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赤字決算でも融資は可能?融資可能な赤字の特徴&資金調達のポイント

赤字決算とは、収益が費用を下回り、利益がマイナスになってしまう状態です。
会計処理として良い状態とは言えませんが、赤字決算にはデメリットだけでなくメリットもあります。
赤字は業績が落ち込んでしまっている状態であり、融資を受けるのは難しいと思われがちです。
しかし企業の状態によっては、赤字決算であっても融資可能な場合がありますので「赤字」というだけで諦めてしまうのは早いかもしれません。
赤字決算のメリットとデメリットを理解し、赤字の内容について考えてみましょう。
赤字決算のメリット
赤字決算をすると以下のようなメリットがあります。
- 法人税(所得税)の節税
- 繰越欠損金で将来的な節税
- 法人税の還付がある
法人税(所得税)の節税
法人であれば法人税を、個人事業主であれば所得税を納めます。
決算日までの1年間の収支により課税所得額を計算し、納税額が決まります。
法人税も所得税も赤字であれば支払いがありません。
赤字決算だと課税所得がないためです。
そのため法人税節税のため、戦略として赤字決算という方法を選ぶ企業があります。
繰越欠損金で将来的な節税
繰越欠損金とは、赤字を出した分の損失を将来の年度に繰越しできる制度です。
繰越期間は法人であれば最大10年、個人事業主は3年です。
先述した通り、赤字決算をした年度は税金が発生しません。
その損失を翌年以降の黒字が出た年度に繰り越していければ、黒字が出た年度の節税になります。
法人税の還付がある
赤字決算をすると、法人税の還付金が受け取れるというメリットがあります。
還付金とは税金を多く納めていた時に返還されるお金です。
予定納税で法人税を前払いをして、過払い税金が発生していた時に還付金が受け取れます。
前年黒字決算をしている法人が対象で、以下の要件を満たしている場合に対象となります。
- 青色申告をしている
- 資本金が1億円以下
赤字決算のデメリット
赤字決算をするには、メリットだけでなく以下のようなデメリットもあります。
- 融資が受けにくくなる
- 債務超過による倒産のリスク
融資が受けにくくなる
企業が融資を受けたいと考えた時、赤字決算では不利な状況となります。
返済能力のない企業だと判断されてしまうためです。
ただ、赤字決算であるだけで100%融資が受けられないというわけではありません。
金融機関は赤字の内容もみていますので、「なぜ赤字決算になっているのか」を考えていかなければいけません。
債務超過による倒産のリスク
債務超過とは、企業が保有する財産よりも負債の方が多い状態です。
利益が出せなくなると、運転資金も追加融資で賄おうと借入を重ねていく場合があります。
抜本的な経営課題の解決を行わないと負債が膨らむばかりで、返済能力が低下し、倒産のリスクが高くなります。
融資が難しい赤字とは
赤字決算だと融資が受けにくくなりますが、重要なのは赤字の中身です。
融資が難しいと判断されてしまう赤字は、以下のようなものとなります。
- 連続した赤字
- 利益の私的流用が疑わしい赤字
- 長期的な繰越損失や債務超過
- 営業利益が低い
- 融資を運転資金にしようとしている
連続した赤字
2期以上連続して赤字決算となっている企業は、融資が難しいです。
金融機関からの信頼が低下するだけでなく、株主や取引先からの信頼も低下してしまうかもしれません。
すでに融資を受けている場合は、「融資を中止される」「一括返済を求められる」という可能性があります。
利益の私的流用が疑わしい赤字
法人の利益や資産が、役員や関係者のプライベートな
利益のために費消されてはいないでしょうか。
私的流用が原因で、法人として赤字決算をしているという企業は少なくありません。
法律上、法人と私人は別個の法人格を有しているものとなります。
企業の社長という立場であっても、法人の利益を勝手に使用できるものではありません。
長期的な繰越損失や債務超過
節税のため、もしくは単発的な繰越欠損金の活用であれば問題ありません。
しかし赤字が長期間となり債務超過が発生していると、融資を受けるのは難しくなります。
経営改善や資産売却などの対策を早めに行う必要があります。
営業利益が低い
企業に融資をする金融機関は、営業利益を重視して融資をすべきか判断します。
