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法人口座の審査は厳しいの?落ちる原因と対策を徹底解説

読了目安時間:約 6分
会社設立をしたら、金融機関で法人口座を開設したいと考える人が多いのではないでしょうか。しかし、法人口座の審査は厳しいという噂を耳にするケースがあります。法人口座の審査に落ちると、法人口座を開設することはできないため、さまざまな面で支障が生じる可能性があります。では、法人口座の審査はなぜ厳しいのでしょうか。
今回は、法人口座の審査が厳しい理由や審査に落ちる原因、審査を通過するためにできる対策についてご説明します。
目次
法人口座の審査が厳しい理由とは
金融機関が法人口座開設時に厳しい審査を実施している理由は、口座の不正利用を防ぐためです。口座の不正利用にはさまざまなものがありますが、近年、特にマネーロンダリングに関する犯罪が増加傾向にあります。
マネーロンダリングとは、日本語では資金洗浄と呼ばれ、犯罪によって得たお金の出どころを分からなくするために、資金を次々と送金したり、株や債券などの購入をしたりする犯罪行為です。マネーロンダリングは、麻薬取引や組織犯罪、テロにも利用される恐れがあり、世界規模で犯罪に関与する資金の流れを厳しく取り締まる動きが強まっています。2018年には金融庁でも「マネーロンダリング及びテロ資金供与対策等に関するガイドライン」を公表しました。このガイドラインを受け、日本においても銀行口座を開設する際に厳しい審査が行われるようになったのです。
法人口座の開設審査で落ちる原因は何?
法人口座を開設する際の審査基準が厳格化していることから、口座開設の申し込みをしても、審査に落ちるケースが少なくありません。では、法人口座の開設審査で落ちる原因はどこにあるのでしょうか。
金融機関は、審査に落ちた場合でも、なぜ審査に通過できなかったのか、その理由を明かすことはありません。また、金融機関はそれぞれ独自の審査基準をもとに審査を行っています。そのため、一概に法人口座の審査に落ちる理由を挙げることはできませんが、次のようなケースに該当する場合、審査に落ちる可能性が高くなるといえます。

事業目的が不明瞭である
法人口座の開設にあたっては、金融機関の担当者との面談が行われます。この際、事業目的についての説明が不明瞭であった場合、審査に落ちる可能性があります。それは、事業目的が不明瞭な法人の場合、実際に法人として活動するのではなく、口座を不正に利用する目的で口座開設をするのではとの疑いが強まるからです。したがって、事業目的が明確でない法人の場合、法人口座の開設審査に落ちる可能性が高くなります。
資本金が少なすぎる
資本金が少なすぎても、法人口座の開設審査に落ちるケースがあります。資本金は、会社の体力を表すとも言われており、資本金の額は会社の信用にも大きく関わるものです。資本金が少なすぎる場合、法人設立後すぐに運転資金がショートしてしまう可能性もあります。
会社法の改正により、現在は、資本金が1円でも会社を設立できるようになりました。しかし、資本金が少なすぎる場合、本当に事業を営む予定があるのか、不正利用を目的に設立したペーパーカンパニーなのではないかという疑いを抱かせてしまうのです。
そのため、極端に資本金が少ない法人の場合、法人口座の開設審査に落ちる可能性があります。
本店住所と事業を行っている住所が違う
法人登記をする際には、本店をどこに設定しても構いません。そのため、実際に事業を営む場所と登記上の本店住所が異なるケースがあります。バーチャルオフィスの利用例はその1つだといえるでしょう。
バーチャルオフィスとは、場所ではなく、住所を貸し出すサービスです。法人を立ち上げる際には、できるだけコストを抑えたいという人は少なくありません。バーチャルオフィスの場合、レンタルオフィスを借りる場合に比べても賃料が安く、コストをかけずに事業用の住所を手に入れることができます。また、バーチャルオフィスで書類を受けとることもできるため、近年、利用者が急増しています。
