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合同会社は資金調達が難しい?資金調達方法やコツについても徹底解説

読了目安時間:約 7分
合同会社は、比較的少人数で設立されるケースが多く、スタートアップやスモールビジネスで選ばれる傾向がありますが、目的に応じた資金調達手段は存在します。
合同会社は2006年の会社法施行により新設された形態であるため、株式会社に比べ知名度や社会的認知度が低い面があります。また、株式を発行しないため、株式発行による資金調達はできません。これらの点から、特に金融機関や投資家の判断基準によっては資金調達が難しい場合もあります。
本記事では、合同会社の資金調達の難しさについて紹介します。
他にも「合同会社の資金調達方法」や「合同会社が資金調達する際のコツ」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、合同会社は資金調達について理解を深めてみてください。
目次
合同会社の資金調達は難しい?

合同会社の資金調達においては、株式会社と比べて審査が慎重に行われる傾向があります。
具体的に、合同会社の資金調達が難しい理由としては、以下の3つが挙げられます。
- 株式が存在しない
- 事業規模が小さい
- 信用度が低い傾向にある
それぞれの理由について解説していきます。
株式が存在しない
合同会社の資金調達が難しい理由として、株式が存在しないことが挙げられます。
具体的には、株式会社のように株式制度がないため、株式発行による資金調達はできません。
一方、株式会社の場合、出資者である株主は経営に直接関与しないことが一般的であり、資金を広く集めても経営には大きな影響を及ぼしにくいという特徴があります。
しかし、合同会社の出資者は会社経営に直接関わる社員となるため、外部から新たに出資者を迎えると経営体制に影響を与える可能性があります。
このような性質の違いから、合同会社が外部から広く資金を調達しようとする場合、経営権を保持しつつ資金のみを調達することが難しいとされています。
事業規模が小さい
合同会社の資金調達が難しい理由として、制度が導入されてからの歴史が浅く、新興企業の形態として利用されるケースが多く、一般的に資本金や事業規模が小さいことが挙げられます。
その影響によって、融資の際に担保として提供できる資産が限られており、株式会社に比べると受けられる融資の種類や金額に制約が生じることがあります。
このような背景から、金融機関が融資を検討する際には、キャッシュフローの安定性や財務の健全性、経営者個人による保証といった要素が、株式会社よりも重視される場面が見受けられます。
信用度が低い傾向にある
合同会社は、日本では2006年に施行された会社法によって新たに設けられた企業形態で、比較的新しい制度なので、株式会社と比べて一般社会における認知度や信頼性はやや劣る傾向があります。
その結果、金融機関の融資審査においては、株式会社とは異なる基準が適用される場合があり、仮に同等の事業規模や財務内容であっても、融資のハードルが高くなることもあります。
さらに、合同会社は、株式会社に比べて市場での知名度や信用力が低い傾向にあるため、私募債の引受先を探す際に難しさを感じる場合があります。
合同会社の資金調達方法

