メニュー
会社設立
源泉所得税の納期の特例とは?新設法人の申請方法と注意点
読了目安時間:約 7分
目次
導入文
源泉所得税の納期の特例とは、毎月納付が原則となる源泉所得税のうち、対象税額を年2回にまとめて納付できる制度です。給与等の支給人員が常時10人未満の法人は、税務署長の承認を受けることで利用できます。
源泉所得税の納付期限は、原則として給与や報酬を支払った月の翌月10日です。特例は自動的に適用されないため、役員報酬や従業員給与の支給を始める新設法人は、申請時期を早めに確認する必要があります。
この記事では、源泉所得税の納期の特例について、利用要件、対象となる報酬、申請方法、適用開始時期、納付期限を整理します。さらに、給与等の支給人員が増えて10人以上になった場合の手続きも解説しますので、個別の判断に迷う場合は所轄税務署や税理士へご相談ください。
源泉所得税の納期の特例とは?通常の納付との違い
「源泉所得税 納期の特例」は、対象となる源泉所得税の納付を毎月ではなく、年2回にまとめられる制度です。納付事務を軽減できる一方、半年分の納税資金を計画的に確保する必要があります。
法人が給与、役員報酬、一定の報酬・料金などを支払う際は、所得税および復興特別所得税を源泉徴収します。原則の納付期限は、源泉徴収した日の属する月の翌月10日です。
| 区分 | 対象期間 | 納付期限 |
|---|---|---|
| 原則 | 毎月の支払分 | 翌月10日 |
| 特例 | 1月1日~6月30日 | 7月10日 |
| 特例 | 7月1日~12月31日 | 翌年1月20日 |
納期限が土日・祝日等に当たる場合は、原則として休日明けの日が期限です。特例により納付回数が原則年12回から年2回となるため、役員報酬や従業員給与の支給を始める新設法人では、経理・納付事務の負担軽減につながります。
納期の特例は、納税額を減らす制度ではなく、納付時期をまとめる制度です。源泉徴収税額が軽減・免除されるわけではありません。
半年分を一括納付するため、納期限直前の資金不足には注意が必要です。毎月の源泉徴収額を帳簿で把握し、運転資金と分けて管理するとよいでしょう。対象範囲や処理に迷う場合は、税理士へ確認してください。

納期の特例を利用できる法人の条件は?「常時10人未満」の判定
源泉所得税の納期の特例を利用できるのは、給与等の支給人員が常時10人未満、つまり常時9人以下の源泉徴収義務者です。法人・個人事業主を問わず、新設法人も人数要件を満たして申請すれば対象になります。
人数には役員や臨時従業員も含まれる?
判定に用いるのは、単なる従業員数ではなく、原則として給与等の支払いを受ける人の数です。役員報酬は税務上の給与等に含まれるため、報酬を受け取る役員も人数に関係します。
「常時」は特定の一日時点ではなく、平常時の支給状況で判断します。繁忙期だけ臨時従業員を採用して一時的に10人以上となっても、通常は9人以下であれば要件を満たす場合があります。
一方、日雇労働者を日常的に雇い、平常時の支給人員が10人以上となる場合は対象外です。正社員、パート、日雇いなどの名称だけで判断せず、実際の給与支給状況を確認しましょう。
- 役員報酬を受ける役員を含めて9人以下か
- 臨時従業員の採用が一時的なものか
- 平常時の給与等の支給人員が10人以上にならないか
法人設立後は自動的に適用される?
人数要件を満たしていても、自動的には適用されません。所轄税務署への申請と税務署長の承認が必要です。
「給与支払事務所等の開設届出書」を提出しただけでは、納期の特例は適用されません。給与や役員報酬の支給開始時期に合わせて早めに申請し、判断に迷う場合は税務署や税理士へ確認してください。

特例の対象になる給与・報酬と対象外になる支払い
源泉所得税の納期の特例が承認されても、すべての源泉所得税を年2回納付にできるわけではありません。支払いの種類によって、特例の対象かどうかを区分する必要があります。
特例の対象となる給与・報酬は?
