2026.10.19

会社設立

役員退職金規程は設立時に作るべき?損金算入の要件と作り方

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読了目安時間:約 11分

目次

役員退職金規程は設立時に作るべき?法律上の作成義務と整備するメリット

役員退職金規程とは、役員が退任するときに支給する退職金の対象者、算定方法、支給条件などを定める社内規程です。設立時に必ず作成する法令上の明文は確認できませんが、将来支給する予定がある会社では、設立時または事業が安定した早い段階で整えておくとよいでしょう。

退職金を支給する段階になってから規程を作ると、金額を任意に決めたものとみられるおそれがあります。設立直後から将来の退任や事業承継を見据える代表者にとっては、資金計画と意思決定のルールを先に決めておくことが有用です。

役員退職金規程に法定の作成義務はある?

株式会社について、役員退職金規程を設立時に必ず作成しなければならないと定める明文の法令は、今回確認した範囲では見当たりません。設立時に作成が必要な定款とは異なり、退職金に関する規程は会社が任意に定める内部ルールです。

ただし、役員退職金を支給する際には、取締役の報酬等に関する定款の定めまたは株主総会決議など、会社法上の手続が関係します。退職給与のうち、在任期間、退職事情、同業・同規模法人の支給状況などからみて相当と認められる額を超える部分は、法人税の損金に算入されません。国税庁の法人税関係資料も確認しておくとよいでしょう。

規程は損金算入を自動的に認める書類ではなく、支給額の算定根拠や社内の意思決定を説明するための資料の一つです。

合同会社でも、将来、社員または業務執行社員に退職金を支給する考えがある場合は、支給条件や算定方法を文書化し、社員間での意思決定記録を残しておくことが望まれます。役員構成や出資割合が変わった後でも、当初の考え方を確認しやすくなるためです。

設立時または早期に整備するメリット

早期に規程を設けるメリットは、退職金額を決めるための客観的かつ継続的なルールを示しやすくなる点です。退任直前に作成する場合と比べて、特定の役員のためだけに金額を設定したとみられるリスクを抑えやすくなります。

また、役員と株主の間で支給条件の認識を共有しやすく、後継者へ経営を引き継ぐ際にも判断基準を残せます。将来の支給額を見通すことで、長期の資金繰り、保険の活用、事業承継の検討を進める際の材料にもなります。

会社形態 設立時の作成義務 早期整備の考え方
株式会社 明文の義務は未確認 株主との認識共有に有用
合同会社 明文の義務は未確認 社員間の記録整備が有用

設立時に作成を急がなくてもよい場合

当面は役員退職金を支給する予定がない会社や、役員構成・役員報酬の体系が固まっていない会社では、設立時の作成を急がない選択肢もあります。実態に合わない基準を設けると、後に見直しが必要になるためです。

もっとも、支給を具体的に検討し始めた場合は、退任直前ではなく余裕をもって規程、算定根拠、社内決議の進め方を確認してください。本記事では、損金算入の要件、規程に盛り込む事項、支給までの実務手順を順に説明します。個別の支給額や決議方法は会社の状況で変わるため、実行前に税理士や司法書士などの専門家へ相談することをおすすめします。

役員退職金を損金算入するための要件は?規程だけでは足りない理由

役員退職金規程を設けていても、支給額が自動的に損金になるわけではありません。将来の支給に備える代表者は、規程の内容に加え、退任の事実、会社法上の決議、金額の妥当性をそろえておく必要があります。

税務上、相当と認められる支給額であること

損金に算入できるのは、役員に支給した退職給与のうち不相当に高額ではない部分です。在任期間、退任した事情、在任中の職責や会社への貢献、同業・同規模法人の支給状況などを踏まえ、金額が相当かどうかが判断されます。

会社の収益状況や支給額の妥当性も、説明材料になります。規程の計算式に従ったとしても、その結果が会社の実態や役員の職責と比べて高額であれば、超過部分が損金不算入となる可能性があります。国税庁も、相当額を超える部分は損金に算入しない取扱いを示しています。国税庁の資料

