2025.08.5

会社設立

会社形態の種類とは?選ぶ際のポイントやそれぞれのメリット・デメリットも解説

会社 種類

読了目安時間:約 7分

現在、日本で新たに設立できる会社の形態は株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4種類です。

これらの会社形態は、出資者が負う責任の範囲や経営の仕組みや必要な費用などにおいて特徴が異なります。

会社設立を検討する際には、それぞれの形態のメリット・デメリットを十分に理解し、事業の目的や将来の展望に応じて最適な形態を選択することが重要です。

本記事では、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社などの会社形態について、それぞれの特徴を解説します。さらに、会社形態を選ぶ際の重要なチェックポイントや、選択ミスを防ぐための注意点を詳しく解説していきます。

ぜひこの記事を参考にして、会社形態の種類について理解を深めてみてください。

会社形態の種類

会社形態の種類

会社形態の種類については、以下の4つが挙げられます。

  • 種類①:株式会社
  • 種類②:合同会社
  • 種類③:合資会社
  • 種類④:合名会社

それぞれの種類について解説していきます。

種類①:株式会社

株式会社は、株式を発行して投資を募り、その資金を事業運営に活用する会社形態です。

株式による資金調達は、株式会社だけに認められた方法であり、他の会社形態では利用できません。

この会社形態の大きな特徴は「所有」と「経営」が分離している点です。

出資を行う株主と、実際に経営を担う経営者は原則として異なる存在で、会社が上げた利益の一部は、配当金として株主へ還元されます。しかし、小規模な企業では出資者と経営者が同一人物であるケースも多く見られます。

また、4種類ある会社形態の中で、決算公告の義務があるのは原則として株式会社のみです。決算公告とは、会社の業績や財務状況を株主や債権者などに公表し、取引上の信頼性を確保するためにおこなわれます。

なお、この義務は公開・非公開を問わず、すべての株式会社に適用されるのが原則です。ただし、有価証券報告書の提出義務がある会社など、例外もあります。

このように、株式を用いた資金調達を検討している方や、出資はせず経営に専念したい方にとって、株式会社は有力な選択肢と言えます。

参考:商業・法人登記申請手続き|法務局

種類②:合同会社

合同会社は、2006年5月に施行された新会社法(会社法)によって新設された会社形態の一つです。設立コストが比較的低く、柔軟な経営が可能なため、小規模事業者や一部のスタートアップ企業でも選ばれることがあります。

この会社形態は「合資会社」や「合名会社」と同様に、経営と所有が一致する「持分会社」に分類されます。

また、出資者全員が経営に関する意思決定権を持つ点も特徴です。

さらに、出資者が負う責任は出資額の範囲に限られる「有限責任」が採用されています。

種類③:合資会社

合資会社は、無限責任社員と有限責任社員という異なる役割を持つ社員(出資者)によって成り立つ会社形態です。

無限責任社員は会社の債務に全て責任を負い、有限責任社員は出資額の範囲でのみ責任を負います。

合資会社の設立には最低でも1名の無限責任社員と1名の有限責任社員が必要です。

種類④:合名会社

合名会社とは、全ての社員(出資者)が無限責任社員となる会社形態です。

会社が負債を抱えた場合、社員が自らの財産を用いてでも弁済に応じる義務を負うことを意味しています。

そのため、合名会社は、無限責任を負う社員全員が事業の経営に関与し、共同で事業を運営する会社形態と言えます。

無限責任を負うという点では「民法上の組合」に似ていますが、民法上の組合と異なり、合名会社には独立した法人格が与えられています。この会社形態では、社員一人ひとりの資質や判断が重視され、各社員には業務を執行する権限や会社を代表する権限が与えられます。

さらに、会社の基本的な取り決めを記した「定款」の変更や、社員の持分譲渡などの重要事項をおこなう場合には、必ず社員全員の同意が求められます。

参考:会社法 | e-Gov 法令検索

有限会社は新会社法によって廃止された

有限会社は新会社法によって廃止された

有限会社は、かつて日本で認められていた会社形態の一つですが、2006年5月に施行された新会社法により、新たに有限会社を設立することはできなくなりました。

この法改正により、有限会社は法人格として引き続き存在していますが、新たな設立は不可となり、株式会社へと移行する形になりました。

新会社法施行前に設立された有限会社については、整備法(会社法施行に伴う移行措置)により、「有限会社」という商号の使用が認められ、現在も存続しています。

これらの企業は「特例有限会社」と呼ばれ、運営においては株式会社に関する規定が適用されます。例えば、株式会社と同様に会計基準が適用される一方で、株主総会の運営など一部の運営方法には異なる点があります。

参考:会社法 | e-Gov 法令検索

会社形態の種類を選ぶポイント

会社形態の種類を選ぶポイント

会社形態を選ぶ際の判断ポイントには、以下の6つが挙げられます。

  • 責任範囲
  • 経営と所有
  • 意思決定のスピード
  • 設立費用
  • 資金調達のしやすさ
  • 利益の配分

それぞれのポイントについて解説していきます。

責任範囲

会社形態における責任範囲には、「有限責任」と「無限責任」という2つの区分があります。

有限責任の場合、会社が倒産した場合でも、出資者の責任は出資額を超えることはありません。つまり、出資額以上の個人財産が差し押さえられることはないため、リスクを抑えつつ事業を運営できます。4つの形態のうち、株式会社の株主や合同会社の社員は有限責任となります。

