2026.10.25
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社長が急死したら事業承継はどうする?株式相続と経営空白への対応

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社長が急死した場合の事業承継では、支払いと業務を止めないための確認を優先し、代表者の選任と株式の議決権行使の準備を並行して進めます。会社が直ちに消滅するわけではありませんが、代表者不在や支払い権限の問題で業務が滞るおそれがあります。

株式を相続することと、代表取締役になることは別の手続です。この記事では、死亡直後の連絡・支払い確認から、後任代表者や相続株式の手続まで、判断に必要な事項を整理します。日本の中小株式会社を対象としており、個人事業や合同会社では手続が異なります。

目次

社長が急死したら、まず何をすればいい?

当日〜翌営業日は、連絡体制と支払い予定を確認する

役員や経理担当者は、まず社内の連絡責任者と業務取りまとめ役を決め、従業員に当面の指示系統と業務継続方針を伝えます。ただし、「社長代行」という社内呼称だけでは法的な代表権を得られません。契約や支払いを進める前に、既存の代表権・代理権の範囲を確認してください。

経理担当者は、給与・仕入代金・家賃・税金・借入返済について、期限・金額・口座残高・承認者を一覧にします。振込予約や口座振替も確認し、誰が支払いを実行できるかを銀行とすり合わせましょう。死亡した社長の認証情報をそのまま使う前提にはしないでください。

銀行・主要取引先には登記完了を待たずに連絡する

連絡責任者は、登記完了を待たずに取引銀行へ死亡の事実、当面の担当者、直近の支払期限、新代表選任の見通しを伝えます。口座の利用可否や代表者変更に必要な書類も確認してください。死亡直後の会社運営については、中小企業基盤整備機構のJ-Net21も参考になります。

主要取引先には、会社として業務を継続する方針と、発注・納品・契約更新の窓口を知らせます。社長個人名義の契約や、代表者変更の通知を求める条項は別途確認し、契約上の判断に迷う場合は弁護士などの専門家に相談してください。

着手の目安 確認すること 担当者 完了の目安
当日 連絡責任者・指示系統 役員・業務取りまとめ役 当日〜翌営業日
当日〜翌営業日 支払期限・金額・残高・承認者 経理担当者 直近の支払実行前
当日〜翌営業日 銀行への連絡・支払実行方法 連絡責任者・経理担当者 直近の支払実行前
当日から数日以内 取引先への連絡・契約条項 連絡責任者・取引担当者 発注・納品・更新前

表の「当日」「数日以内」は法定期限ではなく、実務上の優先順位の目安です。直近の支払いと取引の予定に合わせて着手し、代表者選任や相続株式の確認も並行して進めます。

次の代表取締役はどう決める?会社の状況ごとの選任方法

社長が突然亡くなった後の事業承継では、会社の機関構成と後継者の役員資格に応じて、次の代表取締役を決めます。まず登記事項証明書・定款で、代表者、取締役、取締役会の有無を確認してください。

別の代表取締役がいる場合と、代表者が不在になる場合

別の代表取締役が存命なら、その代表権のもとで業務を継続できるか確認します。死亡した社長が唯一の代表者だった場合は、新たな代表者の選任手続を急ぐ必要があります。

  • 別の代表取締役がいる:登記事項証明書・定款を確認し、その代表者が契約締結などを担えるか確認します。
  • 代表者が不在になる:残る取締役と後継者候補を確認し、取締役会など必要な選任手続を進めます。

社内で「社長代行」を決めても、法的な代表権は取得しません。業務の取りまとめ役と、会社を代表して契約する人を区別してください。

取締役会の有無と、後継者が取締役かどうかで手続が変わる

取締役会設置会社は、原則として取締役会で取締役の中から代表取締役を選定します。非設置会社は、会社法と定款に従い、自社に適用される方法を確認します。

  • 取締役会設置会社:後継者が取締役なら、取締役会で代表取締役への選定を進めます。
  • 取締役会非設置会社:定款による定め、定款に基づく取締役の互選、株主総会決議などを確認します。
  • 後継者が取締役ではない:原則として先に株主総会で取締役に選任し、その後、必要な代表取締役の選定を行います。

