メニュー
起業・開業
不動産業の開業資金とは?資金調達方法や開業手順についても徹底解説

読了目安時間:約 7分
不動産業を開業する際には、ある程度まとまった資金が必要となり、準備不足ではスムーズな事業運営が難しくなります。
また、開業時の初期費用だけでなく、その後の安定した運営を見据えた資金も重要で、現実的な資金計画を立てる必要があります。
本記事では、不動産業の開業資金について紹介します。
他にも「不動産業開業の資金調達方法」や「不動産業の開業手順」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、不動産業の開業資金について理解を深めてみてください。
目次
不動産業の開業資金

不動産業の開業資金については、以下の5つが挙げられます。
- 資金①:法人設立費用
- 資金②:事務所設置費用
- 資金③:営業保証金
- 資金④:宅建業者免許申請料
- 資金⑤:各業界団体への入会金
それぞれの開業資金について解説していきます。
資金①:法人設立費用
企業を立ち上げる方法にはいくつかの選択肢がありますが、「株式会社」の設立には、一般的におよそ25万円の初期費用がかかります。
具体的には、定款を公証人役場で認証してもらう際の手数料や法務局への登録免許税、収入印紙代などの諸経費が発生します。
さらに、設立手続きを専門家である司法書士に依頼することもできますが、その場合は別途で10万円程度の報酬が必要になります。ただし、専門的な手続きを安心して任せられるメリットが挙げられます。
資金②:事務所設置費用
事務所を設置するには、最初にまとまった初期費用が必要になります。
具体的には、物件を借りる際の保証金や礼金が発生し、物件の規模や立地条件によって異なりますが、賃料の3〜6か月分が目安となります。
物件によっては、初期費用が100万円を超えるケースもあります。
さらに、来客との面談や打ち合わせを事務所で行う予定がある場合は、応接スペースの整備や、接客用のソファやテーブル、椅子といった家具に一定の投資が必要になる場合もあるでしょう。
資金③:営業保証金
宅地建物取引業の免許を取得して不動産業を始める際には、原則として営業保証金を法務局の供託所に供託する必要があります(本店1,000万円、支店1店につき500万円)。
ただし、「宅地建物取引業協会」などの業界団体に加入し、営業保証金の供託に代えて弁済業務保証金分担金(本店60万円、支店30万円)を支払う方法を選ぶ方も多いです。
会社設立自体は免許取得に直接必須ではありませんが、法人形態を選ぶケースが一般的です。
参考:営業保証金について |(公社)全日本不動産協会・不動産保証協会東京都本部
資金④:宅建業者免許申請料
不動産業を始めるにあたっては、宅地建物取引業の免許を取得する必要があり、その際には所定の申請手数料を納付する必要があります。
例えば、事務所が1つの都道府県内にある場合は、都道府県知事への申請となり、手数料は33,000円です。
一方で、複数の都道府県にまたがる事務所を設ける場合は、国土交通大臣の許可が必要になり、申請費用は90,000円となります。ただし、こちらの金額は変更される場合もあるため、最新情報を確認することをおすすめします。
資金⑤:各業界団体への入会金
不動産業界で活動を始める際には、宅建協会などの業界団体への所属が求められることが多く、その際には入会にあたって所定の費用が必要です。
加入する団体の種類や地域によって異なりますが、おおよそ100万円から150万円程度の初期費用を見込んでおくようにしましょう。
不動産業開業の資金調達方法

