2026.09.25

起業・開業

起業すると失業手当はどうなる?受給期間特例と申請期限

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読了目安時間:約 6分

目次

起業すると失業手当はどうなる?

起業後の失業手当は、事業に専念して「失業の状態」ではなくなった日以降、原則として受給できません。ただし、起業した事実だけで直ちに不正受給になるわけではなく、実態に応じた申告と手続きが重要です。失業手当(雇用保険の基本手当)とは、一定の受給要件を満たし、失業状態にある人の生活と再就職を支える給付です。

ハローワーク「基本手当について」によると、失業状態とは、就職する意思といつでも働ける能力があり、積極的に求職活動をしているものの、本人やハローワークの努力によっても就職できない状態を指します。自分の事業に専念している場合は求職中とは認められず、基本手当の対象外になるのが原則です。

一方、判断基準は開業届を提出した日だけではありません。法人設立前であっても、事務所の契約や融資契約などを進め、起業準備に専念していれば、失業状態ではないと判断される可能性があります。副業を続けながら求職しているなど、事業への専念状況が明確でない場合は、事前に管轄のハローワークへ確認してください。

受給中に事業を始めた場合は、失業認定申告書などで事実を正しく申告する必要があります。ハローワーク「雇用保険の具体的な手続き」でも、自営開始を申告しないことは不正受給の例として示されています。「売上がない」「利益が出ていない」という理由だけで、申告が不要になるとは限りません。

本記事では、起業すると失業手当の受給資格がいつ変わるのか、起業後に権利を残す方法や必要な手続きを整理します。個別の事業実態によって判断が異なるため、起業準備を始める前にハローワークへ相談すると安心です。

失業手当を受け取れる期間と日数は?

起業前に失業手当を受ける場合、受給期間は原則として離職日の翌日から1年間です。ただし、実際に支給対象となる所定給付日数は、離職理由・年齢・雇用保険の加入期間などにより90~360日となります。

受給資格と受給期間はどう決まる?

原則として、離職前2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12か月以上必要です。倒産・解雇等の特定受給資格者や一部の特定理由離職者は、原則として離職前1年間に6か月以上が要件となります。

項目 内容
受給期間 離職日の翌日から原則1年間
所定給付日数 90~360日

受給期間は基本手当を受け取れる期限、所定給付日数は実際の支給対象日数です。給付日数が残っていても、受給期間を過ぎると原則として受け取れません。詳細は厚生労働省の「基本手当の所定給付日数」で確認できます。

自己都合退職ではいつから支給される?

求職申込み後、失業状態の日が通算7日に達するまでは「待期」となり、基本手当は支給されません。2025年4月1日以降の正当な理由のない自己都合退職では、待期後に原則1か月の給付制限があります。

離職日前5年間に同様の自己都合離職で2回以上受給資格決定を受けている場合、給付制限は原則3か月です。一定の教育訓練等により解除される可能性もあるため、起業と失業手当の予定を立てる際は厚生労働省の案内を確認し、最終的な受給資格や離職理由の判定はハローワークへ相談してください。

離職から基本手当の支給までの流れを示すタイムライン

起業後も権利を残せる「受給期間の特例」とは

起業後の失業手当に関する「受給期間の特例」は、離職後に事業を始めた人などが、休業・廃業後に基本手当を受ける権利を残すための制度です。2022年7月1日から設けられ、事業の実施期間を最大3年間、受給期間に算入しない扱いとなります。

これは受給期間を単純に延長する制度ではありません。本来の受給期間は原則1年間ですが、その計算から事業期間を除外することで、結果として離職日の翌日から最長4年間の枠を確保できる仕組みです。

区分 期間
本来の受給期間 原則1年間
算入しない事業期間 最大3年間
確保できる枠 最長4年間

起業中も失業手当を受け取れるのですか?

特例を申請しても、事業に専念している期間に基本手当が支給されるわけではありません。休業・廃業後に再び就職する意思と能力があり、求職活動を始めた場合に、残っている受給期間と給付日数を利用できる可能性があります。

起業前に基本手当を一部受給していれば残日数が対象となり、受給せずに起業した場合は、所定給付日数の全部を持ち越せる可能性があります。したがって、起業と失業手当のどちらを選ぶかではなく、万一事業を継続できなくなった場合に備える制度と捉えるとよいでしょう。

特例を利用すると、どのような流れになりますか?