これに対し、無限責任の場合は、出資額を上回る債務についても債権者に対して連帯して支払う義務が生じます。具体的には、合資会社の「無限責任社員」や、合名会社の全社員が無限責任を負うことになり、これらの形態では、会社が負債を抱えた場合、個人の財産まで差し押さえられる可能性があるため、十分なリスク管理が必要です。

万が一、会社が倒産した際に、出資額を超える負債を負いたくないと考える場合には、有限責任の株式会社や合同会社を選択することをおすすめします。

経営と所有

株式会社を除く、合同会社・合資会社・合名会社は、一般的に「持分会社」と呼ばれることもありますが、両者の大きな違いは、所有者と経営者が同一か、それとも分離しているか、という点です。

株式会社では、株式を発行して資金を集め、その資金をもとに会社を運営します。株主は出資をおこないますが、経営は経営陣に任せるので、出資者と経営者の役割は明確に分かれています。一方、持分会社の場合は、出資者自身が経営者となるのが特徴です。

このように、自ら資金を出して経営にも直接関わりたい場合は持分会社を、株主からの出資を受け、経営のみに専念したい場合は株式会社を選ぶのが適切と言えます。

意思決定のスピード

会社の形態によって、経営における意思決定の進めやすさには大きな違いがあるので、事業の方向性や意思決定のスピードを重視して、自社に適した形態を選ぶことが重要です。

例えば、株式会社の場合、株主と経営者が分離しているのが一般的です。この仕組みによって外部の視点や多様な意見を取り入れやすいというメリットはありますが、株主総会や取締役会などでの意思決定には一定の時間がかかることがあります。

ただし、株主総会は年1回の開催が義務付けられており、迅速な意思決定が必要な場合には、取締役会で事前に意思決定を行うなどの方法が取られるため、意思決定のスピードが必ずしも遅くなるわけではありません。

一方で、合同会社や合名会社、合資会社では、経営者と出資者が同一人物であることが多く、意思決定は迅速に進めることができます。これらの形態では、株主総会などの手続きが不要であり、経営者の判断が即座に反映されるため、スピード感のある経営が可能です。

設立費用

会社形態の種類を選ぶ際には、必要となる資金面を確認しておくことも重要です。

設立費用の目安としては、株式会社が約22万円程度、合同会社・合資会社・合名会社は10万円前後となることが多いです。
株式会社の場合、登録免許税は最低15万円が必要ですが、合同会社や合資会社、合名会社は6万円で済みます。また、合同会社・合資会社・合名会社では定款認証が不要なため、通常はその分の3万円が節約できます。
ただし、上記は一般的な費用の目安であり、税理士や司法書士に依頼する場合など、個別の状況に応じて費用が異なる場合があることを考慮する必要があります。

参考:法務局|商業・法人登記申請手続

資金調達のしやすさ

会社の形態によって、それぞれで利用できる資金調達の方法に違いがあります。

株式会社のみが可能な「株式発行」による資金調達は、株式会社の大きな特徴の一つです。この方法では、多くの投資家から資金を調達することができ、大規模な資金調達が可能になります。

合同会社などでも出資者による増資や持分譲渡により資金調達が可能です。ただし規模や方法に制限があります。

そのため、将来的に大規模な資金調達を見込む場合は、株式会社が有利な選択肢となりますが、資金調達の手段は会社形態により異なるため、事業計画に合わせた選択が求められます。

参考:独立行政法人中小企業基盤整備機構|資金を調達したい

利益の配分

会社が得た利益の分配方法は、その会社形態によって大きく異なります。

株式会社の場合、原則として株主の出資比率に基づいて配当が支払われます。

これに対して、合同会社・合資会社・合名会社などでは、利益配分は社員間の合意により柔軟に決定可能です。

例えば、出資額は少なくても、経営面や事業運営に欠かせない専門知識や技術を提供している人物に、出資割合を超える利益を割り当てることも可能です。

参考:会社法 | e-Gov 法令検索

株式会社のメリット・デメリット

株式会社のメリット・デメリット

株式会社は、広く世間に認知されており、さらに株式の発行が可能です。

そのため、他の会社形態と比較して外部からの資金調達手段が多く、社会的認知度や信頼度が高いと評価されやすいことから、資金調達がしやすい点が大きなメリットです。

この信用力は、銀行や投資家からの融資・出資を受ける際にも有利に働き、広範囲にわたる投資家から資金を調達できる可能性があります。ただし、実際には企業の規模や実績に大きく影響され、信頼を得るためには、安定した業績や適切な経営が求められます。

