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決算月とは何か?会社の決算月はいつにするべきかについても徹底解説
読了目安時間:約 6分
決算月とは、1年間の会計活動の区切りとなる最終月のことを指します。
会社を設立する際には、事業年度や決算月を定める必要があります。決算月は、業界の慣習や業種の特性、資金繰りなどを考慮して決めることが一般的です。
本記事では、決算月の概要や、会社の決算月を選ぶ際のポイント、さらに決算月を変更する場合の手続きについて解説します。
自社に適した決算月を検討する際の参考としてご活用ください。
目次
決算月とは何か?

決算月とは、企業の経営活動における一区切りとして設定される「会計年度(事業年度)」の最終月を指します。
例えば、事業年度を4月1日から翌年3月31日までと定めている場合、最終月である3月が「決算月」となります。
法人は会社法および法人税法に基づき、一定期間の損益を明確にするため、会計期間を区切って財務状況を報告する義務があります。
このため、企業は区切られた会計期間ごとに収益と費用を整理し、その成果を財務諸表として示します。この整理のタイミングが「決算月」です。
参考:会社計算規則 | e-Gov 法令検索/法人税法 | e-Gov 法令検索
会社の決算月はいつにするべき?

会社の決算月を設定する際に考慮すべきポイントは、主に以下の5つです。
- 税務負担のタイミングを考慮する
- 資金繰りやキャッシュフローから決める
- 繁忙期を避ける
- 社内の業務量や体制を加味する
- 事業の季節性や売上の動向を考慮する
それぞれの項目について解説していきます。
税務負担のタイミングを考慮する
決算月を設定する際には、資金繰りや事業の状況を考慮することが重要です。
なお、新たに設立される法人で資本金が1,000万円未満の場合、消費税の納付義務は原則として設立初年度とその翌年度(いわゆる「2事業年度」)は免除されます。
ここで注意すべき点は、「2年間」ではなく「2事業年度」であるということです。
たとえば、設立初年度の期間が3か月の場合でも、それが1事業年度としてカウントされ、翌年度で免除期間が終了します。
そのため、消費税の納付義務の開始時期を理解した上で決算月を設定すると、免除期間の扱いを正しく把握できます。
参考:国税庁|No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例
資金繰りやキャッシュフローから決める
企業が決算月を設定する際には、資金繰りを含む複数の要素を総合的に考慮することが重要です。
決算月には、法人税・消費税などの納税義務や、取引先への決算報告などの手続きが集中するため、一定の出費が見込まれます。そのため、資金に余裕のある時期や業務負荷の少ない時期を検討することが、経営の安定につながります。
例えば、売上が繁忙期に集中する業種では、繁忙期の直後に決算月を設定すると、税金や経費の支出に備えやすくなる場合があります。また、将来的に金融機関からの融資を検討している場合は、融資審査で決算書の提出が求められることもあるため、融資のタイミングや金融機関の対応スケジュールも考慮すると安心です。
参考:国税庁|申告と納税
繁忙期を避ける
決算月を設定する際には、自社の業務状況を踏まえて検討することも重要です。
たとえば、売上が増加する繁忙期は日常業務が多くなるため、経理や総務などの管理部門の作業量も増加します。
そのため、繁忙期と決算月が重なると、業務の負荷が高まる可能性があります。
比較的業務が落ち着いている時期に決算月を設定することで、作業に余裕を持ち、正確かつスムーズに決算処理を進めやすくなるでしょう。
自社の業務のピークを把握したうえで、決算月のタイミングを検討することが、業務負担の調整や決算品質の向上につながります。
社内の業務量や体制を加味する
決算月を設定する際は、経理部門だけでなく、社内のさまざまな部門の業務負担も考慮することが重要です。
例えば、生産現場や販売部門などでは、特定の時期に棚卸や繁忙期の作業が集中することがあります。このような時期に決算業務が重なると、人的リソースの確保が難しくなり、業務の効率が低下する可能性があります。
決算業務は一部の部署だけで完結するものではなく、社内の各部門間で連携が必要です。そのため、関係者に過度な負荷をかけず、無理なく分担できるタイミングを選ぶことが望ましいでしょう。
また、決算業務では外部の監査法人や税理士とのやり取りも発生します。社内だけでなく外部関係者とのスケジュール調整がしやすい時期を見極めることも、円滑な決算処理につながります。
事業の季節性や売上の動向を考慮する
決算月を決める際には、売上や在庫の状況、経営計画との整合性を考慮することが重要です。例えば、売上が増える時期や繁忙期を把握しておくことで、決算業務の負担を分散したり、在庫や仕入れの管理を効率的に行いやすくなります。
また、事業年度の初めに売上のピークを迎える場合には、年間の業績予測や資金計画を立てやすくなるという利点があります。営業利益やキャッシュフローの状況も踏まえながら、経営全体に適した決算月を選定することが望ましいです。
短期的な財務数値の印象だけで決算月を決めるのではなく、将来的な事業展開や経営方針を総合的に見据えて判断することが、健全な経営運営につながります。
3月に決算月を設定している会社が多い理由

