2026.06.13

法人化

越境EC・輸出ビジネスは法人化すべき?消費税還付のメリットを解説

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読了目安時間:約 12分

越境ECビジネスの拡大と「法人化」の壁

eBayやAmazon輸出、Shopifyなどを活用した越境ECビジネスは、世界中の市場をターゲットにできる魅力的な事業です。円安の追い風もあり、海外向けに物販を展開して売上を大きく伸ばしている個人事業主の方も多いのではないでしょうか。

事業が軌道に乗り、売上規模が拡大してくると、多くの事業者が直面するのが越境EC 法人化のタイミングです。個人事業主のままビジネスを進めるべきか、会社を設立して法人として展開すべきか、その判断に迷うケースは少なくありません。

法人化には社会的信用の向上や所得税負担の軽減など様々なメリットがあります。その中でも、輸出ビジネスにおいて最も注目すべきなのが「消費税還付(輸出免税)」の仕組みをいかに有利に活用するかという点です。

輸出ビジネス最大の強み「消費税還付」とは

国内で商品を仕入れて海外へ販売する輸出取引は、日本の消費税が免除される「輸出免税」の対象となり、海外のお客様から消費税を預かることはありません。一方で、国内での商品仕入れや梱包資材の購入、国内配送料などの経費には消費税が含まれています。

この「国内で支払った消費税」について、所定の手続きを行って確定申告をすることで、国から還付(返金)を受けることができるのが消費税還付の仕組みです。消費税の還付金を受け取ることで実質的な仕入れコストが下がり、利益率の向上や海外市場での価格競争力の強化に直結します。

国税庁の規定にもある通り、輸出免税の適用を受けるためには、輸出許可書などの証明書類を適切に保存し、正しい申告手続きを行う必要があります。詳細な要件については、国税庁の「輸出免税」に関する解説ページもあわせてご参照ください。

この記事でわかること:最適なタイミングと手続き

消費税還付のメリットを最大限に活かすためには、単に会社を設立するだけでなく、「いつ法人化するか」「どのような届出をいつまでに提出するか」という戦略が非常に重要になります。手続きの期限を一日でも過ぎてしまうと、翌期の還付金が受け取れなくなるリスクもあるため注意が必要です。

本記事では、これから法人化を検討している個人事業主や、創業期のスタートアップ担当者に向けて、消費税還付を効率よく受けるための実務知識を網羅的に解説します。

  • 消費税還付を最大化する法人化の最適なタイミング
  • 設立1期目から確実に還付を受けるための資本金条件
  • 「消費税課税事業者選択届出書」の提出期限と手続き方法
  • 個人事業主から法人成りする際の免税期間の戦略的活用法
  • 還付を受けるための「原則課税」の選択と注意点

これらのポイントを押さえることで、越境ECにおける法人化のメリットを確実なものとし、事業のさらなる成長に繋げることができるはずです。ただし、税務上の判断は個別の売上状況や仕入れ構造によって大きく異なるため、最終的な手続きや判断は税理士などの専門家へご相談いただくことをおすすめします。

1. 越境EC・輸出ビジネスにおける「消費税還付」の仕組みとメリット

eBayやAmazon輸出、Shopifyなどを活用して海外市場へ挑戦する事業者が増えています。

越境ECビジネスを有利に進める上で、経営戦略として絶対に押さえておきたいのが「消費税還付」の制度です。特に事業規模が拡大し、越境EC 法人化を検討するフェーズにおいては、この還付金をいかに効率よく受け取るかが資金繰りを大きく左右します。

ここでは、なぜ消費税が戻ってくるのか、その「輸出免税」の仕組みと、ビジネスにもたらす具体的なメリットについて詳しく解説します。

1-1. なぜ消費税が戻ってくる?「輸出免税」の仕組み

日本の消費税は、原則として「日本国内において消費される商品やサービス」に対して課される税金です。そのため、海外の顧客に向けて商品を販売する越境ECなどの輸出取引は、日本国内で消費されないため消費税が免除されます。

この仕組みは「輸出免税」と呼ばれており、輸出取引における消費税率は0%として扱われます。

一方で、事業者が商品を国内で仕入れたり、梱包資材を購入したり、国内の発送代行サービスを利用する際には、通常通り10%(または8%)の消費税を支払っています。

通常の国内販売であれば、顧客から預かった消費税から、仕入れ等で支払った消費税を差し引いた差額を国に納付します。しかし、輸出ビジネスの場合は顧客から預かる消費税がゼロになるため、計算上、仕入れや経費で支払った消費税分が丸ごとマイナス(払い過ぎの状態)となります。

