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新規事業の融資は何を使えば良い?利用できる融資制度と申請時のポイント、注意点も紹介

新規事業を立ち上げようと考えたとき、頭を悩ませるものの1つに「資金調達」があります。事業計画は練れていても必要な資金が十分に確保できず、踏み出せないでいる経営者は少なくありません。
特に銀行からの融資は創業間もない企業には厳しい審査基準が設けられており、思うように進まないことが多いものです。
そこで今回は「新規事業の立ち上げで利用できる融資制度」を紹介します。その他「審査を通過するためのポイント」や「検討の際の注意点」も解説しているので、ぜひ参考にしてください。
新規事業の立ち上げで利用できる融資は4つ
新規事業の立ち上げで利用できる融資は、大きくわけて日本政策金融金庫と地方自治体が融資しているものの2種類があります。まずはどのような融資があるのか、以下にわけてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
- 新規開業資金 | 日本政策金融公庫
- 新事業活動促進資金 | 日本政策金融公庫
- 中小企業経営力強化資金 | 日本政策金融公庫
- 制度融資 | 地方自治体
新規開業資金 | 日本政策金融公庫
日本政策金融公庫の新規開業資金は、これから事業を始める方や事業開始後おおむね7年以内の方が利用できる融資制度です。担保や保証人がなくても申し込みができます。融資限度額は日本政策金融公庫の事業資金の範囲内で、運転資金と設備資金の合計で7,200万円まで借入が可能です。
返済期間にも余裕があります。以下を見てみましょう。
- 運転資金:10年以内(うち据置期間5年以内)
- 設備融資:20年以内(うち据置期間5年以内)
このように比較的長期の返済計画を立てられる返済期間が設定されています。金利も一般の銀行融資と比べて低めに設定されているため、新規事業者に寄り添った制度といえるでしょう。
利用可能な方 |
新たに事業を始める方または事業開始後おおむね7年以内の方 |
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資金の使い道 |
新たに事業を始めるため 事業開始後に必要とする設備資金および運転資金 |
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融資限度額 |
7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
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返済期間 |
設備資金 |
20年以内 (うち据置期間5年以内) |
運転資金 |
10年以内 (うち据置期間5年以内) |
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利率 |
基準利率は1.10~3.80%
ただし、要件に該当するかどうかで変動する |
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担保・保証人 |
要相談 |
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併用できる特例制度 |
経営者保証免除特例制度 創業支援貸付利率特例制度 設備資金貸付利率特例制度(東日本版) 貸上げ貸付利率特例制度 |
新事業活動促進資金 | 日本政策金融公庫
新事業活動促進資金は、新しい事業分野に進出する際や事業の多角化を図る際に利用できる融資制度です。既存の事業者が新規事業に挑戦する際に適した融資となっています。融資限度額や返済期間などについては、新規開業資金と同じです。
対象となるのは新商品の開発や新しいサービスの提供、新しい生産・販売方式の導入などを行う中小企業者。融資額は7,200万円以内で運転資金は7年以内、設備資金は20年以内の返済期間となっています。経営革新計画の承認を受けている場合は、さらに有利な条件で融資を受けられる可能性があります。
利用可能な方 |
1.新経営革新計画の承諾を受けた方 2.基礎確立事業実施計画の認定を受けた方 3.経営力向上計画の認定を受けた方 4.中小企業等経営強化法に基づく中小企業等の経営強化に関する基本方針に定める新たな取り組みを行い、2年間で4%以上の付加価値額の伸び率が見込まれる方 5.技術・ノウハウ等に新規性がみられる方 6.上記1~5に該当しない方で、新たに第二創業(経営多角化、事業転換、新市場進出)を図る方または第二創業後おおむね5年以内の方 |
