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創業融資
公庫とは何をしている機関?銀行との違いや融資を受ける方法まで徹底解説
読了目安時間:約 7分
「創業資金を調達したいけれど、公庫って何だろう?銀行とは違うのだろうか?」
このような疑問を持っていないでしょうか。事業を始めようと考えて資金調達について調べ始めると、「日本政策金融公庫」という言葉を目にする機会が増えるものです。しかし、公庫が具体的にどのような組織で、どんなサービスを提供しているのか、よくわからない方も多いでしょう。
そこで本記事では、「公庫とは何か」について詳しく解説します。「融資を受けるための具体的なステップ」や「メリット・デメリット」も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
公庫とは?初めて融資を検討する方が知るべき3つの基本的なポイント

公庫を正しく理解するには、まず基本的な特徴を押さえなければいけません。民間の金融機関とは異なる役割を持っているため、違いを知ることで効果的に活用できます。ここでは、以下にわけて初めて融資を検討する方が知っておくべき3つのポイントを、詳しく解説します。
- 公庫は国が運営する政策金融機関
- 民間銀行との違いと使い分け方
- 創業時や事業拡大時に活用できる
公庫は国が運営する政策金融機関
公庫は日本政策金融公庫の略称で、国が100%出資する政策金融機関です。株式会社日本政策金融公庫法に基づき、国が株式の100%を常時保有している特殊な会社となっています。
民間の銀行とは異なり、利益を追求するのではなく、中小企業や小規模事業者の成長を支援する政策目的で運営されています。
そのため、民間銀行では融資が難しいケースでも、公庫なら融資を受けられる可能性があります。国の機関という安心感もあり、初めて融資を受ける方でも相談しやすいでしょう。
民間銀行との違いと使い分け方
公庫と民間銀行の主な違いを以下の表で確認しましょう。
| 項目 | 公庫 | 民間銀行 |
| 金利 | 1~3%台が主なメ安 | 2~9%以上になる場合も |
| 審査基準 | 支援目的などを重視 | 実績・信用力などを重視 |
| 融資額 | 数百万~数億円 | 数千万~数億円 |
| 審査期間 | 2週間程度 | 2週間~1ヶ月 |
このように、金利や審査基準、融資額まで民間銀行と大きく異なります。特に金利面は民間銀行と比べて負担が軽くなりやすいため、創業時や実績が少ない段階では公庫を活用し、事業が軌道に乗ってから民間銀行と取引を始めるといった形で使い分けると良いでしょう。
ただし、上記表はあくまで目安であり実際は条件によって大きく異なります。
参考:国民生活事業(主要利率一覧表) | 日本政策金融公庫
融資の状況 | 日本政府金融公庫
税理士会提携ビジネスローン「融資力」 | 三菱UFG銀行
創業時や事業拡大時に活用できる
公庫は前身となった国民生活金融公庫の事業を引き継いでおり、新規開業やスタートアップ支援など、創業融資に力を入れています。そのため、開業前や開業直後の事業者でも融資を受けられます。
例えば、飲食店の開業資金や美容室の設備投資、ECサイトの立ち上げ資金など、様々な業種の創業支援が可能です。また、既存事業の拡大時にも活用でき、新規出店や設備投資、運転資金の確保などにも対応しています。
開業前の実績がない段階でも、しっかりとした事業計画があれば融資を受けられる点は、公庫の大きな魅力と言えるでしょう。
公庫からの融資を受けるための6ステップ