この払い過ぎた消費税について、所定の手続きを経て確定申告を行うことで、国から返金(還付)を受けることができるのです。これが消費税還付の基本的なプロセスです。

輸出免税の適用を受けるためには、その取引が輸出取引等であることの証明が必要です。輸出許可書や、税関長から交付される輸出証明書などを7年間保存することが義務付けられています。
出典:国税庁「輸出免税の要件」

取引の形態 売上の消費税(預かる税) 仕入の消費税(支払う税) 消費税の申告・納付結果
国内での販売 10%を預かる 10%を支払う 差額を国へ納付する
海外への輸出(越境EC) 0%(免税) 10%を支払う 支払った分が還付される

1-2. 消費税還付がもたらすビジネス上のメリット

消費税還付を受けることは、越境EC事業者にとって単なる「税金が戻ってくる」という以上の大きな意味を持ちます。最大のメリットは、実質的な仕入れコストの引き下げ効果です。

例えば、国内の問屋から11,000円(税込)で商品を仕入れた場合、そのうち1,000円は消費税です。還付申告を行ってこの1,000円が手元に戻れば、実質的な仕入れ原価は10,000円となります。仕入れ規模が月間数百万円になれば、数十万円単位の資金が戻ってくるため、利益率が大きく向上します。

さらに、還付によって手元に残る資金は、海外市場での価格競争力強化に直結します。

還付される金額をあらかじめ見込んで値下げの原資とし、ライバルより安く販売してシェアを拡大したり、海外向けの広告宣伝費に再投資したりすることで、ビジネスの成長スピードを劇的に加速させることが可能です。

個人事業主から越境EC 法人化へステップアップする際にも、この消費税還付のメリットを最大限に活かす事業計画が不可欠です。ただし、還付を受けるためには「課税事業者」である必要があり、手続きのタイミングを誤ると還付を受けられない期間が生じるため注意が必要です。

還付制度を確実にビジネスへ組み込むために、以下のポイントを確認しておきましょう。

  • 輸出免税の適用要件(輸出許可書や国際郵便の控え等の保存)を満たせる管理体制があるか
  • 仕入れや経費にかかった消費税額を正確に区分し、日々の帳簿付けを行っているか
  • 還付される見込み額を、商品の価格設定やマーケティング費用にどう組み込むか
  • 法人化する場合、設立1期目から還付を受けるための届出スケジュールを把握しているか

消費税の還付申告は、不正受給を防ぐ目的から通常の確定申告よりも税務署の審査が厳しくなる傾向があります。書類の不備や要件漏れを防ぎ、スムーズに還付を受けるためにも、輸出ビジネスの税務に強い税理士などの専門家に事前相談することをおすすめします。

国内仕入れから海外輸出、そして消費税還付までの流れを示す図解

2. 越境ECで効率よく還付を受けるための「法人化」最適なタイミング

eBayやAmazon輸出、Shopifyなどを活用した越境ECビジネスでは、仕入れにかかった消費税の還付(輸出免税)を受けることが利益率向上の鍵となります。

この還付メリットを最大化するためには、法人設立のタイミングや資本金の額、そして各種届出の提出期限を正確に把握しておく必要があります。ここでは、設立初期から効率よく還付を受けるための実務的なポイントを解説します。

2-1. 設立1期目から還付を狙う場合の法人設立ルール

消費税の還付を受けるための大前提として、事業者が「消費税の課税事業者」であることが求められます。免税事業者のままでは、いくら輸出売上があっても消費税の還付申告を行うことはできません。

新設法人の場合、資本金の額によって1期目から課税事業者になるためのルールが異なります。設立初年度からスムーズに還付を受けるためには、以下の2つのパターンを理解して手続きを進めることが重要です。

パターンA:資本金1,000万円未満で設立する場合
資本金1,000万円未満で法人を設立した場合、原則として設立から最大2年間は「免税事業者」となります。しかし、越境ECで初期から多額の仕入れが発生し、すぐに還付を受けたい場合は、あえて免税事業者のメリットを放棄する必要があります。

