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会社設立
株式会社と合同会社の違いは何?設立するならどっちを選ぶべき?

読了目安時間:約 6分
会社を設立する際には、どのような形態の会社を設立すべきかを決定しなければなりません。現在、日本においては、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社の4つの種類の会社形態があります。このうち、ほとんどの企業は株式会社または合同会社を選択しています。では、株式会社と合同会社にはどのような違いがあるのでしょうか。
今回は、これから会社設立を検討している方のために、株式会社と合同会社の違いやそれぞれのメリット・デメリットなどについて解説します。
株式会社と合同会社について
株式会社と合同会社の違いを確認する前に、株式会社と合同会社の特徴を確認していきましょう。
株式会社とは
株式会社は、日本で最も多い会社の形態です。株式を発行し、株主から出資金を集めて成り立つ会社を株式会社といいます。
株式を保有する人を株主といい、株式会社では株主が株主総会で取締役を選出するため、会社の所有者と経営者は分離することになります。会社の所有と経営が分離すると、会社の意思決定は所有者である株主が集まる株主総会で決議する必要があり、経営者だけで会社の方針など重要事項を決定することはできません。
合同会社とは
合同会社は2006年の新会社法によって新たに誕生した会社形態です。合同会社の出資者は経営に関わる社員であり、出資者と経営者が一致する持分会社の一形態となります。
合同会社では、出資者を社員と呼び、社員による社員総会で会社の意思決定をします。
持分会社には、合同会社のほか、合名会社、合資会社もありますが、合同会社の特徴は、社員全員が有限責任社員である点にあります。有限責任社員とは、万が一、会社が倒産した場合、出資額の範囲で責任を持つ社員のことです。無限責任社員の場合、会社倒産時には、社員が出資額以上の責任を負わなければなりません。このような事情から、万が一の状況を考え、株式会社以外の会社を設立する際には、個人のリスクを抑えられる合同会社を選択するケースが多いようです。
株式会社と合同会社の違い
株式会社と合同会社は、次のような点で違いがあります。

株式会社と合同会社の違いを詳しく解説
株式会社と合同会社の主な違いについてより詳しく解説していきます。
会社設立手続きと費用の違い
株式会社と合同会社では、会社設立時にかかる費用と手続きにも違いがあります。まず、株式会社の場合、定款を作成したら、公証役場で認証を受けなければなりません。しかし、合同会社の場合、定款の作成は必要ですが、定款の認証を受ける必要はありません。定款の認証手数料は、発起人の人数や資本金の額によって異なり、その額は1万5,000円~5万円となります。
また、会社設立登記にかかる登録免許税の額も異なります。株式会社の登録免許税の額は、資本金の0.7%または15万円のいずれか大きい方です。一方、合同会社の設立登記時に発生する登録免許税の額は、資本金の0.7%または6万円のいずれか大きい方となります。
定款の認証手数料や登録免許税の額を考えると、合同会社の方が株式会社よりも設立時の費用を抑えられることがお分かりになるでしょう。
所有者と経営者の関係性の違い
株式会社の場合、原則として出資者と経営者は異なります。出資者は、株式を所有する株主になるのです。経営者が株式を保有するケースもありますが、企業規模が大きくなるほど、所有と経営は分離されています。一方、合同会社の場合は、経営者である社員が出資をし、会社を設立するため、会社の所有者と経営者は同一となります。
最高意思決定機関の違い
株式会社は所有者と経営者が分離しているため、経営者は所有者である株主の意思に従い、経営を行わなければなりません。株式会社の最高意思決定機関は、株主総会であり、会社の経営に関わる重要な意思決定には、株主総会の開催と決議が必要です。合同会社の場合、最高意思決定機関は社員総会となります。合同会社の社員とは、一般的な従業員のことではなく、会社に出資をしている人のことです。