しかしながら、登記されている本店住所と実際に事業を営んでいる場所が異なる場合、本当に事業を営んでいるのか、不正のために口座を悪用するのではと疑われる可能性が高くなります。また、登記住所で事業を行っていることが確認できない場合、法人としての信頼性も低くなります。そのため、本店住所で事業が行われていない場合、口座の開設審査に落ちる可能性があるのです。
代表者個人の経歴に問題がある
法人口座の開設審査にあたっては、法人の情報だけでなく、代表者の個人的な経歴や実績も審査の対象となります。例えば、代表者と反社会的勢力とのつながりが疑われる場合、過去に任意整理や自己破産をした経験がある場合などは、審査に落ちる可能性が高くなるといえます。
また、経歴に不審な点がない人物でも、これまでの実務経験と立ち上げた法人の事業内容に全く関連性が見られない場合などは、事業の成功見込みが低いとみなされ、審査に落ちるケースもあります。
法人口座が必要な理由とは
法人口座の開設にあたって、審査が厳しいのであれば、無理に法人口座を作る必要はないのではと思われるかもしれません。実際、法人口座を開設しなくても事業の継続は可能です。しかしながら、法人口座を開設すると、次のようなメリットが得られます。そのため、多くの企業では法人口座を開設し、事業用として使用しているのです。
社会的信用が高まる
法人口座の開設時には、金融機関の審査を受けなければなりません。法人口座があるということは、金融機関の審査を通過したことを意味し、対外的な信用度の向上につながります。
また、法人口座がない場合、取引先に入金を依頼する際に代表者の個人口座に振り込むよう伝えなければなりません。取引先としては、法人名で契約したにもかかわらず、個人名義の口座に振り込まなければならないとなると、個人と会社のお金を区別していないのではという不信感を抱く可能性もあります。
社会的信用を高めるという点において、法人口座の開設は大きな意味を持ちます。
資金管理がしにくい
代表者の個人口座を事業でも使用する場合、プライベートと会社のお金が混在するため、キャッシュフローが把握しにくくなります。また、会計処理のミスも生じやすくなるでしょう。申告書類のミスが多い場合、正しく会計処理を行っていないのではという疑いが強くなり、結果として税務署から目を付けられる可能性もあります。
融資を受けにくい
会社設立後、事業規模を拡大するために資金調達の必要性が生じ、融資の申し込みを検討するケースも出てくるでしょう。しかし、法人口座を所有していない場合、個人口座で法人の融資の申請をしなければならず、融資の審査に通りにくくなる可能性があります。まず、法人口座がない場合、法人口座の開設審査に落ちているとみなされるのです。
また、法人口座を所有し、法人口座を使って取引をしている場合、口座を持つ金融機関では、事業の実態や財務の状況を把握しやすくなります。そのため、法人口座を開設した銀行の場合、融資審査に通りやすくなると考えられるのです。反対に、法人口座がなく、個人口座で法人の融資申請をした場合には、融資を受けにくくなるといえます。
法人名義のクレジットカードが作れない
法人口座がある場合、法人名義のクレジットカードを作れます。法人カードを使って経費の支払いをする場合、法人口座から利用料が引き落とされるため、経費精算の負担を軽減できます。また、クレジットカードは口座から引き落としがされるまでタイムラグがあるため資金繰りに余裕を持たせる効果もあります。
しかしながら、法人口座を開設できない場合、法人名義のクレジットカードを作ることもできません。
厳しい法人口座の審査を通過するための対策とは
法人口座を開設できない場合、さまざまな面で事業に支障が生じます。そのため、会社を設立したのであれば、法人口座は開設した方が賢明です。では、どうすれば厳しい法人口座の審査を通過できるのでしょうか。
法人口座の開設審査に通過しやすくなるための対策をご紹介します。

不備がないよう書類の準備を進める