親族・株式の相続人・専務という立場だけでは、自動的に代表者になりません。肩書ではなく、取締役として選任されているかを確認してください。

唯一の取締役が死亡した場合は、通常の手続が可能か確認する

唯一の取締役が死亡した場合は、株主総会による後任選任など、通常の手続が可能か弁護士に確認してください。取締役会の定足数を満たさない場合も、早急な相談が必要です。

裁判所の招集許可や、一時取締役・一時代表取締役の選任申立てなどを検討します。ただし、一時役員の選任には欠員と選任の必要性が求められ、自動的に認められるわけではありません。

別の代表者の有無、取締役会の有無、後継者が取締役かどうかによる代表取締役選任の分岐図

社長の株式は誰が相続する?議決権を使うための手続

社長が突然亡くなった場合、個人で保有していた株式は相続財産となり、相続人や遺言の内容を確認して承継先を判断します。事業承継を進めるには、株式の取得者を決める手続と並行して、会社の意思決定に必要な議決権を行使できる状態にする必要があります。

株式の相続と経営者の交代は別に進める

株式を相続しても、代表取締役の地位がそのまま引き継がれるわけではありません。後継者は、株式の相続とは別に、会社の機関構成や定款に沿った役員選任の手続を進めます。

まず、後継者や手続の担当者は、株主名簿などで次の事項を確認してください。亡くなった社長の株式が、後任取締役を選ぶ株主総会の成立・可決にどれだけ影響するかを把握します。

  • 社長が保有していた株式数と議決権割合
  • 他の株主の有無と、それぞれの議決権割合
  • 相続人と、株式の承継に関する遺言の有無・内容

社長が全株式を保有していた場合、株主総会で後任を選ぶには、相続株式の議決権を行使できる状態にすることが欠かせません。他にも株主がいる場合は、既存株主の議決権で決議要件を満たせるか、相続株式の議決権も必要かを確認します。

遺産分割前の株式は、議決権を行使できる状態にする

共同相続となった株式は、原則として権利行使者を1人指定し、会社へ氏名等を通知してから議決権を行使します。各相続人が法定相続分に応じた株数を、それぞれ自由に投票できるわけではありません。

遺産分割前の株式は通常、共同相続人が共同で権利を持つ「準共有」の状態になります。会社法106条に基づく権利行使者の指定は、株式の最終的な取得者を決める遺産分割とは別の手続です。

指定方法や会社の同意による例外の扱いは、持分割合や遺言の内容などによる個別判断が必要です。最高裁判決では、共有のルールに反する議決権行使は会社が同意しても適法にならないとされており、相続人が対立している場合は特に注意してください。

遺産分割の完了を待つだけでなく、代表者選任に必要な議決権をどう確保するかを確認しましょう。権利行使者の指定や通知の進め方は、会社法・相続に詳しい弁護士へ相談してください。

株主名簿・定款も確認する

相続人や手続の担当者は、会社に株主名簿の記載・更新に必要な書類を確認し、定款も確認してください。株式に譲渡制限があっても、相続による取得を通常の譲渡と同一視しないことが必要です。

定款では、相続人に対して会社が株式の売渡しを請求できる旨の定めがないかも確認します。定めがある場合の扱いは、会社法の規定と定款を弁護士に確認してもらい、承継の方針を判断してください。

株式を承継する手続と代表者になる手続の違いを並べて示した図

会社の銀行口座・借入金・社長の個人保証はどうなる?

