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起業・開業
一般社団法人で起業するメリット・デメリット!株式会社との違いや税制優遇を解説
読了目安時間:約 15分
「社会課題を解決する事業を立ち上げたい」「コミュニティ運営や資格認定ビジネスを始めたい」と考えたとき、選択肢として浮かぶのが一般社団法人です。
しかし、いざ一般社団法人での起業を検討し始めると、「株式会社と何が違うのだろうか?」「非営利法人ということは、ビジネスとして儲けてはいけないのだろうか?」といった疑問を抱く経営者や起業準備中の方は少なくありません。
結論から申し上げますと、「非営利」とは「利益を出してはいけない」という意味ではありません。事業活動を通じて利益を出すこと自体は全く問題なく、法人の存続や事業の継続にはむしろ不可欠な要素です。
非営利の本当の意味は、「事業で得た利益(剰余金)を、設立者や社員などの構成員に配当・分配してはならない」という原則にあります。利益の分配が禁止されているだけであり、法律に抵触しない限りあらゆる収益事業を展開できます。また、理事への適正な役員報酬や従業員への給与は、通常の経費として支払うことが可能です。
起業の際、多くの方が比較検討する株式会社と一般社団法人には、設立要件や初期費用にいくつかの明確な違いがあります。以下の表は、代表的な違いをまとめたものです。
| 比較項目 | 一般社団法人 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 設立コストの目安 | 約11万2,000円〜 | 約20万2,000円〜 |
| 利益の配当・分配 | 不可(非営利の原則) | 可能(株主への配当) |
| 設立に必要な最低人数 | 2名以上(社員2名) | 1名以上(発起人1名) |
このように、一般社団法人は株式会社に比べて設立時の初期費用を抑えやすいという特徴がある一方で、設立手続きには最低2名のメンバー(社員2名以上、うち1名以上が理事を兼任可能)が必要となるといった違いが存在します。
さらに、一般社団法人は税務上の取り扱いによって「非営利型」と「普通型(非営利型以外)」の2つに大別されます。定款の定め方や実際の活動内容によって区分され、会員からの会費や外部からの寄付金が非課税になるかどうかが大きく変わるため、事業計画の段階で慎重な検討が求められます。
本記事では、一般社団法人の基本的な仕組みから、非営利型と普通型の違い、設立の手順、そして税務・法務面のメリット・デメリットまでを網羅的に解説します。
非営利ビジネス、介護・福祉事業、または業界団体や協会の設立などを検討している方が、ご自身の事業モデルに最適な法人形態を選択し、スムーズに起業への第一歩を踏み出せるよう、実務的な視点から詳しくお伝えします。最終的な判断や個別の税務処理については、必要に応じて税理士などの専門家へのご相談も視野に入れつつ、ぜひ最後までお読みください。
目次
一般社団法人とは?起業前に知っておくべき基本の仕組み
コミュニティ運営や資格認定ビジネス、介護・福祉事業などで一般社団法人での起業を検討する方が増えています。株式会社や合同会社とは異なる特徴を持つため、設立前にその仕組みを正しく理解しておくことが重要です。
特に「非営利」という言葉の定義や、設立に必要な人数・資金のルールは、一般的な営利企業とは大きく異なります。ここでは、起業前に必ず知っておくべき一般社団法人の基本構造について詳しく解説します。
「非営利=利益を出してはいけない」は大きな誤解
一般社団法人について最もよくある誤解が、「非営利法人だから利益を出してはいけない」というものです。しかし、法律上の「非営利」とは、利益を追求してはいけないという意味ではありません。
非営利の本当の意味は、事業で得た利益(剰余金)を、構成員である社員や設立者に配当・分配してはならないという「剰余金の分配禁止」の原則を指しています。株式会社でいうところの「株主への配当」ができない仕組みになっているのです。
