メニュー
起業・開業
個人事業主の開業資金はいくら必要なの?資金調達方法についても徹底解説

読了目安時間:約 7分
個人事業主の開業資金は、業種や事業の規模、開業する地域によって大きく異なるので、条件をしっかりと見極めることが重要です。
また、準備可能な自己資金の額を把握するとともに、必要に応じて融資の選択肢についても検討することが大切です。
本記事では、個人事業主の開業資金はいくら必要なのかについて紹介します。
他にも「個人事業主の資金調達方法」や「個人事業主が融資を受けるためのポイント」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、個人事業主の開業資金について理解を深めてみてください。
目次
個人事業主の開業資金はいくら必要なの?

個人事業主としての独立開業に必要な資金は、その人の業種や目指す事業の規模によって大きく異なります。
しかし、資金計画の基本的な考え方にはある程度共通する要素があるのも事実です。
具体的に、個人事業主で必要な開業資金については、以下の2つが挙げられます。
- 必要資金①:設備費用
- 必要資金②:運転資金
それぞれの項目について解説します。
必要資金①:設備費用
事業を立ち上げる際に必要となる設備費用にはさまざまな項目が含まれます。
主な設備資金は、以下が挙げられます。
- 店舗やオフィス契約にかかる諸費用
- 看板や駐車場に関する契約・設置費用
- 内装の整備(壁や床の施工、照明器具の設置など)
- 業務に必要な専門設備
- 事務用品・備品(PCや日用品、装飾品など)
上記の支出は、個人事業主の場合は「開業費」として、法人の場合は「創立費」または「開業費」として経理処理が可能です。
開業前にかかる費用は、しっかり記録を残しておくことで、会計処理がスムーズになります。
なお、いずれも事業開始前に発生した費用であることが前提であり、支出の内容によっては他の勘定科目で処理するケースもあります。
必要資金②:運転資金
運転資金とは、事業を継続していくうえで欠かせない資金のことです。
主な運転資金の内訳は、以下のような費目に分けられます。
- 従業員の給与や社会保険料などの人件費
- 店舗や事務所の賃料(更新料を含む)である家賃
- 電気・ガス・水道料金といった光熱関連費
- 電話やインターネットなどの通信費
- 販売活動や集客のための広告・宣伝費
- 商品や原材料を仕入れるための費用
- 事務用品や備品などの消耗品費
これらの費用は、業務を円滑に運営していくために常に必要となるものであり、計画的な資金管理が求められます。
個人事業主の資金調達方法

個人事業主の資金調達方法については、以下の6つが挙げられます。
- 日本政策金融公庫
- 信用保証付融資・プロパー融資
- クラウドファンディング
- カードローン
- 制度融資
- 補助金や助成金
それぞれの資金調達方法について解説していきます。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、政府が運営する金融機関で、個人事業主や中小企業の資金面をサポートしています。
具体的には、これから起業を目指す方や、創業からおおむね7年以内の事業者に向けて、「新規開業資金」などの融資制度を設けています。
新規開業資金では、審査のうえ最大7,200万円(うち運転資金は4,800万円まで)の融資が可能とされています。一般的に、民間の金融機関と比べて金利が低めに設定される傾向があり、返済期間も比較的長くなる場合があります。
また、女性や若年層(35歳未満)、シニア世代(55歳以上)の方が起業する場合、金利の優遇措置が適用されるケースもあります。
しかし、融資を受けるためには、事業計画書の内容や資金の使い道を明確に示すことが求められます。
そのため、開業に向けた準備は早めに、そして計画的に進めることが重要です。
信用保証付融資・プロパー融資
プロパー融資とは、民間の銀行や信用金庫、信用組合などが単独で審査・融資をおこないます。
信用保証協会のサポートがないため、金融機関自らが貸し倒れリスクを抱える形になってしまうので、審査は非常に厳しく、特に個人事業主にとっては利用のハードルが高いのが特徴です。
信用保証付融資は、信用保証協会と金融機関の両方によって審査が実施され、返済不能時には保証協会が一定割合を肩代わりしてくれる仕組みが用意されています。
しかし、個人事業主の融資希望額は比較的少額にとどまることが多く、日本政策金融公庫の融資や地方自治体の制度融資で対応可能なケースがほとんどです。
公的融資や信用保証付融資を活用し、返済実績を積み上げていくことで、民間金融機関からの信用を得られ、プロパー融資の審査が通りやすくなります。
参考:もっと知りたい信用保証|一般社団法人全国信用保証協会連合会
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて、不特定多数の人々から資金を募る仕組みで、寄付、購入、投資、融資などさまざまな形態があります。
具体的には、製品や企画の魅力をネット上で紹介し、実現に向けた資金を一般の支援者から集める仕組みです。
この形式では、金融機関からの借り入れとは異なり、返済義務が発生しない点が大きな特徴と言えます。
しかし、目標金額を集めるには、できるだけ多くの人にプロジェクトの魅力を伝えることが求められます。
カードローン
ビジネスを始める際、カードローンを利用して資金を確保することも可能です。
カードローンや法人・個人事業主向けのクレジットカード(ビジネスカード)を利用しスピーディーに資金を用意する手段が注目されているのも事実です。
これらのサービスは、原則として資金の用途に厳しい制約がなく、担保や連帯保証人も求められないため、手軽に申し込むことが可能です。
しかし、利息は比較的高めに設定されていることが多いため、返済のスケジュールや金額については、事前に具体的な計画を立てることが求められます。
制度融資
制度融資とは、地方自治体・信用保証協会・金融機関の三者が連携して提供する融資制度であり、創業者など信用の実績が少ない人でも資金調達がしやすい特徴があります。
信用保証協会が借入金の保証人となってくれるので、金融機関は比較的安心して貸し付けをおこなうことができ、結果として創業者の資金確保がスムーズになります。
さらに、自治体が相談窓口を担っているので、初めての方でも相談しやすく、丁寧なサポートを受けながら融資の申請を進められる点も魅力的と言えます。
参考:東京都中小企業制度融資
補助金や助成金
各地域の自治体が案内している制度には、助成金や補助金といった資金援助があります。
融資とは異なり、返済の義務がないのが大きな魅力です。
特に、個人で事業を営んでいる方に向けた支援策も数多く設けられています。
助成金は、所定の要件を満たしていれば比較的申請しやすい制度とされていますが、支給には審査があり、必ず受給できるとは限りません。補助金は予算の範囲内で採択される制度で、競争率が高くなる場合もあります。
しかし、実際には両者の違いが明確でないケースもあり、申請にあたっては、支給要件などの条件を事前に丁寧に確認することが大切です。
個人事業主が融資を受ける際に必要な準備