不動産業開業の資金調達方法については、以下の3つが挙げられます。
- 日本政策金融公庫
- 制度融資
- 銀行融資
それぞれの資金調達方法について解説していきます。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、政府が設立した金融機関であり、中小企業や個人事業主などの資金面のサポートを行っています。
日本政策金融公庫の融資は、民間金融機関の金融サービスを補完する役割も担っています。
創業に関連する支援策としては、「新規開業資金制度」が代表的で、主な内容については、以下のとおりです。
- 対象:これから新たに事業を始める方、または創業からおおむね7年以内の方
- 最大融資額:7,200万円(運転資金の上限は4,800万円)
- 返済の期間:設備資金については最長20年、運転資金については最長7年まで
また、日本政策金融公庫は、創業間もない事業者に対しても積極的に融資を行う傾向があるので、初めての資金調達でも比較的審査を通過しやすい点が特徴と言えます。
参考:日本政策金融公庫
制度融資
中小企業や創業を目指す方々を支援するために、多くの自治体では信用保証協会や金融機関と連携して、「制度融資」と呼ばれる特別な融資制度を設けています。
制度融資では、金利の引き下げや信用保証料の軽減・免除といった優遇措置が講じられる場合があり、資金調達のハードルを下げる工夫がされています。
また、大きなメリットの一つとして、日本政策金融公庫の融資と併用できる点にあります。場合によっては、日本政策金融公庫の融資に比べて金利が低く設定されることもあるため、資金のコストを抑えたい方にとっては魅力的な選択肢と言えます。
しかし、申請から実際の融資が実行されるまでには、通常2~3ヶ月程度の時間がかかるため、事前に余裕を持ったスケジュールを立てることが重要です。
さらに、自治体によっては「一定期間その地域に居住していること」が利用条件となるケースもあるので、起業に伴って引っ越しを予定している方は、事前に確認しておきましょう。
参考:東京都中小企業制度融資
銀行融資
不動産業開業の資金調達方法として、銀行融資が挙げられます。
しかし、不動産業を始めるにあたって、銀行からの資金調達は一般的にハードルが高いとされているのも事実です。
銀行では融資の審査に際して、企業としての経営履歴やこれまでの取引実績が重要視されています。
このように、創業間もない会社やこれから事業を始める個人に対して、銀行が資金を貸し出すケースは限られているので、あらかじめ注意が必要です。
不動産業の融資を受けるためのポイント

不動産業の融資を受けるためのポイントについては、以下の3つが挙げられます。
- 自己資金があるか
- 宅地建物取引士の資格取得
- 滞納があるか
それぞれのポイントについて解説していきます。
自己資金があるか
日本政策金融公庫の融資を受ける際には、自己資金の有無が審査の重要な判断材料となります。一般的には少なくとも融資希望額の10%以上は必要であると言われています。
しかし、実際のところ、自己資金と同程度か、それを上回る融資額が出るケースが多くみられるので、十分な準備が求められます。
また、手元に現金があるだけでは自己資金として認められにくい点にも注意が必要です。
金融機関が「本人が貯めたお金」と判断するためには、毎月記帳された通帳が重要な証拠となります。
実際に、突然大金が入金されているだけでは、資金の出所が不明とされるリスクもあります。
そのため、着実に貯蓄している様子を見せられるように、通帳の管理も計画的におこなうようにしましょう。
宅地建物取引士の資格取得
融資を受ける際に、宅地建物取引士の有無は大きな判断材料となります。
宅地建物取引業を行うためには、事務所に従業員5人につき1人以上の「宅地建物取引士」の配置が義務付けられています。創業者自身が資格を持っていると、免許取得のハードルが下がり、融資審査でも信頼性の判断材料となる可能性がありますが、必須ではありません。
売買仲介業を行う予定がある場合は、早めに資格取得を目指すことをおすすめします。
不動産の賃貸業や管理業務だけを行う場合には、資格が必ず必要ではありませんが、売買仲介業に関わる予定があるなら、前もって資格取得しておくことをおすすめします。
参考:宅地建物取引士とは |(公社)全日本不動産協会・不動産保証協会東京都本部
滞納があるか
融資を受ける際に確認される要素の一つが税金の納付状況です。
融資の審査に入る段階で、申請者が各種税金をきちんと納めているかを厳しくチェックされるので、税金の滞納があると、借入の承認が下りないケースがほとんどです。
一部例外として、新型コロナウイルスによる事業への影響などが認められた場合には、柔軟に対応されることもありますが、創業融資の審査では特に、税の未納があると信用に関わるため不利になります。
このように、融資を申し込む前には、あらかじめ税務関連の支払いが完了しているかをしっかりと確認し、万全の状態で申請手続きを進めることが重要です。
不動産業の開業手順

