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起業・開業
起業に必要な費用とは?資金調達方法や費用を抑えるコツについても解説

読了目安時間:約 7分
起業に必要な費用は、個人事業主や法人の種類によって異なります。
また、起業後の諸経費や事業を継続するためのランニングコストなどもあらかじめ把握しておくことが重要です。
本記事では、起業に必要な費用について紹介します。
他にも「起業に必要な費用の資金調達方法」や「起業に必要な費用を抑えるコツ」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、起業に必要な費用について理解を深めてみてください。
目次
起業に必要な費用

事業を始める際には、大きく分けて個人事業主と法人の2つがあります。
どちらを選ぶかによって初期費用が大きく異なるのはもちろん、法人の種類によっても異なります。
具体的に、起業に必要な費用については、以下のように個人事業主や法人形態によって異なります。
- 個人事業主の費用
- 株式会社の費用
- 合同会社の費用
- NPO法人の費用
- 一般社団法人の費用
- 一般財団法人の費用
それぞれの費用について解説します。
個人事業主の費用
個人事業主として起業する際には、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を提出するだけで、正式に事業をスタートできるので、特別な費用もかからず、手続きはシンプルです。
しかし、事業用の銀行口座を屋号で開設したい場合には、印鑑の作成費がかかることがあります。
また、業種によっては営業許可などの取得が必要で、その際には別途手数料が発生してしまうので注意が必要です。
株式会社の費用
株式会社の設立には、登録免許税として「15万円」もしくは「資本金の0.7%」のうち高い方が必要となります。
また、公証人による定款の認証には約5万円の費用が発生します。
会社の資本金は最低1円からでも設立可能ですが、現実的には運転資金や社会的な信用を考慮し、ある程度の資金を準備するのが望ましいとされています。
一般的には、事業規模や資金計画に応じて100万円程度を目安とするケースも見られますが、実際の必要額は業種や事業内容によって大きく異なります。
合同会社の費用
合同会社を設立する際にかかる主な費用は以下の通りです。
- 登録免許税:最低60,000円または資本金の0.7%のいずれか高い額
- 定款謄本の取得費:約2,000円
- 定款に貼付する収入印紙代:40,000円(紙の定款の場合のみ必要)
合同会社では、株式会社のように公証人による定款認証が不要になるので、全体的な設立コストが低く抑えられるのが特徴です。
また、電子定款を利用すれば印紙代が免除されますが、専用のソフトウェアや機器の導入費用がかかることがあります。結果として、紙の定款を利用する場合より高くなるケースもあるため、自身の状況に応じた適切な判断が求められます。
合同会社は株式の発行による資金調達ができないため、外部からの出資を受ける方法が限定されます。株式会社と比較した場合、資本政策や出資による拡大を検討する企業では不向きな場合もあります。
NPO法人の費用
NPO法人(特定非営利活動法人)とは、社会への貢献を目的とする団体として位置づけられています。
設立に際しては株式会社とは異なり、資本金の用意や登録免許税、定款の認証手数料といった費用は発生しないので、設立時に必要な費用は主に印鑑の作成や各種証明書の取得などの支出に限られます。
しかし、NPO法人が行える活動分野は内閣府が示すガイドラインにより、医療や福祉、環境保全など公益性の高い20の分野に限定されるので、あらかじめ注意が必要です。
参考:特定非営利活動(NPO法人)制度の概要、活動分野 | NPOホームページ
一般社団法人の費用
一般社団法人とは、利益を追求することを目的としない法人なので、設立時に資本金を用意する必要がありません。
そのため、株式会社や合同会社などの営利法人と比較して、少ない初期費用で設立することが可能です。
設立にかかる費用は約11万円程度で、以下のような費用が発生します。
- 登録免許税:60,000円
- 定款謄本の取得費:約2,000円
- 定款認証にかかる費用:約50,000円
さらに、一般社団法人では印紙税の課税対象外となっているので、定款を紙で作成・認証した場合でも印紙代が不要です。
参考:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 | e-Gov 法令検索
一般財団法人の費用
一般財団法人は、特定の目的に基づき拠出された財産を基礎に設立される非営利法人です。設立時には、最低300万円の基本財産が必要となります。
設立時の初期コストは高めになりますが、一般財団法人は非営利法人に分類されつつも、公益性や活動の具体的な内容に制限が少ないため、自由度の高い活動が可能です。
具体的に、設立の際にかかる主な費用は、以下のとおりです。
- 基本財産:300万円以上
- 登録免許税:60,000円
- 定款謄本の取得費:約2,000円
- 定款認証にかかる費用:約50,000円
また、一般社団法人と同様に、一般財団法人についても定款の印紙税は課税対象外となっており、紙定款を使用する場合でも印紙代は不要です。
参考:一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 | e-Gov 法令検索
起業後に必要な費用

