2025.10.2

会社設立

合同会社の資本金はいくら必要なの?決める際のポイントについても徹底解説

合同会社 資本金

読了目安時間:約 7分

合同会社は資本金1円から設立することが可能です。しかし、資本金が少額の場合、事業開始後に運転資金が不足する可能性があるため、事前に資金計画をしっかり立てることが大切です。

一方で、資本金を1,000万円以上に設定すると、消費税の課税対象となる場合があります。また、資本金の額は法人税やその他税制の取扱いに影響する場合があるため、単に多ければよいというわけではありません。

本記事では、合同会社の資本金の考え方や決め方のポイント、資本金が少額の場合の注意点などについてわかりやすく解説します。

この記事を参考に、自社の事業規模や資金計画に合った資本金の設定を検討してみてください。

合同会社の資本金とは?

合同会社の資本金とは?

合同会社における「資本金」とは、設立時に出資者が会社に提供する初期の運転資金を指します。この資金は会社の経営基盤となる重要なもので、設立手続きに先立って出資者から払い込まれる必要があります。

資本金には法的な最低基準はありませんが、創業初期の活動資金として必要となるため、無理のない範囲で十分な金額を用意することが望ましいです。

また、合同会社は「持分会社」に分類されるため、原則として出資者は会社の経営に関与することになります。

会社法第578条には資本金に関する規定があり、登記申請前に資本金の払い込みを完了しておくことが求められます。

合同会社の資本金の特徴としては、以下の3点が挙げられます。

  • 1円以上で設立可能
  • 経営の元手となる資金
  • 開業資金や運転資金に使用可能

それぞれの項目について解説していきます。

参考:法務省|合同会社の設立手続について

1円以上で設立可能

合同会社の資本金は、法的には1円以上であれば設立が可能です。

以前は、有限会社で300万円、株式会社で1,000万円といった最低資本金の要件がありましたが、2006年の新会社法施行により、これらの制限は撤廃されました。

同時に、合同会社という新たな法人形態も創設され、資本金の最低額は自由に設定できるようになっています。

ただし、資本金が極端に少ない場合、創業当初の運転資金が不足したり、金融機関や取引先からの信用に影響したりといった可能性があります。そのため、設立時には資本金の金額を事業規模や資金計画に応じて慎重に設定することが推奨されます。

参考:会社法 | 中小企業庁

経営の元手となる資金

資本金は、会社設立時に出資者が提供する「事業運営のための資金」であり、借入金とは異なり返済義務のない出資金です。

会社はこの資金を事業活動の範囲内で使用することができますが、私的流用は法律上認められておらず、適切な会計処理が求められます。

設立時には、資本金の額を定款に記載し、登記簿に記録する必要があります。また、登記された資本金の情報は一般に公開され、金融機関の融資判断や取引先との信用評価などに参考にされることがあります。

そのため、資本金は単なる数字以上に、会社の財産基盤や事業規模を示す一つの指標として重要です。

開業資金や運転資金に使用可能

資本金は、会社設立時の事業準備や創業期の運転資金の一部として活用できます。

会社設立時には、設備投資や事務所の開設などで費用が発生しますが、資本金をこれらの支払いに充てることで、資金面の計画を立てやすくなります。

また、資本金は現金だけでなく、一定の手続きと評価を経た現物出資(パソコンや事務机など)で構成することも可能です。

創業初期は売上が安定せず、仕入れや経費の支払いが先行する場合もあります。そのため、資本金を適切に管理し、法人資金として予期せぬ支出に備えることが重要です。
なお、資本金はあくまで会社の財産であり、個人の自由に使えるお金ではない点に注意が必要です。

合同会社の資本金と株式会社の資本金の違い

合同会社の資本金と株式会社の資本金の違い

合同会社と株式会社では、資本金の取り扱いや資金調達の仕組みに違いがあります。

株式会社は株式を発行して出資者を募ることで増資を行うことが可能です。そのため、外部の投資家から資金を調達しやすく、事業拡大に合わせて資本構成を変更することも比較的容易です。ただし、増資には株主総会の決議や登記手続きが必要となります。

一方、合同会社には株式の制度がないため、株式会社のように株式発行による資金調達はできません。合同会社では、出資者が経営にも関与する「社員」となるため、出資と経営が一体化しているのが特徴です。そのため、第三者からの出資を受ける場合は、出資契約などの形で対応することになります。

また、出資金の会計処理についても違いがあります。株式会社では、出資された資金の一部を「資本準備金」として計上することが可能で、将来の損失への備えとして活用される場合があります。一般的には、出資額の半分までを資本準備金として処理できます。一方、合同会社には資本準備金という区分は存在せず、資本金としなかった出資金は「資本剰余金」として計上されます。

参考:資本剰余金(しほんじょうよきん) | 証券用語集

合同会社の資本金はいくら必要なの?