営業利益とは、本業で稼いだ利益を表し、経常利益とは異なるものです。
営業利益が低い、もしくは長期的に営業利益が低迷しているという場合は、融資が難しくなるかもしれません。
融資を運転資金にしようとしている
赤字の企業は抜本的な経営改善が求められます。
融資を受ける目的が、運転資金の調達であれば、その企業はすでに手遅れであると判断されてしまう可能性があります。
運転資金が足りなくなるような状態では、資金管理ができていない状態かもしれません。
業種により運転資金の割合は異なりますが、正しく資金管理をしていきましょう。
融資を受けられる赤字とは
赤字決算だと融資が受けられないと思われがちですが、中には融資を受けられるものがあります。
「なぜ赤字になったのか」という赤字の内容が重要です。
- 創業による赤字
- 黒字の見込みがある赤字
- 減価償却による赤字
創業による赤字
創業したばかりの頃は、事業が軌道に乗っていないので赤字になる傾向があります。
珍しい状態ではありませんので、徐々に黒字を出せるようになっていけば問題ありません。
創業時には、初期費用として設備投資や運転資金が必要になるものです。
融資を受けたいのであれば、適切な事業計画書を提出できるよう準備していきましょう。
将来的に利益が見込めるようであれば、融資を受けられる可能性があります。
黒字の見込みがある赤字
「赤字が少額である」「経常利益が赤字でも営業利益が黒字である」という状態であれば、将来的に黒字が見込めると判断できます。
赤字が一時的なものであるとわかれば、金融機関は融資を前向きに検討してくれるでしょう。
ただし今後黒字になるという見込みを、きちんと示さなくてはいけません。
契約書や発注書など根拠のある書類を準備して、納得してもらえるようにしましょう。
減価償却による赤字
減価償却とは、固定資産を購入した時に、複数年にわたって経費を計上して、資産価値を減少させていく会計処理の方法です。
会計上は利益が低くなりますので赤字決算となりますが、実質的に営業利益が低いわけではありません。
正確な損益を把握できている状態であり、金融機関からの印象は悪くなりません。
減価償却が理由で赤字決算となっているのであれば、融資を受けられる可能性があります。
赤字から黒字に転換させる方法
赤字決算に悩む企業は、以下のような方法で黒字に転換できないか考えてみましょう。
- コストの見直し
- 過剰在庫の処分
- キャッシュフローの見直し
- 苦手な業務を外部委託する
コストの見直し
赤字経営を黒字に転換させたいと考えると、売り上げを増加させる方法ばかりを考えてしまいがちです。
しかし不要なコストを削るという行為も、売り上げを増加させるのと同様に黒字転換のポイントとなります。
- 人件費や採用コスト
- 光熱費や通信費などの固定費
- 消耗品のコスト
- 広告宣伝費は適切か
ただしコストを見直したいからといって、過度に経費削減を行うと業務に支障がでてしまうかもしれません。
商品の品質や従業員のモチベーションを下げずに、削減できるコストがないか見直してみましょう。
過剰在庫の処分
赤字経営で過剰在庫を抱えている場合は、早めに処分していきましょう。
継続的に在庫を抱える管理コストがかかりますので、セールをするなどして在庫処分します。
棚卸資産を減らすと売り上げ原価が上がるので、所得税や法人税の節税となります。
セールだけでなく、処分という方法も視野に入れていくべきです。
キャッシュフローの見直し
キャッシュフローとは、入るお金と出ていくお金の資金の流れを意味します。
会社経営における資金の流れは、人間の体を流れる血液のようなもので、流れを止められません。
資金繰り表は、できれば半年先まで記載して資金の流れを見えるようにしておきます。
資金状態を常に把握できるようにしておき、異変があれば迅速に対応できるようにしておきます。
苦手な業務を外部委託する
外部委託をすると費用がかかりますので、赤字経営の企業ではコストを削減したい項目かもしれません。
しかし苦手な業務まで抱え込んで、本当に必要な業務に手が回らなくなっている状態では本末転倒です。
赤字で経営が行き詰っている時こそ、注力すべき業務を見極めるべきです。
赤字決算でも可能な日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫の制度で、赤字でも融資が受けられる可能性があるものをご紹介します。
