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役員報酬と給与はどっちが得なの?違いや役員報酬の決め方について徹底解説
読了目安時間:約 7分
会社を立ち上げた際や決算の時期、多くの経営者様が頭を悩ませるのが「役員報酬をいくらに設定すべきか」という問題ではないでしょうか。
「個人の手取りを増やしたいけれど、会社の資金繰りも守りたい」
「節税はしたいけれど、社会保険料の負担が心配」
このように、会社と個人のどちらにお金を残すかのバランス調整は、非常に難しい経営判断の一つです。 従業員の「給与」とは異なり、役員報酬には税務上の厳格なルールがあるため、期中の変更が難しく、最初の設定がその年のお金の流れを大きく左右します。
本記事では、役員報酬と給与の仕組みの違いや、それぞれのメリット・デメリットを整理してご紹介します。 税金や社会保険料の負担を含めたシミュレーションの考え方についても解説しますので、自社にとって最適なバランスを見つけるための判断材料として、ぜひお役立てください。
役員報酬と給与はどっちがお得なの?

役員報酬と給与のどちらが得かについては、企業の財務状況、今後のビジネス展望、個人の働き方や優先順位によって異なります。
節税を重視するなら役員報酬が効果的な場合が多いですが、法的保護や収入の安定を求めるなら給与という選択肢が適しています。
最適な選択をするためには、それぞれの制度の特徴を理解し、事前にシミュレーションをおこなうことが重要です。
また、税務や社会保険に関する判断には、税理士など専門家の意見を取り入れることもおすすめします。
役員報酬と給与の違い

役員報酬とは、取締役や監査役といった会社の役職者に対して支給される金銭的な報酬を指し、株主総会の承認を得て正式に決定され、毎月定額で支払われるのが一般的です。
一方、給与は雇用契約に基づいて従業員へ支払われるものであり、労働の対価として分類されます。
そのため、役員が従業員と同様の給与を受け取ることはできず、あくまで「報酬」という形式になります。
また、従業員に対する給与は原則として全額が会社の経費として認められますが、役員報酬については法律上の規制が厳しく設けられています。
参考:No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)|国税庁
役員報酬の決め方

役員報酬の決め方については、以下の4つが挙げられます。
- 年間収益を予測する
- 定款または株主総会の決議によって定める
- 報酬を高く設定しすぎない
- 納税額を考慮する
それぞれの項目について解説していきます。
年間収益を予測する
役員報酬を決める際には、会社の利益からその支払いがおこなわれることを踏まえ、年間の利益見通しを立てる必要があります。
まずは年間の売上予測を立て、その中から売上原価やオフィスの賃料、光熱費、通信費、広告費など役員報酬以外にかかる経費を差し引いて、どの程度の利益が手元に残るかを算出します。
特に、創業1年目などで実績がない場合は、過去のデータが使えないので、事業計画書などをもとに現実的かつ根拠ある見積もりをおこなうことが大切です。
このように、収益性の予測を慎重におこなうことで、適切な報酬設定が可能になります。
定款または株主総会の決議によって定める
会社法では、役員報酬の金額を決める際には「定款に記載するか、もしくは株主総会の決議によって定めること」と規定されています。
特に、中小企業においては、株主総会の決議を通じて報酬を決定するケースが主流です。
通常はまず、株主総会において報酬の総枠を決定後、役員ごとの具体的な金額については取締役会で個別に決定されます。
取締役会が設置されていない企業では、取締役による決定がおこなわれます。
手続きを経て役員報酬を損金として認めてもらうためには、株主総会や取締役会の議事内容を明記した「議事録」を作成し、証拠として保管しておくことが重要です。
報酬を高く設定しすぎない
他社と比べて明らかに報酬額が高すぎると、税務署はそれを正当な労働の対価とは認めず、経費として処理できないと判断されてしまうリスクがあります。
特に、税務調査でよく問題視されるのが、家族を役員にして報酬を支給しているケースです。
例えば、実際には出勤日数が少なく、業務内容もほとんどないのに高額な役員報酬が支払われている場合、労働実態や業界の報酬相場から不相応と見なされ、報酬額が否認されることがあります。
また、配偶者や親などの親族を役員に登用し、それぞれに報酬を分散させることで所得税を抑えるといった節税策もあります。
納税額を考慮する
役員報酬の金額は、社会保険料や所得税、住民税と密接に関係しており、その金額が増えるほど、税金や保険料の負担も比例して重くなります。
所得税については、累進課税制度が採用されているので、報酬が高くなるにつれて税率そのものも上昇し、結果として納税額が大幅に増える可能性があります。
そのため、節税を意識して報酬を引き上げたつもりが、逆に税金面での負担が大きくなり、結果的に手取りが減ってしまうケースも少なくありません。
一般的に、役員報酬の年間額が800万円から1,000万円を超えるようになると、個人が支払う税金の合計額が法人としての税負担を上回る水準になることが多く、バランスを見極めた設定が大切です。
参考:所得税の税率|国税庁
損金に算入できる役員報酬の種類