役員が実際に退任していること

原則として、役員退職金の支給には役員を退任した事実が必要です。登記上は退任していても、実質的に経営の中心に残り、従来と同様の職務や権限を持つ場合は、退職給与としての取扱いが問題になることがあります。

退任時には、辞任届、株主総会議事録、取締役会議事録、退任登記などを保存し、誰がいつどの地位を退いたのかを明らかにします。支給根拠だけでなく、退任の実態を示す書類を残すことが必要です。

株主総会決議などの会社法上の手続を行うこと

取締役の退職慰労金は、在職中の職務執行の対価として、会社法上の報酬等に該当し得ます。原則として定款または株主総会決議により、支給額、算定基準、取締役会などへ委任する範囲を定めます。

取締役会だけで金額を内定しても、必要な株主総会決議がなければ、税務と会社法の両面で支給根拠を説明しにくくなります。決議方法や議事録の記載は会社の機関設計にも関わるため、支給前に税理士や司法書士へ確認するとよいでしょう。

損金に算入する事業年度を誤らないこと

役員退職金は、原則として株主総会決議などにより金額が具体的に確定した日の属する事業年度で損金に算入します。実際に支払った事業年度に損金経理をした場合には、その支払事業年度での算入が認められる場合があります。

取締役会で支給予定額を内定しただけの場合や、未払金として計上しただけの場合は、その時点で損金にはできません。決議日、金額確定日、支払日、会計処理の時期を議事録と帳簿で一致させる必要があります。国税庁「役員の退職金の損金算入時期」

  • 退任の事実を示す届出書、議事録、登記関係書類を保存する
  • 株主総会で支給額または算定基準・委任範囲を決議する
  • 在任期間、職責、退任事情、同業比較を踏まえて金額根拠を残す
  • 金額確定日と損金経理を行う事業年度を確認する
役員退職金の損金算入に必要な判断要素を示すフローチャート

役員退職金はいくらまで認められる?功績倍率法の考え方と計算例

将来の役員退職金を見据えて規程を整える場合、金額の算定基準には功績倍率法を用いる方法があります。ただし、計算式で求めた金額がそのまま全額損金として認められるわけではなく、役職や会社の実情に照らした相当性の確認が必要です。

功績倍率法は最終報酬・在任年数・職責を基に算定します

功績倍率法とは、退職直前の給与額、役員として業務に従事した期間、職責に応じた倍率を基に役員退職金を算定する考え方です。国税庁の法人税基本通達でも、この3要素による算定方法が示されています。

実務では、役員退職金規程に算定式と役職別の倍率を定め、退任時には在任期間や最終報酬月額を当てはめます。基本式は、次のとおりです。

算定項目 内容
基本式 最終報酬月額×在任年数×功績倍率
最終報酬月額 退職直前に支給した月額給与
在任年数 役員として従事した期間
功績倍率 役職・職責に応じた倍率

もっとも、税務上は算定式だけでなく、在任期間、退任事情、同業・同規模法人の支給状況などを踏まえて判断されます。国税庁は、これらの事情から相当と認められる額を超える部分は損金に算入されないとしています。国税庁の法人税関係資料も確認しておくとよいでしょう。

代表取締役3倍・取締役2倍は法定の基準ではありません

代表取締役は3倍、取締役は2倍といった功績倍率は、法令や国税庁通達で一律に定められた数値ではありません。インターネット上の目安をそのまま規程へ記載し、高額な退職金を支給すると、不相当に高額と判断されるおそれがあります。

倍率は、自社の役職、事業規模、報酬水準および同業他社との比較を踏まえて定める必要があります。設立直後の会社では比較資料が乏しい場合もあるため、規程を作成する段階で税理士に算定根拠を確認しておくと、将来の説明資料を残しやすくなります。

