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人材派遣会社の設立方法とは?必要な許可や作り方を徹底解説!

読了目安時間:約 7分
少子高齢化による労働者不足が深刻化している現在、雇用する労働者を派遣先企業に派遣し、業務に従事してもらう人材派遣業は成長が期待されている業界です。さまざまな職種を対象としている総合人材派遣会社もありますが、中には、専門的な技術をもつ人材を派遣している企業もあります。特にIT関連業界や医療・介護分野など、積極的に人材を募集している業界では、人材派遣会社の伸長も期待できるでしょう。そのため、これから人材派遣会社を設立したいと考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、人材派遣会社は認可が必要な業種であり、会社設立前には許可取得などの準備が必要になるなど、特別な手続きが必要になります。
そこで今回は、人材派遣会社の作り方や設立に必要な許可、資格などについてご説明します。
人材派遣会社の設立に必要な資格や許可とは?
人材派遣会社を設立する際には、資格と許可が求められるため、人材派遣会社を作りたいと思ったときには、まずは必要な資格を取得し、許可を申請しなければなりません。人材派遣会社設立に必要な資格は「派遣元責任者」、許可は「労働者派遣事業許可」です。

派遣元責任者
労働者派遣法第36条では、労働派遣事業者、つまり人材派遣会社は派遣労働者の適切な雇用管理を図るため、派遣元責任者を選任し、配置しなければならないことを義務付けています。
派遣元責任者の役割
派遣元責任者には、次のような役割があります。
・就業条件の明示
・派遣元台帳の作成、管理
・派遣労働者からの苦情への対応や指導
・派遣先との連絡調整
・派遣労働者の教育訓練の実施、キャリアコンサルティング機会の確保
・安全衛生の管理
派遣元責任者の要件
派遣元責任者は次の12の要件を満たさなければなりません。
- 未成年者でなく、労働者派遣法第6条の第1号から第9号(3号を除く)に定める欠格事由に該当していない
- 派遣法施行規則第29条で定める要件に沿って派遣元責任者の選任が行われていること
- 住所が一定していること
- 適正な雇用管理を行ううえで支障のない健康状態にあること
- 他人の精神や身体、自由を拘束する恐れがないこと
- 公衆衛生または公衆道徳上有害な業務に就かせる行為を行う恐れがないこと
- 派遣元責任者の名義を借用して許可を得ようとする者でないこと
- 3年以上の雇用管理などの経験があること
- 派遣元責任者講習を受講して3年以内であること
- 派遣元責任者の業務を適正に行うことができる認知、判断、意思疎通ができること
- 外国人は一定の在留資格を有していること
- 苦情処理などの際に日帰りで往復できる地域に労働者派遣を行うこと
派遣元責任者の資格の取り方
派遣元責任者になるには、派遣元責任者講習の受講が必要です。派遣元責任者講習は、一般社団法人日本人材派遣協会が実施しており、講習会はオンラインまたは対面式で実施されています。オンラインでも定員が決められており、定員に達した場合は受講することができません。
対面式講習もオンライン講習も、講習時間は6時間となります。また、受講費用は講習会実施事業者によって異なるものの、一般社団法人日本人材派遣協会が主催する講習会の料金は一般が9,000円(税込)、会員が3,000円(税込)です。
労働者派遣事業許可
人材派遣会社を設立し、労働者派遣事業を開始するためには派遣元責任者の資格だけでなく、「労働者派遣事業」の許可も必要です。労働者派遣事業許可の申請にあたっては、事務所を管轄する都道府県労働局への必要書類の提出が求められます。
労働者派遣事業許可申請の要件
労働者派遣事業の許可を申請するためにさまざまな要件を満たす必要がありますが、次の4点が大きなポイントとなります。
財産的基礎に関する要件
労働者派遣事業許可の取得にあたっては、基準資産額として一事業所ごとに2,000万円の資産が必要です。また、基準資産額は負債総額の1/7以上でなければなりません。さらに、事業資金として自己名義の現金・預金額が1事業所あたり1,500万円以上であるという要件も求められます。
