2025.05.20

会社設立

株式会社の維持費とは?初期費用や維持費を抑えるコツについても徹底解説

株式会社 維持費

読了目安時間:約 7分

起業を目指す方は、株式会社の維持にかかる年間コストや初期投資額などをあらかじめ把握しておくことが重要です。

経費や税金が新たに発生するため、準備不足で法人化してしまうと、かえって経済的に不利になってしまうリスクがあります。

本記事では、株式会社の維持費について紹介します。

他にも「株式会社設立にかかる初期費用」や「株式会社の維持費用を抑えるコツ」についても解説していきます。

ぜひこの記事を参考にして、株式会社の維持費について理解を深めてみてください。

株式会社の維持費

株式会社の維持費

株式会社の維持費については、以下の7つが挙げられます。

  • 維持費①:税金
  • 維持費②:社会保険料
  • 維持費③:決算公告費用
  • 維持費④:役員の就任・再任登記費用
  • 維持費⑤:株主総会
  • 維持費⑥:専門家への報酬
  • 維持費⑦:オフィス

それぞれの維持費について解説していきます。

維持費①:税金

株式会社を設立すると、たとえ赤字経営であっても、法人住民税の均等割など一部の税金は発生するため、一定の納税義務がある点に注意が必要です。

例えば、法人住民税の均等割は地域によって異なりますが、東京都23区の場合は資本金1,000万円以下・従業員50人以下の場合、年間約7万円が目安とされています。

また、従業員数や拠点数、資本金などの状況により法人税や社会保険などの負担が増加する場合があります。例えば、資本金1,000万円以上の場合は消費税の課税義務が早期に発生しやすいなど、各制度の詳細な条件に注意が必要です。

このように、法人を設立する際は、事業の中身だけでなく、税金面での影響もよく考慮し、従業員数や資本金の設定を工夫することが重要です。

参考:総務省|地方税制度|法人住民税

維持費②:社会保険料

株式会社を設立すると、原則として社会保険への加入が義務付けられます。

会社の売上や利益の有無にかかわらず、法人として活動を開始した時点で発生する固定費になるので、予め理解しておくことが重要です。

企業が負担する社会保険料の額は、役員や従業員の人数、役員報酬や給与水準により決まります。

具体的に、企業側が支払う社会保険料は給与額のおよそ15%が目安となります。ただし、地域や保険種別によって異なり、具体的な負担割合は各保険協会の資料を参照してください。

維持費③:決算公告費用

株式会社が決算を完了した際には、その結果を株主総会で承認された後、速やかに社会に向けて公表することが会社法で定められています。

この決算内容の公表方法には主に以下3つの選択肢があります。

  • 官報に掲載する方法
  • 日刊の新聞紙面に掲載する方法
  • インターネットを通じた電子公告の実施

官報掲載費用は約7万円程度ですが、新聞掲載は掲載紙によって異なり数十万円になることもあります。電子公告は自社の公式サイトを利用する方法であり、官報掲載に比べて公告そのもののコストは抑えられますが、サイトの整備・運用には別途費用や管理体制が必要になります。

会社の規模によっては電子公告のみで済む場合もありますが、公告義務の有無や方法については会社の種類や定款、上場の有無等による例外もあるため、詳細は個別に確認が必要です。

参考:会社法 | e-Gov 法令検索官報の掲載料金 | 東京都・官報サービスセンター

維持費④:役員の就任・再任登記費用

会社の役員に新たな人物が加わる場合や任期満了後に同じ人物が再び役員に選ばれるケースでは、「役員変更登記」の手続きが求められ、その際には登録免許税などの費用が発生します。

通常、この手続きは司法書士に委託されるため、依頼費用としておおよそ3万〜6万円程度が別途必要になることが一般的ですが、案件ごとに異なります。

合同会社では役員の任期が法律で定められておらず、定款で定めがない限り任期満了による役員変更登記は不要です。ただし、変更があった場合には登記が必要です。

参考:役員の変更登記|国税庁

維持費⑤:株主総会

株式会社は法律上、原則として年に一度、株主総会を開催する必要があります。

株主総会は、経営状況の報告や将来的な方針の決定など、会社にとって重要な意思決定の場とされており、株主との対話を通じて信頼関係を築く貴重な機会でもあります。

株主総会を行うためには、さまざまな経費が発生します。

自社に十分なスペースがあればそのまま使用する場合もありますが、株主の数が多い場合や大規模な企業では、貸し会場を手配する必要がある場合もあります。

参考:会社法 | e-Gov 法令検索

維持費⑥:専門家への報酬

株式会社の維持費の一つとして、専門家への報酬が挙げられます。

株式会社を設立して、事業年度が終了すると、決算書を作成して税務署などの関係機関に提出する必要があります。

しかし、決算書の作成には、会計処理や税金の知識が求められるため、専門知識がない方にとっては、非常にハードルが高い作業なのも事実です。

こうした理由から、決算業務は税理士に依頼するのが一般的な手段となっています。

税理士の顧問料は内容や規模により大きく異なり、月額数万円から10万円以上まで幅があります。決算期には通常の顧問料とは別に、決算書作成のための追加費用が発生する場合もあり、会社の売上規模や事業内容によって費用が変動するので、事前に確認しておくようにしましょう。