損金に算入できる役員報酬の種類については、以下の3つが挙げられます。
- 種類①:定期同額給与
- 種類②:事前確定届出給与
- 種類③:業績連動給与
それぞれの種類について解説していきます。
種類①:定期同額給与
定期同額給与とは、役員に対して毎月一定額を継続的に支給する報酬の形態を指します。
税務署への届け出などは不要ですが、支払い額が毎月同じであることが損金処理を認められるための前提条件となります。
特に注意が必要なのは、役員報酬の金額は、設立から3ヶ月以内に確定しておかなければ、税務上その金額を経費として扱うことができなくなります。
また、いったん定めた役員報酬の金額は、通常の経営状況では途中で変更することができません。
種類②:事前確定届出給与
原則として、役員に対する賞与は、法人の経費として認められていません。
しかし、事前確定届出給与であれば、役員賞与も損金に算入することが可能です。
事前確定届出給与を活用するには、賞与を支払う前に、対象となる役員、支給額、支給日などの詳細を記載した書類を税務署へ提出しなければなりません。
また、実際の支払いもその届出内容と一字一句間違っていないかどうか確認し、少しでも相違があると損金として認められない可能性があります。
さらに、届出書の提出期限には厳格なルールがあり、「株主総会などで賞与を決定した日から1ヶ月以内」または「事業年度の開始日から4ヶ月以内」のいずれか早い方の日までに税務署へ提出する必要があります。
種類③:業績連動給与
業績連動給与とは、企業の経営成績に応じて支給される役員報酬のことです。
企業の利益や収益指標に基づいて報酬額を決定する仕組みで、有価証券報告書に開示されている財務データなどをもとに算出されます。
しかし、すべての企業に適用できるわけではありませんので、あらかじめ注意が必要です。
対象となるのは、上場企業などの非同族会社、非同族会社の100%子会社である場合に限られており、創業家などが経営を握る「同族会社」では原則として認められていません。
役員報酬を変更する手続き

役員報酬を変更する手続きについては、以下の5つが挙げられます。
- 役員報酬の金額を決める
- 株主に株主総会招集通知を送る
- 株主総会を開催して決議を実施する
- 株主総会議事録を作成する
- 税務署・年金事務所へ届出を提出する
それぞれの手続きについて解説していきます。
役員報酬の金額を決める
役員報酬を見直す際には、新たに設定する金額を具体的に決定し、それを正式に文書化する必要があります。
新たな報酬額は、株主総会の議題として提案され、議案に明記される形で承認されます。
万が一、報酬額を変更しないという判断に至った場合であっても、「変更しない」という決定自体を記録に残すための議事録作成が求められます。
決議は特別な条件を要するものではなく、通常の「普通決議」によっておこなわれるのが一般的です。
株主に株主総会招集通知を送る
役員報酬の金額が確定したら、正式に承認してもらうために株主総会を開く必要があります。
総会の開催にあたっては、少なくとも2週間前までに「招集通知」を株主へ送付しなければなりません。
通知書には、会議の日時、開催場所、議題の内容など株主が判断に必要とする情報を明確に記載することが求められます。
近年では、WEBを活用した議決権行使やオンライン形式での株主総会も増えており、その場合は、インターネット経由での手続き方法やアクセス方法についての案内資料も併せて送付することが一般的です。
一方、家族や親族のみで構成される同族会社のようなケースでは、事前に非公式な話し合いで合意を得ていることも多く、あえて書面での通知をおこなわない場合も見られますが、法的には正式な手続きを踏むことが推奨されています。
株主総会を開催して決議を実施する
役員報酬を見直す際には、株主総会を開催し、通常決議によってその変更内容を承認してもらう必要があります。
総会の日付は、法人税申告書に記載される「決算確定日」と一致していなければならず、適切なタイミングで開催することが求められます。
株主総会において報酬の改定が正式に承認されれば、その時点から新たな役員報酬を適用することが可能となります。
決議は、法的手続きとしても非常に重要な位置付けとなるので、書類や記録の整備にも注意が必要です。
株主総会議事録を作成する
株主総会で役員報酬の変更が決議された場合、その内容を記録した「議事録」を必ず作成する必要があります。
議事録には、以下のような具体的な項目を記載するのが一般的です。
- 報酬額の変更前後の金額
- 変更を行う理由
- 実際に変更が適用される時期
- 総会が開催された日時・場所・議長の氏名
- 採択された決議の内容
上記の内容が記載された議事録は、税務調査などで提出を求められることもあるので、企業内で適切に保管しておくことが大切です。
さらに、取締役が3人以上いる会社の場合には、取締役会の開催も必要となり、その会議についても議事録を作成して記録として残すことが求められます。
税務署・年金事務所へ届出を提出する
役員報酬の金額を変更した後は、それに伴う所定の届出を税務署や年金事務所におこなう必要があります。
例えば、報酬が大きく変わり、2等級以上の変動があった場合には、年金事務所に対して「被保険者報酬月額変更届」を提出する必要があります。
また、役員に賞与を支給する予定がある場合は、あらかじめ株主総会での決定内容を基に、「事前確定届出給与に関する届出書」を1カ月以内に税務署へ提出しなければなりません。
このような役員報酬に関連する一連の手続きは、複数の段階を踏む必要があり、すべて法令に則って適切に処理することが求められます。
届出の遅れや不備があれば、後の税務調査で問題を指摘されたり、将来的な年金受給額に影響が出る可能性もあります。
そのため、制度に精通した税理士や専門家のサポートを受けながら、ミスのない手続きと正確な文書管理をおこなうことが、リスクを避けるうえで重要です。
役員報酬の注意点