融資を受ける際に必要な準備は、どこから資金を調達するかによって異なりますが、多くの場合に共通して求められる準備があります。
具体的に、個人事業主が融資を受ける際に必要な準備については、以下の2つが挙げられます。
- 開業届を税務署に提出する
- 確定申告を正しくおこなう
それぞれの項目について解説していきます。
開業届を税務署に提出する
事業を開始する場合、原則として税務署に開業届を提出することが求められます。提出しておくことで融資申請や各種手続きがスムーズになるなどのメリットもあります。
開業から1か月以内に提出することが原則で、控えは後々の手続きにも役立つので、大切に保管しておくことが重要です。
開業届には、事業の名称や開始日、所在地、事業の内容などビジネスの概要が明記されています。
事業を公的にスタートさせるためにも、忘れずに提出しておくようにしましょう。
確定申告を正しくおこなう
金融機関から融資を受けたい場合、確定申告がきちんとおこなわれていることが大前提です。
申告書や決算書は、融資の審査時に非常に重要な判断材料となります。
利益を出して適切に納税している事業者は、信用度が高まり、融資が受けやすくなります。
また、資金の使い道や返済計画を明確に示すことで、融資担当者からの信頼を得やすくなります。
そのため、日頃から正確な経理を行い、申告・納税を滞りなく進めることが重要です。
参考:確定申告|国税庁
個人事業主が融資を受けるためのポイント