不動産業の開業手順については、以下のとおりです。
- 開業資金の準備
- 事務所・法人の設置
- 宅地建物取引士の配置
- 協会の加入
- 事業の宣伝
それぞれの手順について解説していきます。
開業資金の準備
不動産業を新たに始める際には、開業にあたっておおよそ200万円以上の初期資金が必要となる場合もあります。
具体的には、まず法人として株式会社を設立するための登録免許税や定款認証手数料などで、約25万円前後がかかります。
また、宅地建物取引業協会に加入する際には、地域によって差がありますが、130万円から180万円程度の費用が必要です。
さらに、宅地建物取引業の免許を取得するために、都道府県知事への申請料として最低13万3,000円ほどの支払いが発生します。
事務所の賃貸費用や業務に必要な備品購入費は含まれていないので、それらを含めると、さらに多くの資金を見積もる必要があります。
ただし、事務所の設置形態や免許の取得方法、協会加入の有無などにより初期費用は大きく異なります。
事務所・法人の設置
次に、事務所・法人の設置が必要になります。
自宅を拠点に業務を行う場合、事務所開設にかかる費用は比較的少なく済むケースが多いです。
しかし、賃貸契約の場合には、物件によって異なりますが、約50万円程度の初期費用がかかり、さらに机や椅子、事務機器などを整えるために20万円前後の予算を見込む必要があります。
法人を設立するには、税務署への届け出と法務局での登記申請が必要であり、定款を公証役場で認証してもらう際には約5万円の手数料が、さらに定款に貼付する収入印紙代として約4万円の費用が発生します。
不動産業を始めるにあたっては、法人を設立せずに個人事業主として活動を始めることも可能ですが、節税や社会的な信頼性が高まるなどの法人化のメリットが活用できなくなってしまうので注意が必要です。
宅地建物取引士の配置
不動産業を営むために宅地建物取引業の免許を取得する際は、一定の人員配置基準を満たす必要があります。
具体的には、従業員5名ごとに1名の宅地建物取引士を置くことが義務付けられています。
資格取得には、年に一度実施される試験に合格する必要があり、受験には7,000円の費用がかかります。
しかし、創業者自身がすでに宅建士の資格を持っており、従業員数が5名以下である場合は、現段階では新たに資格者を配置する必要はありません。
参考:宅地建物取引士とは |(公社)全日本不動産協会・不動産保証協会東京都本部
協会の加入
不動産業を始めるためには、宅地建物取引業法に基づく一定の金銭的な準備が求められます。
具体的には、事務所には1,000万円、支店を設ける場合には各店舗ごとに500万円の営業保証金を供託しなければなりません。
これは、万が一不動産取引において損害が発生した際に、その損害を保証するための仕組みです。
しかし、営業保証金を直接供託する代わりに、「不動産保証協会」や「宅建協会」に加入し、弁済業務保証金分担金として60万円を納めることで、同様の保証制度を利用することもできます。
実際に、この方法は初期費用を抑える手段として多くの事業者が活用しているのも事実です。
事業の宣伝
店舗の情報発信力を高めるために、公式のWebサイトを開設することが効果的です。
サイトには提供しているサービスの詳細や、お問い合わせ方法などを掲載し、来訪者に必要な情報を明確に伝えることが重要です。
専門業者に依頼して制作を進める場合、ある程度の費用は発生しますが、その分デザイン性や機能性に優れたクオリティの高いサイトが期待できます。
しかし、Webサイトを作っただけでは利用者の目に触れる機会は限られるので、多くの人に訪れてもらうためには、検索結果で目立つようSEO対策の実施やLINEやFacebookなどのSNSを活用した情報発信なども有効です。
こうした取り組みによって、Webサイトへのアクセス数を効果的に増やすことにつながります。ただし、効果が出るまでには一定の時間がかかる場合もあるため、長期的な視点で取り組むことが重要です。
計画的な資金管理をしよう!

今回は、不動産業の開業資金を紹介しました。
不動産業をスタートさせる際には、多くの初期費用が発生するため、無理のない範囲で出費を抑え、持続可能な経営基盤を築く工夫が求められます。
また、事業開始直後の資金不足を避けるためにも、開業後の運転資金をあらかじめ用意しておくことが重要です。
さらに、将来の経営状況を見据え、無理のない資金計画を立てて、安定した運営ができるように備えることも大切です。
今回の記事を参考にして、計画的な資金管理をしましょう。
免責事項
当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。内容は記事作成時の法律に基づいています。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
税務・労務等のバックオフィス支援から
経営支援まで全方位でビジネスをサポート
本気で夢を追い求めるあなたの会社設立を全力サポート
- そもそも個人事業と会社の違いがわからない
- 会社を設立するメリットを知りたい
- 役員報酬はどうやって決めるのか
- 株式会社にするか合同会社にするか
会社設立の専門家が対応させていただきます。
税理士法人松本の強み
- 設立後に損しない最適な起業形態をご提案!
- 役員報酬はいくらにすべき?バッチリな税務署対策で安心!
- 面倒なバックオフィスをマルっと支援!
- さらに会社設立してからも一気通貫で支援
この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。