役員報酬の注意点については、以下の4つが挙げられます。
- 税金と社会保険料が発生する
- 会社の状況などに見合った役員報酬額を設定する
- 期限内に役員報酬額を決める
- 期限外に変更した場合は損金に算入できない
それぞれの注意点について解説していきます。
税金と社会保険料が発生する
役員報酬には所得税や住民税が発生してしまうので、あらかじめ注意が必要です。
法人税は原則として一定の税率が適用されるのに対し、個人の所得税は所得の増加に応じて税率も上がっていく「累進課税制度」が採用されています。
そのため、報酬額が大きければ大きいほど役員個人の納税額も比例して増えていきます。
節税対策を検討する際は、法人としての節税効果だけでなく、役員個人の税負担もあわせて考慮し、両者のバランスを総合的に見極めることが重要です。
このように、役員報酬を決定する際には、シミュレーションを通じて最適な報酬額を見出すなどの検討が欠かせません。
会社の状況などに見合った役員報酬額を設定する
役員報酬を設定する際には、会社の経営状況や将来の資金計画に合った適正な役員報酬額を設定するようにしましょう。
実際に、いったん決定した役員報酬は、原則として1年間にわたり同じ金額を毎月支給し続ける必要があるので、簡単に変更することはできません。
十分な予測もなく安易に金額を設定してしまうと、後になって資金繰りが悪化するようなリスクを抱える可能性もあります。
そのため、前年度の実績や利益状況なども十分に参考にしながら、慎重に検討を重ねて設定することが重要です。
期限内に役員報酬額を決める
役員報酬の額を設定する際は、定められた期限を守ることが重要です。
法人の損金として認めてもらうには、会社設立日あるいは事業年度が始まってから3カ月以内に報酬額を確定しておく必要があります。
この期限を過ぎてしまうと、たとえ実際に支給したとしても、税務上は経費として計上することができなくなってしまいます。
また、報酬額を後から見直す場合にも制限があります。
役員報酬の変更が可能なのは、決算日から3カ月以内に限られており、この期間内に見直した内容であれば、引き続き全額を損金算入することが可能です。
そのため、報酬額の変更を視野に入れている場合には、できるだけ早い段階で準備と調整を進めるようにしましょう。
期限外に変更した場合は損金に算入できない
役員報酬を期日を過ぎてから増額した場合、その増加分は法人の経費として認められず、課税所得に加算されてしまうので注意が必要です。
また、報酬が増えた分だけ、役員個人にも所得税や住民税の負担が発生します。
逆に、期日を過ぎた後に報酬を減額した場合でも、減額前に支払われた金額が本来の報酬額を超えていた場合には、その超過分は損金として扱うことができません。
役員報酬は慎重に決めよう!

今回は、役員報酬と給与はどっちが得なのかについて紹介しました。
役員報酬と給与のどちらが有利かどうかは、個人の立場が経営者なのか従業員なのかに加え、税制の仕組みや社会保険料の負担、企業の組織形態などさまざまな要素に影響されます。
また、役員報酬とは、会社の役員が業務を遂行することへの報いとして支払われる報酬で、従業員の給与とは異なり、法人の経費として認められるためには、所定の要件を満たす必要があります。
そのため、役員報酬について正しい理解を持つことが経営上のリスク回避につながります。
今回の記事を参考にして、役員報酬は慎重に決めるようにしましょう。
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- さらに会社設立してからも一気通貫で支援
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

