2025.07.10

会社設立

個人事業主は合同会社を設立すべき?メリット・デメリットを解説

読了目安時間:約 6分

個人事業主として事業を営んでいる方の中には、そろそろ会社を設立し、法人として事業を継続すべきか、個人事業主として事業を続けるべきか悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。合同会社は株式会社に比べると、会社設立時の手間と費用を軽減できるため、小規模な事業を考える方の場合、法人化を進める際に合同会社の設立を検討する人が増えています。

では、個人事業主は合同会社を設立した方がメリットは大きくなるのでしょうか。今回は、個人事業主が合同会社を設立する際のメリットやデメリット、個人事業主と合同会社の違いなどについて詳しくご説明します。

合同会社と個人事業主の特徴

合同会社を設立すべきか、個人事業主として事業を継続すべきか悩む場合は、まず、それぞれの特徴を理解しておかなければなりません。

合同会社とは

合同会社は、日本で設立が認められている4種類の会社形態のうちの一つです。合同会社では、出資した人を社員と呼びます。

株式会社では、株主が出資者となるため、原則として会社の所有者と経営者は異なりますが、合同会社の場合、経営に関わる社員が出資者でもあり、経営者であるという特徴があります。また、社員は全員有限責任社員となるため、万が一、事業がうまくいかなかった場合でも、責任を負うのは出資額の範囲までとなります。

合同会社では株主が存在しないため、株主総会を開く必要もなく、経営方針を決定する際にも株主総会の決議を得る必要もありません。そのため、株式会社に比べると、スピーディーな意思決定が可能になります。しかしながら、株式を発行できないため、株式会社に比べると資金調達の手段は限られるというデメリットもあります。

個人事業主は、会社を設立せず、法人ではなく、個人として事業を営む人のことです。具体的には、利益を目的とした継続的な事業を独立して行っている人が個人事業主であると判断されます。個人事業主は、法人のように法務局に設立登記をしたり、定款を作成したりする必要はなく、税務署に開業届を提出するだけで事業を開始することができます。

個人事業主と似た言葉にフリーランスがあります。2024年11月1日に施行されたフリーランス新法では、フリーランスを「業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの」と定義しています。また、フリーランスを特定受託事業者として規定しています。特定受託事業者は、従業員を使用していない個人、代表者一人だけで他の役員や従業員を持たない法人としています。そのため、フリーランスは個人事業主の場合もあれば、法人の場合もあり、フリーランス=個人事業主というわけではありません。

合同会社と個人事業主の違い

合同会社と個人事業主では、さまざまな面において違いがあります。両者の主な違いについて解説します。

事業開始に伴う手間とコストの違い

合同会社を設立する際には、定款を作成し、法務局で登記申請をしなければなりません。電子定款の場合、収入印紙は不要ですが、紙の定款を作成した際には4万円の収入印紙を貼付する必要があります。

また、登記申請時には登録免許税が発生します。合同会社の登録免許税の額は、資本金額の0.7%または6万円のいずれか大きい額です。したがって、合同会社設立時には最低でも6万円以上の費用が発生します。

一方、個人事業主の場合、事業開始に伴い、費用が発生することはありません。税務署に開業届を提出すれば事業を始められるため、事業開始に伴う手間とコストを比較した場合、個人事業主よりも合同会社を設立する方が負担は大きくなります。

また、個人事業主の場合、資本金は不要ですが、合同会社を設立する際には資本金の準備が必要になるという点においても違いがあります。

税金の違い

合同会社は法人になるため、事業で得た所得に対し法人税が課されます。また、法人の場合、個人と法人の資産は明確に区分され、経営者は会社から役員報酬を受け取ることになります。そのため、法人は事業所得分の法人税、経営者は役員報酬分の所得税の納税が必要です。

一方、個人事業主の場合、事業所得と個人の所得を区分することはなく、事業所得に対して所得税が課されるようになります。

ここで注意が必要な点は、法人税と所得税では、税率が異なるという点です。法人税の税率は、原則として23.2%であり、所得額に応じて税率が変わることはありません。ただし、資本金1億円以下の法人の場合、年800万円以下の部分に課せられる税率は15%となります。