株式会社は株主総会の開催と決議が必要になる一方で、合同会社は社員の同意を得られれば、会社の方針や重要事項を決定できるため、スピーディーな意思決定が可能になります。また、株式会社は株主の決議が必要になるため、経営者の考えに基づいた自由な会社運営はしにくいものの、合同会社は比較的自由に運営がしやすくなるといえるでしょう。
決算公告の義務の違い
決算公告とは、会社の決算内容について、株主や債権者などに広く伝えることです。株式会社には決算公告の義務があり、定時株主総会が終わったら、官報、日刊新聞、電子公告のいずれかの方法で貸借対照表などを公告する義務があります。
電子公告は、自社のホームページや外部機関のWebサイトに決算公告データを掲載する方法です。自社のホームページに掲載する場合、費用はかかりませんが、5年分の貸借対照表を掲載しておかなければならないというルールがあります。官報や日刊新聞に掲載する場合、一期分の情報を掲載すれば問題はありませんが、掲載にあたっては費用がかかります。
公告方法を変更することも可能ですが、その場合は株主総会において、定款変更の決議をとり、法務局で公告方法変更の登記申請を行わなければなりません。
合同会社の場合は、決算公告の義務はないため、株式会社のように公告に関する手間や費用は不要です。
役員の任期の違い
株式会社の役員の任期は通常2年であり、最長でも10年です。役員の任期が終了するたびに、役員を再任するか、別の人を新たに役員に就任させるかについて、株主総会で決議をとらなければなりません。また、株主総会の決議後は法務局に登記変更申請をする必要があります。登記変更の際には、登録免許税の支払いが必要です。
一方、合同会社の場合、役員の任期がないため、更新する必要はありません。
資金調達法の違い
株式会社は、株式を発行し、資金調達を行うことができます。株式を上場すれば、投資家から広く資金を調達することが可能です。しかし、合同会社は、株式を発行することができません。そのため、資金調達法が限定されており、企業規模を拡大したい場合には資金調達に苦労する可能性があります。
利益分配法の違い
株式会社では、株主の出資比率に応じた配当金を支払います。そのため、株式を多く保有している株主ほど、受け取れる配当金の額は大きくなります。しかし、合同会社の場合、出資比率に合わせて利益を分配する必要はありません。あらかじめ定款で利益分配を決定しておけば、出資比率に関わらず、自由に利益を分配することが可能です。
株式会社のメリットとデメリット
株式会社と合同会社の違いについてご説明してきましたが、株式会社の主なメリットとデメリットには次のようなものがあります。
株式会社のメリット
株式会社の主なメリットは次の2つです。

資金調達がしやすい
株式会社は、株式を発行して投資家から資金を調達することができます。株主は、会社に万が一の事態が起きても出資額以上の責任を負うことはありません。そのため、出資額以上のリスクが発生しないため、投資家からの資金を集めやすいといったメリットがあります。
社会的信用度が高い
日本の企業の9割超は株式会社だとされています。新たに登場した合同会社に比べ、株式会社は知名度が高く、社会的な信用も得られやすくなります。そのため、取引先などから信用を得やすいために顧客も獲得しやすくなり、金融機関からの融資も受けやすくなる可能性があるでしょう。
株式会社のデメリット
株式会社の主なデメリットは次の2点です。
設立時に手間と費用がかかる
株式会社の設立の際には、定款の認証が必要です。定款の認証を受けるためには、公証役場に申請する必要があり、申請時には手数料の負担が発生します。また、法務局で法人の設立登記の申請をする際に必要な登録免許税も合同会社に比べて高くなります。
会社設立時に手間と費用がかかる点は、株式会社のデメリットでしょう。
意思決定までに時間がかかる
株式会社が経営方針や重要事項の決定をする際には、株主総会を招集し、株主の決議をとらなければなりません。株主総会の招集や準備には時間がかかり、また、議決権の2/3以上の賛成が必要です。そのため、早急に経営方針の転換や新規事業の開発が必要になった場合には、すぐに決議をとれず、経営者の意向を経営に反映するまでに時間がかかります。