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資金の使い道 |
上記に該当するが、当該事業を行うために必要とする設備資金と運転資金 |
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融資限度額 |
7,200万円(うち運転資金4,800万円) |
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返済期間 |
設備資金 |
20年以内 (うち据置期間2年以内) |
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運転資金 |
7年以内 (うち据置期間2年以内) |
利率 |
基準利率は1.10~3.80% ただし、要件に該当するかどうかで変動する |
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担保・保証人 |
要相談 |
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併用できる特例制度 |
経営者保証免除特例制度 創業支援貸付利率特例制度 設備資金貸付利率特例制度(東日本版) 貸上げ貸付利率特例制度 |
中小企業経営力強化資金 | 日本政策金融公庫
中小企業経営力強化資金は、認定経営革新等支援機関で指導や助言を受けて事業計画を策定し、経営力の強化を図っている中小企業者向けの融資制度です。既に事業をしている事業者でも融資を受けられます。
新規事業の展開にも活用でき、融資限度額は7,200万円以内です。返済期間と金利は新規事業活動促進資金と同じですが、2,000万円以内なら無担保・無保証人で融資を受けられる点が異なります。
経営革新等支援機関のサポートを受けながら事業計画を練られるため、事業計画の実現可能性が高まり、融資後の事業展開もスムーズに進みやすいでしょう。
一方で、事業計画の策定や経過報告が必要になり、事業計画の進捗状況を以下のスパンで報告する義務を負います。
- 経営革新等支援機関:半年に1度
- 日本政策金融公庫:年に1度
融資を受けるには一定の工数が生じ続ける点には注意しましょう。
利用可能な方 |
1.以下のいずれかに当てはまる方 ・経営革新または異分野の中小企業と連携した新事業分野の開拓等により市場の創出・開拓(新規開業を行う場合を含む。)を行おうとする方 ・事業計画書を策定し、中小企業等経営強化法に定める認定経営革新等支援機関による指導および助言を受けている方 2.次の全てに当てはまる方 ・「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」を完全に適用している方または適用する予定である方 ・事業計画書を策定する方 3.独立行政法人中小企業基盤整備機構によるハンズオン支援を受けている方 4.取引金融機関の支援を受けて経営者保証免除計画を策定し、経営改革に取り組む方 |
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資金の使い道 |
1の方が、事業計画の実施のために必要とする設備資金および長期運転資金 1の方が、経営課題の解決に取り組むために必要とする設備資金および長期運転資金 2の方が経営改革に取り組むために必要とする設備資金および長期運転資金 なお、長期運転資金には、建物等の更新に伴い一時的に施設等を賃借するために必要な資金も含まれる |
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融資限度額 |
直接貸付 7億2,000万円 |
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返済期間 |
設備資金 |
20年以内 (うち据置期間2年以内) |
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運転資金 |
7年以内 (うち据置期間2年以内) |
利率 |
基準利率は0.85~2.45% ただし、要件に該当するかどうかで変動する |
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担保・保証人 |
要相談
直接貸付で一定の要件に該当する場合は、経営責任者の個人保証が必要 |
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制度融資 | 地方自治体
