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会社設立
フリーランスが法人化するメリット8つ&会社設立のベストタイミング
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
フリーランスとして事業を行っていて、いつ法人化すべきか迷っている人もいるでしょう。
法人化させるとメリットがありますが、もちろんメリットばかりではありません。
「いつかは法人化させたい」とは考えていても、法人化したらどんなメリットがあるのか、逆にデメリットは何なのかという点がぼんやりとしているという人も少なくありません。
フリーランスが法人化するメリットとデメリットを確認し、どんなタイミングで法人化させるべきなのかを考えていきましょう。
フリーランスと法人の違い
フリーランスと呼ばれる個人事業主と法人の大きな違いは、法人登記されているかという点です。
フリーランスは税務署に開業届を提出するのに対し、
法人は法務局に設立登記をして、法人格を得る必要があります。
フリーランスと法人では、このような手続きや納める税金に違いがあります。
法人化はメリットになる場合もありますし、ケースによってはデメリットになってしまう場合もあるでしょう。
内容を正しく理解し、適切な時期に法人化させていけるのが理想的です。
フリーランスが法人化するメリット
フリーランスが法人化するには、このようなメリットがあります。
- 節税効果が期待できる
- 経費の幅が広くなる
- 消費税納付が2年間免除される
- 社会的な信用が得られる
- 社会保険に加入できる
- 決算期が自由に決められる
- 赤字の繰越控除期間が10年間になる
- 有限責任になる
節税効果が期待できる
フリーランスが法人化する大きなメリットのひとつに、節税効果があります。
フリーランスに課せられる所得税は5%から45%の7段階に区分されています。
所得が多いほど税率が高くなり、納める所得税の額も高額になっていきます。
(参照:国税庁|No.2260 所得税の税率)
一方、法人税は比例税率(固定税率)が適応されるので、最大税率は23.2%です。
(参照:国税庁|No.5759 法人税の税率)
つまり課税所得の額が大きくなるほど、法人化のメリットがあります。
経費の幅が広くなる
フリーランスだと、事業の必要経費と生活費の線引きが曖昧になってしまいがちです。
しかし法人化すれば、給料や役員報酬が経費になったりと、経費の幅が広くなります。
社宅契約を結べば居住家賃は一部経費となりますし、
生命保険料や退職金も経費となります。
給与所得控除も利用できますので、節税効果も期待できます。
消費税納付が2年間免除される
令和5年(2023年)10月1日のインボイス制度の導入により、課税売上が1,000万円以下のフリーランスでも課税所得者となり、消費税納税の義務が発生するようになりました。
しかし法人化して2年間は消費税納税の義務がありませんので、法人化のメリットとなります。
免税事業者であるフリーランスであっても、課税売上が1,000万円を超えると免税事業者となり消費税納税の必要があります。
法人化するとリセットされ、免税事業者としての再スタートとなります。
社会的な信用が得られる
事業を行っていく上で社会的信用は必要不可欠です。
フリーランスは個人名で事業を行いますが、法人化すると法人名義となりますので、銀行で融資を受けやすくなったり、事務所を借りられるようになります。
取引先からの信用も上がると予想できますし、人材も集まりやすくなると考えられます。
そのためこれから事業を拡大させていきたい、と考えている人にとっては、大きなメリットとなるでしょう。
社会保険に加入できる
フリーランスでは国民年金や国民健康保険に加入しますが、法人化すると厚生年金や健康保険に加入できるようになります。
本人だけでなく従業員も社会保険に加入できます。
会社の福利厚生が充実しますので、人材確保で有利となるだけでなく、離職率も下げられるでしょう。
事業主本人としても、厚生年金保険に加入するため将来受け取れる年金が増額するというのもメリットのひとつです。
決算期が自由に決められる
フリーランスの決算期は12月で、自分で自由に決められるものではありません。