例えば、退職後に起業して期限内に特例を申請し、2年間事業を行った後に廃業したとします。その後、ハローワークで求職申込みなどを行い、通常の受給要件と失業認定を満たせば、残っている基本手当を受給できる可能性があります。

実際の支給可否や支給日数は、受給資格や申請状況によって異なります。詳細は厚生労働省の「離職後に事業を開始等した場合の雇用保険受給期間の特例」を確認し、管轄のハローワークへ相談してください。

通常の受給期間1年間と特例適用時の最長4年間を比較した図

受給期間の特例を利用できる人・事業の5要件

起業後の失業手当に関する受給期間の特例は、対象者の条件に該当し、事業に関する5要件をすべて満たす場合に利用できます。事業開始の時期だけでなく、専念し始めた日や事業の継続性も確認されます。

対象になるのはどのような人?

対象は、離職日の翌日以後に事業を開始した人、事業に専念し始めた人、事業の準備に専念し始めた人です。離職前から副業として行っていた事業でも、離職日の翌日以後に専念した場合は対象になり得ます。

事業が満たす5要件は?

対象事業は、次の5要件をすべて満たす必要があります。特に30日の判定では、開始日・専念開始日・準備専念開始日のいずれを基準とするか確認しましょう。

要件 確認内容
1 実施期間が30日以上
2 開始等から30日経過する日が本来の受給期間末日以前
3 その事業で再就職手当等を受給していない
4 自立できないと認められる事業ではない
5 離職翌日以後に開始。離職後に専念した既存事業を含む

事業による自立は何で確認される?

自立性は、事業の開始・内容・事業所の存在などを示す客観的資料で確認されます。主な確認資料は次のとおりです。

  • 登記事項証明書
  • 税務署へ提出した開業届の写し
  • 事業許可証
  • 事業所の存在や事業内容を確認できる資料
  • 労働者を雇い、雇用保険適用事業の事業主になったことを示す資料

必要な証明資料は事業形態や状況によって異なります。厚生労働省・各都道府県労働局の受給期間の特例に関する案内を確認し、申請先へ事前に相談してください。

起業時の受給期間特例に必要な5要件のチェックリスト

あなたの状況はどれ?起業前後の手続き早見表【読む価値セクション】

起業と失業手当の扱いは、求職活動を続けているか、事業に専念したかによって異なります。以下で自分に近い状況を確認し、申告や特例申請が必要か判断してください。

現在の状況 失業手当の扱い 次にすること
求職しながら起業を検討中 失業状態なら受給の可能性あり 準備内容・作業時間を正確に申告して相談
退職後すぐ事業へ専念 原則として受給不可 開始日の翌日から2か月以内に特例申請
離職前の副業に退職後専念 失業状態でない可能性が高い 専念開始日の資料を用意して対象可否を確認
受給中に起業 起業後は支給停止の可能性あり 自営開始を申告し、残日数と特例を確認
起業後30日未満で廃業 特例の30日要件を満たさない可能性あり 通常の受給期間を確認し、速やかに求職申込み
特例申請後に休業・廃業 残日数を受給できる可能性あり 求職申込みと受給再開の手続きを行う
起業で再就職手当を受給 同じ事業では特例を利用不可 再就職手当との関係を窓口で確認

判断に迷ったら、どの日付を整理すべき?

次の4つの日付を時系列で整理すると、申告や申請の起算点を確認しやすくなります。

  • 離職日
  • 事業開始日
  • 事業または準備への専念開始日
  • 本来の受給期間満了日

開業届の提出日と、実際に事業・準備へ専念した日は一致しないことがあります。書類を提出する前に、どの日付を起算点とするかハローワークへ確認しましょう。個別事情で判断が分かれる場合は、専門家にも相談してください。

起業前後の状況から必要な失業手当の手続きを判断するフローチャート

申請期限はいつまで?必要書類と手続きの流れ

申請期限は原則として、事業開始日・事業への専念開始日・事業準備への専念開始日の翌日から2か月以内です。離職日の翌日から2か月以内ではないため、起業と失業手当の手続きを検討する際は起算日に注意しましょう。

どこへ、どのように申請する?