そのため、事業を通じてしっかりと利益を出し、その利益を法人の次なる活動資金や設備投資、人材採用などに充てることは全く問題ありません。むしろ、事業を継続するためには適切な利益を確保することが不可欠です。
一般社団法人は剰余金の分配を目的とする旨の定款の定めを設けることができず、これに反する規定は無効となります。詳しくは法務省:一般社団法人及び一般財団法人制度Q&A等をご参照ください。
あらゆる事業を展開可能!役員報酬や給与で生活の糧を得る
一般社団法人は、法律に抵触しない限り、どのような事業でも自由に行うことができます。公益的な事業に限定されるわけではなく、物品の販売、コンサルティング、システム開発など、株式会社と同じように収益事業を展開することが可能です。
また、「利益の分配が禁止されているなら、自分たちの収入はどうなるのか?」と不安に思う方もいるかもしれません。この点についても心配は不要です。
理事や監事といった役員への適正な「役員報酬」や、従業員への「給与」は、法人の活動に必要な通常の経費として支払うことができます。利益の配当はできませんが、労働の対価としての報酬は受け取れるため、生活の糧を得る起業の形として十分に成り立ちます。
設立に必要な要件(資本金・人数)
一般社団法人の設立手続きは、株式会社に比べて資金面でのハードルが低いという特徴があります。株式会社の設立には原則として資本金が必要ですが、一般社団法人は資本金(出資)という概念がなく、0円から設立が可能です。
一方で、人数の要件には注意が必要です。設立時には「社員」と呼ばれる構成員が最低2名以上必要となります。この「社員」とは従業員のことではなく、法人の最高意思決定機関である社員総会で議決権を持つメンバーを指します。
さらに、業務を執行する「理事」を1名以上置く必要があります。ただし、設立時の社員が理事を兼任することは可能なため、実質的には最低2名が集まれば法人を設立することができます。
| 項目 | 一般社団法人の基本要件 |
|---|---|
| 必要な人数 | 社員2名以上(うち1名以上が理事) |
| 資本金(出資) | 0円から設立可能 |
| 事業内容の制限 | 法律に反しない限り自由 |
- 設立時の「社員」として最低2名以上を確保する
- 社員のうち、最低1名以上は「理事」に就任する(兼任可)
- 資本金(出資)は0円で設立可能であることを前提に計画を立てる
- 管轄の公証役場で定款の認証を受ける
- 法務局で設立登記を申請する
このように、一般社団法人は初期費用を抑えつつ、複数人で協力して事業を立ち上げるのに適した法人形態です。ただし、定款の作成や登記手続きには専門的な知識が求められるため、設立時の要件や手続きに不安がある場合は、司法書士や行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。

税務上の取り扱いが激変!「非営利型」と「普通型」の違い
一般社団法人での起業を検討する際、設立後の資金繰りや事業運営に最も大きな影響を与えるのが、税務上の区分の選択です。一般社団法人は、税法上「非営利型」と「普通型(非営利型以外)」の2つに大別されます。
どちらの区分に該当するかによって、課税対象となる所得の範囲が根本的に変わります。事業計画に合わせて適切な形態を選ぶことが、法人化を成功させるための重要な鍵となります。
「非営利型」一般社団法人の要件と圧倒的な税務メリット
非営利型一般社団法人として税務署から認められるためには、設立時の定款において非常に厳格なルールを定める必要があります。具体的には、「剰余金の分配を行わない旨」や「解散時の残余財産を国や公益法人等に帰属させる旨」などを明記しなければなりません。
また、特定の個人や団体に特別の利益を与えないなど、実態としても非営利性を徹底して運営することが求められます。定款に記載するだけでなく、実際の業務運営においてもこれらの要件を遵守し続ける必要があります。
厳しい要件をクリアする代わりに得られる最大のメリットは、法人税法上の「収益事業(34業種)」から生じた所得のみが課税対象となる点です。つまり、指定された収益事業以外の活動から得た収入には法人税がかかりません。
