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起業・開業
起業後にかかる税金とは?法人と個人事業主ごとに解説

読了目安時間:約 7分
法人と個人事業主では、適用される税制度がそれぞれ異なり、負担する税金の種類や内容に違いがあります。
それぞれの税には納付期限が定められているため、自身の立場に応じてどのような税金が発生するのかを明確に理解し、期限を守って適切に支払うことが重要です。
本記事では、起業後にかかる税金について紹介します。
他にも「起業後に使える税金の控除制度」や「法人と個人事業主の違い」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、起業後にかかる税金について理解を深めてみてください。
目次
法人として起業した後にかかる税金

起業には「法人設立」と「個人事業主としての開業」があります。ここでは、法人を設立した場合にかかる税金について解説します。法人を設立した場合にかかる主な税金は、以下の5つです。
- ①法人税
- ②法人住民税
- ③法人事業税
- ④消費税
- ⑤固定資産税
それぞれの税金について解説していきます。
①法人税
法人税とは、法人が事業を通じて得た利益に対して課せられる国が徴収する税金の一つです。
法人の利益とは、商品やサービスの販売などによって得られた収益から、法律上経費として認められる支出(損金)を差し引いた額が挙げられます。
また、法人税の税率については、資本金が1億円以下の中小企業などに対しては特例が設けられています。
具体的には、課税所得が800万円以下の部分については15%、これを超える金額には23.2%の税率が適用されます。なお、最新情報については国税庁の公式HPをご確認ください。
参考:法人税の税率|国税庁
②法人住民税
法人住民税とは、企業が本社や事業所を構える地方公共団体に対して支払う地方税の一種です。
法人住民税は、「都道府県民税」と「市区町村民税」の2種類に分かれており、これらを総称して法人住民税と呼ばれ。
また、法人住民税は「法人税割」と「均等割」の2つで構成されています。
法人税割は、法人税の金額を基準に計算され、所得が多い企業ほど高くなる仕組みで、法人税が発生しない赤字企業には、この部分の支払い義務はありません。
均等割は企業の利益の有無に関わらず課されるため、赤字企業でも納税義務が生じます。ただし税額は自治体・資本金規模により異なります。
③法人事業税
法人事業税とは、法人が得た利益に応じて地方自治体から課される税金で、道府県ごとに課税される地方税の一種です。
法人の種類や資本金の規模、収益の金額などによって税率が細かく定められています。
また、法人事業税は通常の法人税と異なり、損金(法人の経費)として計上が認められているため、課税所得の算出時に控除可能です。
この税金は通常、法人住民税とあわせて納付することになります。
具体的な税率や納付方法などの詳細は、企業の拠点がある自治体に確認することをおすすめします。
④消費税
消費税とは、商品やサービスの提供に伴って課される間接税であり、企業などが消費者から預かった税額を、国に納める仕組みとなっています。
納税する義務は、法人の基準期間または特定期間における課税売上高が1,000万円を上回る場合に発生します。
基準期間とは、法人の前々期にあたる事業年度を指します。
特定期間については、その前年の事業年度開始日から6か月間を意味します。
また、設立間もない企業については、設立1期目および2期目は基準期間にあたる年度が存在しないため、原則として消費税の納税義務はありません。
ただし、「資本金が1,000万円以上」または「特定期間の人件費等の要件を満たす」場合などは、課税事業者となることがあります。
さらに、インボイス制度の「適格請求書発行事業者」として登録した法人は、新設法人であっても、登録初年度から消費税を納める義務が課されることになります。
参考:消費税のしくみ|国税庁/インボイス制度について|国税庁
⑤固定資産税
固定資産税とは、企業や個人が所有する土地・建物、または機械装置やパソコンなどの一定の資産に対して課される地方税です。
これらの資産を保有することで、その価値に応じた税負担が発生します。
土地や建物に関しては、登記が完了すると、情報が自動的に税務当局へ共有されるので、所有者が改めて申告を行う必要はなく、納付書が送付される仕組みになっています。
一方で、償却資産税と呼ばれる、建物以外の備品や機器、構築物の一部などにかかる税金については、毎年所有している内容を詳細に記載した申告書を各自治体に提出する必要があります。
なお、固定資産税や償却資産税は、事業のために使用している資産に関しては必要経費として認められるケースが多いですが、自宅兼事務所などの場合は、事業使用分のみが対象となる点に注意が必要です。
起業後に法人が使える税金の控除制度

