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人材紹介会社設立に必要な手続きは?許可や資格、資金の要件を解説!

読了目安時間:約 7分
少子高齢化などの影響により、多くの企業が人材の確保に苦戦しています。また、かつての終身雇用制度は形骸化し、働き方の多様化が進む今、転職をする人も増加中です。そのような中、求人を行う会社に募集条件に見合った能力をもつ人材を紹介する人材紹介会社のニーズが高まっています。求職者の人材紹介会社利用率も高まっており、人材紹介業は成長が期待できる分野です。そのため、人材紹介会社の設立を検討している方もいらっしゃるのでしょう。
では、人材紹介事業を営む会社を設立する場合、どのような手続きが必要になるのでしょうか。今回は、人材紹介会社設立の流れや必要な資格、許可などについてご説明します。
人材紹介会社設立に必要な許可や資格
人材紹介会社の設立にあたっては、許可や資格が必要となります。

人材紹介会社とは
人材紹介とは、求人企業に求める条件に合った人材を紹介するサービスです。ハローワークも求人企業と求職者の仲介を行っていますが、ハローワークは求人企業からも求職者からもお金を受け取ることはありません。一方、人材紹介会社は求人企業から、人材を紹介した報酬として紹介料を受け取るビジネスモデルです。そのため、人材紹介会社が営む事業は有料職業紹介事業と呼ばれます。
人材紹介会社設立に必要な許可
有料職業紹介事業は、許可事業であり、人材紹介会社の設立にあたっては、有料職業紹介事業許可の取得が必要です。後述しますが、有料職業紹介事業許可を取得するためには、資金や事業所などについての要件を満たす必要があります。
人材紹介会社設立に必要な資格
職業紹介事業許可の申請をするにあたっては、職業紹介責任者の資格が必要になります。
職業紹介責任者は、職業紹介責任者講習を受講することで取得できます。講習にはオンライン型と集合型の2つがあり、職業安定法の趣旨や職業紹介責任者の職務などについての講義を受け、最後に講義内容についての理解度を確認する試験が実施されます。試験に合格すると受講証明書が交付され、職業紹介責任者として活動できるようになります。
ただし、職業紹介責任者には、3年以上の職業紹介事業に関連する経験が求められます。
有料職業紹介事業許可申請の要件
人材紹介会社設立時には必ず、有料職業紹介事業の許可が必要です。有料職業紹介事業の許可取得時には以下の4つの要件が課されており、この要件を満たさなければなりません。
財産・資産の要件
人材紹介会社を設立する際には、有料職業紹介事業を的確かつ安定的に遂行するだけの財産的基礎が必要とされています。そのため、事業所1か所あたり500万円の資金が必要になります。さらに、そのうち、自己名義の現金・預貯金が150万円以上なければなければならないという要件まで加えられています。また、人材紹介業を営もうとする事業所が複数ある場合は、150万円に事業所の数から1を減じた数に60万円を乗じた額以上の自己資金が必要です。
つまり、1か所の事業所をもつ人材紹介会社を設立する際には、500万円の資本が必要であり、そのうち150万円分は現金として用意しなければならないということになります。2か所の事業所の開設を考えている場合は、1,000万円の資本、そのうち210万円分以上を現金として用意しなければなりません。
個人情報の適切な管理
人材紹介会社では求職者の個人情報を取り扱います。そのため、事業者には業務の過程で得た求職者の個人情報を適正に管理し、秘密を守るために必要な措置を講じることが求められます。まず、個人情報適正管理規程を定めるとともに、収集する個人情報は、求職者の能力に応じた職業紹介をするために必要な範囲にとどめなければなりません。また、個人情報の紛失や改ざんを防止するための措置や従業員以外の者による求職者の個人情報へのアクセスを防止する措置などを講じることも求められます。
職業紹介責任者の在籍
有料職業紹介事業の許可を得るためには、事業所ごとに雇用する労働者または役員の中から職業紹介責任者を選任しなければなりません。また、職業紹介の業務に従事する人が50人以下の場合は1人以上の選任が必要ですが、職業紹介事業に従事する人の数が50人増えるごとに、職業紹介責任者の数を1人以上増やす必要があります。
事業所の要件