合同会社のメリットとデメリット
合同会社にも株式会社同様、メリットとデメリットがあります。

合同会社のメリット
合同会社の主なメリットを2つご紹介します。
会社設立や維持の手間と費用がかからない
合同会社を設立する際には、定款の認証は不要です。また、設立登記をする際の登録免許税も株式会社より低く抑えられます。そのほか、役員の任期がないため、役員の更新をする必要がなく、登記変更をする手間も登記変更時の登録免許税の負担も発生しません。加えて、合同会社には決算公告の義務がないため、決算公告をする手間も、決算公告にかかる費用負担も発生することもありません。
株式会社に比べ、会社設立や維持のための手間や費用がかかりにくい点は合同会社のメリットです。
スピーディーな意思決定が可能
合同会社は、社員の合意を得られれば、経営方針など、会社の経営に関わる重要な事項を決定することが可能です。株式会社のように株主総会を招集し、決議をとる必要がないため、迅速な意思決定ができるようになり、スピード感を持った経営を実現できます。
合同会社のデメリット
合同会社の主なデメリットは次の2点です。
知名度が低く、資金調達がしにくい
合同会社は、株式会社に比べると知名度が低いため、顧客開拓の際に相手の信用を得にくい場合があります。また、株式を発行しないため、資金調達の手段が限定され、多額の資金が必要になった場合などは、資金調達が難しくなる可能性も出てきます。
意見の対立が生じる場合がある
合同会社では、出資割合に関わらず、社員一人が一つの議決権を持ちます。そのため、社員の数が2人や4人など、偶数の場合には、意見が対立した際に、賛成と反対の数が同数になり、意思決定がしにくくなる恐れがあります。
株式会社と合同会社のどっちを選ぶべき?
株式会社にも合同会社にもメリット・デメリットがあります。そのため、会社設立の際、株式会社と合同会社のどちらを選ぶべきか判断に迷うケースもあるでしょう。ここでは、株式会社と合同会社が適しているケースについてご説明します。
株式会社の設立が向いているケース
株式会社の設立が向いているのは、次のような場合です。
・ビジネスを拡大するための資金調達が必要
・モノを扱う事業を営む予定の場合
・対外的な信用力を高めたい場合
株式会社の最大のメリットは、株式の発行によって資金調達ができる点です。近い将来、事業を拡大したいという希望がある場合は、幅広い資金調達手段を選べる株式会社が向いています。また、モノを扱う事業など、顧客拡大のために対外的な信用力が必要な場合などは、社会的認知度の高い株式会社が向いています。
合同会社の設立が向いているケース
合同会社の設立が向いているのは、次のような場合です。
・できるだけ設立の手間と費用を抑えたい場合
・小規模のビジネスを考えている場合
・スピーディーな会社経営を行いたい場合
・サービスの提供を主とする事業を営む予定の場合
株主総会の招集が不要となり、社員の合意だけで会社の経営方針を決定できるため、スピード感を持って会社を運営していきたい場合は、合同会社が向いています。また、株式会社に比べ、資金調達の手段は限られるものの、小規模のビジネスを考えているのであれば多額の資金調達をする必要はないため、会社設立の手間とコストを抑えられる合同会社が適している可能性があります。また、サービスの提供を主とする事業の場合、社会的認知度がそれほど重視されないため、合同会社でも問題はありません。
まとめ
株式会社と合同会社にはさまざまな違いがあります。それぞれにメリットとデメリットがあるため、会社設立を検討する際には、株式会社と合同会社の特徴をしっかり理解したうえで、事業内容や規模、今後の展開などを考慮し、自社に適した会社形態を選ぶことが大切です。また、まずは手間と費用のかからない合同会社を設立した後、事業規模を拡大したいタイミングで株式会社に形態を変更することもできます。
会社設立の経験がない場合は、どちらの会社形態を選ぶべきか悩むケースも少なくありません。合同会社と株式会社のどちらを選ぶか判断がつかない場合などは、税理士など、専門家への相談も検討することをおすすめします。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。