個人事業主が融資を受けるためのポイントについては、以下の4つが挙げられます。
- 自己資金を多く準備する
- 事業計画書を入念に作成する
- 資金の使い道を明確にする
- 返済財源を明確に示す
それぞれのポイントについて解説していきます。
自己資金を多く準備する
個人事業主が融資を受けるためのポイントとして、自己資金を多く準備することが挙げられます。
開業時に融資を申し込む際には、必要な事業資金の一部を自ら準備していることが望ましいとされています。
自己資金の割合は、最低でも全体の10%、可能であれば30%程度を確保しておくのが理想的です。
一般に、自己資金をある程度用意していると、金融機関における信用度の向上につながる可能性があります。具体的な審査基準は金融機関ごとに異なるため、事前に確認することをおすすめします。
しかし、自己資金がまったくない場合でも、融資が完全に不可能というわけではありません。
自己資金は審査項目の一つに過ぎず、他の条件とあわせて総合的に評価されます。
そのため、綿密に作成された事業計画書や返済の見込みが高いと判断される収支計画が提示されれば、融資を受けられるチャンスはあるでしょう。
事業計画書を入念に作成する
日本政策金融公庫をはじめ、金融機関などからの資金調達においては、事業計画書が非常に重要な要素になります。
具体的には、事業計画書には以下の要素を含めることが一般的です。
- 過去の経歴や取り組み
- 店舗としての独自性
- 競合との差別化
- 将来的なビジョンなど
上記のように、これから始める事業には発展の見込みがあり、返済能力もあることを伝えます。
また、計画書には自身のビジネスに関わる経験やスキルを的確に盛り込むことが重要です。
さらに、これまでに行ってきた準備や成果も、継続可能なビジネスモデルを裏付ける要素として強調するようにしましょう。
将来の売上やコスト予測についても、実際のデータや事実をもとに現実的に提示することで、説得力ある計画として評価される可能性が高まります。
資金の使い道を明確にする
日本政策金融公庫では、貸し倒れのリスクを避けるために、融資担当者が事業計画の中身を綿密に確認するので、資金の使い道を明確にする必要があります。
実際に、わずかな矛盾や不備も見逃されず、厳しく指摘されることがあるため、事業計画は徹底的に準備することが重要です。
また、面談時には、どの用途にどのくらいの金額が必要かを具体的に説明できなければ、担当者からの信用を得ることが難しいのも事実です。
また、融資以外の資金調達手段についても事前に検討しておくと良いでしょう。
さらに、資金を借り入れた後の返済計画もきちんと示すことが求められます。
返済財源を明確に示す
個人事業主が融資を受けるためのポイントとして、返済財源を明確に示すことも重要です。
実際に、融資担当者は、確実に返済できると見込まれる融資先でなければ、基本的に融資を通すことはありません。
そのため、事業として収益を生み出し、返済できる体制が整っていることを、具体的な数字や計画とともに明確に提示することが重要です。
まずは自分自身で、どのような財源でどのくらいの期間で返済できるのかを試算してみることが求められます。
個人事業主が資金調達する際の注意点

個人事業主が資金調達する際の注意点については、以下の2つが挙げられます。
- 見せ金は避ける
- 必要な金額を申し込む
それぞれの注意点について解説していきます。
見せ金は避ける
自己資金があるように見せかけるため、一時的に借入金を口座に入れる「見せ金」行為は、不正行為に該当する可能性があり、厳しく指摘されることがあります。
融資審査が通らなくなるリスクがあるだけでなく、倫理的にも法的にも問題となるため、絶対に行わないようにしましょう。
必要な金額を申し込む
個人事業主が資金調達する際の注意点として、必要な金額を申し込むことが挙げられます。
融資を申し込む際には、必要な資金額を明確に見積もったうえで申請することが重要です。
資金の使い道に対して合理的な説明ができなければ、審査の通過は難しくなり、仮に多くの金額を借りられたとしても、その分返済負担が重くなってしまうリスクがあります。
しかし、予算を過剰に切り詰め、資金に余裕のない計画にしてしまうと、想定外の出費に対応できなくなるおそれがあるため、適度な余裕を持たせることをおすすめします。
開業資金は多めに確保しよう!

今回は、個人事業主の開業資金はいくら必要なのかについて紹介しました。
開業に必要な資金は、業種や事業規模によってさまざまです。
店舗や事業を始める際には、物件取得費や備品の購入に加え、従業員の給与など運営に必要な資金全体をあらかじめ確保しておくことが求められます。
売上が安定するまでには時間がかかることもあるため、余裕を持った資金計画を立てておくことが重要です。
今回の記事を参考にして、開業資金はある程度余裕をみて、多めに確保しておきましょう。
免責事項
当ブログのコンテンツ・情報について、できる限り正確な情報を提供するように努めておりますが、正確性や安全性を保証するものではありません。内容は記事作成時の法律に基づいています。当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。
なお、本記事は令和7年6月現在の情報をもとにしており、条件が変更されている場合がありますので、あらかじめ公式HPなどで最新情報をご確認ください。
税務・労務等のバックオフィス支援から
経営支援まで全方位でビジネスをサポート
本気で夢を追い求めるあなたの会社設立を全力サポート
- そもそも個人事業と会社の違いがわからない
- 会社を設立するメリットを知りたい
- 役員報酬はどうやって決めるのか
- 株式会社にするか合同会社にするか
会社設立の専門家が対応させていただきます。
税理士法人松本の強み
- 設立後に損しない最適な起業形態をご提案!
- 役員報酬はいくらにすべき?バッチリな税務署対策で安心!
- 面倒なバックオフィスをマルっと支援!
- さらに会社設立してからも一気通貫で支援
この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。