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投資と出資の違いとは?メリット・デメリットから注意点についても徹底解説
読了目安時間:約 7分
投資と出資の違いは、投資が将来の利益や資本の成長を期待して資金を投じる行為全般を指すのに対し、出資は株式会社や合同会社などに対して資本金等として資金を払い込み、その見返りとして株式や持分などの権利を取得する行為を指します。
また、投資は株や不動産など、値上がりや配当などのリターンを期待して資金を投じるのに対し、出資は会社の運営に関わる権利を得ることが多く、金銭的利益に加えて、事業への関与や社会的意義への共感といった非金銭的な動機が併存する場合もあります。
本記事では、投資と出資の違いについて紹介します。
他にも「投資・出資を受けるメリットとデメリット」や「投資・出資を受ける際の注意点」についても解説していきます。
ぜひこの記事を参考にして、投資と出資の違いについて理解を深めてみてください。
目次
投資と出資の違いとは?

投資とは、将来的な利益を狙ってお金を資産に振り向ける行動を指します。
株式、債券、不動産、投資信託などを購入し、その価値の上昇や分配金、利息などを通じて収益を得ることが期待されます。
投資家はリスクを伴う中で、どの資産に資金を投じるかを慎重に判断し、長期的な視点で資産の成長を目指します。
出資は、法律上は会社等に対して資本金等として資金を払い込み、その見返りとして株式や持分を取得する行為を指し、通常は配当や残余財産分配などの金銭的リターンも期待されます。その一方で、特にスタートアップ企業やNPOなどでは、営利目的と併せて事業や団体の活動そのものを応援する意味合いが強い場合もあります。
特に、企業設立時においては、出資金が会社の基盤となる資本金となり、出資者は会社の持分を得ることになります。
出資によるリターンは、金銭的な利益に限らず、経営への参加、発言権、あるいは社会的意義のある活動への関与といった形で表れることも少なくありません。
このように、投資は利益の獲得が主な動機であるのに対し、出資はその対象の活動を支援するという側面が色濃く出るのが特徴です。
参考:中小企業者のためのエクイティ・ファイナンスの基礎情報|中小企業庁
投資・出資を受けるメリット

投資・出資を受けるメリットについては、以下の4つが挙げられます。
- 返済の義務がない
- 資金用途に制限がない
- 原則として連帯保証・担保返済がない
- 投資家からサポートを受けられる
それぞれのメリットについて解説していきます。
返済の義務がない
融資とは異なり、資金提供を受ける際に出資や投資の場合は、基本的に原本の返済義務はありません。
出資を受けた企業は、将来的に配当や上場、企業売却(M&A)などを通じて、投資家へリターンをもたらすことが期待されますが、必ずしもそれが保証されているわけではありません。
仮に企業が経営不振に陥った場合でも、融資は原則として債務として返済義務が残り(破産等の法的整理により免責される場合を除きます)、債権者は弁済を受ける立場にあります。これに対して、出資や投資については、出資者・投資家は残余財産の分配を受ける立場にとどまり、元本の返還請求権は原則として認められません。
参考:第2節 中小企業とエクイティ・ファイナンス|中小企業庁
資金用途に制限がない
融資と比べて、投資や出資によって得た資金は、使用目的に関する厳しい制約がなく、比較的自由度の高い活用が可能です。
これは、企業にとって柔軟な資金運用をおこなえる大きなメリットとなります。
一方、融資の場合は、資金の使途が明確に定められているのが一般的で、設備投資用の資金と運転資金用の資金という2つのカテゴリーに分けられます。
仮に、設備投資の名目で借りた資金を、日常の運営費に充てた場合、契約違反となる可能性があります。
これに対して、出資で得た資金については、会社法上は、原則として使用目的に対する法的な制限はありません。ただし、株主との間の投資契約や株主間契約等において、資金使途に関する合意が置かれることがあり、その場合には契約に従う必要があります。
また、資金の使い道が不明確な企業には投資家が関心を示しにくいので、出資を受けるためには、その資金で何を行うのかをしっかりと明示し、納得のいく説明をおこなうことが求められます。
参考:「我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項」増補版 – スタートアップの成長に資するガバナンス設計と投資契約実務のアップデート|経済産業省
原則として連帯保証・担保返済がない
投資や出資による資金調達では、基本的に連帯保証人や担保を必要としないのが一般的です。
そのため、保証人を立てることが難しかったり、担保にできる資産がない企業にとっては、出資を受けることが資金確保の有効な選択肢と言えます。
しかし、すべての投資や出資が無条件というわけではないので、あらかじめ注意が必要です。
契約の内容次第では、一定の場合に投資家に有利な条件(優先配当、清算優先権、売却請求権など)が設定されることもあるため、出資を受ける際には、保証や担保の有無に限らず、契約内容全体を慎重に確認し、条件を十分に理解しておくことが大切です。
投資家からサポートを受けられる
出資を受けることで、投資家から助言や知見を得られるなどサポートを受けられます。
実際に、投資家は多くの企業支援やビジネス経験を通じて培った知識を持っており、そのアドバイスは今後の事業展開において参考になります。
特に、豊富な実績を持つ投資家のサポートを受けながら経営に取り組むことで、企業としての成長スピードが加速することも期待できます。
さらに、こうした投資家との出会いは、普段の生活ではなかなか接点のない人物やネットワークにアクセスできる貴重なチャンスになります。
新たな視点や人脈を得ることで、経営者としての感覚が磨かれ、社会のニーズに即した事業アイデアを発見しやすくなり、結果的にビジネス成功につながりやすくなります。
投資・出資を受けるデメリット