最終報酬月額80万円・在任10年・倍率2.5倍の計算例

最終報酬月額が80万円、役員在任年数が10年、功績倍率が2.5倍である場合、功績倍率法による算定額は2,000万円です。計算過程を規程や退職時の資料に残し、各数値の根拠を説明できる状態にしておくことが求められます。

項目 数値 計算内容
最終報酬月額 80万円 退職直前の月額給与
役員在任年数 10年 役員としての従事期間
功績倍率 2.5倍 役職・職責に応じる倍率
算定額 2,000万円 80万円×10年×2.5倍

2,000万円は功績倍率法で算出した金額であり、全額の損金算入を保証する金額ではありません。

退職金の額は、代表者の経営上の役割や会社への貢献、退任に至った事情、同業・同規模法人の水準も踏まえて検討します。支給時には、規程の内容と実際の職務・報酬・会社規模に矛盾がないかを確認し、個別の金額は税理士へ相談したうえで決定することが安全です。

役員退職金の功績倍率法の計算式

役員退職金規程の作り方|入れておきたい記載項目

役員退職金の規程には、全法人に共通する法令上の一律の必須記載項目は確認できません。ただし、将来の支給額と決定過程を説明できるよう、支給対象・算定方法・決定手続を具体的に定めておくことが大切です。

設立直後に作成する場合は、現時点の役員構成だけでなく、役職変更や退任時の支給も想定します。退職直前の給与額、在任期間、職責に応じた倍率を基礎とする算定方法は、国税庁が示す功績倍率法の構成にも沿います。

規程に定めたい基本項目

規程には、誰に、どのような退任時に、いくら、どの手続で支給するかを記載します。将来の株主総会決議や計算書の根拠となるため、曖昧な表現を避け、会社の実情に合う定義を置く必要があります。

  • 規程の目的
  • 適用対象者(代表取締役、取締役、監査役、執行役員を含めるか)
  • 退職の定義と対象となる退任事由(任期満了、辞任、死亡、解任、分掌変更など)
  • 支給要件(在任年数、自己都合・会社都合など)
  • 算定方法、最終報酬月額の定義、在任年数の数え方
  • 役職別の功績倍率と、複数回の役職変更時の計算方法
  • 特別功労加算の条件と算定方法
  • 懲戒解任、背任行為、重大な法令違反時の減額・不支給事由
  • 支給時期、支給方法、分割支給時の回数・金額
  • 支給額を決める手続、規程の改廃手続、施行日
  • 制定前から就任している役員への経過措置

算定ルールは役職変更まで想定して書く

「退職金を支給する」とだけ定めても、支給額を客観的に計算できません。最終報酬月額に何を含めるか、在任年数をいつからいつまで数えるか、役職別倍率をどう定めるかまで明文化します。

代表取締役から取締役へ変更するなど、在任中に役職が変わる場合の扱いも必要です。各役職の在任期間ごとに計算するのか、退任時の役職を基準にするのかを決め、規程と個別の計算書で同じ基準を用います。

規程、株主総会等の議事録、退職金計算書、実際の振込金額は、相互に一致させる必要があります。

減額・支給方法・経過措置も明確にする

懲戒解任、背任行為、重大な法令違反があった役員への扱いを定めないと、退任時に支給の可否や金額を巡る争いになり得ます。減額または不支給とする事由と、誰が判断するかを規程に置くとよいでしょう。

分割で支給する予定がある場合は、支給開始時期、支給回数、各回の金額または算定方法も記載します。制定前から在任する役員については、規程の施行日以後の期間だけを対象にするか、過去の在任期間も含めるかを経過措置で明らかにします。

退職金は在任期間、退職事情、同業・同規模法人の支給状況などに照らして相当と認められる額を超えると、税務上の取扱いに影響します。自社の規程案と支給設計は、作成時点で税理士や会社法に詳しい専門家へ確認することをおすすめします。