所得税の税率は、所得額が高くなればなるほど税率も高くなる累進課税制度が採用されています。そのため、所得が低い場合の税率は5%ですが、所得が4,000万円を超える場合の税率は45%にものぼります。したがって、一定以上の所得を得ている場合は、個人事業主として事業を継続する方が、負担する税額が高くなる可能性があるのです。

赤字の繰越期間の違い

個人事業主も青色申告をしている場合、赤字は最大3年間繰り越すことができます。しかし、法人になると、最大10年間にわたって赤字を繰り越せるようになります。合同会社設立後、事業が軌道に乗るまでには時間がかかる場合もあるでしょう。また、設立初年度は設備投資などに費用がかかり、赤字額が膨らむ可能性もあります。その場合、合同会社であれば10年にわたって赤字の繰り越しができるため、個人事業主に比べ、黒字を相殺できる期間が長くなります。

社会的な信用の違い

個人事業主に比べると、法人である合同会社の方が社会的信用は高くなります。それは、個人事業主は開業届だけで開業できるのに対し、合同会社は法務局への法人登記が必要だからです。代表者の本名を含む登記情報は誰でも自由に閲覧できるため、社会的信頼が増すのです。

企業の中には、取引相手を法人のみに限定し、個人事業主との取引を控えているところもあるため、合同会社を設立すると、個人事業主よりも取引の規模を拡大できる可能性があります。

責任範囲の違い

合同会社の社員は、全員が有限責任社員となります。そのため、万が一、会社が倒産した場合であっても、社員が負う責任は出資の範囲までに限定されます。

一方、個人事業主は無限責任を負うため、事業に失敗し、負債を負った場合、個人の財産から債務の返済をしなければなりません。

社会保険の違い

合同会社を設立すると、たとえ経営者が一人の会社であっても社会保険に加入する義務が生じます。個人事業主は、原則として社会保険に加入する必要はなく、個人で国民健康保険や国民年金に加入します。しかしながら、常時5人以上の従業員を雇用する場合は、社会保険の加入が必要です。

個人事業主が合同会社を設立するメリット

個人事業主と合同会社の違いについてご説明してきましたが、個人事業主が合同会社を設立し、事業を行う場合、次のようなメリットを得られます。

節税につながる可能性がある

前述のように、個人事業主の場合は、事業所得に対して所得税が課され、合同会社の場合は事業所得に対して法人税が課されます。所得税が累進課税制度であるのに対し、法人税は所得額に応じて税率が高くなることはありません。

また、合同会社を設立し、経営者に役員報酬を支払う場合、一定の要件を満たせば、役員報酬は経費として扱うことができ、役員報酬には給与所得控除を適用することが可能です。個人事業主は、事業の所得がそのまま個人の所得となるため、合同会社のように個人の所得を分離して経費にしたり、給与所得控除を受けたりすることはできません。

事業を拡大できる可能性がある

合同会社を設立すると、社会的信用を得やすくなります。法人になったことで取引先を拡大しやすくなれば、事業も成長しやすくなるでしょう。また、金融機関に融資を申請する場合も、法人格を保有している方が良い条件で融資を受けられる可能性が高くなります。

株式会社に比べるとコストと手間を抑えて法人化ができる

株式会社を設立する場合、公証役場で定款の認証を受けなければならず、その際には認証手数料が発生します。また、法人登記の際に必要となる登録免許税の額は、最低でも15万円です。

合同会社の設立時には、定款の作成は必要なものの、定款の認証は不要です。また、登録免許税の額は最低6万円であり、株式会社を設立する場合に比べると、合同会社の設立の方が手間と費用を抑えることができます。

個人事業主が合同会社を設立するデメリット

個人事業主が合同会社を設立すると、上記のようなメリットを得られますが、デメリットもないわけではありません。個人事業主が合同会社を設立することで生じる主なデメリットは次のとおりです。