一方で、株式会社は意思決定のプロセスが複雑で、他の会社形態と比べてスピードや柔軟性に制約が生じる場合がある点に注意が必要です。

株式会社の最終的な意思決定機関は株主総会であり、重要な経営方針や決定事項は株主の承認を得る必要があります。そのため、経営者が単独で重要な判断を下すことは難しく、意思決定に時間を要することもあるでしょう。しかし、このプロセスは、外部の監視や意見を取り入れながら、透明性の高い経営を実現するための仕組みでもあります。

参考:商業・法人登記申請手続 – 法務局 – 法務省

合同会社の​メリット・デメリット

合同会社の​メリット・デメリット

合同会社のメリットとしては、起業時の資金的負担やリスクを低く抑えられる点にあります。

設立費用については、合資会社や合名会社とほぼ同じ水準ですが、株式会社と比べるとおおよそ10万円以上コストを節約できます。

また、出資者の責任は出資額までに限定される「有限責任」なので、万が一会社が負債を抱えたり倒産したりしても、それ以上の借金を個人が負担する必要はありません。

デメリットとしては、合同会社は比較的新しい会社形態のため、一部の取引先や金融機関では株式会社ほどの認知度や信用度がない場合があります。

そのため、資金調達の場面で不利になることがあり、業種や取引先によっては契約を避けられるケースも考えられるため、注意が必要です。

参考:商業・法人登記申請手続 – 法務局 – 法務省

合資会社の​メリット・デメリット

合資会社の​メリット・デメリット

合資会社は、無限責任社員と有限責任社員という異なる役割を持つ社員によって構成されます。

合資会社で事業を始めるメリットの一つとして、経営に関与しない資金提供者を招くことが可能なことが挙げられます。

株式会社でも株主は経営実務に携わりませんが、重要な決定事項については株主総会での承認が欠かせません。これに対して、合資会社の場合は有限責任社員が経営に加わらないので、経営陣だけで意思決定を進められます。

合資会社は、最低でも1名の無限責任社員と1名の有限責任社員が必要となるため、1人だけでは設立できません。また、経営の負担やリスクが無限責任社員に集中する点も重要な制約です。

この点を考慮し、合資会社設立時にはどのような役割分担を行うか、出資者間で十分に議論し合意を得ることが重要です。

参考:会社法 | e-Gov 法令検索

合名会社の​メリット・デメリット

合名会社の​メリット・デメリット

合名会社は、4つの会社形態の中でも設立要件がゆるやかで、資本金の最低額の制限がなく、1名から設立が可能です。

実際に、設立にかかる費用も株式会社ほど高額ではありません。一方で、すべての出資者が自動的に「無限責任」を負う立場となるので、これが大きなデメリットと言えます。

出資者と経営者が区別されない合名会社では、全ての社員が無限責任を負うため、会社が負った債務に対して個人資産を含む全ての財産を使って返済する責任を負うことになります。

つまり、合名会社は設立のしやすさという点では優れているものの、その反面、出資者・経営者にとっての金銭的リスクは高い会社形態と言えるでしょう。

参考:会社法 | e-Gov 法令検索

会社形態の種類を選ぶ際の注意点

会社形態の種類を選ぶ際の注意点

会社形態の種類を選ぶ際の注意点については、以下の2つが挙げられます。

  • 目的に合った種類を選ぶ
  • 有限責任でも融資の連帯保証人として責任を負うことがある

それぞれの注意点について解説していきます。

目的に合った種類を選ぶ

会社形態を選ぶ際には、目的に合った種類を選ぶようにしましょう。

具体的には、「どの程度の資金を確保したいか」「取り組む事業の性質」「経営上の自由度をどのくらい重視するか」といった要素を整理することが重要です。

例えば、大規模な資金調達を目指す場合は株式会社が適していますが、経営の柔軟性や意思決定スピードを求める場合は合同会社が向いています。

参考:法務局|商業・法人登記申請手続

有限責任でも融資の連帯保証人として責任を負うことがある

会社の形態に関係なく、融資契約では経営者が個人保証を求められる場合があるため、有限責任の仕組みが融資の責任範囲に適用されるわけではありません。

たとえ有限責任が適用される会社形態であっても、これはあくまで会社運営上の責任範囲であり、金融機関から資金を借りる際に代表者や経営者が連帯保証人として責任を負うことがあります。

この場合、会社が返済できなくなった際には、経営者個人が借入金を返済しなければならない場合があるため、注意が必要です。

参考:会社法 | e-Gov 法令検索

適切な会社形態を選ぼう!

適切な会社形態を選ぼう!

今回は、会社形態の種類について紹介しました。

日本で新たに設立できる会社には、株式会社・合同会社・合資会社・合名会社の4つですが、いずれの形態にもそれぞれメリット・デメリットがあります。

そのため、会社形態を選ぶ際は、事業の目的、資金調達のニーズ、経営者の意向などを踏まえて、どの形態が最も適しているかを慎重に判断しましょう。

この記事では各会社形態の特徴を解説しましたが、実際にどの形態を選ぶかは専門家との相談を通じて、より深く検討することをおすすめします。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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