役員退職金規程に記載すべき項目のチェックリスト

分掌変更や再任でも役員退職金は支給できる?実質的な退職と判断されるケース

分掌変更や再任後も、地位または職務内容が大きく変わり、実質的に退職した場合と同様と認められれば、退職給与として支給できる可能性があります。役員としての登記が残るかどうかだけではなく、変更後にどの程度経営へ関与するかが判断材料になります。

国税庁の法人税基本通達では、分掌変更後の実態により退職給与として扱う例が示されています。あらかじめ社内規程に分掌変更時の取扱いを置く場合も、支給時には個別の勤務実態と意思決定手続を確認してください。

実質的な退職と扱われ得る分掌変更

国税庁通達では、常勤役員が非常勤役員になる場合、取締役が監査役になる場合、または変更後の給与がおおむね50%以上減少する場合を例示しています。これらに該当しても自動的に認められるわけではなく、地位や職務の変化が実態を伴うかを個別に見ます。

分掌変更の内容 通達上の例示
常勤から非常勤への変更 退職給与となり得る
取締役から監査役への変更 退職給与となり得る
変更後の給与が50%以上減少 退職給与となり得る

国税庁の法人税基本通達9-2-32は、役員が退職しなかった場合でも、地位または職務内容の激変などにより実質的に退職したと同様の事情があるときは、退職給与として取り扱う旨を示しています。

肩書きだけの変更では認められにくい

代表権を維持している場合や、変更後も経営上の主要な地位を保っている場合は、実質的な退職とは扱われない可能性があります。例えば、非常勤取締役へ変更しても、従前どおり重要な決裁や経営判断を担っていれば、形式的な変更と見られるおそれがあります。

支給の可否は役職名ではなく、変更前後の職務・権限・勤務実態を総合して判断します。設立直後から規程を整える場合は、分掌変更を支給事由に含めるだけでなく、個別の事情を記録して検証できる運用も定めておくとよいでしょう。

分掌変更時に保存したい資料

税務上の説明に備えるため、変更の事実、職務の縮小、報酬の減額および支給額の根拠を資料で残します。決議書類と日常の勤務実態を示す資料が整合していることが大切です。

  • 分掌変更と退職給与の支給を決めた株主総会議事録・取締役会議事録
  • 変更前後の組織図、職務権限規程
  • 役員報酬の改定内容と減額の根拠資料
  • 勤務日数、担当業務、決裁権限が分かる資料
  • 退職金の算定書、支給記録、振込記録

代表権の有無、勤務日数、決裁権限、報酬水準を変更前後で整理し、議事録の記載と実態を一致させてください。分掌変更による支給は判断が分かれやすいため、決議前に税理士へ資料を示して確認することをおすすめします。

規程の作成から支給まで何をする?役員退職金の実務上の進め方

役員退職金は、規程を用意して終わりではなく、将来設計、社内決裁、退任時の個別計算、支給後の税務処理までを一連で進めます。設立直後は、将来の役員構成と資金計画を前提に、無理なく説明できる支給方針を文書化しておくとよいでしょう。

設立時は将来の役員構成と支給方針を整理する

まず、役員ごとの役職、想定する在任期間、事業承継や後継者への引継ぎの予定を整理します。そのうえで、退任時に一括で支払うか、会社の資金繰りを踏まえて分割で支払うかを検討します。

現時点の役員報酬と過去の在任期間も確認してください。最終報酬月額に何を用いるか、再任や役職変更がある役員について在任期間をどこまで通算するかを、規程案を作る前に決めておく必要があります。

算定根拠を定め、必要な社内決裁を行う

規程案では、功績倍率法を採用するか、別の算定方式を採用するかを決め、役職ごとの倍率や減額事由を定めます。功績倍率法は、退職直前の給与額、業務に従事した期間、職責に応じた倍率を用いて算定する方法です。

倍率を役職名だけで一律に決めるのではなく、職責、在任期間、会社への貢献度を踏まえ、自社の実態に沿う根拠を残します。退職給与の相当額は、在任期間、退職事情、同業・同規模法人の支給状況などを踏まえて判断されます。