法人口座を開設する際には、金融機関から必要な書類についての提示があります。この際、提出する書類に不備があると、審査がスムーズに進まないだけでなく、記載内容のミスが信頼性の欠如につながり、審査に落ちるケースもあるのです。例えば、口座開設申込書に間違った住所を書いてしまった場合、提出した登記事項証明書の住所と異なるため、不正のために口座を開設するのではと疑われる可能性があります。
一般的に法人開設時に提出が必要となる書類は、次のようなものです。
・法人の登記事項証明書
・法人の印鑑登録証明書
・建物謄本もしくは賃貸借契約書
・許認可が必要な事業の許認可証
・手続き者の本人確認書類
・実質的支配者の確認ができる書類(株主名簿や有価証券報告書等)
・事業内容や事業実態の分かる書類(会社案内やホームページのURL、契約書、納税証明書等)
まずは、審査に必要な書類を確実にそろえ、記載内容についても不備がないようチェックしたうえで申請を行うことが大切です。
事業内容や計画に関する明確な説明を行う
法人口座を開設する際には、金融機関の担当者との面談の機会が設置されるケースが一般的です。この面談では、事業の内容や目的、具体的な事業計画について質問がなされます。この際、事業内容や事業計画について、明確に説明できると、金融機関の担当者も法人の実態を把握しやすくなり、審査にも通過しやすくなるでしょう。しかし、事業内容についての説明や今後の事業についての見通しが曖昧な場合、実態が伴わない企業なのではと疑われ、審査に落ちる可能性が高くなります。
今後、融資の審査を受ける場合にも事業内容や事業計画についての説明は必要です。法人口座を開設する面談の際に、自社のビジネスについて明確に説明ができなければ、企業としての将来にも不安が残ります。法人口座を開設するためだけでなく、事業を成功させるためにも、事業目的や事業計画をはっきりとさせるとともに、明確に説明できるようにしておくことも大切です。
資本金は100万円以上にする
会社設立時の資本金が少なすぎる場合、ペーパーカンパニーが疑われ、法人口座の開設審査に落ちる可能性が高くなります。また、資本金が低すぎる場合、法人口座の開設審査だけでなく、取引先にも不信感を与える恐れがあります。
一般的には、資本金は最低でも100万円に設定するのが望ましいといわれています。また、資本金の準備が少ない場合、事業開始早々資金繰りに悩む可能性も高くなるため、数か月分の運転資金は用意しておくようにしましょう。法人口座の開設審査に通るためでなく、事業の成功のためにも資本金は100万円以上に設定することをおすすめします。
審査に通りやすい金融機関を選ぶ
金融機関ごとに法人口座開設の審査基準は異なり、審査基準の厳しさも異なります。一般的には、メガバンクなど、規模の大きい金融機関になるほど、法人口座の開設審査の基準は厳しいといわれています。反対に、比較的創業期であっても法人口座を開設しやすいとされているのが、地域に密着した活動を行う地方銀行や信用金庫、ネット銀行などです。
審査基準の厳しさは金融機関によって異なりますが、法人口座開設に伴う審査は必ず実施されます。必要書類はしっかりと準備したうえで、まずは、信用金庫やネット銀行など、法人口座を開設しやすいといわれている金融機関から口座開設の準備を進めていくとよいでしょう。
まとめ
個人口座の開設に比べ、法人口座の審査基準は厳しいものとなっています。しかしながら、法人口座を開設しない場合、個人名義の口座に入金を依頼しなければならないケースも出てくるため、取引先からの信頼を得にくくなります。また、プライベートなお金と会社のお金の区別がしにくいため、キャッシュフローを把握しにくいなど、経営面でも支障が生じます。そのため、会社設立時には、できれば法人口座を開設したいものです。
法人口座の審査基準は金融機関によって異なるものの、審査は、口座の不正利用防止のために実施されます。したがって、法人口座の開設を申し込む際には、実態のある事業であることをアピールできるよう、事業の内容についてしっかり説明を行うようにしましょう。また、金融機関によっても審査の厳しさの度合いは変わるため、審査に比較的通りやすい金融機関を選んで申請することも大切です。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。