設立時に手間と費用がかかる

株式会社に比べると、手間と費用はかからないものの、合同会社を設立する際にも定款の作成や法務局での登録手続きが必要になり、登録免許税の支払いも必要です。また、会社名入りの名刺や会社案内、ホームページなどの準備も必要になるでしょう。

これらの手間と費用は、個人事業主として事業を継続する場合には発生しないものであり、合同会社設立にあたってのデメリットになり得るといえます。

資本金を用意しなければならない

合同会社を設立する際には、資本金を用意しなければなりません。会社法の改正により、資本金1円から会社の設立が認められるようになりました。しかし、資本金は登記事項にも含まれているものであり、企業の体力を示す額でもあるといわれています。そのため、企業が取引先の与信調査を行う際、資本金が少なすぎると、経営状況に不安があると判断し、取引を見送られる可能性が生じます。また、金融機関に融資を申請する際にも少なすぎる資本金は不利になるでしょう。したがって、ある程度の額の資本金の準備が必要になる点は、合同会社設立のデメリットだといえます。

株式会社に比べると社会的信用が低く、資金調達手段が限られる

日本の企業の約9割は株式会社であるといわれており、まだ歴史の浅い合同会社は、株式会社に比べると社会的信用を得にくい状況です。また、株式会社のように株式を発行して多額の資金を調達することもできません。

株式会社に比べると、手間と費用を抑えて会社を設立できる点は合同会社のメリットですが、事業の成長を目指す際に株式会社ではないことが不利に働くケースが出てくる可能性もあります。

個人事業主は合同会社を設立すべき?

個人事業主が合同会社を設立すべきか、個人事業主として事業を継続すべきか、判断に悩む場合は次の点をポイントに決断することをおすすめします。

事業を拡大したいという意思があるか

企業の中には、支払いの遅延や未払いなどを恐れ、個人事業主との取引を禁じているケースもあります。そのような場合、合同会社を設立し、法人格を取得すれば、個人事業主のときには取引ができなかった企業と取引ができるようになる可能性があります。

また、事業が成長し、一定以上の事業所得を得られるようになった場合、個人事業主として事業を継続すると、法人よりも税の負担が大きくなります。法人税と所得税は税率が異なり、事業所得が増えた場合、法人化をした方が納税額を抑えられる可能性が高いのです。納税額を抑え、会社の資金を増やすことができれば、さらなる事業拡大が望めます。

事業を拡大したいという意向が強く、一定以上の所得が見込まれる場合には、合同会社を設立した方がよいでしょう。

従業員を雇用したいか

事業拡大と関連することでもありますが、従業員を雇用したいかという点も合同会社の設立を考えるうえでは重要なポイントです。個人事業主の場合、社会保険の加入義務はありません。また、資本金もないために事業が不安定であるイメージが強く、人材募集をしてもなかなか優秀な人材の採用が難しい可能性があります。

法人化した場合は、社会保険の加入義務が生じるため、従業員は健康保険や厚生年金に加入できるというメリットが生じます。また、法人であるという安心感もあり、個人事業主に比べると人材を採用しやすくなります。

まとめ

個人事業主と合同会社の違いや個人事業主が合同会社を設立するメリット・デメリットについてご説明してきました。小規模なビジネスを続けていく場合、または従業員を雇用する予定がない場合などは、個人事業主として事業を継続しても問題ないでしょう。しかし、事業規模を拡大したい、従業員も雇用したいと考えているようであれば、合同会社を設立し、法人として事業を継続した方がさまざまなメリットを得られます。

合同会社の設立には資金も必要になるため、今後の方向性に迷う場合もあるでしょう。そのような場合は、専門家への相談もおすすめです。税理士に相談をすると、所得税や法人税、社会保険料などの負担を総合的に鑑みたうえで、合同会社を設立すべきか、個人事業主として事業を継続すべきか、的確なアドバイスを受けられます。合同会社の設立にお悩みの場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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