合同会社の資本金はいくら必要なの?

合同会社の設立にあたっては、資本金の最低額は「1円以上」と法律で定められています。そのため、理論上は1円で会社を設立することも可能です。

ただし、資本金の額は会社運営の実務面にも影響します。例えば、設立当初の設備投資や運転資金、取引先からの信用度などを考慮すると、1円の資本金では十分な準備が難しい場合があります。

そのため、合同会社の設立時には、資本金の額が会社運営に与える影響を理解したうえで、適切な金額を設定することが重要です。

300万円未満の合同会社が多い傾向にある

合同会社の資本金は、法律上は1円からでも設立可能です。ただし、実務上は、事業開始に必要な初期費用や運転資金を考慮して、50万円から300万円程度を目安に設定するケースが多く見られます。

会社設立にあたっては、登記費用や定款作成費用に加え、事務所や設備の初期投資費用などもあわせて資金計画を立てることが重要です。

例えば、日本政策金融公庫の融資では自己資金の最低要件は定められていません。しかし、資本金としてある程度の金額を用意しておくことで、融資審査上の参考になる場合があります。

重要なのは、単に法律上の最低額ではなく、自分の事業規模や資金計画に見合った適正な資本金額を見極めることです。

参考:総務省|登記の種類別・資本金階級別 会社の資本金の額の変動の件数及び金額

業種や事業規模によっても異なる

合同会社の資本金額は、業種や事業規模、事業計画に応じて適切に設定する必要があります。

金額の目安に迷った場合は、同業他社の資本金額をあくまで参考として確認すると、判断の一助になります。ただし、他社と同じ金額に設定すればよいわけではなく、事業運営や信用面、税務上の影響も考慮することが重要です。

他社の資本金は、公式サイトや会社案内に掲載されている場合があります。また、より正確な情報を確認したい場合は、法務局で「登記事項証明書(履歴事項全部証明書)」を取得することで正式な資本金額を確認できます。取得には1通あたり費用がかかるため、複数社を調べる際はコストも考慮して計画的に進めましょう。

参考:法務局|登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です

合同会社の資本金を決める際のポイント

合同会社の資本金を決める際のポイント

合同会社の資本金を決める際のポイントとして、以下の4つが挙げられます。

  • 開業資金と運転資金で決める
  • 会社の信用度が下がらない金額にする
  • 税金を考慮する
  • 許認可の要件を確認する

それぞれのポイントについて解説していきます。

開業資金と運転資金で決める

資本金の目安は、開業に必要な初期費用と運転資金を合わせた金額を参考にすることが多いです。
これにより、事業開始時に一定の資金的余裕を持つことができます。

合同会社を設立した初年度は、売上が安定するまで資金繰りが不安定になる可能性があります。
また、売上があっても入金のタイミングや設備投資・仕入れなどの支出が重なることで、手元資金が減少するケースも考えられます。

こうしたリスクに備えるためには、法人設立前に開業から半年程度の運転資金を見積もり、余裕を持った資本金額を設定しておくことが望ましいでしょう。

会社の信用度が下がらない金額にする

資本金の金額は、会社の信用力や経営の安定性を判断する一つの目安として、取引先や金融機関、求職者などから注目されることがあります。

そのため、資本金が極端に少ない場合には、取引先や金融機関から慎重に判断される可能性があります。
ただし、資本金の額だけが信用力や事業の安定性を決めるわけではなく、事業計画や財務状況、経営実績なども総合的に評価されます。

会社設立時には、初期費用や運転資金など、事業を継続するために必要な資金を確保しておくことが重要です。必要に応じて、専門家に相談しながら資本金の額を決定すると安心です。

税金を考慮する

資本金の設定額は、会社設立時の財務基盤や将来の税制上の軽減措置に影響を与える重要な要素です。具体的には、資本金額によって以下のような税制上の基準や軽減措置が適用されます。

税目基準となる資本金額内容
登録免許税約857万円以下登記にかかる税金。株式会社の場合、資本金約857万円以下であれば一律6万円。
消費税1,000万円以下原則として設立1期目・2期目は消費税が免除。ただし、設立1期目の特定期間の売上・人件費が1,000万円を超える場合や、インボイス制度への登録により課税事業者となる場合は免税の適用外。
法人住民税(均等割)1,000万円以下赤字の場合でも納税義務がある「均等割」の税額が資本金によって異なる。
法人税1億円以下所得800万円以下の部分には軽減税率15%が適用。資本金1,000万円を超える法人は軽減税率の適用なし。
法人事業税(外形標準課税)1億円以下赤字でも課税対象。資本金1億円以下の場合は原則として外形標準課税の対象外。