維持費⑦:オフィス

株式会社を維持するには、オフィスの賃料などのさまざまな運営コストが発生します。

具体的に、よく見られる支出項目として次の6つが挙げられます。

  • 事務所の賃貸料
  • 水道や電気、ガスといったライフラインの料金
  • デスクやパソコンなどの事務機器や備品類
  • インターネットや電話に関する通信費
  • オフィスの清掃にかかるサービス料金
  • 自社ウェブサイトの管理・運営にかかるコスト

上記の支出額は、事業の規模や業界の特性、拠点とする地域などによって変動します。

具体的な金額や契約条件については、企業運営の知識が豊富な専門家に相談することをおすすめします。

株式会社設立にかかる初期費用

株式会社設立にかかる初期費用

株式会社を設立する際には、最初にかかるさまざまな出費を見込んでおく必要があります。また、初期費用は、事業の規模や運営スタイルにより大きく変動するので、あらかじめ注意が必要です。

具体的に、株式会社設立にかかる初期費用については、以下の4つが挙げられます。

  • 登録免許代
  • 印鑑代
  • 収入印紙代
  • 定款認証料

それぞれの初期費用について解説していきます。

登録免許代

株式会社を設立する際には、国への登録免許税の支払いが必要不可欠です。

設立登記を完了するための法的な要件であり、会社の種類や規模によって税額が異なり、株式会社の場合には15万円が必要です。

この税金は、新たに設立されるすべての法人に共通して課される費用で、法務局にて設立登記を行う際に支払います。

支払い手続きには、所定の書類に必要事項を記載し、税額を計算して納付する必要があります

参考:登録免許税の税額表|国税庁

印鑑代

株式会社を設立する際には、いくつかの印鑑が求められるので、印鑑代が必要になります。

例えば、代表者印や社印、銀行印などがあり、それぞれに異なる用途と重要性があります。印鑑の作成には費用がかかり、価格は使用する素材や仕上げ方法、大きさなどにより異なります。

一般的には数千円から数万円程度が相場となっていますが、手彫りや高級素材を使った印鑑の場合、それ以上の価格になることもあります。

また、印鑑は会社の正式な書類に使用されることが多いため、信頼性や耐久性が求められます。

さらに、企業の顔としての役割も果たすため、見た目や素材にこだわる会社も少なくありません。

中でも代表者印は、会社の意思を示す重要な印であり、社印は日常的な事務書類に使用されます。

収入印紙代

株式会社を設立する際には、「定款(ていかん)」と呼ばれる会社の基本ルールを文書として整える必要があります。

定款には、税金の一種である「収入印紙」を所定の額だけ貼ることが求められます。

一般的には、紙の定款を利用する場合の収入印紙代は4万円ですが、電子定款を利用すると印紙代は不要です。

参考: 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁

定款認証料

株式会社を立ち上げる際には、定款を公証人役場で認証してもらう必要があり、所定の費用が発生します。

定款の認証は、法的な手続きの一環として、会社設立の正当性と法令順守を確認する重要な工程です。

この認証料の金額は、通常はおおよそ4万円から5万円の範囲に収まり、公証人が定款の内容を確認し、それが法律に沿って適切に記載されているかどうかを判断するための報酬となります。

参考:定款認証 | 日本公証人連合会

株式会社の維持費用を抑えるコツ

株式会社の維持費用を抑えるコツ

株式会社の維持費用を抑えるコツについては、以下の4つが挙げられます。

  • 定款を電子定款で作成する
  • 会社名義で賃貸物件を契約する
  • 資本金を1,000万円以下にする
  • 人件費の見直し

それぞれのコツについて解説していきます。

定款を電子定款で作成する

法人を設立する際に作成が求められる定款について、これを紙ではなく電子データとして作成する「電子定款」の方法があります。

電子定款を活用すれば、公証役場での定款認証時に通常必要となる印紙税4万円を支払わずに済むため、コスト削減に繋がります。

しかし、電子定款を導入するには、専用のソフトウェアやICカードリーダーなどの機器を整える初期費用がかかります。

また、一度提出した電子定款は後から内容を修正することができないので、記載内容には細心の注意を払う必要があります。(ただし、誤記等の修正が必要な場合は再度作成して再認証を受けることも可能です。)