3月に決算月を設定している会社が多い理由として、主に以下のような背景が挙げられます。
- 国の年度に合わせやすいため
- 人事・労務のスケジュールとの関係
- 税制改正の適用タイミングの影響
それぞれの理由について解説していきます。
国の年度に合わせやすいため
多くの企業が3月を決算月に設定する理由の一つとして、国や地方自治体の会計年度に合わせやすい点が挙げられます。
公的機関では、この期間に予算の策定や執行が行われ、各種公共事業が民間企業へ発注されます。
官公庁や自治体と取引する企業にとっては、会計期間を公的機関と一致させることで、契約や業務のタイミングが合いやすく、業務全体を円滑に進めやすいメリットがあります。
また、公共事業を請け負う企業は比較的規模が大きく、幅広い取引先と関わることが多いため、主要な取引先に合わせて決算月を設定する傾向が見られます。
その結果、直接公的機関と取引していない企業でも、業界全体の慣習として3月決算を採用するケースが一定程度見られると考えられます。
人事・労務のスケジュールとの関係
新卒社員の採用をおこなっている企業の中には、学校の年度スケジュールに合わせて3月を決算月としている場合があります。
日本の多くの高校や大学では、4月に新学期が始まり、翌年3月に学年が終了する年度制が採用されています。このため、学生は一般的に3月に卒業し、4月から社会人としてのキャリアをスタートさせるケースが多く見られます。
企業側でも、4月1日付で人事異動や配属をおこなうことが多く、組織体制の刷新や新年度の事業計画開始のタイミングとして適していると考えられます。
そのため、3月を決算月に設定しておくと、採用や人事、経営管理などの面でスケジュールの整合性が取りやすくなり、円滑な運営につながることがあるでしょう。
参考:「年度」について
税制改正の適用タイミングの影響
税制改正に柔軟に対応できる体制を整える目的で、3月を決算月とする会社もあります。
国の会計年度は4月始まりであるため、多くの税制改正は4月1日以降に適用されることが一般的です。
そのため、事業年度の開始時期と税制改正の施行時期が一致していれば、会計方針や処理ルールの変更を年度初めにまとめて対応でき、業務への影響を比較的抑えやすくなります。
一方、事業年度の途中で税制が変更される場合は、既存の会計処理を見直しながら対応する必要があり、準備が十分でないと事務負担が増えることもあります。
こうした点から、税制改正のタイミングに合わせて3月決算を選択する企業も一定数存在します。
参考:財務省|税制改正の概要
会社の決算月を変更する方法

