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起業・開業
資金調達の種類とは?調達方法やポイント、注意点についても徹底解説

読了目安時間:約 8分
資金調達にはさまざまな方法があり、企業の成長段階や経営状況に応じて適切な手段を選ぶことが重要です。
資金の確保が遅れると、事業の拡大や新しい取り組みの機会を逃す可能性もあるため、計画的な準備が求められます。
本記事では、代表的な資金調達方法の種類に加え、検討する際のポイントについても解説します。これにより、貴社の状況に適した資金調達判断の助けとなれば幸いです。
目次
資金調達方法の種類とは?
資金調達方法の種類は一般的に、次の4つの形態に大別されます。
- 種類①:デットファイナンス
- 種類②:エクイティファイナンス
- 種類③:アセットファイナンス
- 種類④:その他
それぞれの特徴について、順に解説していきます。
種類①:デットファイナンス
デットファイナンスとは、資金の借入れを指し、金融機関などから一定期間内の返済を前提として資金を借り入れる方法です。
通常、利息は経費として計上できるため、法人税の計算上、課税所得を圧縮できる場合があります。ただし、効果の程度は企業の収益状況や借入額によって異なります。
また、借入の場合、貸し手が通常は経営に直接関与しないため、経営権を維持しやすいという特徴があります。
さらに、金融機関や制度融資など複数の選択肢があり、金利や返済条件を比較検討することで、自社の状況に適した条件を見つけやすいといえます。ただし、融資の審査基準は金融機関ごとに異なるため、比較検討は慎重に行うべきです。
なお、借入にはリスクも伴います。保証や担保を求められるケースや、企業の信用状況によっては融資を受けられない場合もあります。特に返済負担が大きすぎるとキャッシュフローに悪影響を及ぼす可能性があるため、慎重な資金計画が不可欠です。
参考:J-Net21|デット・ファイナンスとエクイティ・ファイナンスの違い
種類②:エクイティファイナンス
エクイティファイナンスとは、会社が自己資本を増やすことで資金を確保する手法の一つです。
代表的な例としては、株式の新規発行による資金調達が挙げられます。
この方法は、借入れと異なり原則として返済義務を伴わない点が特徴です。ただし、出資者は株主として議決権を持つため、企業の意思決定に影響を及ぼす可能性があります。そのため、発行済株式総数や出資比率の設計は、資金調達だけでなく経営権の維持という観点からも重要な検討事項となります。
種類③:アセットファイナンス
アセットファイナンスとは、企業が保有する不動産などの資産を活用して資金を調達する方法の一つです。
例えば、不動産を「特別目的会社(SPC)」に移転し、その資産価値やそこから得られるキャッシュフローをもとに金融機関や投資家から資金を調達するといったスキームがあります。この手法の特徴は、企業自身の信用力だけに依存せず、資産そのものの価値を重視して資金調達できる点にあります。
また、スキームの組成によっては、一定の条件下でバランスシートへの負債計上を抑えられるケースもあるため、柔軟な資金調達手段として利用されることがあります。ただし、会計処理や契約条件によって取扱いが異なるため、導入にあたっては専門家への相談が望ましいです。
種類④:その他
補助金・助成金は業種や規模によって利用条件が異なりますが、資金調達の選択肢として有効です。
例えば、製品やサービスの革新を後押しする「ものづくり補助金」や、経営の引継ぎを支援する「事業承継・引継ぎ補助金」など、さまざまな制度があります(年度や制度により内容は変更されることがあります)。
申請には、必要書類の準備や対象条件の確認が不可欠であり、税理士などの専門家に相談することで、書類作成や手続きの不安を軽減できます。なお、補助金・助成金の申請には提出期限や審査基準が設定されているため、申請前に各制度の詳細条件を必ず確認してください。
参考:ものづくり補助金
資金調達の方法
資金調達の方法には、企業の状況や目的に応じてさまざまな選択肢があります。代表的な方法として、以下の7つが挙げられます。
- 融資
- 制度融資
- 増資
- クラウドファンディング
- M&A
- 社債
- 補助金・助成金
資金調達の方法についてそれぞれ詳しく解説していきます。
融資
事業資金を調達する方法の一つとして、融資があります。金融機関から資金を借り入れることで、事業運営に必要な資金を確保する仕組みです。
具体的な融資方法には、以下があります。
融資方法 | 内容 |
---|---|
日本政策金融公庫 | 政府が運営する金融機関で、創業を目指す人や個人事業主に対してさまざまな融資を用意。担保や保証人が不要なケースも多く、創業段階から利用しやすい。 |
銀行 | 都市銀行や地方銀行などの民間金融機関。主に信用保証協会の保証を利用する「保証付き融資」と、銀行が直接リスクを負う「プロパー融資」の二種類がある。 |
信用金庫 | 地域密着型の金融機関で、地元での活動を重視する事業者には有利な融資方法。創業直後の事業者にも、保証付き融資が案内されるケースがある。 |