起業後に法人が使える税金の控除制度については、以下の3つが挙げられます。
- 中小企業投資促進税制
- 賃上げ促進税制
- 一般試験研究費の額に係る税額控除制度
それぞれの控除制度について解説していきます。
中小企業投資促進税制
中小企業投資促進税制とは、中小企業の設備投資を後押しするために設けられている制度です。
生産性の向上を目的としており、一定の設備を導入した場合に、法人税の負担を軽減できる仕組みが整えられています。
具体的には、対象となる設備投資を実施した中小企業に対し、税額控除(最大7%)または特別償却(30%)のいずれかの優遇措置が適用されます。
しかし、税額控除については、資本金3,000万円以下の法人など、一定の小規模企業に限定されています。
これらの措置を活用することで、企業は償却額や控除額を増やすことができ、課税所得が軽くなることで、法人税の負担軽減につながる可能性があります。
賃上げ促進税制
賃上げ促進税制とは、企業が一定の条件を満たしたうえで従業員の給与を引き上げた場合、その増加分に応じて法人税の一部を減額できる制度です。
特に、従業員の奨学金を企業が肩代わりして返済するために使う費用についても、この制度の「給与等支給額」として扱われるため、最大で30%程の控除が認められるケースもあります。
また、一度引き上げた賃金を後から減額するのは実質的に困難なため、短期的な利益だけで判断せず、将来的な経営計画を見据えた賃上げの実施が求められます。
ただし、賃上げ促進税制の適用条件や控除率などは年度によって異なる場合もあるため、最新情報をご確認ください。
一般試験研究費の額に係る税額控除制度
一般試験研究費の額に係る税額控除制度は、企業が自社で行う研究開発活動に対して、法人税の負担を軽減することを目的とした優遇措置です。
具体的には、一定の条件を満たして青色申告をしている法人が対象となり、該当する研究開発費に応じて法人税からの控除を受けることが可能となります。
控除の金額は、研究開発に要した費用総額に応じて、1%から最大14%の範囲で定められる割合を乗じて算出されます。
また、試験研究費の内容や企業の要件により、特例で20%~30%といった高い控除率が適用されるケースもあります。
これにより、実質的な法人税の負担を軽くすることができ、研究投資の促進を図る狙いがあります。
個人事業主として起業した後にかかる税金

個人で事業を営む場合、その利益に対しては法人税ではなく、個人の所得に応じた所得税が課されます。
また、事業主は税務手続きや納税をすべて自らの責任で行う必要があるので、事前に税制についてしっかり理解しておくことが重要です。
個人事業主として起業した後にかかる税金は、以下の4つが挙げられます。
- 税金①:所得税
- 税金②:個人事業税
- 税金③:消費税
- 税金④:源泉所得税
それぞれの税金について解説していきます。
税金①:所得税
個人事業主が得た利益には、所得税が課されます。
所得税は、その年の1月1日から12月31日までに得た総収入から必要経費を差し引いた後の所得に基づいて計算され、決められた税率が適用されます。
通常、個人事業主は、毎年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行う義務があります。
また、2013年から2037年までの期間については、通常の所得税に加えて、復興特別所得税として基準税額の2.1%を別途納める必要があります。
税金②:個人事業税
個人事業税とは、地方税法などに基づいて法定業種で事業を行う個人事業主に課される地方税の一種です。
個人事業税は指定された法定業種のみに課され、かつ年間の事業所得が290万円以下の場合は非課税となります。
原則として、所得税の確定申告書に所定の項目を記載することで、個人事業税の申告も兼ねる形となります。ただし、事業内容や申告状況によっては、別途対応が必要な場合もありますので、心配な方は税理士などの専門家にご相談ください。
税金③:消費税
個人事業主が消費税の納税義務を負うかどうかは、「基準期間」または「特定期間」における課税売上高が1,000万円を超えているかどうかによって判断されます。
個人事業主における基準期間は前々年の1月1日から12月31日まで、特定期間は前年の1月1日から6月30日までとなっています。
また、法人と同様に、インボイス制度の導入により「適格請求書発行事業者」として登録した場合は、従来の免税事業者であっても登録初年度から消費税の申告と納税義務が生じます。
参考:消費税のしくみ|国税庁/インボイス制度について|国税庁
税金④:源泉所得税
個人事業主として従業員を雇っている場合、その給与に対して源泉所得税を徴収・納付する責任が生じます。
具体的には、給与支払時に所得税および復興特別所得税を源泉徴収し、翌月10日までに税務署へ納付する義務があります。
また、給与だけでなく、原稿料や弁護士・税理士などへの報酬についても、同様に源泉徴収が求められます。
源泉所得税を正確に計算するためには、国税庁の公式サイトに掲載されている「源泉徴収税額表」を活用して確認することをおすすめします。
参考:給与所得の源泉徴収税額表(令和 7 年分)|国税庁
起業後に個人事業主が使える税金の控除制度