投資・出資を受けるデメリットについては、以下の3つが挙げられます。
- 経営の自由度が低下するリスクがある
- 十分な資金・利益を得られない場合がある
- 利益を還元するケースがある
それぞれのデメリットについて解説していきます。
経営の自由度が低下するリスクがある
投資・出資を受ける際には、経営に対する自由度が制限されるリスクがある点に注意が必要です。
実際に、投資家は投資・出資の見返りとして株式を取得することが多く、経営判断に一定の影響力を持つようになります。
その結果、経営者自身の判断だけでは意思決定が進めにくくなるケースも出てきます。
特に、投資家が議決権を持つ株式の過半数以上を所有するような状況では、経営権の主導権が移ってしまう恐れがあります。
たとえ経営に関して有益な助言を受けられるとしても、出資者との意見の不一致が生じれば、思い描いていた事業方針に支障をきたす可能性があるのも事実です。
このように、投資家からのサポートには多くのメリットがありますが、その一方で、経営上の制約が発生してしまうことを十分理解しておくことが重要です。
十分な資金・利益を得られない場合がある
投資・出資による資金調達には、期待通りの金額や収益を得られない場合があることを理解しておくことが重要です。
一般的に、投資家への対価として株式を発行しますが、発行時の株価が低ければ、その分調達できる資金も限られてしまう可能性があります。
また、業績が好転すれば株主への利益還元として、配当や優待制度の導入が必要になる場合もあり、結果として会社にとっての負担が増すこともあります。
また、投資・出資には利息の支払い義務がないので、一見すると経済的に有利に見えることがありますが、将来的に配当額が増加すれば、むしろ融資を受けた場合の返済コストよりも高くつくケースもあります。
そのため、資金調達手段として投資・出資を選ぶ際には、慎重な検討と長期的な視点が不可欠です。
利益を還元するケースがある
投資や出資によって得た資金には、融資のような返済義務は発生しませんが、投資家には将来的に利益を分配する形でのリターンが求められます。
例えば、企業の成長後に得られる配当や、M&Aなどによる株式売却益を通じて、投資家への利益還元がおこなわれるケースがあります。
このように、企業が成長し、安定して利益を上げるようになると、出資比率に応じた利益の分配が期待されるようになり、経営者にとって一定の責任とプレッシャーを伴ってしまいます。
投資・出資を受けたい場合の取るべき行動

投資・出資を受けたい場合に取るべき行動については、以下の2つが挙げられます。
- 企業価値を高める
- 投資家などと接触する
それぞれの行動について解説していきます。
企業価値を高める
投資家から投資・出資を得るためには、まず「この企業に投資する価値がある」と思ってもらえるような魅力を示すことが欠かせません。
そのため、投資家がどのような視点で企業を評価しているのかを理解しておく必要があります。
投資家が企業に出資するかどうかを判断する際には、主に以下のような要素がチェックされます。
- 将来的に事業がどれだけ成長する可能性があるか
- 実現可能で論理的な事業計画が立てられているか
- 安定的かつ継続的な収益を生み出す力があるか
上記のように、投資家は市場の将来性や事業戦略の信頼性、経営チームの能力などを重視していると言えます。
このように、出資を受けたい企業としては、こうした観点に沿って自社の強みやビジョンを明確に伝えることが、投資家に対する有効なアピールになります。
投資家などと接触する
エンジェル投資家やベンチャーキャピタルといった投資家との接点を持つことが、一般的な出資獲得のステップと言えます。
具体的に、エンジェル投資家とベンチャーキャピタルについては、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
| エンジェル投資家 | 創業間もない企業に個人として出資する投資家です。株式を取得し、将来的な上場やM&Aによる利益を目的としています。中には経営支援やネットワークの提供をおこなう人もおり、社会貢献や起業支援の意義から、VCの対象外となる企業にも積極的に出資するケースがあります。 |
| ベンチャーキャピタル(VC) | 将来性のある未上場企業に対し、組織として大規模な出資をおこなう機関です。政府系や金融機関系など様々な種類があり、審査も厳格です。出資額は数千万円から数十億円に及ぶこともあります。 |
これらの投資家はいずれも、今後の成長が期待される未上場企業、特にベンチャーやスタートアップを主な対象として資金提供をおこなう共通点を持っています。
参考:日本エンジェル投資家協会/一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会
投資・出資を受ける際のポイント