合同会社の資金調達方法については、以下の7つが挙げられます。
- 日本政策金融公庫
- 制度融資
- 保証付融資
- 銀行融資
- 私募債
- ファクタリング
- クラウドファンディング
それぞれの資金調達方法について解説していきます。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、全国の中小企業・個人事業主の資金ニーズに応える公的金融機関であり、経済的に困難な状況にある国民の生活を守るセーフティネットとしても重要な機能を担っています。
最大借入可能額は7,200万円で、そのうち運転資金として利用できるのは4,800万円までとなっています。
重点支援分野には以下のようなものがあります:
- 創業・スタートアップ支援
- 事業の再建
- 事業の継承
- 社会課題解決を目的としたビジネス
- 海外市場への進出
- 農業や漁業などの分野における新たな取り組み
これから事業を始めようとしている方、または事業開始から概ね7年以内の方を対象に、「新規開業資金」という創業支援融資制度が用意されています。
参考:日本政策金融公庫
制度融資
制度融資とは、都道府県や市区町村などの自治体が独自に提供する中小企業向けの融資制度です。
民間金融機関のように利益を重視していないので、比較的柔軟な審査がおこなわれる点がメリットです。
しかし、地方自治体が提供する融資は、日本政策金融公庫に比べて規模が小さく、借入できる上限金額が低めに設定されている場合があります。
また、多くの場合、信用保証協会の保証を条件としており、その際には保証料の負担が発生します。
自治体ごとに融資制度の詳細や対象条件が異なるので、利用を検討する際は各自治体の公式Webサイトや相談窓口で最新情報を確認することが大切です。
参考:東京都中小企業制度融資
保証付融資
保証付き融資とは、信用保証協会が保証人の役割を果たす形で行われる融資制度です。
特徴として、設立から間もない合同会社など、信用実績が少ない企業でも銀行などの民間金融機関から資金を借りやすくなる点があります。
信用保証協会は公的機関であり、返済不能時には借入金の一部または全額を代位弁済することで、金融機関のリスク軽減につながり、融資判断が前向きになることがあります。
実際に、一般的な融資よりも高額な融資が受けられる可能性もあります。
また、原則として担保の提供や合同会社の代表社員が連帯保証人となる必要はないので、起業直後の事業者にとって利用しやすい制度と言えます。
しかし、注意点として、信用保証協会が返済を代行した場合でも、その借入金の返済義務が完全になくなるわけではないので注意が必要です。
参考:もっと知りたい信用保証|一般社団法人全国信用保証協会連合会
銀行融資
合同会社が資金調達をおこなう際、返済義務のある手段として代表的なのが、銀行からの融資です。
審査に通過できれば、年利1.0%〜3.0%程度という比較的低金利での借入が可能となり、一定期間の元本返済を猶予される「据え置き期間」が設けられる場合もあります。
しかし、合同会社は一般的に株式会社に比べて社会的な認知度や信用度が低く見られがちであり、その点が審査に影響を与えることは否定できません。
そのため、合同会社で融資を受ける際は、しっかりとした事業計画と信頼できる業績の提示が重要になります。
私募債
合同会社の資金調達方法の一つとして、私募債を発行することが挙げられます。
私募債とは、会社が資金を調達するときに発行する社債の1つであり、合同会社でも発行することができます。
社債は投資家から資金を集めるときに発行する有価証券であり、株式と似た形式で資金調達することが可能です。
合同会社では少人数私募債を利用することにより、発行金額・償還年数・利息など自由に決められるので、条件の範囲で無理のない返済計画で、資金を集めることができます。
また、少人数私募債の発行は、一定の信用力や業績の安定性があるとみなされやすい特徴があります。
しかし、少人数私募債の発行人数は50未満とされているので、想定しているよりも資金を集めることが難しくなることや償還日に一括返済が必要であることには注意が必要です。
参考:会社法 | e-Gov 法令検索|金融商品取引法 | e-Gov 法令検索
ファクタリング
合同会社が資金を確保する手段として、ファクタリングの活用も挙げられます。
ファクタリングでは、商品やサービスの提供後に発生する未回収の売掛金(売掛債権)を、専門のファクタリング会社に譲渡することで、早期に現金を手にすることが可能です。
メリットとして、実際の入金予定日よりも前に資金を得られる点にあり、審査においては主に売掛先企業の信用力が判断材料となります。
ファクタリング会社によっては、スピーディーな資金化が可能な場合もありますが、実際の振込時期や条件は事前に確認が必要です。
また、ファクタリング利用時は手数料が発生するため、調達資金の一部が手数料として差し引かれる点に注意が必要です。
また、信頼性が高く、手数料率が良心的なファクタリング会社を慎重に選ぶことも重要になります。
クラウドファンディング
合同会社が資金調達できる方法の一つとして、クラウドファンディングがあります。
クラウドファンディングでは、インターネット上に事業の構想や計画内容を公開し、それに共感した一般の人々から広く小口の資金を募ることが可能です。
支援者には、支援額に応じた対価や特典を提供するのが一般的で、クラウドファンディングには以下のように、さまざまな形式が存在します。
形式 | 特徴 |
寄付型 | リターンなしの純粋な寄付 社会貢献や災害支援に使われる |
購入型 | 最も一般的な形式 支援者は商品やサービスを受け取る |
投資型 | 支援者は企業の株主となり、将来的に配当などのリターンを得る |
融資型 | 支援者が貸し手となり、後日元本と利子が返済される |
それぞれの形式によって特徴が異なるので、自社に合った形式のクラウドファンディングを利用してみてください。
合同会社が資金調達する際のコツ