具体的には、設立事業年度の末日までに管轄の税務署へ「消費税課税事業者選択届出書」を提出することで、自ら課税事業者となり、1期目から還付を受けることが可能になります。提出期限を1日でも過ぎると、その事業年度の還付は受けられなくなるため注意が必要です。

パターンB:資本金1,000万円以上で設立する場合
一方、資本金1,000万円以上で法人を設立した場合は、新設法人の特例により、設立1期目から自動的に課税事業者となります。

この場合、「消費税課税事業者選択届出書」を提出しなくても、最初から消費税の還付申告を行うことができます。ただし、資本金が大きくなることで、法人住民税の均等割が高くなるなどの別の税務上の影響も生じるため、全体のバランスを考慮して資本金額を決定する必要があります。

設立時の資本金 1期目の消費税の扱い 還付を受けるための手続き
1,000万円未満 原則として免税事業者 期末までに「課税事業者選択届出書」を提出
1,000万円以上 自動的に課税事業者 特段の届出なしで還付対象となる
  • 設立事業年度の末日がいつかを確認し、提出期限をスケジュールに組み込む
  • 「消費税課税事業者選択届出書」の記載内容に漏れがないか確認する
  • 資本金1,000万円以上にする場合、法人住民税等の増加コストを試算する
  • 設立直後の仕入れ額と還付見込み額をシミュレーションする

2-2. 個人事業主からの「法人成り」最適なタイミング

個人事業主として越境ECビジネスをスタートし、順調に売上が拡大してきた場合、どのタイミングで法人化(法人成り)すべきかが重要な経営課題となります。

一般的に、個人事業主の所得税負担が重くなる「課税売上高が1,000万円を超えたタイミング」や「事業所得が800万円を超えたタイミング」が、法人化を検討する一つの目安とされています。法人税の税率は所得税の累進課税に比べて一定水準に抑えられているため、利益が大きくなるほど法人化による節税効果が高まります。

また、個人事業主から法人成りする際の一般的な節税スキームとして、免税期間の戦略的な活用があります。個人事業主としての免税期間を使い切った後に法人化することで、さらに法人としての免税期間を活用し、消費税の納税を免除されるという手法です。

しかし、越境EC 法人化において「消費税の還付」を優先する場合は、このセオリーが当てはまらないケースがあります。

国内販売メインのビジネスであれば免税期間を長く享受する方が有利ですが、輸出メインの越境ECでは、免税事業者のままだと仕入れにかかった消費税の還付を受けられません。多額の仕入れ消費税が発生するビジネスモデルでは、あえて免税期間を放棄して課税事業者を選択した方が、トータルの手元資金が多く残る可能性があります。

消費税の還付を受けるためには、課税事業者であることに加えて、消費税の計算方法として「原則課税」を選択している必要があります。「簡易課税制度」を選択していると、実際の仕入れにかかった消費税額をもとにした還付申告ができなくなるため、事前の届出状況には十分注意してください。

個人事業主のまま還付を受け続けるべきか、法人化して新たな体制で還付を狙うべきかは、事業の成長スピードや仕入れの規模、役員報酬の設定などによって最適解が異なります。最終的な判断や詳細なシミュレーションについては、越境ECの税務に明るい税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

個人事業主から法人成りへのステップ、または設立1期目の資本金による違いを示す比較表

3. 消費税還付を受けるための必須手続きと「課税事業者」の選択

越境ECの輸出免税を活用して消費税の還付を受けるためには、単に輸出事業を行っているだけでは足りません。還付の前提として、自社が消費税の「課税事業者」であり、かつ正しい計算方法を選択している必要があります。

ここでは、還付を確実に受けるための必須手続きと、制度の落とし穴について詳しく解説します。

3-1. 「消費税課税事業者選択届出書」の役割と提出期限

原則として、資本金1,000万円未満で新設した法人や、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の事業者は「免税事業者」となります。免税事業者は消費税の納税義務が免除される一方で、仕入れ時に支払った消費税の還付を受けることもできません。

そこで、売上規模が小さく本来は免税事業者であっても、自ら進んで課税事業者になるための手続きが必要になります。そのための書類が「消費税課税事業者選択届出書」です。

この届出書を管轄の税務署に提出することで、免税事業者であっても課税事業者として扱われ、輸出ビジネスにおける消費税還付の恩恵を受けられるようになります。越境EC 法人化のメリットを最大限に引き出すためには、この届出が極めて重要なステップとなります。