会員からの会費や、外部からの寄付金、国や自治体からの補助金などは原則として「非課税」として扱われます。そのため、コミュニティ運営、資格認定ビジネス、介護・福祉事業など、会費や寄付金を主たる財源とするビジネスモデルにおいて、手元に残る資金を効率的に次の活動へ回すことが可能になります。
なお、課税対象となる収益事業の具体的な34業種(物品販売業、不動産貸付業、出版業、コンサルティングなど)については、国税庁の「公益法人等と収益事業」のページで詳細を確認しておくことをお勧めします。
「普通型」一般社団法人の要件と注意点
普通型一般社団法人は、前述した非営利型の厳しい要件を満たさない、一般的な社団法人を指します。定款の縛りが少なく、特定の事業に特化したり、より自由度の高い法人運営を行いたい場合に選択されることがあります。
しかし、税務上の取り扱いは非営利型と大きく異なります。普通型の場合、株式会社や合同会社と同様に「すべての所得」が課税対象となります。事業から得た利益はもちろんのこと、非営利型であれば非課税となるはずの会費や寄付金に対しても法人税が課せられます。
「非営利活動を目的としているから税金はかからないだろう」と誤解して普通型で設立してしまうと、想定外の税負担が発生し、資金繰りが悪化するリスクがあります。特に、多額の寄付金や補助金を受け取る予定がある場合は、設立時の定款設計に細心の注意が必要です。
非営利型と普通型の比較まとめ
両者の違いをわかりやすく整理しました。ご自身の事業モデルがどちらの形態に適しているか、比較検討の参考にしてください。
| 比較項目 | 非営利型一般社団法人 | 普通型一般社団法人 |
|---|---|---|
| 定款の要件 | 剰余金分配の禁止等の厳しい規定が必要 | 特段の厳しい規定は不要 |
| 課税対象となる範囲 | 収益事業(34業種)の所得のみ | すべての所得(株式会社と同様) |
| 会費・寄付金の扱い | 原則として非課税 | 課税対象となる |
| 適した事業モデル | 会費・寄付金がメインの事業、社会貢献 | 収益事業がメインで自由度を重視する事業 |
非営利型の要件を満たしているかどうかの判定や、自社の事業が法人税法上の「収益事業」に該当するかどうかの判断は、非常に専門的で複雑です。誤った判断は後々の税務調査で大きなトラブルにつながる可能性があります。
そのため、一般社団法人の設立手続きを進める前に、非営利法人の実務に詳しい税理士や行政書士などの専門家に相談し、事業計画に沿った最適な定款作成と税務設計を行うことを強くお勧めします。

一般社団法人と株式会社の比較:設立コストと手続きの違い
非営利ビジネスやコミュニティ運営、資格認定ビジネスなどで一般社団法人 起業を検討される方が増えています。その際、もっとも比較対象となるのが一般的な営利法人である株式会社です。事業の目的や将来のビジョンに合わせて最適な法人形態を選ぶためには、両者の違いを正確に把握しておく必要があります。
ここでは、法人設立時に気になる「設立コスト」と「手続き・人員要件」の2つの観点から、一般社団法人と株式会社を比較して解説します。初期費用を抑えてスモールスタートを切りたい方にとって、一般社団法人がどのようなメリットを持つのかを確認していきましょう。
設立費用の比較:一般社団法人は初期費用を約9万円抑えられる
法人を設立する際には、公証役場での定款認証手数料や、法務局で登記を行うための登録免許税などの法定費用がかかります。この設立にかかる初期費用において、一般社団法人は株式会社よりもコストを抑えやすいという特徴があります。
具体的には、一般社団法人の設立費用は約11万2,000円からとなります。一方、株式会社を設立する場合は約20万2,000円からとなるため、一般社団法人の方が約9万円安く設立できる計算です。初期の資金負担を少しでも減らし、事業活動そのものに資金を回したい起業家にとって、この差は大きなメリットと言えるでしょう。