公庫から融資を受けるには、正しい手順を踏む必要があります。一つひとつのステップを確実にこなしていけば、融資実行までスムーズに進められます。融資を検討している方は、以下の流れで進めましょう。
- なぜお金が必要なのかの目的を明確にする
- 自分の状況に合う融資制度を見つける
- 返済計画を含む事業計画書を作成する
- 自己資金と信用情報を整理しておく
- 必要書類を準備して申し込む
- .面談を受けて融資実行まで進める
Step1.なぜお金が必要なのかの目的を明確にする
まず、融資を受ける目的を明確にします。「なんとなく資金が欲しい」ではなく、以下のような具体的な用途と金額を定めましょう。
- 飲食店の開業資金として500万円が必要
- 新規出店のための設備融資に300万円が必要
目的が明確であれば、面談時に説得力のある説明ができます。審査担当者からの信頼も得やすくなるでしょう。
Step2.自分の状況に合う融資制度を見つける
公庫には様々な融資制度があるため、自分の状況に最適なものを選びます。代表的な制度には以下のようなものがあります。
- 新規開業・スタートアップ支援資金:開業後概ね7年以内が対象
- 企業活力強化資金:支払条件の改善やキャッシュレス決済の導入にも対応可能
- マル経融資(小規模事業者経営改善資金):商工会議所や商工会等の推薦が必要
自分がどの制度に該当するのかわからない場合は、公庫の窓口や認定支援機関に相談しましょう。最適な制度を提案してもらえます。
参考:新規開業・スタートアップ支援資金 | 日本政策金融公庫
企業活力強化資金 | 日本政策金融公庫
マル経融資(小規模事業者経営改善資金) | 日本政策金融公庫
Step3.返済計画を含む事業計画書を作成する
事業計画書は融資審査で最も重要な書類です。公庫への融資を申請する際も、以下の内容を具体的に記載しましょう。
- 事業の内容と特徴
- 市場分析と競合状況
- 売上計画と利益の見通し
- 返済計画(月々いくら返済できるか)
返済計画が現実的であると示すために、収支シミュレーションを細かく作成してください。楽観的すぎる計画は信頼性を損なうため、保守的な数字で計画を立てましょう。
Step4.自己資金と信用情報を整理しておく
日本政策金融公庫の創業者向け融資制度では、現在、自己資金額について「創業資金総額の○割以上」といった形式的な申込要件は設けられていません。かつて新創業融資制度で定められていた「創業資金総額の1/10以上の自己資金」といった要件は、令和6年3月31日の同制度廃止に伴い撤廃されています。
もっとも、自己資金は依然として審査上重要な判断材料であり、自己資金が厚いほど、事業へのコミットメントや資金管理能力が高く評価される傾向があります。そのため、自己資金がまったくない場合でも申込自体は可能ですが、ある程度の自己資金を準備しておくことが望ましいと言えます。
また、審査では信用情報もチェックされます。クレジットカードや携帯電話の支払遅延がないかも、併せてチェックしましょう。
Step5.必要書類を準備して申し込む
事業計画や自己資金などが準備できたら、以下の書類を準備して、公庫の窓口またはオンラインで申し込みます。
- 借入申込書
- 創業計画書(または事業計画書)
- 見積書(設備資金の場合)
- 履歴事項全部証明書(法人の場合)
- 確定申告書(直近2期分)
- 送金先の預金通帳のコピー など
書類に不備があると審査が遅れるため、事前にチェックリストを作成して漏れがないか確認しましょう。公庫はインターネット申込用の必要書類一覧も公表しているため、それを参考にすると効率的です。
参考:インターネット申込の必要書類のご案内 | 日本政策金融公庫
Step6.面談を受けて融資実行まで進める
申し込み後、公庫から面談の案内が届きます。面談では、事業計画の詳細や資金使途、返済の見通しなどについて質問されます。正直に誠実に答えるようにしましょう。なお、オンラインでの面談も可能です。
面談で問題がなければ融資が実行されます。融資実行までの期間は、一般的には申し込みから2週間程度が目安とされていますが、申込内容や時期によってはそれ以上要する場合もあります。資金が必要になる時期から逆算して、余裕を持って申し込むことが重要です。
自社に合うのはどれ?主な公庫の3つの事業内容

公庫には3つの主要な事業があり、それぞれ対象となる事業者や融資内容が異なります。どのような違いがあるのか、以下にわけて各事業の特徴を詳しく見ていきましょう。
- 国民生活事業
- 農林水産事業
- 中小企業事業
国民生活事業
国民生活事業は、小規模事業者や個人事業主を主な対象とした事業です。さらに、一般の方向けに大学生までを対象とした教育ローンも提供しています。
事業資金の融資先数は令和6年度末時点で約115万先、1先あたりの平均融資残高は822万円と小口融資が主体であり、融資先の約9割が従業員9人以下の小規模事業者です。個人企業の方が多く利用しているのも特徴と言えるでしょう。
事業の中には、経営環境の変化や資金繰りの影響を受けたセーフティネット貸付もあり、地震や台風といった災害時にも利用できます。創業から非常時まで、幅広く利用できる制度が多い事業です。
農林水産事業
農林水産事業は、農業や林業、水産業に従事する事業者を対象とした専門の事業です。農業経営の改善、6次産業化の推進、新規就農者の支援など、農林水産業特有のニーズに対応した融資制度を提供しています。例えば、以下のような場面で活用できます。
- 農業用ハウスの建設
- 漁船の購入
- 加工施設の整備
一般的な事業とは異なる特性を持つ農林水産業を理解した上で、適切な支援をしている事業と言えるでしょう。
中小企業事業
中小企業事業は、中堅規模の中小企業を対象とした事業です。融資額は比較的まとまった金額が中心であり、令和6年度末時点の1先あたり平均融資残高は約1億3,300万円となっています。設備投資や事業拡大に必要な長期の事業資金を調達できるのが特徴です。
国民生活事業と異なり長期間での融資が基本であり、返済計画を立てやすい固定金利が用意されている制度もあります。長期融資となるため、場合によっては担保が必要になる場合がある点には注意が必要です。
知っておきたい!公庫を利用する4つのメリット