しかしながら、当分の間の措置として、一つの事業所のみを開設し、常時雇用する派遣労働者が10人以下である中小企業事業主の場合は、財産的基礎要件が緩和され、基準資産額が1,000万円に軽減されます。また、自己名義の事業資金の額も800万円以上であれば問題ありません。
事業所の広さに関する要件
労働者派遣事業許可を取得するためには、事業所の広さが20㎡以上なければなりません。また、風俗営業や性風俗特殊営業などの店舗が密集する地域など、事業の運営に好ましくない立地にある場合は、許可が下りないため注意が必要です。
派遣元責任者の配置に関する要件
労働者派遣事業の許可申請にあたっては、派遣元責任者が適切に選任され、配置されていなければなりません。派遣元責任者には、3年以上の雇用管理経験が求められます。雇用管理経験には、人事や労務担当者、労働者供給事業・職業紹介事業の従事、職業安定行政や労働基準行政での経験などが該当します。
教育訓練に関する要件
労働者派遣事業の許可を得るためには、派遣労働者のキャリア形成を支援し、教育訓練を行う制度を有していることも要件となります。派遣労働者のキャリア形成を念頭においた体系的な教育訓練計画を策定し、教育訓練を行う施設や設備の整備、教育訓練の実施責任者の配備など、能力開発体制が整備されていなければならないのです。また、教育訓練は有給かつ無償で行われるものでなければなりません。
そのほか、キャリアコンサルタントの資格をもつ人やキャリアコンサルティングの知見をもつ人、派遣先との連絡調整を行う営業担当者のいずれかをキャリアコンサルティングの相談窓口として設置する必要もあります。相談窓口は、雇用するすべての派遣労働者が利用できるものでなければなりません。
加えて、入職時には派遣労働者全員に教育訓練を実施し、少なくとも最初の3年間は毎年1回以上の機会の提供が必要になるなど、細かな要件が定められています。
人材派遣会社の作り方・設立までの流れ
ここでは、人材派遣会社を設立するまでの流れをご紹介します。

資金を準備し、事業計画を立案する
労働者派遣事業許可の申請基準を満たすため、まずは資金を準備するとともに、人材派遣会社を設立するにあたってのビジョンや目標を明確化し、事業計画を立てます。
管轄の労働局に相談する
労働局では、人材派遣会社設立時の相談を受け付けています。予約を取り、事前相談を行います。その際、許可取得のための要件についての説明や事業の運営に関することなどのヒアリングがなされます。
事務所の準備・人材派遣会社の設立
次に、労働者派遣事業許可の取得要件を満たすエリアにおいて、20㎡以上の事務所を準備します。また、定款を作成し、資本金を払い込んで、法務局での登記申請を行います。株式会社を設立する際には、定款の作成後に公証役場で認証を受けなければなりません。
また、労働者派遣事業許可の申請にあたっては、定款や登記申請時の事業目的に労働者派遣事業が含まれていなければならない点に注意が必要です。
派遣元責任者講習の受講
労働者派遣事業許可の申請時には派遣元責任者講習を受けた派遣元責任者の履歴書や住民票、講習会の受講証明書の提出が必要です。派遣元責任者の資格がない場合には、許可申請をする前に派遣元責任者講習を受講し、資格を取得しなければなりません。
労働者派遣事業許可の申請書類の準備
労働者派遣事業の許可申請には次の書類を管轄の労働局に提出しなければなりません。
・労働者派遣事業許可申請書
・労働者派遣事業計画書
・キャリア形成支援制度に関する計画書
・定款
・登記事項証明書
・代表者の住民票
・代表者の履歴書
・個人情報適正管理規定
・会社設立時の賃借対照表
・事業所使用権を証明する書類(登記事項証明書や賃貸借契約書など)
・事務所のレイアウト図
・派遣元責任者の住民票
・派遣元責任者の履歴書
・派遣元責任者講習会受講証明書
・キャリア形成支援制度を有することを証する書類
・自己チェックシート
・企業パンフレット
・登録免許税の領収書
・収入印紙
労働者派遣事業許可の申請
書類の準備が整ったら、労働局に書類を申請します。労働局に申請をする際には、1事業所あたり登録免許税(9万円)の領収書と収入印紙(12万円)の添付が必要です。
許可証の交付と受領
労働局において申請内容の調査と確認を行ったあと、厚生労働省で審査が行われ、労働政策審議会の意見徴収を経て、問題がなければ許可が下りることになります。
申請から許可の取得には、最短でも2ヶ月程度の時間が必要になるため、申請時には時間的な余裕をもって書類を提出するようにしましょう。許可日は毎月1日となります。