注意すべきは、この届出書の提出期限が非常に厳格に定められている点です。期限を1日でも過ぎてしまうと、その課税期間(事業年度)における消費税還付は一切受けられなくなります。

提出期限は、適用を受けたいタイミングによって以下のように異なります。

  • 新規設立(開業)した第1期目から適用を受けたい場合:その事業年度(課税期間)の末日まで
  • 翌期(第2期以降)から適用を受けたい場合:適用を受けようとする課税期間が始まる前日まで

例えば、3月決算法人が翌期の4月1日から課税事業者になりたい場合、3月31日までに届出書を提出しなければなりません。

手続きの遅れは数百万円規模のキャッシュロスの原因となることもあります。設立時のスケジュール管理には十分注意し、必要に応じて税理士などの専門家と連携しながら進めましょう。

詳細な要件や届出書のフォーマットについては、国税庁の[手続名]消費税課税事業者選択届出手続をご確認ください。

3-2. 還付を受けるなら「原則課税」一択である理由

課税事業者になった後、次に注意すべきなのが消費税の「計算方法」の選択です。消費税の計算方法には、大きく分けて「原則課税」と「簡易課税」の2種類が存在します。

原則課税は、売上でお預かりした消費税から、仕入れや経費で実際に支払った消費税を差し引いて計算する方法です。越境ECのような輸出事業では、売上の消費税が免税(0%)となるため、差し引くべき仕入れ税額の方が大きくなり、結果としてマイナスとなった分が還付されます。

一方、簡易課税は、中小事業者の事務負担を軽減するために設けられた特例制度です。実際の仕入れ税額を計算せず、売上でお預かりした消費税に、業種ごとに定められた「みなし仕入率」を掛けて納付税額を機械的に計算します。

ここで大きな落とし穴となるのが、簡易課税を選択していると、実際の仕入れ税額に関わらず還付が受けられないという点です。簡易課税の計算式では、構造上マイナス(還付)が発生しない仕組みになっています。

以下の表で、両者の違いを確認しておきましょう。

計算方法 仕入控除税額の計算基準 消費税還付の有無 事務負担
原則課税 実際に支払った消費税額 還付を受けられる(輸出免税の場合) 帳簿づけやインボイス管理の手間が大きい
簡易課税 売上税額 × みなし仕入率 還付を受けられない 仕入れの消費税を計算しなくてよいため比較的楽

eBayやAmazon輸出、Shopifyなどで海外向けに物販を行っている場合、仕入れにかかった消費税の還付を受けることが利益に直結します。そのため、日々の事務負担が増えたとしても、必ず「原則課税」を適用する必要があります。

過去に国内向け物販をメインにしていて簡易課税を選択していた方が、越境ECに事業をピボットする際などは特に注意が必要です。一度簡易課税を選択すると、原則として2年間は変更できない縛りがあるため、事業計画と照らし合わせて慎重に判断しなければなりません。

消費税の仕組みは非常に複雑であり、選択を誤ると取り返しのつかない損失を招く恐れがあります。課税事業者の選択や計算方法の決定については、最終的に税理士などの税務の専門家に相談し、自社の状況に合った最適な判断を行うことを強くお勧めします。

簡易課税制度の仕組みやみなし仕入率についての詳細は、国税庁のNo.6505 簡易課税制度をご参照ください。

「原則課税」と「簡易課税」の違い、および届出書の提出期限のタイムライン図

5. 個人事業主と法人どちらが有利?越境ECにおける比較シミュレーション

eBayやAmazon輸出、Shopifyなどを活用した越境ECビジネスが軌道に乗ってくると、個人事業主のまま事業を続けるべきか、法人化すべきかという選択に直面します。

越境EC 法人化のタイミングは、単なる利益額だけでなく、海外プラットフォームでの取引条件や消費税還付の仕組みなど、多角的な視点で判断する必要があります。

ここでは、個人事業主と法人それぞれの特徴を比較し、事業規模の拡大に向けた最適な選択をするためのポイントを詳しく解説します。

5-1. 法人化による税制面・信頼面でのメリット

法人化による最大のメリットは、税負担の最適化と社会的信用の向上です。特に利益が大きくなるにつれて、個人事業主よりも法人のほうが税制面で有利になる傾向があります。

個人事業主の所得税は「累進課税」となっており、所得が増えれば増えるほど税率が高くなります。最大で所得税45%に住民税10%が加わり、最高55%の税負担となります。