| 項目 | 一般社団法人 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 定款認証手数料 | 約5万円 | 約3万〜5万円 |
| 登録免許税 | 6万円 | 15万円(または資本金額の1000分の7) |
| 法定費用合計(目安) | 約11万2,000円〜 | 約20万2,000円〜 |
株式会社の登録免許税は最低でも15万円が必要ですが、一般社団法人は6万円と低く設定されています。また、定款認証手数料については、株式会社の場合は資本金の額等に応じて3万円から5万円の幅がありますが、一般社団法人は一律で約5万円となります。手数料に関する詳細は、法務省の定款認証の手数料に関するページなどで確認できます。
介護・福祉事業やボランティアを基盤としたコミュニティ運営など、大規模な設備投資を必要とせず、まずは活動実績を作っていきたいスモールスタートのケースでは、この設立コストの低さが一般社団法人を選ぶ強力な後押しとなります。
設立手続きと人員要件の違い
設立にかかる手続きの大きな流れは、一般社団法人も株式会社もほぼ同様です。定款を作成し、公証役場で定款の認証を受けた後、法務局へ設立登記の申請を行います。法務局へ登記申請を行った日が法人の設立日となる点も共通しています。
一方で、設立時に求められる「人員要件」には明確な違いがあります。株式会社は発起人(出資者)兼 取締役として1名のみで設立することが可能です。これに対し、一般社団法人を設立するためには、設立時社員として最低2名以上が集まる必要があります。このうち1名以上は理事に就任することになります。
資本金(出資)の要件については、どちらの法人形態も「0円」から設立が可能です。ただし、実際の事業運営を考慮すると、当面の運転資金としてある程度のまとまった資金を法人用の口座に準備しておくことが現実的です。
- 設立メンバーの確保(一般社団法人は最低2名、株式会社は1名から)
- 法人の基本規則となる定款の作成(非営利型を目指す場合は要件に注意)
- 公証役場での定款認証手続き
- 当面の運転資金(資本金・基金)の準備と振込手続き
- 法務局への設立登記申請(申請日が法人の設立日となる)
一般社団法人の設立にあたっては、メンバー集めが最初のハードルになることがあります。家族やビジネスパートナーなど、法人の目的に賛同してくれる協力者をあらかじめ見つけておくことが重要です。
また、定款の記載事項や登記申請の必要書類は法人形態によって異なるため、不備があると手続きが遅れる原因となります。スムーズに設立手続きを進め、税務上のメリット(非営利型一般社団法人としての要件を満たすかなど)を確実にするためにも、最終的な判断や手続きの実務は、司法書士や税理士などの専門家に相談しながら進めることをお勧めします。

一般社団法人で起業するメリット
コミュニティ運営や資格認定ビジネス、介護・福祉事業などで事業を立ち上げる際、一般社団法人での起業を選択するケースが増えています。
一般社団法人は、株式会社と同様に収益事業を自由に行える一方で、非営利組織ならではの独自のメリットを備えています。
ここでは、税制優遇や社会的信用の観点から、一般社団法人を設立して起業する具体的なメリットを詳しく解説します。
非営利型における強力な税制優遇
一般社団法人は、税法上の区分によって「普通型」と「非営利型」の2つに大別され、それぞれ税務上の取り扱いが大きく異なります。
定款に特定の要件を定めて「非営利型一般社団法人」として認められた場合、法人税法で定められた34業種の収益事業から生じた所得のみが課税対象となります。
つまり、会員から集める会費や、外部からの寄付金、国や自治体からの補助金などは原則として非課税扱いとなります。
これらを財源とする業界団体の運営や社会貢献活動、サークル活動などにおいては、税負担を大幅に軽減し、手元に残った資金を効率的に次の事業へ再投資できることが最大の強みです。
| 法人の種類 | 主な要件 | 課税される範囲 |
|---|---|---|
| 非営利型 | 剰余金の分配を行わない等の定款の定め | 収益事業(34業種)から生じた所得のみ |