  • 規程の制定権限を定款や機関設計に照らして確認する
  • 必要に応じて株主総会・取締役会で制定を決議する
  • 制定日、施行日、適用する役員の範囲を明記する
  • 決議内容を議事録として保存する

退任時は個別計算・支給決議・税務処理を連動させる

役員の退任時には、規程に基づき、最終報酬月額、在任年数、功績倍率、特別加算または減額の有無を確認して支給額を計算します。退任の事情や同業・同規模法人との比較も踏まえ、支給額が高額になり過ぎていないかを検証します。

支給額は、株主総会決議などで具体的に確定し、支給総額、支給時期、支給方法、取締役会等へ委任する範囲を議事録に残します。規程に委任条項があっても、株主総会等で委任する内容と範囲を明確にすることが必要です。

役員退職給与は、原則として株主総会決議等により具体的な金額が確定した日の属する事業年度で損金算入します。実際に支払った事業年度に損金経理した場合は、その事業年度での損金算入が認められる取扱いです。

支給後は、振込記録を残し、源泉徴収と退職所得に関する申告手続を行います。規程、制定時・支給時の議事録、計算書、退任に関する書類、振込記録は一式で保存してください。

役員退職金は支給時点の会社状況や退任形態によって判断が分かれます。規程の制定前、支給額の確定前、または分掌変更を伴う退任の前に、税理士や会社法に詳しい専門家へ確認することをおすすめします。

役員退職金規程の作成から支給までの実務フロー

役員退職金規程を作るときによくある質問

退職直前に規程を作っても問題ありませんか?

退職直前に定めたことだけで、規程や退職金の支給が直ちに無効になるわけではありません。ただし、特定の役員への支給だけを目的に後から作成したように見える場合、算定基準の客観性や継続性を説明しにくくなります。

将来の支給を視野に入れるなら、設立後の早い段階で算定方法と対象者を定めておくことが望まれます。規程を後から設ける場合も、在任期間、職責、退任事由などに照らして金額が相当かを確認し、制定日と内容を議事録等で残してください。

規程がなければ役員退職金は支給できませんか?

規程がないことのみを理由に、役員退職金を支給できなくなるわけではありません。ただし、定款または株主総会決議による会社法上の手続と、支給額・支給根拠を示す資料が一層重要になります。

税務上は、在任期間、退職事情、同業・同規模法人の支給状況などに照らし、不相当に高額でないことが求められます。規程がない場合には、株主総会議事録、算定書、退任に関する書類をそろえ、なぜその金額になるのかを説明できる状態にしておく必要があります。

役員退職金は分割で支払えますか?

分割での支給は検討できますが、資金繰りだけで決めず、規程、株主総会決議、会計処理との整合を確認してください。決議では、総額のほか、支給時期や分割方法を明確にしておくことが必要です。

役員退職給与は、原則として株主総会決議等により具体的な金額が確定した日の属する事業年度で損金算入を検討します。実際に支払った事業年度に損金経理した場合の取扱いもあるため、分割支給を予定する際は、国税庁の損金算入時期の取扱いを踏まえて税理士へ確認しましょう。

誰に相談して作成すればよいですか?

税務上の相当額、算定根拠、会計処理は税理士に相談するのが実務的です。会社の利益水準や役員報酬の履歴も踏まえ、支給額が過大と判断されるリスクを確認できます。

  • 税理士:算定額の相当性、損金算入時期、会計・税務処理
  • 司法書士・弁護士:定款、株主総会決議、役員退任手続
  • 税理士等と連携:退職金原資の準備や保険利用の検討

特に代表者のみが役員である会社では、決議内容と算定根拠が形式だけにならないよう注意が必要です。退任時に慌てて判断しないためにも、規程案と資金準備の方針を早めに専門家へ共有するとよいでしょう。