投資・出資を受ける際のポイントについては、以下の2つが挙げられます。
- 自社の現状を把握する
- 投資・出資を受けたい目的を明確にする
それぞれのポイントについて解説していきます。
自社の現状を把握する
投資・出資を受ける際のポイントとして、まず自社の現状を正確に理解し、直面している課題を明確に示すことが重要です。
実際に、現実を正しく把握できていないと、説得力のある説明は難しくなるのも事実です。
また、投資家からの鋭い指摘や質問に対して、どのように受け止め、どのように解決策を提示できるかが重要な評価ポイントとなります。
その際、問題の所在だけでなく、将来の対応策についても具体的に説明できる準備が必要です。
さらに、市場環境の中での自社の立ち位置を把握し、客観的な視点から分析をおこなっておくことも、説得力を高める上で不可欠です。
投資・出資を受けたい目的を明確にする
投資・出資を受ける際には、「なぜ資金が必要なのか」「なぜその金額でなければならないのか」といった根本的な問いに、事前にしっかり向き合っておくことが大切です。
改めて自社の状況や事業計画を見直してみると、現時点では資金調達が本当に必要なのか疑問が湧くケースもあります。
一方で、明確なビジョンを持っていれば、出資によって実現したい目標やプロジェクトの姿をより具体的に描けるようになります。
一つひとつの判断や行動に対して「なぜそうするのか?」と問い続けることで、企業理念の再確認にもつながり、自社の方向性や価値観への理解をより深める機会にもなります。
投資・出資を受ける際の注意点

投資・出資を受ける際の注意点については、以下の2つが挙げられます。
- 必ず契約書を作成する
- 出資金の振り込み記録を残しておく
それぞれの注意点について解説していきます。
必ず契約書を作成する
投資・出資を受ける際には、投資契約書の条項を細かく確認することが重要です。
例えば、優先株の設定により、投資家が配当や清算時の資産分配で他の株主より優先される条件が含まれている場合があります。
また、一定期間内にイグジット(上場やM&Aなど)が達成されない場合、投資家にとって有利となる特別な条件が自動的に適用されるケースもあります。
こうした条件は、企業の将来的な利益の配分や経営の主導権に直接影響を与える可能性があるので、契約を締結する前に弁護士などの専門家と相談しながら慎重に確認することをおすすめします。
さらに、取締役会や経営方針への関与の範囲についても、曖昧な点がないよう明確にしておくようにしましょう。
出資金の振り込み記録を残しておく
出資金の受け取りについては、できる限り銀行振込を利用し、金銭のやり取りの記録をしっかりと残しておくことが大切です。
出資者との信頼関係を保つだけでなく、税務調査などで正式な証明として活用できるので、非常に重要な対応となります。
特に、親族などの身近な人から資金提供を受ける場合は、贈与と誤認されるリスクがあるので、契約書や振込明細などの客観的な証拠をきちんと整備・保管しておく必要があります。
実際に、確定申告をおこなう際の裏付け資料としても役立ちます。
また、資金の透明性を高めることは、会計処理の信頼性向上にもつながります。
さらに、出資者への定期的な報告資料としても活用できるので、継続的に良好な関係を築くための土台にもなります。
投資・出資を受けて事業拡大を目指そう!

今回は、投資と出資の違いについて紹介しました。
投資は、利益を得る目的でお金を投じる行為全般を指し、株や債券、不動産などが対象になります。
一方、出資は主に企業に対して資本金としてお金を提供し、その企業の経営に関与する権利を得ることを意味します。
投資と出資にはメリットとデメリットの両面があるので、それぞれの特性を十分に理解した上で、自社にとって最適な資金調達方法を選択することが求められます。
今回の記事を参考にして、投資・出資を受けて事業拡大を目指してみてください。
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- さらに会社設立してからも一気通貫で支援
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