| 普通型 | 非営利型の要件を満たさないもの | すべての所得(会費や寄付金も含む) |
経費計上による高い節税効果
「非営利」という言葉の響きから、「利益を出してはいけない」「役員に給与を払ってはいけない」と誤解されることが少なくありません。
しかし、法律上の非営利とは「事業で得た利益(剰余金)を構成員(社員や設立者)に配当・分配してはならない」という原則を指すものであり、利益を出すこと自体は全く問題ありません。
一般社団法人は、設立の目的に制限がなく、公益を目的とする事業はもちろん、町内会・同窓会・サークルなどのような構成員の共通の利益を図ることを目的とする事業や、収益を上げることを目的とする事業を行うこともできます。
そのため、理事や監事への適正な役員報酬、従業員への給与は、株式会社と同様に通常の経費(損金)として計上して支払うことが可能です。
さらに、出張旅費規程に基づく日当や、事務所家賃の按分、法人契約の生命保険料なども一定の要件を満たせば経費化できます。
事業活動の自由度を保ちながら、法人全体の所得を抑えるための節税対策を株式会社と同じように講じることができるのは、経営者にとって安心できるポイントです。
社会的信用と非営利イメージの獲得
「一般社団法人」という名称は、利益追求のみを目的としない、公益性や社会貢献性の高い組織というイメージを社会的に持たれやすい特徴があります。
この社会的信用の獲得は、特に行政や自治体からの委託事業を受託する際や、介護・福祉関連の事業を展開する場面で有利に働くケースが多く見られます。
また、社会課題の解決を目的としたビジネスにおいては、民間企業からの協賛金や寄付金を集めやすくなるというメリットもあります。
採用活動においても、「社会の役に立つ仕事をしたい」と考える理念に共感した優秀な人材を集めやすくなる傾向があります。
設立コストの低さと手続きのシンプルさ
一般社団法人は、株式会社と比較して設立時の初期費用を低く抑えることができます。
資本金(出資)は0円から設立可能であり、公証役場での定款認証手数料や法務局での登録免許税といった法定費用も、株式会社より安価に設定されています。
| 設立する法人形態 | 定款認証手数料 | 登録免許税 | 法定費用の目安 |
|---|---|---|---|
| 一般社団法人 | 約5万円 | 6万円 | 約11万2,000円〜 |
| 株式会社 | 約3万〜5万円 | 15万円 | 約20万2,000円〜 |
設立にあたっては、最低2名の人員を確保するなどの要件を満たす必要があります。設立準備を進める際は、以下のポイントを事前に確認しておきましょう。
- 設立時社員が最低2名以上確保できているか(うち1名以上は理事となる)
- 非営利型を目指す場合、定款に剰余金の分配禁止などの要件を盛り込んでいるか
- 事業年度(決算期)をいつに設定するか
- 主たる事務所の所在地が明確に決まっているか
一般社団法人は多くのメリットがある一方で、将来的に事業を売却(M&A)しにくいなどのデメリットも存在します。
ご自身のビジネスモデルにとって一般社団法人が最適な組織形態かどうか、最終的な判断については税理士や行政書士などの専門家へご相談されることをおすすめします。

一般社団法人で起業する前に知っておきたいデメリット・注意点
一般社団法人は設立コストが比較的安く、公益性の高い事業に適している一方で、株式会社にはない特有の制限が存在します。一般社団法人での起業を検討する際は、以下のデメリットや注意点をしっかりと把握し、ご自身の事業目的と合致しているか確認することが大切です。
1. 普通型の場合は税制優遇がない
一般社団法人は、税法上で「非営利型」と「普通型(非営利型以外)」の2つに大別されます。定款に「剰余金の分配を行わない」などの厳格な要件を定め、非営利性を徹底した「非営利型」であれば、収益事業以外の所得(会費や寄付金など)は原則として非課税となります。
しかし、これらの要件を満たさない「普通型」として一般社団法人を設立した場合、課税構造は株式会社とほぼ同じになります。つまり、事業で得た利益だけでなく、会員からの会費や外部からの寄付金を含むすべての所得が法人税の課税対象となります。