公庫を利用すると、民間銀行にはない様々なメリットを享受できます。どのようなメリットがあるのか、以下にわけて詳しく見ていきましょう。
- 低金利で無担保・無保証の融資も可能
- 返済期間を長めに設定できる
- 創業間もない事業者でも借りやすい
- 経営相談など融資以外のサポートも受けられる
低金利で無担保・無保証の融資も可能
公庫の事業資金向け金利は、代表的な基準利率で見てもおおむね年2%台前後で設定されています(令和7年11月時点)。制度によっては特別利率が適用される場合もあり、民間銀行の事業融資より低い水準となるケースもあります。
また、新創業融資制度などでは、無担保・無保証で融資を受けられます。担保にできる不動産がない方や、保証人を頼める人がいない方でも資金調達が可能な仕組みが整備されています。
ただし、無担保・無保証の場合は金利がやや高めに設定されるケースもあります。制度によっては担保が必要になることもあるため、申請時は事前に確認するようにしましょう。
返済期間を長めに設定できる
公庫は制度によって返済期間を長めに設定できるため、月々の返済負担を軽減できます。例えば、農林水産物・食品輸出基盤強化資金なら最長25年(うち据置期間3年以内)の返済期間が設定可能です。
措置期間も考慮すると、創業直後で売上が安定していない時期でも、無理なく返済を続けられるのは大きなメリットと言えます。
参考:農林水産物・食品輸出基盤強化資金 | 日本政策金融公庫
創業間もない事業者でも借りやすい
公庫は創業支援を主要な使命としているため、実績がない事業者でも融資を受けやすい特徴があります。一方、民間銀行では実績重視のため、創業前や創業直後の融資は非常に難しいのが現実です。
しかし、公庫なら事業計画がしっかりしていれば、開業前でも融資を受けられる可能性があります。過去の経験や自己資金なども評価されるため、これから事業を始める方の強い味方になってくれます。
経営相談など融資以外のサポートも受けられる
公庫は融資だけでなく、経営に関する様々なサポートも提供しています。創業計画の作成支援や経営課題の相談、専門家の紹介など、事業を成功させるための支援が充実しているのも、公庫の特徴です。
また、定期的なセミナーや勉強会も開催されており、経営ノウハウを学ぶ機会も豊富にあります。融資を受けた後も継続的にサポートしてくれるため、心強いパートナーとして長く付き合えるでしょう。
参考:日本政策金融公庫
公庫利用前に知っておきたい3つのデメリット

公庫には多くのメリットがある一方で、デメリットも存在します。どのようなものがあるのか、以下にわけて詳しく見ていきましょう。
- 審査に2週間程度の時間がかかる
- 融資額が民間銀行より少額になる場合がある
- 事業計画書の作成など準備に手間がかかる
審査に2週間程度の時間がかかる
公庫の審査は、申し込みから融資実行まで2週間程度かかるのが目安とされています。ただし、提出書類の不備や案件の内容、繁忙期かどうか等によっては、2週間を超えて時間を要する場合もあります。
急いで資金が必要な場合には、民間の事業者向けローンの方が迅速に実行されるケースもあるため、資金が必要になる時期から逆算して、余裕を持ったスケジュールで準備することが重要です。
融資額が民間銀行より少額になる場合がある
公庫の融資額は、民間銀行と比べて少額になる傾向があります。特に国民生活事業では、1先あたりの平均融資残高が約822万円と小口融資が主体であり、大規模な設備投資や大規模な事業拡大を単独で賄うには不十分な場合があります。
ただし、中小企業事業を利用すれば億単位の融資を受けられるケースもあります。公庫で実績を作ってから民間銀行と取引を始めるという段階的なアプローチもできるため、利用次第によってはメリットにもなるでしょう。
事業計画書の作成など準備に手間がかかる
公庫から融資を受けるには、詳細な事業計画書の作成が必須です。売上計画や収支シミュレーション、返済計画など細かい数字を積み上げる必要があります。必要書類も多いため、初めての方には大変な作業になるでしょう。
一方で、こうした準備は事業を成功させるための良い訓練にもなります。必要に応じて認定支援機関や税理士に相談し、計画書作成のサポートを受けてみるのもおすすめです。
公庫は創業と成長を支える強い味方。まずはプロに相談してみよう!

公庫は、国が運営する政策金融機関です。創業間もない事業者でも、適切な制度を選び、事業計画を整えれば、低金利で融資を受けられる可能性があります。無担保・無保証の融資制度もあり、返済期間を長めに設定できるため、資金繰りの不安を軽減できます。
ただし、審査に2週間程度の時間がかかったり、事業計画書の作成に手間がかかったりと、申し込みのハードルが低いとは言えない側面もあります。
公庫から融資を受けたいと考えた際は、こうしたメリット・デメリットを理解した上で、自社の状況に合う制度を検討し、計画的に申し込みを行いましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