人材派遣会社の設立にかかる費用の目安
人材派遣会社を設立する際には、必ず労働者派遣事業許可の取得が必要であり、労働者派遣事業許可を申請するにあたっては財産的基礎要件を満たさなければなりません。また、許可申請時に登録免許税や収入印紙も必要です。
では、人材派遣会社を設立する際には、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。人材派遣会社を設立するにあたって必要となる費用の目安をご紹介します。
財産的基礎要件を満たすための費用
労働者派遣事業許可の財産的基礎要件として基準資産額は事業所1ヶ所につき2,000万円であるとしています。そのため、開設する事業所ごとに2,000万円の資金を用意しなければなりません。また、資産から負債を引いた額が資産の1/7以上でなければならず、現金は1,500万円以上必要です。例えば2ヶ所の事業所をもつ人材派遣会社を設立する際には、2,000万円×2=4,000万円の資金が必要になります。
ただし、一つの事業所のみを開設し、常時雇用する派遣労働者の数が10人以下の中小規模の人材派遣会社を設立する場合、基準資産額は1,000万円、現金も800万円以上あれば問題ありません。
定款にかかる費用
電子定款を作成する際には必要ありませんが、紙の定款を作成する場合は4万円の収入印紙代がかかります。また、株式会社を設立する際には、公証役場で定款の認証を受けなければならず、定款の認証時には手数料が発生します。定款の認証手数料は、資本金が300万円以上の場合、5万円です。また、定款の謄本を取得する際に2,000円程度が必要になります。
法人登記にかかる費用
法務局へ会社の設立登記をする際には、登録免許税が必要です。登録免許税の額は、株式会社を設立する場合と合同会社を設立する場合で異なります。株式会社を設立する際には、資本金額の0.7%または15万円、合同会社を設立する際には、資本金額の0.7%または6万円のいずれか高い方が登録免許税が必要です。
労働者派遣事業許可の申請時には登記簿謄本の提出が必要になりますが、登記簿謄本の取得には600円程度が必要です。
許認可の申請にかかる費用
労働者派遣事業許可の申請時には、登録免許税として9万円、収入印紙12万円が必要です。また、複数事業所の許認可を申請する場合、事業所を追加するごとに5万5,000円がかかります。
人材派遣会社設立にかかる費用を合計すると?
人材派遣会社にかかる費用を合計すると、次のようになります。
・一つの事業所だけで、常時雇用する派遣労働者が10人以下の小規模な会社を設立する場合
財産的基礎要件 1,000万円
定款作成費用 2,000円~9万2,000円
法人登記費用 6万円~15万円
許可の申請にかかる費用 21万円
合計:1,027万2,000円~1,045万2,000円程度
・一つの事業所で10人以上の派遣労働者を雇用する人材派遣会社を設立する場合
財産的基礎要件 2,000万円
定款作成費用 2,000円~9万2,000円
法人登記費用 6万円~15万円
許可の申請にかかる費用 21万円
合計:2,027万2,000円~2,045万2,000円程度
・2つの事業所をもつ人材派遣会社を設立する場合
財産的基礎要件 4,000万円
定款作成費用 2,000円~9万2,000円
法人登記費用 6万円~15万円
許可の申請にかかる費用 26万5,000円
合計:4,032万7,000円~4,050万7,000円程度
まとめ
人材派遣会社の作り方をご説明しました。人材派遣業は許認可事業であり、許可を取得しなければ人材派遣会社として事業を営むことはできません。労働者派遣事業許可の申請にあたっては財産的基礎要件を満たさなければならず、許認可事業以外の会社を設立する場合に比較し、必要となる資金が高額になる点に注意が必要です。
また、労働者派遣事業許可は一度申請したら終わりではなく、定期的に更新が必要になる点にも注意しなければなりません。初めて許可を受けた場合は3年後、一度許可の更新を受けた場合は5年後に更新が必要であり、更新の際にも事業所数に応じた手数料が必要です。
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- さらに会社設立してからも一気通貫で支援
この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。