参考:商業・法人登記の申請書様式 – 法務局

不備が無いように確認しながら準備しよう!

不備が無いように確認しながら準備しよう!

今回は、法人登記とは何かについて紹介しました。

法人登記とは、会社やその他の法人を設立する際に必要となる法的手続きです。

登記申請の方法には、法務局への直接提出、郵送、オンライン申請などがあります。
また、登記に必要な書類は種類が多く、内容の正確さも求められるため、提出前には細部まで入念に確認し、不安な場合は税理士など専門家に相談しながら準備を進めることをおすすめします。

今回の記事を参考に、法人登記では不備がないよう丁寧に準備を進めましょう。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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