会社名義で賃貸物件を契約する

会社名義で賃貸契約を結び、自宅の一部を事務所として使用する場合、実際の使用実態に基づいて按分した金額を事業経費として計上できます。

また、家族を役員に登用し実際に職務に従事している場合には、支払う報酬を事業経費として計上することが可能です。ただし、税務上は業務実態が求められるため、形式的な登用には注意が必要です。

参考:〔家事関連費(第1号関係)〕|国税庁法人税法 | e-Gov 法令検索

資本金を1,000万円以下にする

株式会社の維持費用を抑えるコツとして、資本金を1,000万円以下にすることが挙げられます。

資本金が1,000万円未満の法人は、一定の条件を満たす場合に、設立から最長で2年間の消費税の納税義務が免除されます。また、住民税の均等割額も最低水準である7万円程度に抑えられるので、法人設立時のコストを軽減する目的で資本金を抑える戦略が有効と言えます。

ただし、特定期間の課税売上や人件費の状況によっては、免税対象外となることもあるため、個別の確認が必要です。

参考:消費税法基本通達|国税庁

人件費の見直し

人件費には、基本的な給与だけでなく、通勤にかかる交通費や出張時の経費なども含まれているので、人件費の見直しをすることで、会社の維持費を抑えることにもつながります。

例えば、出張に伴う支出を減らしたい場合には、業務そのものの効率化を検討するのが有効です。

出張回数を最小限に抑えるために、遠隔地とのやり取りにはオンラインツールや業務支援システムを導入し、業務手順書やマニュアルを整備することで、無駄を省くことが可能です。

また、他社や顧客との会議についても、テレワークやオンライン会議システムを活用することで、移動にかかるコストを大幅に削減できます。

このように、業種によって状況は異なりますが、これらの付随費用が多くかかっている場合には、コストの見直しをすることをおすすめします。

株式会社以外の会社形態

株式会社以外の会社形態

株式会社以外の会社形態については、以下の3つが挙げられます。

  • 会社形態①:合同会社
  • 会社形態②:合資会社
  • 会社形態③:合名会社

それぞれの会社形態について解説していきます。

会社形態①:合同会社

合同会社は、株式会社と比べると運営面での自由度が高いのが特徴です。

出資者が経営にも直接関与し、その利益配分も出資額に応じて柔軟に設定されます。

特に設立手続きの簡便さや維持にかかるコストを抑えやすい特徴があり、決算公告や株主総会の開催といった義務もありません。

そのため、事業を始めたばかりの起業家や小規模事業を営む方々にとって、実用性の高い選択肢と言えます。

さらに、合同会社は経営に関する方針変更なども出資者同士の話し合いで柔軟に対応できるため、スピーディーな意思決定や効率的な運営が可能です。

しかし、一般的な知名度が株式会社より低いというデメリットもあるので、あらかじめ注意が必要です。

会社形態②:合資会社

合資会社は、外部からの出資に依存せずに事業を進められる法人形態のひとつです。

この仕組みは、小規模なビジネスや家族経営に適しており、会社の設立や日常の運営が比較的簡易である点が特徴です。

また、社員同士で直接利益を分け合う形態なので、資本の再投資もスムーズにおこなうことができ、意思決定の速さや柔軟性の高さも特徴と言えます。

合資会社は少なくとも無限責任社員1名と有限責任社員1名の組み合わせが必要で、無限責任社員は経営に対して無限責任を負います。これにより、経営に対する責任は大きいですが、外部からの信用度は高くなる傾向にあります。

会社形態③:合名会社

合名会社は、全ての出資者が経営に携わり、企業の責任を無限に負う独特な組織形態です。出資者は利益の享受にとどまらず、企業が抱える負債に対しても自らの個人資産を使って責任を取る立場となります。

このような仕組みは、主に規模の小さい家族経営や伝統的な企業などで多く採用されており、経営の透明性と高い信頼性が特徴です。

全社員が意思決定に関与するため、方針決定が迅速で、経営理念にも一貫性が見られます。

また、社員が個人の資産で責任を果たすことになるため、外部の関係者から高い信用を得やすいというメリットがあります。

しかし、無限責任を負うということは、社員自身の資産が常にリスクに晒されているというデメリットも挙げられます。

設立費用だけでなく、維持費も検討しよう!

設立費用だけでなくて維持費も検討しよう!

今回は、株式会社の維持費について紹介しました。

株式会社は、その社会的信頼性の高さから、新たな取引先の獲得や資金調達の面で他の会社形態よりも有利な立場にあります。

また、株式会社を設立する初期費用だけでなく、継続的にかかる維持費や運営負担なども含めて総合的に判断することが重要です。

さらに、経済的な側面だけでなく、運営に伴う時間の使い方や精神的な負担なども踏まえて、自社の経営方針や事業内容を明確にしておくことも大切です。

今回の記事を参考にして、株式会社の維持費についてしっかりと検討するようにしましょう。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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