「一般社団法人=税金が安い」という誤解を持たれがちですが、普通型で運営する限り税制上のメリットは得られません。税務上の取り扱いについては、国税庁の「一般社団法人・一般財団法人と法人税」などの公的情報もあわせて確認しておきましょう。
| 税法上の区分 | 要件の概要 | 課税対象となる範囲 |
|---|---|---|
| 非営利型 | 剰余金の分配を行わない等の厳格な規定あり | 収益事業(34業種)から生じた所得のみ |
| 普通型(非営利型以外) | 非営利型の要件を満たさない一般的な形態 | すべての所得(会費や寄付金を含む) |
2. 利益の分配(配当)が法律で禁止されている
一般社団法人の最大の特徴であり、株式会社との決定的な違いが「利益の分配(配当)ができない」という点です。どんなに事業が成功して多額の利益(剰余金)が出たとしても、それを設立者や社員(構成員)に配当金として還元することは法律で禁じられています。
したがって、事業の成長に伴って個人の資産形成を大きく図りたい場合や、いわゆる「儲け」を主目的とする起業には不向きと言えます。得られた利益は、次年度の事業活動や新たな設備投資などに充てるのが基本原則です。
ただし、「非営利」とは利益を出してはいけないという意味ではありません。理事や監事に対する適正な役員報酬や、従業員への給与を支払うことは通常の経費として認められています。労働の対価としての報酬は受け取れますが、出資に対するリターンは得られない点を正しく理解しておきましょう。
3. 資金調達の手段が制限される(VCやIPOは不可)
一般社団法人は資本金(出資)という概念がなく、株式会社のように株式を発行することができません。そのため、第三者に株式を割り当てて資金を集める「第三者割当増資」のような手法は構造上使えなくなっています。
結果として、ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家からの大規模な出資を受け入れることはできず、将来的に株式上場(IPO)を目指すことも不可能です。急激な事業拡大のために外部から多額の資本を注入したいと考えるスタートアップ型の起業には適していません。
一般社団法人の主な資金調達方法は、日本政策金融公庫や民間金融機関からの融資、国や自治体の補助金・助成金、会員からの会費、寄付金、またはクラウドファンディングなどに限られます。事業計画を立てる際は、この資金調達の制限をあらかじめ考慮する必要があります。
一般社団法人がご自身の事業に合っているか確認しよう
非営利ビジネス、コミュニティ運営、資格認定ビジネス、介護・福祉事業などにおいて、一般社団法人は非常に社会的信用の得やすい法人形態です。設立に踏み切る前に、以下のポイントをチェックしてみてください。
- 利益を配当として受け取る必要はないか(役員報酬のみで問題ないか)
- ベンチャーキャピタルからの出資や株式上場(IPO)を将来の目標としていないか
- 税制優遇を受けるための「非営利型」の要件を定款に定め、維持できるか
- 事業の目的が公益性や共益性の追求を重視しているか
将来のビジョンと法人形態が合致しているかどうかの見極めは、事業の成功を左右する重要な要素です。設立手続きや定款の作成、税務上の細かい要件判定については複雑な部分も多いため、最終的な判断は税理士や司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。

一般社団法人での起業が向いているケース・向いていないケース
法人を設立する際、どの法人格を選ぶかは今後の事業展開を左右する重要な決断です。ここでは、一般社団法人での起業がご自身のビジネスモデルに適しているかどうかを判断するための基準を解説します。
一般社団法人は「非営利」を前提とする法人格ですが、これは「利益を出してはいけない」という意味ではありません。事業で得た利益(剰余金)を構成員に配当しないというルールがあるだけで、事業活動自体は非常に自由です。