起業後に必要な費用については、以下の5つが挙げられます。
- 物件取得費
- 設備費
- 広告費
- 税金
- 社会保険料
それぞれの費用について解説していきます。
物件取得費
起業後に必要な費用として、物件取得費が挙げられます。
自宅で事業を始める場合には物件取得費は不要ですが、外部にオフィスや店舗を構えるとなると、物件の賃貸契約にかかる初期費用が発生します。
特に、立地や施設の充実度によって保証金や前払い金などの初期費用は大きく異なります。
条件の良い物件ほど取得費用が高額になる傾向があるので、あらかじめ十分な資金を用意しておくことで、希望する物件をスムーズに押さえることにつながります。
設備費
事業の種類によって、必要となる設備投資の内容や規模は大きく異なります。
例えば、以下のような備品や設備が必要になるケースがあります。
- パソコン
- 固定回線電話
- 机や椅子といったオフィス家具
- プリンターなどの事務機器
- 内装や外装の工事費用
これらの設備投資は、事業運営の土台を築くうえで欠かせない要素ですが、投資額が大きすぎると、事業の立ち上げそのものが遅れてしまう可能性があります。
そのため、無理のない範囲で予算を設定し、現実的な計画を立てることが大切です。
広告費
起業後に必要な費用として、以下のような広告費がかかります。
- ホームページの立ち上げ・制作にかかるコスト
- 名刺のデザイン・印刷に必要な経費
- 宣伝用のチラシ制作・印刷代
- インターネット広告への出稿費用
これらの初期経費の内訳は事業の内容によって多少異なりますが、開業当初の集客やブランド構築に大きく影響するので、全体の資金配分をよく考慮した上で、必要な部分にはある程度の投資をおこなうようにしましょう。
税金
起業後は避けて通れないのが税金の問題です。
黒字決算であれば、その利益に応じて法人税や住民税が課されるのは当然ですが、たとえ赤字であっても「住民税の均等割」と呼ばれる税負担が発生します。
これは法人の形態にかかわらず一律に適用されるもので、東京23区の場合、資本金1,000万円以下の法人は住民税均等割が7万円程度課せられ、1,000万円を超える場合には18万円程度が課せられます。
自治体によって異なる場合があるため、所在地の自治体の税額を確認しましょう。
社会保険料
起業後に必要な費用として、社会保険料も挙げられます。
実際に、企業を運営する上で、社会保険への適切な加入は欠かすことのできない重要な義務の一つです。
社会保険には、健康保険や厚生年金のほか、労災保険、雇用保険などが含まれており、従業員の生活を幅広く支える制度となっています。
起業に必要な費用の資金調達方法

起業に必要な費用の資金調達方法については、以下の4つが挙げられます。
- 日本政策金融公庫の融資
- 銀行融資
- 制度融資
- クラウドファンディング
それぞれの資金調達方法について解説していきます。
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫とは、政府が全額出資して運営している公的な金融機関で、主に中小企業や創業者の資金ニーズに応える役割を担っています。
日本政策金融公庫の融資は、まだ実績の少ない個人事業主や小規模事業者も活用することができ、民間の金融機関では融資が難しいケースでも柔軟に対応してくれる点が魅力です。
申請から実行までのスピードも比較的早く、まとまった資金が必要なときの選択肢としておすすめです。
一方で、地方自治体が提供する制度融資と比較すると、金利がやや高めに設定される傾向があるデメリットもあるので注意が必要です。
参考:日本政策金融公庫
銀行融資
民間の銀行から資金を調達する方法には主に2つの種類があり、「プロパー融資」と「信用保証付き融資」に分類されます。
プロパー融資とは、銀行が直接企業に対して資金を貸し出す仕組みであり、借入金の返済が遅れた際にはそのリスクを銀行自身が負うことになります。
そのため、審査のハードルが高く、特に新規事業を始める際には利用が難しいケースが少なくありません。
一方で、起業時に利用を検討したいのが「信用保証付き融資」です。
信用保証付き融資とは、各都道府県の信用保証協会が借り手に代わって保証人となり、万が一返済がおこなわれなかった場合でも、協会が一定額を金融機関に支払う仕組みです。
保証内容は返済総額の8割から全額に及ぶこともあり、これにより金融機関のリスクが軽減され、審査も比較的通りやすくなっています。
しかし、通常の金利に加えて、保証協会が定める保証料を支払う必要があるので、最終的な負担額が増えることになります。
参考:プロパー融資借換 特別保証制度のご案内|東京信用保証協会、初めての融資と信用保証
制度融資
制度融資とは、中小企業や個人事業主を対象に、地方自治体・信用保証協会・金融機関の三者が連携して資金調達を支援する仕組みです。
主に、長期間にわたる借り入れや低金利での融資が魅力と言えます。
この制度を利用する際は、まず自治体に申し込みをおこない、その後に提携する金融機関が保証協会の保証を受ける形で融資が進められます。
しかし、申請から実際の融資実行までにはある程度の時間がかかる傾向があるので、あらかじめ注意が必要です。
このように、制度融資は、日本政策金融公庫の融資と並び、利用条件が比較的緩やかな資金調達手段と言えます。
参考:東京都中小企業制度融資
クラウドファンディング
クラウドファンディングとは、インターネットを通じて多くの人々から賛同を得て、プロジェクト実現のための資金を募る仕組みです。
近年では、新たな資金調達の選択肢としても注目されるようになっています。
この方法で資金を集めるには、事業の魅力を伝え、支援者の共感を得ることが重要です。
必ずしも目標金額に届くとは限りませんが、成功すれば初期費用を準備できる可能性があり、創業初期の段階でもある程度の認知や支持を得ることができます。
起業に必要な費用を抑えるコツ