起業後に個人事業主が使える税金の控除制度については、以下の2つが挙げられます。
- 青色申告特別控除
- 事業主控除
それぞれの控除制度について解説していきます。
青色申告特別控除
青色申告を行う際に、一定の条件を満たすことで青色申告特別控除を受けることができます。
青色申告特別控除では最大65万円控除が受けられますが、複式簿記での記帳と正確な決算書類の作成・保存が条件です。簡易記帳の場合は控除額が10万円にとどまります。
この特別控除は、課税対象となる所得から直接差し引かれるので、結果として所得税の負担を軽減する効果があります。
しかし、青色申告を適用するには、対象となる年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があるので、申請の期限に注意が必要です。
参考:青色申告制度|国税庁
事業主控除
個人事業税を計算する際、個人事業主が受けられる事業主控除があります。
1年間事業を行っていれば一律で290万円の控除が受けられるので、確定申告のときに忘れないように注意が必要です。
事業期間が1年に満たない場合は、月割した金額の控除を受けられます。
事業所得が290万円以下の場合は、この控除を受けることで課税対象が0円になるので個人事業税を支払う必要がなくなります。
法人と個人事業主の違い

法人と個人事業主の違いについては、以下の3つが挙げられます。
- 経費対象
- 青色申告の欠損金
- 税率
それぞれの違いについて解説していきます。
経費対象
法人と個人事業主では、税制上の仕組みや経費として認められる範囲に明確な違いがあります。
中でも、経費の取り扱いに関しては、その立場によって大きく異なります。
個人事業主の場合、事業主自身に対する「給与」という考え方は存在せず、売上から必要経費を差し引いた金額が「事業所得」として計算されます。その後、各種所得控除を差し引いた「課税所得」に対して、所得税が課されます。
一方で法人を設立すると、経営者は会社の役員として報酬(役員報酬)を受け取る形になります。
役員報酬は、所定の条件を満たすことで法人の損金として処理でき、結果として法人の課税所得を軽減する効果があります。
さらに、法人では個人事業主が経費にできないケースが多い出張の日当や生命保険料なども、一定の条件のもとで損金に算入できるため、経費の幅が広がりやすいという特徴があります。
参考:必要経費の知識|国税庁
青色申告の欠損金
法人と個人事業主では、税務上の取扱いや経費計上の範囲に加えて、赤字の繰越期間にも明確な違いがあります。
例えば、青色申告をしている法人は、事業で生じた欠損金を最長10年間繰り越すことが認められており、その後に利益が出た年度の課税所得と相殺することができます。
これにより、利益が出た年の法人税額を抑える効果が期待できます。
一方で、個人事業主が青色申告を利用して赤字を繰り越す場合、繰越が可能な期間は最長で3年間に限られています。
一般的に赤字の繰越期間が短いため、長期的に見ると法人よりも節税メリットが小さい場合もあります。
参考:青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除|国税庁
税率
法人と個人事業主では、税率の違いも挙げられます。
例えば法人に課される法人税は、資本金1億円以下の中小企業の場合、所得が800万円を超える部分に対しては23.2%、800万円以下の所得には15%の法人税率が適用されます。
一方、個人事業主が支払う所得税は、所得が増えるにつれて税率が段階的に上昇する「累進課税制度」が採用されており、最高税率は45%にも達することがあります。
つまり、所得税は所得が増えるほど税率も上昇します。一方、法人税は一定の税率構造のため、所得金額によっては法人の方が相対的に税率が低くなることもあります。
起業後に発生する税金を把握しよう!

今回は、起業後にかかる税金について紹介しました。
会社を設立するか個人で事業を始めるかにかかわらず、起業後には多様な税金の支払いが求められます。
しかし、法人と個人事業主では課税の仕組みや対象が異なるため、それぞれの特徴を理解しておくことで、節税につなげることができます。
今回の記事を参考にして、起業後に発生する税金を把握しましょう。
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- さらに会社設立してからも一気通貫で支援
この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。