しかし法人化すれば、決算期を自由に決められます。
事業内容によっては3月が繁忙期となる場合は、決算期を変更させても構いません。
取引先に海外企業が多い場合は、海外の決算期と合わせて3月を決算期にする法人もいます。
国税庁の調査では、日本の企業の決算月は、3月や9月、12月が多いようです。
(参照:国税庁|決算期月別法人数)
赤字の繰越控除期間が10年間になる
赤字の繰越控除期間が、フリーランスは3年ですが
法人化すれば10年になります。
赤字を翌年以降に繰り越して控除できる制度で、法人税や所得税の負担を軽減させられます。
大きな赤字が発生した場合、控除期間が長くなるので節税の面で法人化のメリットがあります。
有限責任になる
事業がうまくいかなくなり会社が倒産した時も、法人化しておくとフリーランスと違いがあります。
フリーランスは経営が悪化した時に、自分自身の財産を返済にあてる無限責任となります。
法人化すると有限責任となりますので、リスクが少ないといえます。
有限責任とは、会社が倒産した時に会社の出資額を限度として背負う制度で、それ以上の責任を負う必要はありません。
出資額以上の責任は問われませんので、出資もしてもらいやすくなります。
フリーランスが法人化するデメリット
フリーランスが法人化するには、以下のようなデメリットもありますので正しく理解しておきましょう。
- 赤字でも税金支払いが必要
- 登記のための事務所が必要
- 会社設立に費用がかかる
- 社会保険の加入が負担になる
- 複雑な事務手続きが増える
- 交際費は全額損金にならない
- 毎月の給与が固定される
赤字でも税金支払いが必要
フリーランスが赤字の場合、所得金額が0円となり、
所得税や住民税はかかりません。
しかし法人が支払う法人住民税は均等割と法人税割で構成されており、所得に関係なく課税されます。
法人税割とは、一定の税率をかけて計算されるもので、所得が上がれば納める税金も上がります。
均等割とは、所得金額に関わらず課税されるもので、
赤字でも必ず支払わなければいけません。
赤字でも必ず納めなければいけない税金の、代表的なものは消費税や源泉所得税・住民税、固定資産税です。
登記のための事務所が必要
法人化をするなら、設立登記のための事務所を用意しなくてはいけません。
新たに事務所を借りるとなると初期費用がかかるだけでなく毎月の賃料も必要なので、自宅の住所で登記をするという方もいるでしょう。
賃貸住宅であってもオーナーの承諾があれば登記が可能ですが、不特定多数の人に自宅住所を知られるリスクがあるかもしれません。
会社設立に費用がかかる
フリーランスが開業する際の手続きは複雑なものではありませんが、法人の会社設立は費用がかかり、その手続きは複雑です。
法務局に設立登記申請をするには、手間も費用もかかり、株式会社であれば登記代や印紙代で20万円以上かかります。
自分で手続きをするのが困難だと感じれば、司法書士や行政書士への依頼も可能です。
社会保険の加入が負担になる
フリーランスは国民健康保険へ加入しますが、法人化すると社会保険への加入が必須となります。
従業員数に関わらず社会保険への加入が必要で、
社長1人だとしても必須です。
従業員を雇用していない場合は健康保険と厚生年金、
1人以上の従業員を雇用している場合は労災保険や雇用保険への加入が必要です。
社会保険料は会社と従業員で負担しますので、従業員数が多いほど会社の負担となります。
複雑な事務手続きが増える
フリーランスであれば経理や確定申告を自分でできるかもしれませんが、法人化すると複雑な事務手続きが増え、1人でこなしていくのは困難です。
法人化すると新たに社会保険の手続きだけでなく、法人税申告書や決算書(財務諸表)の作成、法定調書の提出といった手続きが増えます。
法人化するには、会計や税金の知識が必要になるといえるでしょう。
フリーランスでは不要だった書類の一例として、法人税申告書や財務諸表が挙げられます。
法人税申告書
法人税申告書とは、法人税の確定申告のための書類です。
会社の決算日から2ヶ月以内に提出しなければいけませんが、複数枚の別表があり、記載内容や必要書類の準備に頭を悩まされるかもしれません。
決算書(財務諸表)