起業に必要な費用を抑えるコツについては、以下の3つが挙げられます。
- オフィスを工夫する
- SNSで集客する
- 備品は中古かレンタルを活用する
それぞれのコツについて解説していきます。
オフィスを工夫する
起業に必要な費用を抑えるコツとして、オフィスを工夫することが挙げられます。
実際、事務所を借りてしまうと、家賃などの固定費が毎月の経営を圧迫することになります。
一方、自宅を拠点にすることで、新たな設備投資や賃料が不要となり、初期費用を抑えることが可能です。
また、カフェやコワーキングスペースを業務の場として活用すれば、コスト面でも柔軟に対応できます。
しかし、自宅の住所を業務上公開する必要がある業種では、プライバシーや安全面に不安を感じてしまう場合もあります。
そういった場合には、「バーチャルオフィス」の利用を検討する方法もあります。
バーチャルオフィスでは、ビジネス用の住所や電話番号を借りることができ、信頼性を確保しつつ、自宅住所を公開するリスクを軽減することができます。
ただし、金融機関によっては法人口座開設時に追加確認が行われたり、審査が慎重になる場合もあるため、利用前にこうした点を十分に理解しておくことが重要です。
SNSで集客する
SNSや無料で使えるメディアを上手に活用すれば、費用をかけずに自社の認知度や信頼を高めることが可能です。
具体的には、以下のような無料プラットフォームを積極的に利用することをおすすめします。
無料プラットフォーム | 内容 |
X(旧Twitter) | ユーザー数が非常に多く、発信した情報が拡散されやすいのが特徴。 コンテンツ次第では、フォロワーが少なくても多くの人の目に留まるチャンスがある。 スタートアップや個人の初期段階でも取り組みやすいプラットフォーム。 |
写真や動画での訴求が効果的。 ファッションや美容、料理など「見せる」ことに強みを持つ業種に特に向いている。 | |
note | サービスや商品に対する思いや考えを深く伝えることに適したメディア。 記事の一部を有料で販売することもでき、情報発信だけでなく副収入の手段としても利用可能。 |
これらのプラットフォームを活用して、定期的な情報発信をおこなうことで、効率的な営業活動につながります。
ただし、効果的に活用するにはコンテンツの質と継続的な発信が必要で、即時の成果を約束するものではない点に注意してください。
備品は中古かレンタルを活用する
起業に必要な費用を抑えるコツとして、備品は中古かレンタルを活用することが挙げられます。
備品はすべてを新品で揃える必要はなく、コストを抑えつつ、必要なものを効率よく確保する方法として、中古品やレンタルの活用が非常に有効になります。
例えば、パソコンやスマートフォンは、型落ち製品やリース契約を視野に入れることで、経費を削減できます。
しかし、中古やレンタルを選ぶ際も、使いやすさや性能など必要最低限の品質を満たしているかどうかをしっかり見極めることが重要です。
起業に必要な費用を把握しておこう!

今回は、起業に必要な費用を紹介しました。
起業する際に必要となる費用の全体像をあらかじめ把握しておけば、余裕を持って資金計画を立てることが可能です。
個人事業主と法人の費用の違いや、法人の形態による設立コストの差異を理解し、それに基づいて資金準備をおこなうことが重要です。
また、会社の設立形態は、将来の事業の規模や方向性によって選ぶのが適切です。
今回の記事を参考にして、起業に必要な費用を把握しておきましょう。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。