主な対象は、従業員への給与・賞与、役員報酬、退職手当等から源泉徴収した所得税および復興特別所得税です。新設法人が役員報酬や給与の支給を始める場合、これらは特例の対象になります。
弁護士、司法書士、税理士、公認会計士、社会保険労務士などへ支払う一定の報酬・料金も対象です。ただし、専門家への支払いがすべて該当するとは限らないため、国税庁の案内を参照し、資格と実際の業務内容を個別に確認します。
原稿料やデザイン料も対象になる?
原稿料、講演料、デザイン料、芸能関係の報酬、外交員報酬、ホステス等への報酬、広告宣伝のための賞金、配当等は、原則として対象外です。これらの源泉所得税は、支払月の翌月10日までに納付します。
| 支払い例 | 特例 | 納付時期 |
|---|---|---|
| 給与・役員報酬 | 対象 | 年2回 |
| 一定の税理士報酬 | 対象 | 年2回 |
| デザイン料 | 対象外 | 翌月10日 |
同じ月に対象・対象外の報酬を支払う場合は?
給与や税理士報酬とデザイン料を同じ月に支払うと、納付時期が分かれる場合があります。支払先別だけでなく、報酬の種類別に源泉徴収税額を管理してください。
請求書の名目だけで判断せず、契約や実際の業務内容を確認することが重要です。判定が難しいときは、所轄税務署または税理士へ相談すると安心です。

新設法人が納期の特例を申請する方法と書き方
新設法人が源泉所得税の納期の特例を利用するには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を所轄税務署長へ提出します。一律の申請期限はなく随時提出できますが、希望する適用開始時期を踏まえて早めに手続きしましょう。
申請書はどこへ、どのように提出する?
提出先は、給与等の支払事務を取り扱う事務所等の所在地を所轄する税務署長です。国税庁の手続ページで様式・記載要領を確認し、次のいずれかで提出します。
- e-Taxで送信する
- 所轄税務署へ郵送する
- 所轄税務署の窓口へ持参する
e-Taxなら移動や郵送の手間を省けます。提出日を確認できる送信結果や受付記録を保存し、承認・却下通知の有無も確認してください。郵送時は控えと発送記録を残し、手数料の扱いを含む最新情報は国税庁の手続ページで確認しましょう。
申請書には何を記載する?
法人の所在地・名称、法人番号、代表者氏名、給与支払事務所等の所在地を記載します。さらに、申請日前6か月間について、各月末の給与支給人員と各月の給与支給額、過去の承認取消しや納付状況に関する事項を記入します。
設立直後で6か月分の実績がない場合は、申請書の記載要領に従って記入し、不明点は所轄税務署へ問い合わせると確実です。
給与支払事務所等の開設届出書とは何が違う?
開設届出書は給与の支払いを始める事務所を届け出る書類で、納期の特例申請書は源泉所得税を年2回にまとめて納付するための承認申請です。目的が異なるため、必要に応じて両方を提出します。
| 書類 | 目的 |
|---|---|
| 開設届出書 | 給与支払事務所の開設を届け出る |
| 納期の特例申請書 | 年2回の納付について承認を受ける |

申請したらいつから適用される?新設法人の実務スケジュール
源泉所得税の納期の特例は、実務上、申請月の翌月に源泉徴収する税額から対象となります。申請月に支払った給与や役員報酬の源泉所得税へ遡って適用することはできません。
申請月の翌月末日までに承認・却下通知がなければ、原則としてその日に承認されたものとみなされます。承認通知が届いた場合は、通知内容と適用対象を確認して納付スケジュールを調整してください。
2月に申請した場合はいつ納付する?