起業間もない方や初めて融資を利用する場合、民間の銀行や信用金庫では「保証付き融資」を勧められるケースが多くありますが、保証付き融資を利用する場合は、信用保証協会への「信用保証料」が必要となるため、事前に金額を確認しておくことが大切です。ただし、自治体の制度融資などでは補助がある場合もあるため、事前に条件を確認してください。
一方、日本政策金融公庫の創業融資は、信用保証協会を経由せず直接融資が行われるため、創業段階でも利用しやすい制度とされています。ただし、審査の結果、融資が必ず実行されるわけではないことに留意してください。
制度融資
制度融資とは、地方自治体と民間の金融機関、そして信用保証協会が連携して提供する公的な融資制度です。特に、創業間もない事業者や資金調達が初めての方にとっても利用しやすい仕組みであるのが特徴です。
制度融資の条件や利率は自治体ごとに異なり、一律には定められていません。一般的には民間の融資に比べて低めの金利で設定されることが多く、事業主の返済負担を軽減できる可能性があります。具体的な利率や保証内容については、各自治体や金融機関の情報を確認することが重要です。
一方で、申込から融資実行までに一定の時間を要する場合があり、場合によっては数か月かかることもあります。そのため、制度融資を利用する場合は、事前に資金繰り表を作成し、融資実行のタイミングが事業運営に影響を及ぼさないかを確認しておくことが大切です。
増資
増資とは、企業が新たに株式を発行し、それを投資家に購入してもらうことで資金を調達する方法です。
特徴として、借入と異なり返済義務がないことが挙げられます。一方で、株式の発行は会社の所有権の一部を譲渡することになるため、発行後の株主構成によっては議決権や経営への影響が生じる場合があります。そのため、株式の分配には慎重な配慮が必要です。
増資の実務手続きとしては、株主総会の特別決議、株式払込手続き、および変更登記(資本金や発行済株式数の変更)を行う必要があります。これらの手続きには法律上の要件があり、税務上の影響も生じる場合があるため、事前に専門家への相談が推奨されます。
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットを活用して多くの個人から資金を募る資金調達の方法です。
クラウドファンディングの主な種類は次の4つに分類されます。
種類 | 内容 |
---|---|
寄付型 | 起案されたプロジェクトに対し、支援者がお金を寄付する仕組み。支援を集めるには魅力的なアイデアや商品が必要。 |
購入型 | 支援者は見返りとしてプロジェクトに関連する商品やサービスなどのリターンを受け取れる。リターンの工夫によって支援を集める仕組み。 |
融資型 | 個人投資家や複数の支援者から資金を借り入れる形式。銀行融資と同様に利息が発生するが、案件や条件によって金利は異なる。 |
投資型 | 未上場企業が個人投資家から出資を募り、株式や新株予約権などを提供する形式。通常の増資とは異なる点に注意が必要。 |
クラウドファンディングのメリットとしては、複数の投資家から小口で資金を集めやすく、内容によっては多くの資金を調達することも可能です。一方で、予想したほど資金が集まらないリスクや資金の使い道が限定されたり、融資型では高い金利が負担となったりすることもあります。
M&A
M&Aは、「合併」や「買収」を指し、自社以外の企業を自社に統合したり、または自社と統合したりする行為です。一般的に事業規模の拡大を目的として実施されることが多いですが、場合によっては資金調達に結びつくケースもあります。
特に「事業譲渡(事業の売却)」により、収益性の低い部門や本業とは異なる事業を売却することで、まとまった資金を確保できる場合があります。一般的には黒字かつ将来性のある事業が高く評価されやすいですが、赤字事業であっても買い手側に戦略的価値やシナジー効果がある場合は、売却が成立することもあります。
ただし、事業譲渡に伴う譲渡益課税や契約上のリスクも存在するため、税務や法務の専門家と相談のうえ慎重に進めるのが望ましいです。
社債
企業が資金を調達する手段の一つに社債の発行があります。社債は、銀行融資とは異なり、個人や法人などの投資家に向けて債券を販売することで資金を調達する方法です。
通常、社債には償還日が設定されており、その期日までに元本を返済する必要があります。なお、償還期限がない「永久債」と呼ばれる特殊な社債も存在します。
社債には定期的な利息の支払い義務があり、利息支払額は法人税上、損金として計上できる場合があります。
社債は、公募(多数の投資家向け)と私募(限られた投資家向け)の2種類に大別されます。公募社債は信用力の高い企業で発行されることが多い一方、比較的新しい企業や知名度の低い企業では、私募社債として限られた投資家に販売するケースが一般的です。
補助金・助成金
補助金・助成金は、国や地方自治体が提供する支援策で、地域の産業振興や経済の活性化を目的に、起業家向けの多様な制度が用意されています。
特に地方自治体では独自の補助制度を設けている場合もあり、地域密着型のビジネスを計画している方にとって参考になるケースがあります。