会社の決算月を変更する方法については、以下の3つが挙げられます。
- 株主総会の特別決議後に定款を変更する
- 株主総会の議事録を作成して定款に反映する
- 税務署に異動届出書を提出する
それぞれの方法について解説していきます。
株主総会の特別決議後に定款を変更する
企業が決算月を変更する場合、まず確認すべきは定款の内容です。
事業年度の変更は法人としての会計年度の区切りを変更することを意味するため、定款に事業年度が明記されているか確認する必要があります。
株式会社の場合、定款に記載された事業年度を変更するには、株主総会での特別決議が必要です。特別決議は、株主総会が成立するために必要な議決権の過半数以上の出席を前提として、出席株主の3分の2以上の賛成を得る必要がある比較的厳格な手続きです。
合同会社の場合、定款変更には、原則として全社員の同意が必要です。株式会社のように株主総会を開催する必要はありませんが、全社員の合意を得ることが前提となります。
株主総会の議事録を作成して定款に反映する
株主総会で決議が完了した後は、その内容を正式な議事録として記録し、必要に応じて定款の修正を行います。
会社設立時に必要となるような公証役場での定款認証手続きは、通常、既存の会社が事業年度変更をおこなう場合には不要です。
また、事業年度に関する事項は登記事項ではないため、原則として法務局への届け出は必要ありません。ただし、税務署への届出や社内手続きなど、関連する手続きは別途発生する場合があります。
税務署に異動届出書を提出する
事業年度を変更する場合は、株主総会で特別決議を行った後、関係機関への届出が必要となります。
具体的には、会社の納税地を管轄する税務署や都道府県・市区町村の税務担当窓口に「異動届出書」や各自治体所定の書類を提出するのが一般的です。国税の場合は、税務署の窓口で受け取るか、国税庁の公式サイトからダウンロードすることができます。
一方、地方税に関しては、自治体ごとに書式や名称が異なるため、事前に各自治体のWebサイトで確認しておくことをおすすめします。
届出の際には、定款の変更内容が記載された写しや株主総会の議事録などの添付書類が必要となる場合があります。必要書類は事前に確認し、整えておくとスムーズに手続きを進められるでしょう。
参考:国税庁|異 動 届 出 書 – (□ 法人税 □ 消費税)
会社の決算月を変更する際の注意点

決算月は、一定の要件を満たしていれば、時期を問わず変更することが可能です。
ただし、変更にあたっては、業務負担や資金繰りへの影響などを十分に考慮することが重要です。
会社の決算月を変更する際に注意すべきポイントとして、主に以下の2点があります。
- 短い事業年度が発生する場合がある
- 納税期間が前倒しになる可能性がある
それぞれの注意点について解説していきます。
短い事業年度が発生する
決算月を変更する際には、原則として「現時点から1年以内の期間内」に設定する必要があります。
そのため、決算期を繰り上げる場合には、変更初年度に通常よりも短い事業年度が発生することがあります。短期の事業年度がある場合、会計処理や決算作業の回数が増える可能性があるため、日常業務への負荷が高まることに注意が必要です。
また、短期事業年度の会計記録は将来的にも帳簿や報告資料に残るため、複数年度にわたる財務比較や業績分析を行う際には、期間調整などの工夫が求められます。
こうした点を踏まえ、決算月の変更は専門家と相談しながら進めることをおすすめします。
納税期間が前倒しされてしまう
決算月を変更した場合、初年度は通常よりも短い会計期間となることがあります。そのため、法人税等の申告・納付は、決算日の翌日から2か月以内に行う必要があり、この義務は事業年度の長さに関わらず適用されます。
結果として、短期決算の年度には1年間で複数回の納税が必要になるケースもあり、資金繰りへの影響に注意が必要です。また、税理士への依頼内容や回数が変わることで、報酬の増減が生じる場合もあります。
このような事情を踏まえ、決算月を変更する際には、初年度の資金計画や申告スケジュールを事前に確認しておくことが重要です。
自社の状況に合わせて最適な決算月を決めよう!

今回は、決算月の概要について解説しました。
法人の場合、原則として事業年度は自由に設定できます。
しかし、深く考えずに決算期を決めてしまうと、事務業務のピーク時期と重なって処理が煩雑になったり、納税が連続して発生して資金繰りに影響を与えたりするリスクがあります。決算月を選定する際は、事務処理の負担や資金繰りへの影響を考慮することが大切です。
そのため、自社の業務サイクルや繁忙期、資金の流れ、納税スケジュールなどを総合的に検討し、負担の少ない時期を選ぶことが推奨されます。また、決算業務が効率的に進む体制やプロセスを事前に整備しておくことも、経営上有効な対策です。この記事を参考に、自社の状況に応じた決算月の設定を検討してみてください。
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- さらに会社設立してからも一気通貫で支援
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