経営環境変化対応資金と金融環境変化対応資金は、「セーフティネット貸付」とも呼ばれるもので以下のような条件の融資となります。
- 経営環境変化対応資金
- 金融環境変化対応資金
経営環境変化対応資金
(セーフティネット貸付)
日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金は、一時的な状況の悪化に悩む事業者を支援する制度です。
外部要因により一時的に事業が悪化した企業や、自然災害が原因で業績が悪化した企業に融資が可能です。
中長期的に業績の回復が見込まれる事業者が対象で、以下のような条件となります。
融資限度額 |
直接貸付 7億2千万円 |
利率(年) |
基準利率 (1.60%~3.80) |
設備投資返済期間 |
15年以内 (うち据置期間3年以内) |
運転資金返済期間 |
8年以内 (うち据置期間3年以内) |
担保・保証人 |
要相談 |
参照:日本政策金融公庫|経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)
金融環境変化対応資金
(セーフティネット貸付)
金融環境変化対応資金とは、取引している金融機関側の状況変化によって、資金繰りが厳しい状況にある企業のためのセーフティネット貸付です。
取引金融機関が「行政庁から業務停止命令を受けた」「実質的に破綻している」という条件があります。
中長期的に経営が改善されていく見込みのある企業が融資の対象です。
融資限度額 |
直接貸付 3億円 |
利率(年) |
基準利率 (1.60%~3.80) |
設備資金返済期間 |
15年以内 (うち据置期間3年以内) |
運転資金返済期間 |
8年以内 (うち据置期間3年以内) |
担保・保証人 |
要相談 |
参照:日本政策金融公庫|金融環境変化対応資金(セーフティネット貸付)
赤字融資に関するよくある質問
赤字融資に関するよくある質問をまとめました。
- なぜ赤字でも潰れない企業があるのですか?
- 黒字でも倒産する企業があるのはなぜですか?
- 赤字の個人事業主でも融資を受けられますか?
なぜ赤字でも潰れない企業があるのですか?
赤字でも潰れない会社は、以下のような理由があると考えられます。
- 現金などの預貯金がある
- 融資を受けている
- グループ会社の支援がある
- 一時的な赤字である
会社が倒産するかは、決算の内容よりも手元の現金の
有無が関係していると考えていいでしょう。
黒字でも倒産する企業があるのはなぜですか?
企業としては利益を上げていて黒字決算となるにも関わらず、支払いに必要な資金が不足して倒産する企業があります。
- 売上はあるのに顧客からの入金が遅い
- 在庫が大量で手元の資金が不足した
というように、必要な支払いができなくなるのが原因です。
仕入れや人件費の支払いが困難となり、倒産に追い込まれてしまいます。
赤字の個人事業主でも融資を受けられますか?
個人事業主でも受けられる融資はあります。
ご紹介した日本政策金融公庫の経営環境変化対応資金は、個人事業主も対象です。
融資のご相談は税理士法人松本へ
資金繰りにお困りの際は専門家に相談するのがおすすめです。
税理士は経営改善に関するご相談や、融資に関するご相談が可能です。
赤字で融資を希望する際は、将来的に黒字の見込みがあるという根拠を示さなくてはいけません。
どんな書類を準備するべきか、どうアプローチしていくべきかを、税理士がサポートいたします。
税理士法人松本は、融資・補助金・助成金などの資金調達サポートにおいて、多くの実績があります。
融資成功率は95%以上となっております。
税理士法人松本へ、是非お気軽にご相談ください。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は 国税OB・元税務署長 が所属し、 確定申告・相続・会社設立・融資サポート・労務手続きなど 幅広いサービスを提供する税理士法人です。
全国からの 税務・労務相談実績 年間1,000件以上
税理士法人松本の強み
- 税務署目線、税理士目線、お客様目線の三方良しの考え方でアドバイス
- 過去の無申告分から税務調査、相続、会社設立まで幅広く対応可能
- 融資や助成金、補助金の申請など資金調達サポートにも豊富な実績
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