補助金や助成金を活用するメリットの一つとして、原則として返済の義務がない点が挙げられます。そのため、自己資金や融資が難しい創業初期の資金調達手段として、積極的に検討する価値があります。
ただし、申請条件を満たさない場合や不正受給の場合には返還が求められることがあるので注意が必要です。
資金調達をおこなう際のポイント
資金調達を行う際には、以下の3つのポイントが重要です。
- 資金調達の目的を明確にする
- 現実的で説得力のある事業計画書を作成する
- 専門家のサポートを活用する
それぞれのポイントについて解説していきます。
資金調達の目的を明確にする
資金調達を行う際のポイントの一つに、資金を調達する目的を明確にすることが挙げられます。
金融機関は、申込者による資金の具体的な利用計画を重視し、融資の可否を審査します。したがって、資金使途を具体的かつ明確に示すことが審査通過の重要なポイントとなります。
そのため、資金の用途や必要額を事前に整理し、事業計画書や見積書などで具体的に示すことが重要です。
目的が明確であれば、必要な資金額も把握しやすくなり、適切な資金計画を立てることができるでしょう。
現実的で説得力のある事業計画書を作成する
資金調達を行う際には、説得力のある事業計画書の作成が重要です。
事業計画書は、金融機関や補助金・助成金の審査担当者に対して、事業の方向性や成長可能性を伝える資料として活用されます。そのため、事業の仕組みや対象市場、他社との差別化、収益構造などを、具体的な数値や根拠をもとに整理することが求められます。
また、資金をどのように活用するかも明確に記載することが重要です。マーケティング戦略や製品・サービスの開発、人材確保など実行する具体的な取り組みと期待される成果を明確に記載することで、審査担当者からの理解や信用を得やすくなります。
専門家のサポートを活用する
資金調達を進める際には、専門家の支援を受けることで、手続きや書類作成の負担を軽減し、安心かつ効率的に資金調達の準備を進められます。
資金調達を円滑かつ効果的に進めるためには、税務・法務・財務といった多方面にわたる高度な知識が求められるため、税理士や弁護士、ファイナンシャルアドバイザー、経営コンサルタントといった専門家との密な連携が有効です。
特に税務や財務の知識は重要で、資金計画の作成や投資家向け資料の準備、契約内容の確認などにおいて、税理士のアドバイスを受けることで、より正確で信頼性の高い資料を整えることが可能です。
資金調達をおこなう際の注意点
資金調達を行う際には、以下の2点に注意しましょう。
- キャッシュフローの見直しをおこなう
- 返済計画を立てておく
それぞれの注意点について解説していきます。
キャッシュフローの見直しをおこなう
デットファイナンスでは、利息支払い義務および元本の定期返済が発生するため、その負担が経営のキャッシュフローに与える影響を事前に十分確認することが重要です。そして、年間を通じた資金の必要量を把握し、資金繰りに無理が生じないよう、キャッシュフローの見直しを行うのが望ましいです。
キャッシュフロー計算書や資金繰り表を正確に作成することで、計画的な財務管理をおこなえるようになるでしょう。
また、資金繰り表を作成する際には、将来の収支をどれだけ現実的に見積もれるかが重要です。特に、不確定要素を含む予算については、一般的には保守的に見積もることが推奨されます。
状況が変化した場合には、速やかに予算の見直しをおこない、最新の経営状況を反映した資金管理を検討するとよいでしょう。
返済計画を立てておく
融資を受ける際は、金融機関が返済能力を重視して審査をおこなうため、現実的な返済計画を事前に準備しておくことが重要です。
融資を用いた事業拡大にあたっては、取引先や事業リスクの偏りなども踏まえ、収支の見通しを慎重に立てることが望ましいでしょう。また、予測収益が下振れた際のリスクを踏まえ、返済額や期間において一定の余裕や調整可能性を考慮した返済計画を立てることが望ましいです。
返済計画をより現実的なものにするためには、定期的に事業内容や財務状況を確認し、必要に応じて見直すことをおすすめします。
自分の状況に適している資金調達を検討しよう!
今回は、資金調達方法の種類についてご紹介しました。
事業資金をどのように調達するかは、企業の形態や経営状況によって最適な方法が異なります。特に、開業したばかりの個人事業主や設立間もない法人では、利用できる手段が限られる場合もあります。
そのため、資金調達を検討する際は、コストや手間を踏まえ、事業に適した方法を慎重に見極めることが大切です。また、デットファイナンス(借入)を活用する場合は、返済計画を事前に立てることで、資金繰りへの負担を最小限に抑えることができます。
必要に応じて税理士などの専門家に相談することで、より安心して資金調達を進められます。今回の記事を参考に、自社に合った資金調達方法を検討してみてください。
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- さらに会社設立してからも一気通貫で支援
この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。