かつては、有料職業紹介事業の許可要件として、事業所は20㎡以上の広さがなければならないとされていました。しかし、現在は具体的な面積についての規程はなくなり、個室やパーティションの設置などにより、面談時に求職者のプライバシーを保護した対応ができる環境であることが求められます。
ただし、インターネットの利用によって対面での面談を行わない職業紹介を行う場合は、個室等の対応は不要です。
適正な事業運営に関する要件
事業主の利益に偏った職業紹介を行う恐れがなく、関係法令に則った業務運営規程を策定し、規程に従って適正に運営されるものでなければなりません。また、手数料を明示する手数料表も作成する必要があります。
2年間の転職の推奨の禁止
2025年1月1日から、紹介によって就職した人(期間の定めのない労働契約を締結した場合のみ)に対し、就職した日から2年間は転職を推奨してはいけないという要件が追加されています。
ただし、紹介によって就職した人の意思で紹介先を辞めることとなり、再度、就職先の斡旋を希望する場合も新たな求人を紹介してはいけないわけではありません。人材紹介会社が紹介によって就職した人に対し、2年間は転職を勧めるような行為を行ってはいけないということです。
お祝い金などの提供の禁止
かつて、人材紹介会社が自社を通じて転職を決定した求職者に対し、お祝い金を支払うケースが見られました。しかし、現在は、求職の申し込みを推奨するため、お祝い金などの名目で、社会通念上相当と認められる額を超えて、求職者に金銭などの提供をしてはなりません。この要件も2025年1月1日から新たに適用となった要件です。
人材紹介会社設立までの流れ
有料職業紹介事業は、許可事業にあたるため、他の業種の会社を設立する場合に比べ、許可の申請が必要な分、会社設立の手続きは複雑になります。ここでは、人材紹介会社設立までの流れをご紹介します。
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事業計画の策定と資金の準備
人材紹介会社の設立を検討したらまずは、事業計画を立てるとともに、資金の準備を行います。有料職業紹介事業の許可を得るために必要な資金は事業所1か所に付き500万円であり、そのうち150万円については現金で準備しなければなりません。
労働局への相談
有料職業紹介事業許可の申請は、労働局に行いますが、労働局では事前に必要書類についての説明や相談などを受け付けています。人材紹介会社を設立する際は、事前に労働局へ相談し、手続き方法などを確認することが大切です。
設立登記
事務所を準備し、人材紹介会社を設立します。会社設立にあたっては定款を作成しますが、株式会社を設立するか、合同会社などの持分会社を設立するかによって手続きが多少変わります。株式会社を設立する際には、定款の作成後、公証役場で認証を受けなければなりません。持分会社の場合、定款の認証は不要です。
定款の作成(認証)を終えたら、法務局で会社の設立登記をします。人材紹介会社として有料職業紹介事業を営む場合、定款と法人登記の事業目的には、有料職業紹介事業を含めておかなければなりません。
職業紹介責任者の資格取得
職業紹介責任者講習会を受講し、職業紹介責任者の資格を取得します。
許可申請書類の準備と申請
有料職業紹介事業の許可申請に必要な書類を揃え、労働局に提出します。労働局によっては事前に書類のチェックを行っている場合もあるため、相談をしておくと安心です。
有料職業紹介事業の許可申請に必要な書類は次のとおりです。
・職業紹介事業許可申請書
・職業紹介事業計画書
・職業紹介事業取扱職種範囲等届出書
・届出制手数料届出書(届出制手数料で手数料を徴収する場合のみ)
・定款(目的に有料職業紹介事業が記載されているもの)
・登記簿謄本(履歴事項全部証明書)
・代表者、役員の住民票
・代表者、役員の履歴書
・職業紹介責任者の住民票
・職業紹介責任者の履歴書
・職業紹介責任者講習受講証の写し
・貸借対照表
・事業所の賃貸借契約書
・手数料表
・個人情報適正管理規程
・業務の運営に関する規程
・事業所のレイアウト図
・収入印紙5万円分(事業所追加ごとに18,000円の加算)
・登録免許税9万円分の領収書
許可証の交付と受領
申請書を受領すると、労働局内で申請内容の調査と確認が行われ、厚生労働省の労働政策審議会に諮問された後、審議会から厚生労働大臣に答申が行われ、許可が出た場合、許可証が交付されます。許可を受けると、人材紹介会社として有料職業紹介事業を営むことが認められます。