一方、法人税は実質的に比例税率に近く、資本金1億円以下の中小法人の場合、年800万円以下の所得に対しては15%(本則19%)、800万円を超える部分については23.2%の税率が適用されます。

そのため、一般的に事業所得が800万円から1,000万円を超えたあたりが、法人成りによる節税効果を実感しやすいタイミングとされています。法人税の税率(国税庁)も併せてご確認ください。

また、経費として認められる範囲が広がることも大きな魅力です。経営者自身に「役員報酬」を支払うことで、法人側の経費(損金)に算入しつつ、個人側では給与所得控除を受けられるため、所得を分散して税負担を軽減できます。

さらに、要件を満たせば自宅の一部を社宅として経費化する「役員社宅」の制度や、将来の「役員退職金」を損金として準備することも可能になります。

越境EC特有の視点として、輸出免税による「消費税還付」を戦略的に活用できる点も見逃せません。個人事業主としての免税期間を終えた後に法人化(法人成り)することで、事業のフェーズに合わせた有利な選択が可能になります。

ただし、輸出をメインとする越境ECでは、仕入れにかかった消費税の還付を早く受けるために、あえて設立1期目から「消費税課税事業者選択届出書」を提出し、課税事業者となる戦略を取るケースも多く見られます。

信頼面においても、法人化は大きな武器となります。海外の仕入先や卸売業者と直接取引をする際、個人事業主よりも法人組織のほうが契約のハードルが下がりやすくなります。

AmazonやeBayなどの海外プラットフォームにおけるアカウント審査や、事業拡大に向けた日本政策金融公庫・民間金融機関からの資金調達においても、法人としての「社会的信用」は非常に有利に働きます。

5-2. 法人化に伴うコストとデメリット

税制面や信用面で多くのメリットがある一方で、法人化には特有のコストや事務負担の増加というデメリットも存在します。これらを事前に把握し、事業の利益率と照らし合わせてシミュレーションすることが重要です。

まず、会社を設立する初期費用がかかります。株式会社を設立する場合は定款認証手数料や登録免許税などで約25万円、合同会社の場合は約10万円が最低でも必要になります。

維持コストの面では、法人は赤字であっても「法人住民税の均等割」として、年間約7万円を納付する義務があります。個人事業主であれば赤字の年の住民税は非課税になることが多いため、この点は法人特有の負担と言えます。

さらに大きな負担となるのが「社会保険の加入義務」です。法人の場合、社長(役員)1名だけの会社であっても、健康保険と厚生年金保険への加入が法律で義務付けられています。

社会保険料は会社と個人で折半となりますが、会社負担分は法定福利費として支出されるため、キャッシュフローに与える影響をあらかじめ計算しておく必要があります。

また、法人の決算申告は個人の確定申告(青色申告)と比べて非常に複雑です。消費税還付の申告を含めると専門的な知識が不可欠となるため、税理士への依頼がほぼ必須となります。

税理士に依頼する場合、月額の顧問料に加えて年1回の決算申告料が発生し、年間で数十万円から100万円程度のランニングコストが追加でかかることを想定しておかなければなりません。

個人事業主と法人の主な違いを以下の表にまとめました。ご自身の事業規模や今後の目標に照らし合わせて比較してみてください。

比較項目 個人事業主 法人(株式会社・合同会社)
税金の仕組み 所得税(累進課税:最大45%+住民税10%) 法人税(実質比例税率:年800万円以下は軽減税率)
経費の範囲 事業に直接関係するものに限定 役員報酬、退職金、社宅など幅広く認められやすい
社会保険 国民健康保険・国民年金 健康保険・厚生年金(役員1名でも加入義務あり)
赤字時の税負担 所得税・住民税は原則かからない 法人住民税の均等割(年約7万円)が発生
設立・維持の手間 開業届の提出のみ(無料)、確定申告も比較的容易 設立費用(約10万〜25万円)、税理士報酬などの維持費が必要
社会的信用 法人に比べると低い 高い(海外取引、融資、プラットフォーム審査で有利)

