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借入金を資本金にできるのか?資本金を決める際のポイントや注意点についても解説

読了目安時間:約 7分
借入金とは、金融機関や個人などから一時的に借り受ける資金であり、将来的に返済義務が発生します。そのため、返済義務のある借入金を、会社の自己資金として位置づけられる「資本金」に充てることは認められていません。
本記事では、「借入金を資本金にできるか」という疑問に対し、税務・会計の観点から詳しく解説します。
あわせて、「資本金の適切な金額を決めるためのポイント」や「資本金設定時の注意点」についても、税理士目線でわかりやすく解説いたします。
会社設立や資本計画を検討されている方は、ぜひ本記事をご参考に、資本金の適正な設計にお役立てください。
目次
借入金を資本金にできるのか?

借入金を資本金として用いることは認められていません。
資本金とは、会社の設立や事業運営に必要な返済義務のない資金を意味し、銀行や親族・知人から借りた資金のように返済義務があるものは通常「借入金」として会計処理されます。
そのため、融資を受けて会社を立ち上げる場合でも、資本金は自己資金から拠出し、借入金は会社の負債として帳簿に記載する必要があります。
このように、資本金は自分自身の資金や出資者からの出資など返済義務のない資金源を用いるようにしましょう。
そもそも資本金とは?

資本金とは、企業が事業を始めたり、継続したりするための基本的な財源のことを指します。
出資者が企業に対して提供する資金であり、企業の信用力や財政的な安定性を評価する際の重要な指標ともなります。
特に、株式会社では、設立時に経営者が用意した私的資金や後に出資を受けて増加した資金が資本金として計上されます。
具体的に、資本金の特徴については、以下の3つが挙げられます。
- 会社の財力
- 社会の信用度
- 融資審査の判断材料
それぞれの特徴について解説します。
会社の財力
資本金は、会社の財力を表す指標となります。
一般的に、資本金が一定規模以上ある企業は、財務基盤が安定していると見なされやすい傾向があります。
ただし、資本金の多寡だけで企業の健全性を測ることはできず、自己資本比率やキャッシュフロー、利益剰余金などの財務指標と併せて総合的に判断されます。
資本金は、将来的な事業の成長性や拡大の余地があることを裏付ける要素のひとつと言えます。
社会の信用度
資本金は、会社が社会から信頼を得るためのひとつの指標となります。
会社の信頼性とは、その会社がどれだけ安定しており、倒産しにくいかという「経営の安全性」を指しています。
この安全性は、企業が保有する資産、特に「自己資本」の多寡によって判断されます。
資本金はその自己資本の中核を成すものであり、経営の健全さを裏付ける重要な要素となります。
一般に、自己資本が豊富な企業は財務基盤が安定しており、経済的なトラブルに見舞われてもすぐに倒産するリスクを低くすることができます。
逆に、借入金などの他人資本に頼りすぎると、自己資本比率が下がり、外部ショックに弱くなってしまうのも事実です。
このように、資本金をしっかり確保している企業は、経済的な信頼性が高いと見なされ、取引先や金融機関などからの評価も高くなります。
融資審査の判断材料
資本金が多くなることで、金融機関から資金を借り入れる際に有利に働くことがあります。
融資審査において金融機関は企業の財務状況を様々な角度で評価し、その中でも「自己資本の厚さ」は重要な判断材料の一つです。特に資本金は自己資本の基礎として評価されますが、利益剰余金等他の自己資本構成要素も考慮されます。
資本金が十分に確保されている企業は、自己資本比率が高く、返済能力や経営の安定性についても評価が高くなりやすいので、融資のリスクが低いとみなされやすくなります。
そのため、資本金は金融支援を得やすくし、事業をさらに拡大するための要素となります。
借入金と資本金の違い

借入金とは、企業や個人が銀行やその他の貸し手から一時的に資金を調達する形で得るお金のことです。
このような借入金は、事業を運営するための資金、たとえば設備投資や日々の運転資金として幅広く活用されます。
資本金との違いで特に重要なのは、「その資金を返済しなければならない義務があるかどうか」です。
例えば、金融機関からの融資やカードローン、親族・友人からの借入金のように、返済義務がある資金は、会社の資本金として扱うことはできません。
このように、借入金と資本金の違いを正しく理解しておくことで、トラブルを未然に防ぐことにもつながります。
資本金の調達方法