地方自治体が実施する制度融資は、信用保証協会や金融機関と連携して提供している制度です。日本政策金融公庫が実施している融資と同じように、起業時や新規事業の立ち上げ時に利用できます。
都道府県や市区町村ごとに条件が異なりますが、一般的に以下のようなメリットがあります。
- 信用保証協会が信用を供与するため審査に通りやすい
- 利率が低い
- 利息の補助を受けられる可能性がある
制度融資では信用保証協会から保証を受ける場合が多く、審査が通りやすいでしょう。利率も低いため、融資の選択肢として一考の価値ありです。
ただし、融資制度は自治体によって異なります。手続きや審査も時間がかかる傾向にあり、余裕を持った申請が必要です。
新創業融資制度は2024年3月31日に取り扱いが終了
新規事業の立ち上げ時に利用する融資として「新創業融資制度」がありましたが、2024年3月31日をもって廃止されています。それに伴い、「新規開業資金」の内容がリニューアルされました。内容が似ていた融資を一本化したイメージです。
2025年2月現在、新創業融資制度を前提に考えている場合は、新規開業資金への申込を検討すると良いでしょう。
新規事業の融資を受けやすいのは新規開業資金
新規事業の融資を受けやすいのは、日本政策金融公庫の新規開業資金です。3種類あるので、それぞれどのようなものか詳しく見ていきましょう。
- 新規開業資金(女性、若者 / シニア起業家支援関連)
- 新規開業資金(再挑戦支援関連)
- 新規開業資金(中小企業経営力強化関連)
新規開業資金(女性、若者 / シニア起業家支援関連)
女性、若者(35歳未満)、シニア(55歳以上)の方が新規事業を立ち上げる際には、新規開業資金の特別枠を利用できます。通常の融資よりも金利が優遇されており、事業立ち上げ時の負担を軽減できるでしょう。
例えば税務申告を2期終えてない方の場合、以下のように優遇されます。
基準利率2.6~3.8% → 2.2%~3.4%
これらに加えて別の要件を満たせば、さらに低い利率で融資を受けられます。年齢制限はあるものの、該当している方は積極的に活用すると良いでしょう。
新規開業資金(再挑戦支援関連)
事業経験者が新たな事業に挑戦する際に利用できるのが、再挑戦支援関連の新規開業資金です。返済期間が通常の新規開業資金よりも長い15年以内に設定されています。
以下のどれかに該当していれば融資の対象になるので、検討している方は自分の状況と照らし合わせてみましょう。
- 事業主に廃業歴がある(個人事業主・法人問わず)
- 廃業時の負債が事業に影響を与えない程度に整理される見込みがある
- 廃業の理由や事情がやむを得ないものである
過去の事業が上手くいかなかった経験があっても、その経験を活かした具体的な事業計画があれば、融資を受けられる可能性があります。事業に再チャレンジしたい場合は、ぜひ利用したい融資です。
新規開業資金(中小企業経営力強化関連)
中小企業経営力強化関連の新規開業資金は、中小会計を適用する方の創業を支援する融資です。認定経営革新等支援機関のサポートを受けながら、より強固な事業計画を策定できる点が魅力となっています。以下の方が適用の対象です。
- 事業開始から7年以内
- 自ら事業計画書を作成している
- 事業の遂行能力がある
専門家の指導を受けられるため事業計画の実現可能性が高まり、融資後の事業展開もスムーズになりやすい傾向にあります。自社の経営状況を的確に把握できるメリットもあるため、利用できそうな場合は検討してみるのも良いでしょう。
新規事業の融資で審査を通過するための3つのポイント
融資を受ける際に最も気になるのが、審査を通過できるかどうかです。通過するためには、以下のポイントを意識しましょう。
- 自己資金を多めに用意する
- 代表者の信用情報を良好に保つ
- 実現可能で具体的な事業計画を策定する
自己資金を多めに用意する
融資審査において、自己資金の額は重要な判断材料となります。日本政策金融公庫の「2024年新規開業実態調査」によると、必要資金の24.5%が自己資金となっています。
自己資金が多いと良いのは、車や住宅ローンを借りるのと同じです。事業に対する経営者の本気度を示すだけでなく、事業が軌道に乗るまでの運転資金としても重要な役割を果たします。
また貸す側から考えても、自己資金が多いと融資の回収をしやすいというメリットがあります。リスク回避の面から見て、自己資金は1つの指標なのです。
そのため無理のない範囲で自己資金を用意し、審査が通りやすい状態を作るようにした方が良いでしょう。
代表者の信用情報を良好に保つ
代表者個人の信用情報は、融資審査の重要な判断材料となります。以下の情報を元に事業主の信用能力が判断されます。