2月中に申請した場合、2月支給分は申請月のため対象外で、原則どおり3月10日までに納付します。申請書を提出しただけで、2月支給分まで特例に含めないよう注意が必要です。
3月支給分から特例の対象となり、3月から6月の支給分は7月10日まで、7月から12月の支給分は翌年1月20日までに納付します。期限は国税庁の案内でも確認できます。
申請月別の納付スケジュールは?
主な申請月のスケジュールは次のとおりです。年の途中で申請すると、その年の半年分すべてが対象になるとは限りません。
| 申請月 | 原則納付の最終支給月 | 特例の最初の支給月 | 最初の特例納付期限 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 1月 | 2月 | 7月10日 |
| 2月 | 2月 | 3月 | 7月10日 |
| 6月 | 6月 | 7月 | 翌年1月20日 |
| 11月 | 11月 | 12月 | 翌年1月20日 |
源泉所得税の納期の特例では、給与の計算対象月ではなく、実際の支払日が属する月を基準に整理します。締日と支給月が異なる法人は、給与台帳と納付記録を支払日ベースで照合し、不明点は所轄税務署や税理士へ確認すると安心です。

承認後の納付方法と、10人以上になった場合はどうなる?
承認後は、毎月の源泉徴収を続けたうえで、半年分を所定の期限までにまとめて納付します。給与の支給人員が常時10人以上になったときは、届出書を遅滞なく所轄税務署へ提出し、原則の毎月納付へ切り替えます。
承認後はどのように管理・納付する?
源泉所得税の納期の特例を利用しても、給与や役員報酬の計算時には毎月、源泉所得税を徴収して記録します。納付事務だけが年2回になるため、預かった税金を運転資金と混同しない管理が重要です。
- 支給年月、支給額、支給人数、源泉徴収税額を月ごとに記録する
- 納付資金は別口座などで区分管理することを検討する
- 7月10日と翌年1月20日の前に、半年分の集計を再確認する
給与の支給人員が常時10人以上になったら?
「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を、給与支払事務所等の所在地を所轄する税務署へ遅滞なく提出します。届出書を提出した日の属する納期特例期間から、特例承認の効力が失われます。
国税庁の例のように3月に届け出た場合、納付期限は次のとおりです。期間によって使用する徴収高計算書が異なるため、1~2月分と3月分を分けて作成します。
| 支給分 | 納付期限 | 納付区分 |
|---|---|---|
| 1~2月分 | 4月10日 | 納期特例分 |
| 3月分 | 4月10日 | 一般分 |
| 4月以後 | 翌月10日 | 一般分 |
採用拡大を予定する法人は、役員を含む給与の支給人員を毎月確認してください。判定や徴収高計算書の選択に迷う場合は、所轄税務署または税理士へ確認すると安心です。

納期の特例で失敗しないための注意点と確認チェックリスト
源泉所得税の納期の特例では、期限超過、対象範囲の混同、納付資金の不足、承認取消しに注意が必要です。毎月の源泉徴収額を記録して納税資金を確保し、期限と適用状況を定期的に確認しましょう。
納期限を過ぎるとどうなりますか?
納付が遅れた場合は、原則として本税に加え、不納付加算税や延滞税が発生する可能性があります。不納付加算税は原則10%とされるため、年2回でも期限管理を軽視できません。
7月10日と翌年1月20日をカレンダーや会計システムに登録し、毎月積み立てるなどして資金不足を防ぎます。休日に当たる年は、実際の納期限を国税庁の情報で確認してください。
滞納や納付遅延は承認に影響しますか?
現に国税の滞納がある場合や、最近著しい納付遅延がある場合は、承認されない可能性があります。承認後も滞納や遅延が続けば、承認を取り消される場合があります。
申請日前1年以内に承認取消しを受けたことがある場合は、申請書の記載事項を確認しましょう。対象外報酬までまとめて納付する誤りにも注意が必要です。
新設法人は何を最終確認すべきですか?