法人化を検討する際は、目先の節税効果だけでなく、将来の事業展開や資金繰りを含めた総合的な判断が求められます。以下のチェックポイントを確認し、現在の状況を整理してみましょう。

  • 年間事業所得が800万円〜1,000万円を超えそうか
  • 越境ECの輸出免税による消費税還付額と、税理士報酬などの維持コストのバランスは取れているか
  • 海外取引先との直接契約や、金融機関からのまとまった資金調達を直近で予定しているか
  • 役員報酬の支払いと社会保険料の会社負担分を考慮しても、十分なキャッシュフローが残るか

法人化による税効果や社会保険料の負担増減は、個々の売上規模や家族構成、事業形態によって大きく異なります。最終的な法人化のタイミングや形態については、越境ECの実務に詳しい税理士などの専門家に事前にシミュレーションを依頼し、慎重に判断することをおすすめします。

6. まとめ:越境ECの法人化と消費税還付でビジネスを加速させよう

eBay、Amazon輸出、Shopifyなどを活用して海外へ商品を販売する越境ECビジネスにおいて、消費税還付(輸出免税)は利益率を大きく左右する重要な要素です。

国内で仕入れた商品や経費の支払いに含まれる消費税が手元に戻ってくる仕組みは、事業の資金繰り改善に直結します。このメリットを最大限に活かすためには、適切なタイミングでの越境EC 法人化と、計画的な税務手続きが欠かせません。

本記事で解説してきたように、法人設立のタイミングには主に2つの戦略があります。設立1期目からすぐに還付を受けたい場合は、資本金要件や届出の期限に十分注意して手続きを進める必要があります。

一方で、個人事業主としての免税期間を使い切った後に法人成りをする方法も、トータルでの税負担を抑える有効な選択肢です。自社の売上規模や今後の事業計画に照らし合わせて、最適な道を選択してください。

ポイント 内容・条件 注意点
還付の仕組み 輸出免税を利用し仕入税額を控除 原則課税の選択が必須(簡易課税は不可)
1期目からの還付 設立事業年度末までに届出、または資本金1,000万円以上 要件を満たさないと1期目は還付対象外
課税事業者の選択 消費税課税事業者選択届出書を提出 適用を受けたい期間の開始前日までに提出

確実に還付を受けるために最も注意すべきなのは、税務署への届出期限です。「消費税課税事業者選択届出書」の提出が1日でも遅れると、その期の消費税還付は一切受けられなくなります。

特に、売上規模が小さく本来は免税事業者となる法人が自ら課税事業者を選択する場合、手続きの漏れは大きな機会損失につながります。事前のスケジュール管理を徹底し、余裕を持って書類を準備しましょう。

また、消費税の還付申告を行うと、不正な還付を防ぐために税務署による審査や税務調査の対象となる確率が高まる傾向にあります。輸出を証明する書類の正確な保存と、適正な経理処理が求められます。

輸出免税の適用を受けるためには、その輸出取引等が輸出免税の対象となるものであることを証明する書類(輸出許可書や税関長が証明した書類など)を、確定申告書の提出期限から7年間保存する必要があります。
参考:国税庁|No.6551 輸出免税

このような手続きの複雑さや税務調査への対応リスクを考慮すると、経営者ご自身ですべての実務を抱え込むのは得策ではありません。わずかなミスが資金繰りに悪影響を及ぼす可能性があります。

越境ECや輸出ビジネスの税務に精通した税理士などの専門家に相談することで、最適な法人化のタイミングを見極め、確実な還付申告を行う体制を整えることができます。

  • 自社の利益状況に合わせた最適な法人化(法人成り)のタイミング診断
  • 「消費税課税事業者選択届出書」など、必要な税務届出の期限管理と提出代行
  • 税務調査に備えた輸出証明書(インボイス等)の保存方法や経理体制の構築
  • 原則課税と簡易課税のシミュレーションおよび適切な選択の判断

越境ECビジネスをさらにスケールさせるためには、守りの税務を強固にし、攻めの資金繰りを実現することが重要です。手続きに不安がある場合は、早めに専門家へアドバイスを求めることをおすすめします。

信頼できる専門家をパートナーに迎え、法人化と消費税還付の仕組みを味方につけて、海外市場でのさらなる飛躍を目指しましょう。

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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