まとめ:役員退職金規程は設立時の作成が必須ではないが、早期整備が安心

役員退職金に関する社内規程は、会社設立時に法律上必ず作成しなければならない書類ではありません。ただし、将来の退任時に退職金を支給する予定があるなら、設立時または事業が安定する早い段階で算定・支給の基準を定めておくほうが、後の手続や説明を進めやすくなります。

規程を事前に整備しておけば、誰に、どのような退任事由で、どのように金額を算定するかを継続的な基準として残せます。退任直前に支給額だけを決めるよりも、会社としての判断過程を説明する資料を用意しやすいでしょう。

もっとも、規程が存在するだけで、支給額の全額が損金になるわけではありません。実際に退任した事実、会社法上必要となる決議、支給額の相当性、議事録や計算根拠などの資料保存をそろえて、支給の根拠を示す必要があります。

税務上は、在任期間、退任事情、職責、同業・同規模法人の支給状況などに照らして、退職金額が相当かどうかが判断されます。相当額を超える部分は損金に算入されません。

功績倍率法を採用する場合も、「社長は3倍」といった一律の目安だけで金額を決めることは避けるべきです。国税庁の考え方では、退任直前の給与、在任期間、職責に応じた倍率を用いるとともに、会社の実態や比較対象となる同業・同規模法人の状況を踏まえることが求められます。

役員退職金は支給額が大きくなりやすく、税務調査でも支給根拠や手続が確認されやすい項目です。設立直後の代表者は、将来の支給方針を確認したうえで、規程案と株主総会・取締役会等の運用方法を早めに検討するとよいでしょう。

  • 将来、誰に退職金を支給する予定かを確認する
  • 退任事由、算定方法、支給時期を規程案に定める
  • 自社の役員報酬、在任見込み、資金状況を確認する
  • 同業・同規模法人との比較資料を準備する
  • 規程制定時と支給時の決議・議事録の作成方法を確認する

規程の内容、功績倍率、分掌変更時の取扱い、支給決議の方法は、会社の機関設計や役員構成によって異なります。制定や支給を決める前に、税務面は税理士、会社法上の手続は司法書士・行政書士などの専門家へ相談し、自社の実態に合う形で整備してください。

よくある質問

Q. 役員退職金規程は株式会社の設立時に必ず作成しなければなりませんか?

株式会社について、設立時に役員退職金規程の作成を必須とする明文の法令は、本文で確認した範囲では見当たりません。もっとも、将来支給する予定がある場合は、算定基準や支給条件を早期に定めておくと、意思決定の根拠を説明しやすくなります。

Q. 合同会社でも役員退職金に関する規程は必要ですか?

合同会社でも、社員または業務執行社員に将来退職金を支給する考えがある場合は、支給条件や算定方法を文書化しておくことが望まれます。社員間の意思決定記録も残しておくと、役員構成や出資割合が変わった後も当初の考え方を確認しやすくなります。

Q. 役員退職金規程があれば、退職金は全額損金にできますか?

規程があるだけで、役員退職金の全額が自動的に損金算入されるわけではありません。在任期間、退任事情、職責、同業・同規模法人の支給状況などからみて不相当に高額ではないことや、退任の事実、必要な会社法上の手続を確認する必要があります。個別の支給額は税理士へ相談するとよいでしょう。

Q. 役員退職金はいつの事業年度に損金算入しますか?

原則として、株主総会決議などにより支給額が具体的に確定した日の属する事業年度で損金算入します。実際に支払った事業年度に損金経理をした場合には、その支払事業年度での算入が認められる場合があります。決議日、金額確定日、支払日、会計処理の時期を議事録と帳簿で一致させることが大切です。

Q. 分掌変更後も役員退職金を支給できる可能性はありますか?

分掌変更後に地位や職務内容が大きく変わり、実質的に退職した場合と同様と認められれば、退職給与として扱われる可能性があります。ただし、代表権を維持していたり、従前どおり経営上の主要な地位や権限を持っていたりする場合は、形式的な変更とみられるおそれがあります。判断が分かれやすいため、決議前に税理士へ確認することをおすすめします。

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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