人材紹介会社設立にかかる費用とは
人材紹介会社設立時にまとまった額の資金を準備しなければなりません。人材紹介会社の設立にかかる費用は次のとおりです。
・定款の収入印紙代 4万円
定款を作成する際、紙の定款を作成する場合には収入印紙代として4万円が必要です。電子定款の場合、印紙を貼付する必要はありません。
・公証役場での定款認証費用 5万円
株式会社を設立する場合は、公証役場で定款の認証を受けなければならず、その際、認証手数料の支払いが必要です。人材紹介会社の場合、資本金は500万円以上となるため定款の認証手数料は5万円になっています。
ただし、合同会社など、持分会社を設立する場合、定款の認証は不要となるため、認証手数料の負担もありません。
・法人登記費用
法人登記をする際、登録免許税の負担が発生します。登録免許税の額は設立する会社の資本金の額によって変わってきますが、株式会社の場合は最低でも15万円がかかります。また、合同会社の場合は最低でも6万円、合名会社・合資会社の場合は一律6万円となっています。
・資本金(基準資産額)
有料職業紹介事業の許可を得るためには、事業所1か所ごとに500万円の資本金(基準資産額)が必要です。
・許可申請にかかる費用
職業紹介責任者の資格取得に必要な職業紹介責任者講習を受けるためには受講料が必要です。受講料は、主催する事業者によって変わるものの、公益社団法人全国民営職業紹介事業協会の場合の料金は一般が1万2,500円、会員が8,800円となっています。
さらに、有料職業紹介事業の許可申請をする際には、許可1件あたり9万円の登録免許税の納付と5万円分の収入印紙が必要になります。
人材紹介会社を設立するうえでの注意点
人材紹介会社は将来性が期待できる業種です。しかしながら、人材紹介会社を設立するうえでは次のような点に注意しなければなりません。

取り扱うことができない業種がある
有料職業紹介事業の許可を取得しても全ての職業を斡旋できるわけではありません。現在、人材紹介会社では、港湾運送業と建設業の2つの業種については、人材の斡旋が禁止されています。
有料職業紹介事業許可は更新が必要
有料職業紹介事業許可には有効期間が定められています。初めて許可を取得した場合の有効期間は3年、その後、一度以上更新を行うと有効期間が5年になります。有効期間の満了後も引き続き有料職業紹介事業を営む予定がある場合には、有効期間が満了する日の2か月前までに労働局に職業紹介事業許可有効期間更新申請書を提出し、更新手続きを行わなければなりません。その際、1事業所あたり1万8,000円の手数料が発生します。
届出制手数料は事前の届出が必要
職業安定法において、有料職業紹介事業では、求職者から手数料を徴収してはならないというルールがあります。したがって、人材会社は求人企業から紹介手数料を受け取る形で収益を得ます。
紹介手数料の徴収方法には、上限手数料と届出制手数料の2つがあります。上限手数料とは、紹介によって雇用につながった人材の6か月分の賃金の11.0%を上限とするものです。
一方、届出制手数料は、紹介によって雇用された人材の理論年収をもとに紹介手数料を定める方式です。紹介手数料の割合は自由に定めることができますが、許可申請をする際、手数料表を届出なければなりません。その際、手数料が50%を超える場合、許可を取得できないため注意が必要です。また、届出制手数料に記載した割合以上の手数料を請求することはできませんが、届出よりも低い割合で手数料を受け取ることは認められています。そのため、手数料を届出る際には、上限額を届出ておいた方がよいでしょう。
まとめ
人材紹介会社を設立する際には、まず、資本要件である1事業所あたり500万円の資本金を準備しなければなりません。また、500万円のうち150万円分は現金での準備が必要になる点にも注意が必要です。
人材紹介事業は正式には有料職業紹介事業と言い、有料職業紹介事業を営むためには許可を取得しなければなりません。有料職業紹介事業許可の取得にはさまざまな書類の提出が必要となり、申請から許可が交付されるまでには2~3か月程度の時間がかかります。人材紹介会社の設立を検討する場合には、許可交付まで時間がかかることを想定したうえで余裕をもって設立準備を進めることが大切です。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。