合同会社が資金調達する際のコツについては、以下の4つが挙げられます。
- 自己資金を準備しておく
- 資金用途を明確にする
- 自分に合った資金調達方法を選ぶ
- 事業の信頼性を高める
それぞれのコツについて解説していきます。
自己資金を準備しておく
合同会社が資金調達する際のコツとして、自己資金を一定程度準備しておくことが挙げられます。
実際に、資金調達の種類によっては、自己資金の有無やその額が審査において重要なポイントになる場合も多く見られます。
例えば、日本政策金融公庫の融資を受ける場合、必要な自己資金の明確な基準は設けられていませんが、創業時に必要となる総資金のうち、平均して30%程度を自己資金でまかなっていたケースが多いとされています。
このように、これから資金調達を考えている方は、できるだけ多く自己資金を準備しておくことによって、資金調達のハードルを下げることにもつながります。
資金用途を明確にする
合同会社が資金調達する際のコツとして、自社にとってどのような目的で、どの程度の資金が必要なのかをはっきりとさせることが重要です。
例えば、「売上拡大のために設備を導入したい場合、その導入費用として500万円が必要になる」というように具体的に考える必要があります。
特に、「目的」の部分は、資金調達を検討するうえでもっとも重視すべきポイントの一つです。
また、「なぜその資金が今必要なのか」という理由を明確にすることで、計画の説得力が増します。
自分に合った資金調達方法を選ぶ
合同会社が資金調達するコツとして、自社の状況に合った手段を見極めることも重要です。
必要な資金額やその使い道、資金が必要となる時期などを踏まえた上で、最適な方法を選び取る姿勢が大切です。
実際に、創業時に向いている資金調達の方法と、事業が軌道に乗ってから必要となる手段では、その性質も選び方が異なるのも事実です。
また、法人か個人事業主かといった事業形態や会社の規模感、資金の必要時期なども総合的に判断材料になります。
事業の信頼性を高める
合同会社が資金調達する際のコツとして、事業そのものへの信頼が極めて重要な要素になります。
他社と差別化された特徴や明確な強みを適切に伝えることで、審査の通過率を高めることが可能です。
事業の信頼性を高めるには、競合他社の動向を把握し、自社の立ち位置を的確に分析した上で、緻密に練られた経営戦略を構築する必要があります。
また、自社が持つ独自の価値をいかに事業へ反映させるかを示し、それを裏付ける客観的なデータや資料を用意することも重要です。
こうした取り組みをおこなうことによって、融資担当者に「信頼できる企業」としての印象を与えることにつながります。
合同会社が資金調達をおこなう際の注意点

合同会社が資金調達をおこなう際の注意点については、以下の2つが挙げられます。
- キャッシュフローを見直す
- 返済計画を立てる
それぞれの注意点について解説していきます。
キャッシュフローを見直す
合同会社が資金調達をおこなう際の注意点として、返済義務が生じるため、毎月の返済額や利息の支払いが事業運営に支障をきたさないかを事前にキャッシュフローを確認することが重要です。
キャッシュフローでは、将来的な入出金をどこまで精度高く見積もれるかが成否を分けるポイントになります。
不確定要素がある部分については、保守的な見積もりを立てておくことで、リスクを抑えやすくなります。
返済計画を立てる
合同会社が資金調達をおこなう際には、企業の将来にわたる成長可能性や、借入金の返済に支障が出るリスクがないかなどを慎重に審査して、返済計画を立てることが重要です。
具体的には、融資後の事業計画や収益見通しに無理がないかをあらかじめ確認しておくことが大切です。
資金を調達した目的は事業の拡大が基本ですが、取引先に過度な依存がないか、事業運営上のリスクが潜在していないかも点検しておく必要があります。
また、想定していたほど売上が伸びなかった場合に備えて、現実的な返済スケジュールをあらかじめ設計しておくようにしましょう。
このように、無理のない返済を実現するためには、事業計画や資金計画を継続的に見直し、現状に合わせて柔軟に修正していくことが重要です。
融資を受けられるように準備を進めよう!

今回は、合同会社の資金調達について紹介しました。
合同会社は創業間もない場合が多く、審査においては事業計画や自己資金の比率などがより重要視される傾向があります。
事業内容や財務状況によっては、希望する融資条件に合致しないケースもあるため、事前準備が重要です。
しかし、合同会社でも融資を受けることは可能なので、本記事を参考にして、必要な準備を整えて着実に資金を確保していきましょう。
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なお、本記事は令和7年6月現在の情報をもとにしており、条件が変更されている場合がありますので、あらかじめ公式HPなどで最新情報をご確認ください。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。