- クレジットカードの支払い
- 各種ローン
- 金融サービスの利用履歴
- 携帯電話料金
- 税金の支払い
もしクレジットカードやローンの支払いを延滞している場合、個人の信用情報に傷が付いているので審査の際に不利です。併せて過去に問題を起こしていると、そちらの面でもマイナスに判断されてしまう可能性があります。
事業の借入であっても個人の信用情報を必ずチェックされるので、創業前から計画的に借入の整理を行い、良好な信用情報を維持しておきましょう。
実現可能で具体的な事業計画を策定する
融資審査で重要なのが、事業計画の実現可能性です。市場分析や競合調査、マーケティング戦略、収支計画など具体的な数字に基づいた計画が求められます。場合によっては、担当者と面談することもあるでしょう。
公庫が回避したいのは、融資した資金を回収できないリスクです。そのため、融資した先の事業計画書が杜撰だと、それだけ警戒を抱かれてしまいます。
返済に関しては問題無いと理解させられるように、市場動向や収支予測などを具体的に記載した事業計画を策定するようにしましょう。
融資を検討する際に注意したい3つのポイント
融資を検討する際は、注意したいポイントがあります。特に以下の3点は重要です。
- 計画的に無理なく返済できる計画を立てる
- 融資以外の資金調達方法も考える
- 税理士など専門家のサポートを受ける
計画的に無理なく返済できる計画を立てる
融資は必ず返済しなければいけません。返済できなければ、訴訟や差し押さえといった事態に発展する可能性があります。そのため、事業が軌道に乗る前の返済負担を考慮した計画が重要です。
一般的に、新規事業が安定するまでには2~3年かかるとされています。この期間の資金繰りを綿密に計画し、無理のない返済スケジュールを立てましょう。
月々の返済額は、予想される売上高や運転資金の必要額を考慮して設定する必要があります。予期せぬ事態に備えて、余裕を持った返済計画を立てると良いでしょう。
難しい場合は、Web上で返済のシミュレーションをしてみる方法もあります。より具体的にイメージできるので、返済計画を立てやすくなります。
融資以外の資金調達方法も考える
融資だけでなく、補助金や助成金、クラウドファンディングなど他の資金調達方法も検討しましょう。特に創業時は、国や地方自治体が提供する補助金制度を活用できる可能性があるため、調べておくことをオススメします。
例えば補助金や助成金の場合、原則として返済義務がありません。資金繰りにも余裕が出るため、融資を受ける際の負担軽減に繋がります。
一方で補助金や助成金を受けるには、要件をクリアできているかが重要です。場合によっては難しいケースもあるため、クラウドファンディングも含めて融資以外の資金調達方法も検討するようにしましょう。
税理士など専門家のサポートを受ける
新規事業の融資申請は専門的な知識が必要な場合が多いため、税理士や中小企業診断士などの専門家のサポートを受ける方法もオススメです。特に事業計画の策定や資金繰り表の作成では、専門家の知見が大きな助けになるでしょう。ミスも減るため、申請時の負担も軽減できます。
また、認定経営革新等支援機関による指導を受けることで、より実現性の高い事業計画を策定できるメリットもあります。専門家への相談は有料の場合が多いのですが、融資の成功率を高める重要な投資と考えて依頼してみるのも良いでしょう。
新規事業での融資は自社の状況に合ったものを選ぼう
新事業での融資は、自社の状況に合った融資を選べるかが重要です。融資制度にはそれぞれ特徴があるため、要件を確認しながら慎重に検討しましょう。
また、融資の審査に合格するには、自己資金や信用情報なども必要になります。綿密な事業計画を求められる場合も多いため、専門家からサポートを受けながら自社に最適な融資方法を選んでいってください。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は 国税OB・元税務署長 が所属し、 確定申告・相続・会社設立・融資サポート・労務手続きなど 幅広いサービスを提供する税理士法人です。
全国からの 税務・労務相談実績 年間1,000件以上
税理士法人松本の強み
- 税務署目線、税理士目線、お客様目線の三方良しの考え方でアドバイス
- 過去の無申告分から税務調査、相続、会社設立まで幅広く対応可能
- 融資や助成金、補助金の申請など資金調達サポートにも豊富な実績
- 顧問税理士が対応に困った案件も途中からサポートできます
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