一般社団法人での起業が向いているケース
一般社団法人は、公益性や社会貢献を目的とするビジネス、またはコミュニティを基盤とする事業と非常に相性が良い法人格です。具体的には、以下のようなケースで設立されることが多くあります。
第一に、業界団体や同業者組合の設立です。特定の業界の発展や規格統一を目的とする場合、株式会社よりも「非営利の一般社団法人」という名称の方が、中立的で公的なイメージを与えやすく、同業他社からの賛同や協力を得やすくなります。
第二に、資格認定ビジネス(家元制度、検定試験など)です。独自のスキルや知識を体系化し、民間資格として認定・発行する事業において、一般社団法人は高い信頼性を発揮します。受講者にとっても、株式会社が発行する資格より、社団法人が認定する資格の方が権威を感じやすいというメリットがあります。
第三に、介護、福祉、地域活性化などの社会貢献(ソーシャルビジネス)です。これらの分野では、利益の最大化よりも継続的な地域貢献が求められます。また、行政からの委託事業を受託する際や、特定の助成金・補助金を申請する際にも、非営利法人が要件となっている場合や有利に働く場合があります。
第四に、サークル活動やボランティア団体の法人化です。任意団体のままでは、銀行口座の開設や事務所の賃貸契約が代表者の個人名義になってしまうという課題があります。法人化することで団体名義での契約が可能になり、代表者が交代する際の引き継ぎもスムーズになります。
株式会社など他の法人格が向いているケース
一方で、ビジネスの目的が大規模な成長や金銭的なリターンの追求にある場合、一般社団法人は最適な選択肢とは言えません。以下のような場合は、株式会社での起業が適しています。
将来的なIPO(株式上場)や、M&Aによる会社売却(エグジット)を目指すのであれば、株式会社を選ぶ必要があります。一般社団法人には「株式」という概念自体が存在しないため、株式公開や株式譲渡によるバイアウトは仕組み上不可能です。
また、ベンチャーキャピタルやエンジェル投資家から大規模な資金調達を行い、急成長を目指すスタートアップ企業にも不向きです。投資家は将来の株式価値の上昇(キャピタルゲイン)や配当を期待して出資を行いますが、利益配当が禁止されている一般社団法人には出資するメリットがありません。
さらに、事業で得た利益を配当金として自分や出資者に還元したい場合も、株式会社や合同会社を選択すべきです。一般社団法人でも理事への役員報酬や従業員への給与を支払うことは可能ですが、利益に応じた配当を出すことは法律で禁じられています。
一般社団法人と株式会社の比較まとめ
起業時の選択肢としてよく比較される一般社団法人と株式会社の違いを、設立コストや仕組みの観点から整理しました。
| 比較項目 | 一般社団法人 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 設立に必要な人数 | 最低2名(社員2名以上) | 最低1名(発起人1名) |
| 設立コストの目安 | 約11万2,000円〜 | 約20万2,000円〜 |
| 利益の配当 | 不可(非営利の原則) | 可能(株主へ配当) |
| 株式上場・M&A | 不可 | 可能 |
| 主な資金調達方法 | 会費、寄付金、融資、補助金 | 株式発行、融資、補助金 |
設立コストについては、一般社団法人は定款認証手数料と登録免許税を合わせて約11万2,000円から設立可能です。株式会社に比べて初期費用を抑えられる点は、自己資金が限られている起業家にとって大きなメリットと言えます。
なお、一般社団法人の制度や設立要件の詳細については、法務省の一般社団法人及び一般財団法人制度Q&Aなどの公的情報も併せて確認しておくと安心です。
事業モデルに合わせた法人格選びのチェックポイント
ご自身の事業が一般社団法人に向いているか迷った際は、事業計画と照らし合わせて以下のポイントを確認してみてください。
- 事業の主な目的は社会貢献、業界発展、コミュニティ運営か
- 将来的に株式上場や会社売却(M&A)を想定していないか