法人化すると決算書と呼ばれる書類の中のひとつとして、財務諸表を1年に1度、事業年度が終わる時に作成しなければいけません。
財務諸表とは、企業の財務状況を知らせる書類で、5つの書類で構成されています。
- 貸借対照表
- 損益計算書
- キャッシュ・フロー計算書
- 株主資本等変動計算書
- 附属明細書
法人化すると、このように事務手続きが複雑になっていきます。
交際費は全額損金にならない
フリーランスは、事業に関連する交際費は全て経費として計上できます。
しかし法人化すると上限が決まっていて、資本金1億円以下の企業であれば、飲食費に限り50%までで、年間800万円までとなります。
資本金が1億円超える場合や、交際費が多くなっているフリーランスが法人化するケースでは、注意が必要です。
毎月の給与が固定される
法人化すると給料や役員報酬が経費に計上できるというメリットがありますが、裏を返せば経費として給与が固定されるという状態となります。
フリーランスであれば、案件を増加させれば収入を増やせますが、法人化するとそうはいきません。
給与を変更できるのは年度が変わるタイミングなので、フリーランスの頃よりも自由度が下がったと感じるかもしれません。
法人化するベストタイミング
これらのメリットやデメリットを考慮した上で、
フリーランスが法人化するベストタイミングはいつ頃といえるのでしょうか。
これらのタイミングを目安にしてみましょう。
- 課税所得が900万円を超えたら
- 売上高1,000万円を超えたら
- 事業拡大を見据えて
課税所得が900万円を超えたら
フリーランスで事業をしていて、課税所得が900万円を超えたら法人化を検討するタイミングです。
フリーランスの税金は累進課税制度という制度が採用されており、所得が上がるほど納める税金の金額も上がります。
900万円未満は23%ですが、900万円以上は33%となるため、課税所得900万円というのがひとつのタイミングになるといえます。
フリーランスの累進課税率と、法人の比例税率により、課税所得に対する税率はこのように変化します。
フリーランス | 法人 | |
---|---|---|
税金の種類 | 所得税 | 法人税 |
制度 | 累進課税率 | 比例税率 |
税率 | 194万9千円以下:5% 195万円~329万9千円:10% 330万円~694万9千円:20% 695万円~899万9千円:23% 900万円~1799万円9千円:33% 1,800万円~3,999万9千円:40% 4,000万円以上:45% | 800万円以下:15% 800万円超:23.40% |
売上高1,000万円を超えたら
インボイス登録をしていないフリーランスは、売上高1,000円を超えると消費税の支払い義務が生じます。
免税事業者から課税事業者となるため、売上1,000万円が法人化の検討のタイミングとなります。
法人化した2年間は、消費税の支払いが免除される場合があるためです。
フリーランスのままでいると、売上が1,000万円を超えた2年後から消費税の納税義務が発生します。
事業拡大を見据えて
フリーランスのままでいると、事業拡大の範囲に限界があります。
法人化すると社会的信用が得られますので、個人では獲れなかった案件が契約できたり、有能な人材が集まりやすくなります。
大きな仕事をしたい、取引先を増やしたい、事業規模を拡大させたい、というタイミングも法人化するタイミングのひとつといえるでしょう。
法人化のベストタイミングを見極めよう
フリーランスが法人化すると、節税や社会的信用という面で複数のメリットがあります。
一方でデメリットもありますので、法人化をするにはタイミングが重要であるといえるでしょう。
法人化によって節税効果を期待していたとしても、場合によってはあまり節税効果を感じられないかもしれません。
設備投資でもっと節約すればよかったと後悔するケースがあったり、事業がうまくいっていても収入が制限されてしまうという不自由感を感じる人もいます。
事業をしていく上で社会的信用は必要ですが、事業規模が大きくなるとストレスを感じる方もいます。
多様なポイントを熟考しながら、法人化のベストタイミングを見極めましょう。
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