資本金の調達方法については、以下の4つが挙げられます。
- 方法①:自己資金
- 方法②:株式の発行
- 方法③:クラウドファンディング
- 方法④:債務の株式化(DES)
それぞれの調達方法について解説します。
方法①:自己資金
自己資金とは、自分自身が保有しているお金のことを指します。
事業を始める際に必要な資本金を準備する方法として、もっとも望ましいのは自己資金を使うことです。
自己資金であれば、他者からの出資を受けた場合と異なり、経営判断に対する外部からの影響を受けにくいという利点があります。
また、どれだけの自己資金を用意できるかによって、金融機関などから借りられる融資額にも影響があるので、なるべく多く自己資金を準備しておくことをおすすめします。
出資を受ける場合は、出資比率によっては経営への関与が強まる可能性もあるため、株主構成や議決権の割合を慎重に設計する必要があります。
方法②:株式の発行
企業が自己資本を増やす手段としてもっとも一般的なのが、新たに株式を発行し、外部からの出資を受け入れることです。
これは新株発行と呼ばれており、企業が自ら新しい株式を創出し、それを購入した出資者から資金を獲得する方法です。
こうして調達された資金は、経営資源として柔軟に活用することが可能で、事業の拡大や新分野への進出、設備投資など用途に制限はありません。
メリットとして、出資者から得た資金には返済義務がないので、金融機関からの借入金のように、元本の返済や利息の支払いを負う必要がありません。
出資者はその見返りとして、企業が利益を出した場合には配当を受け取る権利を持ち、さらに株式の価値が上昇した際には、それを売却することで大きな利益を得る可能性もあります。
方法③:クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、多くの人々から資金を集めるための仕組みで、主にインターネットを通じておこなわれます。
この仕組みにはいくつかの形態があり、寄付型では資金の提供に対する報酬はなく、購入型では商品やサービスなど金銭以外の対価が提供されます。
さらに、投資型では出資者に利益の分配などのリターンがあるのが特徴です。
このような方法によって、アイデアやプロジェクトの実現を目指す方が支援を受けることが可能になります。
方法④:債務の株式化(DES)
債務の株式化(DES)とは、企業が抱える借入金などの負債を株式に転換することで、借金の返済義務を解消し、代わりに債権者が株主になる方法です。
この方法では、負債と同等の金額が資本金に移し替えられるので、企業は借入の返済や利息の支払いといったキャッシュアウトを回避でき、資金繰りの改善が期待できます。
また、資本金が増加することで、自己資本比率が高まり、企業の財務的な健全性に対する外部からの評価も向上させることができます。
しかし、新たに発行される株式が既存株主の持ち株比率を希薄化させる可能性があり、将来的な利益配分にも影響を及ぼすリスクがあるので、実施する際には慎重な判断が求められます。
参考:企業再生税制適用場面においてDESが行われた場合の債権等の評価に係る税務上の取扱いについて|国税庁
資本金の金額を決める際のポイント