- 利益を配当として受け取る必要はないか(役員報酬は受給可能)
- 設立時に2名以上のメンバー(社員)を確実に集められるか
- 権威性や公的なイメージが事業の集客・信頼獲得に直結するか
また、一般社団法人は税務上の区分として「非営利型」と「普通型」に分かれ、課税範囲が大きく異なります。普通型は株式会社と同様にすべての所得が課税対象となりますが、非営利型であれば、収益事業(34業種)以外の所得(会費や寄付金など)は原則として非課税となります。
非営利型として税制優遇を受けるには、「剰余金の分配を行わない」などの厳格な要件を定款に定める必要があります。
このように、法人化の目的や将来のビジョン、そして税務上のメリットを総合的に考慮して最適な法人格を選ぶことが重要です。最終的な判断や定款の作成にあたっては、税理士や司法書士などの専門家に相談し、事業モデルに最も適した形を選択することをおすすめします。
まとめ:目的に合わせた最適な法人格選びを
一般社団法人での法人は、社会貢献や業界の発展、資格認定ビジネス、コミュニティ運営などを目的とした事業において、非常に魅力的な選択肢です。「非営利」という言葉から無報酬のボランティアをイメージされがちですが、実際には適正な役員報酬の支払いや、法律に抵触しない範囲での自由な事業展開が認められています。
設立コストが株式会社と比較して安く抑えられる点や、厳しい要件を満たして「非営利型」となれば会費や寄付金が非課税になるなどの強力な税制優遇を受けられる点は、創業期の資金繰りにおいて大きなメリットとなるでしょう。
「非営利の原則」と資金調達の制限
一方で、一般社団法人は「事業で得た利益(剰余金)を構成員に配当・分配してはならない」という非営利の原則があります。そのため、株式会社のように株式を発行して投資家から大規模な資金調達を行うことはできません。
将来的に事業を急速に拡大させたい場合や、創業者自身の利益最大化(バイアウトやIPOなど)を出口戦略として見据えているのであれば、株式会社や合同会社の方が適していると言えます。ご自身のビジネスモデルが「社会や業界への貢献」を主眼に置いているのか、それとも「個人の利益や規模拡大」を重視しているのかを慎重に見極める必要があります。
ビジネスの目的に応じた法人格の比較
ここで改めて、一般社団法人と株式会社の特徴をビジネスの目的や設立・運営の観点から整理しておきましょう。
| 比較項目 | 一般社団法人 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 適した目的 | 社会貢献、業界発展、資格認定 | 事業の拡大、利益の追求 |
| 利益の配当 | 不可(非営利の原則) | 可能(株主への配当) |
| 主な資金調達 | 会費、寄付金、借入金、基金 | 株式発行、借入金、社債 |
| 設立コスト目安 | 約11万2,000円〜 | 約20万2,000円〜 |
最終的な判断は専門家と共に
一般社団法人 起業において重要なのは、目先の設立費用だけでなく、中長期的な事業計画や資金計画に照らし合わせて法人格を選択することです。法人格の選択は、設立後の税務処理や資金調達の選択肢に直結する非常に重要な決断となります。
特に、税法上の「非営利型法人」として認められるためには、定款に剰余金の分配を行わない旨を定めるなど、厳格な要件を満たす必要があります。非営利型法人の詳細な要件については、国税庁の一般社団法人等に関する課税関係のページなどの公的情報も参考にしてください。
最終的な法人格の決定や設立手続きにあたっては、自己判断だけで進めるのはリスクが伴います。税理士や司法書士といった専門家に相談しながら、ご自身の事業計画に最適な形を選択することをお勧めします。
- 事業の主目的(社会貢献か、個人の利益拡大か)を明確にする
- 将来的な資金調達の計画(株式発行が必要か)を確認する
- 非営利型一般社団法人の厳しい要件を満たせるか検討する
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