原則として住居所を管轄するハローワークへ提出します。ただし、すでに受給資格決定を受けている場合は、その決定を行ったハローワークが提出先です。

本人による窓口持参のほか、郵送や代理人による提出も可能で、代理提出には委任状が必要です。行政手数料は通常かかりませんが、証明書の取得費や郵送料は別途必要になる場合があります。

再就職手当を申請して不支給となった場合、一定の条件により、その申請日を特例の申請日として扱える例外があります。期限後も自己判断で諦めず、ハローワークへ確認してください。

申請時に必要な書類は?

共通して「受給期間延長等申請書」が必要です。加えて、受給資格決定の前後や、事業開始・準備への専念を確認できる資料をそろえます。

区分 主な書類
資格決定前 離職票-2
資格決定後 雇用保険受給資格者証
事業開始・専念 登記事項証明書、開業届の写し、事業許可証
事業準備への専念 金銭消費貸借契約書、事務所の賃貸借契約書

申請はどの順番で進める?

開始日の候補を整理したうえで、先にハローワークへ対象可否と必要書類を確認します。書類がそろうまで待たず、期限を意識して早めに相談することが重要です。

  • 事業開始日・専念開始日・準備専念開始日の候補を整理する
  • 管轄ハローワークへ連絡し、対象可否と必要書類を確認する
  • 開業届や契約書など、開始日を証明する資料をそろえる
  • 期限内に受給期間延長等申請書を提出する
  • 申請書類の控えと通知を保管する
  • 休業・廃業時は速やかに求職申込みと受給手続きを行う

詳細は、各都道府県労働局の「離職後に事業を開始した場合の受給期間特例」や管轄ハローワークで確認してください。

起業時の受給期間特例を申請する流れを示す時系列図

起業と失業手当に関するよくある質問

起業と失業手当の扱いは、届出や売上だけでなく、事業への専念状況や求職活動の実態などから判断されます。よくある疑問を確認しておきましょう。

開業届を出しただけで失業手当は止まりますか?

開業届の提出だけで一律に決まるとは限りません。実際の事業活動、準備への専念状況、求職活動の実態などが判断材料となるため、提出した場合は必ずハローワークへ申告してください。

売上がゼロでも起業したことになりますか?

売上や利益の有無だけで失業状態が決まるわけではありません。売上ゼロでも事業や準備に専念していれば、基本手当の対象外となる可能性があります。

個人事業主と法人設立で扱いは変わりますか?

受給期間の特例は、個人事業か法人かだけで区別されません。事業開始・専念開始の事実と、対象事業の要件を満たすかが重要です。

特例を申請すれば起業中も失業手当を受け取れますか?

特例は起業中に基本手当を支給する制度ではありません。休業・廃業後に求職を再開した場合に備え、受給期間を確保する制度です。

休業や廃業後は自動的に受給が再開されますか?

自動では再開されません。ハローワークで求職申込みなど、受給に必要な手続きを行います。

会社員を退職して起業・会社設立を予定している方は、事業準備を始める前に管轄のハローワークへ確認することが大切です。判断に迷う場合は、ハローワークに加え、税理士・司法書士・行政書士などの専門家へ相談しましょう。

よくある質問

Q. 失業手当の受給中に起業準備を始めたら申告が必要ですか?

事務所の契約や融資契約などを進め、起業準備に専念している場合は、失業状態ではないと判断される可能性があります。準備内容や作業時間を正確に申告し、事前に管轄のハローワークへ確認してください。

Q. 離職前から続けていた副業に専念する場合も特例の対象ですか?

離職前から副業として行っていた事業でも、離職日の翌日以後に専念した場合は、受給期間の特例の対象になり得ます。専念開始日を確認できる資料を用意し、ハローワークで対象可否を確認してください。

Q. 起業後の受給期間の特例はいつまでに申請しますか?

原則として、事業開始日・事業への専念開始日・事業準備への専念開始日の翌日から2か月以内です。離職日の翌日から2か月以内ではないため、どの日を起算点とするかハローワークへ確認すると安心です。

Q. 受給期間の特例を申請するにはどのような書類が必要ですか?

共通して受給期間延長等申請書が必要です。状況に応じて離職票-2や雇用保険受給資格者証のほか、登記事項証明書、開業届の写し、契約書などを提出するため、事前に申請先へ確認してください。

Q. 受給期間の特例は個人事業主と法人で違いがありますか?

個人事業か法人かだけで特例の扱いが区別されるわけではありません。事業開始や専念開始の事実と、実施期間が30日以上などの要件をすべて満たすかが重要です。

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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