資本金の金額を決める際のポイントについては、以下の4つが挙げられます。
- 初期費用と運転資金で決める
- 取引先の規模
- 融資をするかどうか
- 実店舗を持つ銀行で口座を開くかどうか
それぞれのポイントについて解説します。
初期費用と運転資金で決める
資本金額を決める際には、初期費用と運転資金で決めることが重要です。
具体的には、以下のような費用を考慮する必要があります。
- 法人登記や各種申請にかかる費用
- オフィスや店舗の賃貸契約に必要な資金
- 従業員の給与などの人件費
- 商品や原材料の仕入れにかかる費用
- 備品や設備への投資資金
起業当初は売上が安定するまでに時間がかかるケースが多く、しばらくの間は資本金を頼りに経営を続けることになるので、資金計画は慎重に立てるべきです。
一般的には、少なくとも3ヵ月間は事業を継続できるだけの運転資金と初期投資を資本金に組み込むのが望ましいとされています。
取引先の規模
資本金の設定額は、取引先の規模に応じて慎重に検討することが重要です。
特に、大手企業との取引を考えている場合は、資本金の多寡が企業の信用力を判断する材料とされることが少なくありません。
例えば、極端に低い資本金で法人を設立すると、信頼性に疑問を持たれ、商談がスムーズに進まない可能性も出てきます。
このように、資本金の金額を決める際には、現在の状況だけでなく、将来的なビジネスの展開も見据えて計画的に設定するようにしましょう。
融資をするかどうか
創業時に公的・金融機関から融資を受けたい場合、資本金は最低でも100万円以上に設定すると良いでしょう。
理由として、資本金が企業の経営体力を示す一つの指標とされており、その額によって返済能力が判断されるからです。
資本金が少額だと、「資金的な余裕がないのではないか」と判断されてしまい、希望する融資を受けられない可能性があります。
そのため、会社設立時点で融資を希望する場合には、信頼性と安定感を示す意味でも、資本金を100万円以上に設定することをおすすめします。
実店舗を持つ銀行で口座を開くかどうか
銀行によっては、法人口座の開設にあたり資本金額や事業計画、取引実態などを審査項目とする場合があります。
特にメガバンクでは、一定の資本金がないと口座開設に時間がかかる、あるいは断られるケースもあるため、実務上は資本金を100万円以上を目安に設定しておくとスムーズな場合があります。
ただし、資本金の額が直接的に口座開設の可否を決定づけるわけではなく、他の要素も重要な判断材料となります。
資本金を決める際の注意点

資本金を決める際の注意点については、以下の3つが挙げられます。
- 消費税の納税負担を考慮する
- 接待交際費が損金計上できなくなってしまう
- 法人税にも影響がある
それぞれの注意点について解説します。
消費税の納税負担を考慮する
資本金を決める際の注意点として、消費税の納税負担を考慮するようにしましょう。
会社を設立したばかりの段階では、税金の負担を少しでも軽くするための優遇措置として「新設法人に対する消費税免税制度」があります。
この制度により、資本金が1,000万円未満であれば、設立後最初の2事業年度にわたって消費税の納税が免除される可能性があります。
この特例措置の対象となるのは、資本金が1,000万円未満の法人で、設立から1期目およびその翌期が原則として免税の適用期間です。
そのため、会社の資本金を1,000万円以上にするかどうかを検討する際には、消費税の納付義務が発生する点に十分に注意しましょう。
参考:納税義務の免除|国税庁
接待交際費が損金計上できなくなってしまう
企業の資本金の大きさは、交際費の損金算入(経費として認められる範囲)に影響を及ぼします。
特に、資本金1億円を超えるかどうかが制度の適用に関わる重要な区分となり、中小法人(資本金1億円以下)であれば、年間800万円まで交際費を損金算入できます。
一方、資本金が1億円を超える企業ではこの上限枠がなくなりますが、条件を満たせば飲食費の50%が損金算入可能です。
このように、資本金の額は税務上の扱いに直結するため、設立時や増資時には十分な検討が必要です。
参考:必要経費の知識|国税庁
法人税にも影響がある
資本金を決める際の注意点の一つとして、法人税にも影響があるので注意が必要です。
法人が支払う税金の中には、会社の利益に関係なく一定額を納める必要がある「法人住民税」があります。
法人住民税は、資本金の金額によって変わってきます。
例えば、資本金が1,000万円以下で従業員が50人以下の中小企業では、均等割の税額は年間7万円です。
一方で、資本金が1,000万円を超えると、たとえ従業員数が同じであっても、法人住民税は年間18万円に増額されます。
そのため、資本金の規模は法人税だけでなく、住民税にも直接的な影響を及ぼすため、会社設立時には慎重な検討が求められます。
参考:総務省|法人住民税
資本金を決める際にはさまざまな要素を考慮しよう!

今回は、借入金を資本金にできるのかについて紹介しました。
通常、借入金をそのまま資本金として計上することは認められていません。
しかし、借入以外にも資本金として計上できる資金源は存在するので、経営者の経営方針や事業の計画に合った形で資本金をどのように準備するかを慎重に検討することが重要です。
また、資本金の額を決める際には、出資比率や税務上の影響、会社としての信用力などさまざまな視点からの検討が求められます。
今回の記事を参考にして、資本金を決める際にさまざまな要素を考慮するようにしましょう。
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- さらに会社設立してからも一気通貫で支援
この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。