役員報酬や給与の支給開始前後に、次の項目を一つずつ確認してください。判断が難しい報酬や人数判定は、所轄税務署または税理士へ相談しましょう。
- 給与等の支給人員は常時9人以下か
- 報酬を受け取る役員も人数に含めたか
- 源泉所得税の納期の特例の申請書を提出したか
- 申請月の支給分を誤って特例に含めていないか
- 対象報酬と対象外報酬を分けているか
- 毎月の源泉徴収額を記録・確保しているか
- 7月10日と翌年1月20日を管理しているか
- 常時10人以上になった場合の届出を把握しているか
まとめ
「源泉所得税 納期の特例」は、給与等の支給人員が常時10人未満の法人が、対象となる源泉所得税および復興特別所得税を年2回にまとめて納付できる制度です。納付事務の負担を軽減できますが、すべての報酬に適用されるわけではありません。
納付期限は、1月から6月までの対象分が7月10日、7月から12月までの対象分が翌年1月20日です。自動的に適用される制度ではなく、所轄税務署長への申請と承認が必要になります。
申請月の支給分には遡って適用されないため、承認後の適用開始月を正確に把握することが重要です。役員報酬や従業員給与の支給を始める新設法人は、申請時期と初回の納付期限をあらかじめ確認しておきましょう。
- 申請手続きと適用開始月を確認する
- 特例の対象となる給与・報酬と対象外の報酬を分ける
- 源泉徴収税額を毎月記録し、納付資金を確保する
- 給与等の支給人員が常時10人未満か継続して確認する
適用可否や報酬区分、人数要件の判断に迷う場合は、自己判断で処理せず、税理士へ相談することをおすすめします。法人設立に伴うほかの手続きも含めて確認したい場合は、必要に応じて司法書士や行政書士などの専門家にも相談し、期限前に準備を進めてください。
よくある質問
Q. 源泉所得税の納期の特例を利用するための条件は何ですか?
給与等の支給人員が常時10人未満、つまり常時9人以下であることが要件です。報酬を受け取る役員も人数に関係し、自動適用ではなく所轄税務署長への申請と承認が必要です。
Q. 源泉所得税の納期の特例を利用すると、納付期限はいつになりますか?
対象となる1月1日から6月30日までの源泉所得税は7月10日、7月1日から12月31日までの分は翌年1月20日が納付期限です。期限が土日・祝日等に当たる場合は、原則として休日明けの日が期限となります。
Q. 納期の特例は申請した月の給与から適用されますか?
申請月に支払った給与や役員報酬には遡って適用されず、実務上は申請月の翌月に源泉徴収する税額から対象となります。申請月の支給分は、原則どおり翌月10日までに納付します。
Q. デザイン料や原稿料も納期の特例の対象ですか?
デザイン料や原稿料、講演料などは原則として特例の対象外で、支払月の翌月10日までに納付します。請求書の名目だけでなく実際の業務内容による確認が必要なため、判断が難しい場合は所轄税務署や税理士へ相談してください。
Q. 給与を支払う人数が常時10人以上になった場合はどうすればよいですか?
「源泉所得税の納期の特例の要件に該当しなくなったことの届出書」を、所轄税務署へ遅滞なく提出します。届出書を提出した日の属する納期特例期間から承認の効力が失われ、原則の毎月納付へ切り替わります。
税務・労務等のバックオフィス支援から
経営支援まで全方位でビジネスをサポート
本気で夢を追い求めるあなたの会社設立を全力サポート
- そもそも個人事業と会社の違いがわからない
- 会社を設立するメリットを知りたい
- 役員報酬はどうやって決めるのか
- 株式会社にするか合同会社にするか
会社設立の専門家が対応させていただきます。
税理士法人松本の強み
- 設立後に損しない最適な起業形態をご提案!
- 役員報酬はいくらにすべき?バッチリな税務署対策で安心!
- 面倒なバックオフィスをマルっと支援!
- さらに会社設立してからも一気通貫で支援
この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