一般に、資本金が多いほど金融機関や取引先からの信用が得やすい傾向がありますが、資本金の増額に伴い、税制上の負担も変わる点には注意が必要です。

会社設立時には、開業費用や当面の運転資金の見積もりと併せて、資本金の設定が税制面でどのような影響を与えるかをシミュレーションすることが大切です。

参考:国税庁|No.7191 登録免許税の税額表

許認可の要件を確認する

一部の業種では、事業を開始するにあたり、資本金の額が許認可の取得要件として定められている場合があります。
資本金の要件を満たしていない場合は、許認可の取得手続きに影響する可能性があるため、事前に確認しておくことが重要です。

代表的な資本金要件のある許認可例は以下の通りです。

許認可の種類最低資本金額
一般建設業500万円以上
第一種旅行業3,000万円以上
一般労働者派遣事業1拠点あたり2,000万円以上

上記のように、業種によっては一定の資本金が求められる場合があります。自己資本が不足している場合は、資本金や他の要件を含めて許認可取得の可否を検討することが必要です。

参考:国土交通省|許可の要件 – 建設産業・不動産業

合同会社の資本金を極端に低くしてしまうリスク

合同会社の資本金を低すぎる金額にしてしまうリスク

合同会社の資本金を極端に低く設定した場合に考えられるリスクとして、以下の点が挙げられます。必ず発生するわけではありませんが、注意が必要です。

  • 社会的信用が低くなる
  • 法人口座開設を断られる可能性がある
  • 運転資金が不足して経営が悪化する可能性がある

それぞれのリスクについて解説していきます。

社会的信用が低くなる

合同会社の資本金を極端に低く設定すると、対外的な評価に影響を与える可能性があります。

資本金は会社の経営基盤や財務的な余力を示す一つの指標とされており、あまりに少額だと、取引先が「万が一の際に対応できるか」と慎重になることもあります。

ただし、会社の信頼性は資本金の額だけで決まるわけではなく、事業内容や経営実績、取引履歴なども重要な要素です。

そのため、スタート時の資本金は、資金計画や事業運営の余裕を考慮しつつ、対外的な印象にも配慮して設定することが望ましいでしょう。

法人口座開設を断られる可能性がある

資本金が極端に少額の場合、金融機関によっては追加資料の提出を求められるなど、口座開設時の審査に時間を要することがあります。

口座開設時には、登記事項証明書や定款の内容などが確認されるため、資本金の額が非常に低い場合には、会社の事業実態や信用力の説明を求められることがあります。

また、銀行や信用金庫によっては口座開設にあたり資本金の目安を設定している場合もあり、その基準に沿った準備が必要です。

法人口座を開設して会社名義で取引を行うことにより、個人資金と法人資金を明確に区別でき、経理管理がしやすくなるほか、取引先や関係者に対して会社としての信頼性を示すことにもつながります。

このような点から、資本金の金額は事業内容や資金計画に応じて慎重に検討することが重要です。

参考:法務局|登記事項証明書(土地・建物)

運転資金が不足して経営が悪化する可能性がある

資本金が少ない状態で事業を開始すると、資金繰りに余裕がなくなる可能性があります。

売上が計画通りに上がらなかった場合や予期せぬ支出が発生した際に対応が難しくなり、経営状況が厳しくなるリスクが高まります。

このような状況を避けるためには、事業計画に基づいた十分な運転資金の確保や、必要に応じた融資の検討など、事前の資金管理が重要です。

資本金は自社に合わせて適切に決めよう!

資本金は自社に合わせて適切に決めよう!

今回は、合同会社の資本金の目安について紹介しました。

法律上、合同会社は1円から設立することが可能ですが、事業を始めてから資金繰りが安定するまでの運転資金を考慮し、ある程度の資本金を準備しておくことが望ましいとされています。

また、資本金の設定額は、初期投資や運転資金としての役割だけでなく、許認可の取得条件や取引先からの信用など、事業運営上のさまざまな要素に影響を与える場合があります。税制上の取り扱いも資本金額に応じて異なる場合があるため、慎重に検討することが大切です。

業種や事業計画によって最適な資本金は異なるため、不安な場合は税理士などの専門家に相談して決定することをおすすめします。

今回の記事を参考に、自社の状況に合った資本金を適切に設定しましょう。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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