社長が突然亡くなった場合も、会社の財産・債務と社長個人の財産・債務は分けて確認します。後継者は登記完了を待たずに取引金融機関へ連絡し、口座の利用可否と融資契約上の手続を確認してください。

法人口座と社長個人の口座を分けて考える

法人口座の預金は社長個人の相続財産ではなく、社長の死亡だけで一律に凍結されるとは限りません。実際に利用できるかは、銀行への届出内容、取引権限、銀行の取扱いによって確認が必要です。

給与や仕入代金などの支払期限を銀行に伝え、誰が振込を実行できるかを確認しましょう。死亡した社長のID・認証情報を、そのまま使う前提にはしないでください。

  • ネットバンキングの承認者と権限変更の手続
  • 法人カードの利用可否と利用者変更の手続
  • 口座振替・振込予約の実行予定
  • 代表者変更に必要な書類と提出時期
区分 会社の財産・債務 社長個人の財産・債務
預金 法人口座の預金 個人名義の預金
借入 会社名義の借入金 社長個人名義の借入金
保証 会社の借入とは区別して確認 社長が負う個人保証債務
相続との関係 社長個人の相続財産ではない 相続の対象・範囲を確認

会社の借入と、社長個人の保証債務は別の問題

会社名義の借入は原則として会社の債務であり、相続人が当然にすべてを負うわけではありません。一方、社長の個人保証は契約内容や保証の種類によって、相続への影響が異なります。

融資契約書・保証契約書を確認し、金融機関に死亡・代表者変更の届出事項、保証・担保の取扱いを問い合わせてください。新代表者の保証を求められるかも確認し、保証が自動的に引き継がれるとは考えないようにしましょう。

相続放棄を検討する場合は、申述期限と相続財産の扱いに注意が必要です。個人の預金などを処分する前に、保証契約の内容も含めて早めに弁護士へ相談してください。

死亡後の登記・相続手続にはどんな期限がある?

社長が突然亡くなった場合は、会社の変更登記と相続の期限を並行して管理します。後継者は、手続ごとに期限の起点となる日を記録し、申請・申告の準備を進めてください。

役員変更登記は、変更原因ごとに期限を確認する

代表取締役・取締役の死亡による退任と、後任者の就任・代表者変更には変更登記が必要です。本店所在地での登記期限は、原則として変更が生じた日から2週間以内です。

死亡日と後任者の就任日が異なる場合は、それぞれの変更日から期限を確認します。必要な議事録・就任承諾書などは会社の機関構成によって異なるため、司法書士に確認してください。

相続放棄と相続税の期限も並行して管理する

相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内です。相続税の申告・納税は、申告が必要な場合、原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内となります。

非上場株式の評価と事業承継税制の適用可否は、早めに税理士へ相談してください。事業承継税制は自動的に免税される制度ではないため、適用条件の確認が必要です。

手続 原則の期限 相談先
死亡による退任登記 死亡日から2週間以内 司法書士
後任者の就任・代表者変更登記 各変更が生じた日から2週間以内 司法書士
相続放棄 自己のための相続開始を知った時から3か月以内 弁護士・司法書士
相続税の申告・納税(申告が必要な場合) 死亡を知った日の翌日から10か月以内 税理士

誰に相談する?事業承継を進める専門家と準備資料

社長が突然亡くなった場合は、法律・登記・税務の専門家と取引金融機関に、困っている事項を分けて相談してください。会社の意思決定や支払いが止まりそうな場合は、資料の収集と並行して連絡しましょう。

相談内容に合わせて専門家を選ぶ

代表者不在や相続人間の対立は弁護士、登記は司法書士、税務と資金繰りは税理士が相談先です。支払いの継続や借入契約の確認は、取引金融機関にも相談してください。

相談先 主な相談内容
弁護士 代表者不在、株主総会、相続人間の対立、保証債務
司法書士 役員変更登記、登記に必要な書類
税理士 株式評価、相続税、当面の資金繰り
金融機関 支払いの継続、融資・保証・担保の確認

後継者がいない場合は、事業承継・引継ぎ支援センターなどで第三者承継も相談しましょう。検討に当たっては、後継者がいない場合の承継方法と準備の順番も参考にしてください。

最初の相談までに集めたい資料

持参資料は、次のチェックリストをもとに集めてください。すべてそろうまで相談を待たず、手元にある資料と直近の支払期限を共有しましょう。

  • 登記事項証明書・定款
  • 株主名簿
  • 直近の決算書
  • 借入・保証契約書、担保に関する書類
  • 給与・仕入代金・借入返済などの支払い予定
  • 遺言など相続に関する資料

よくある質問

Q. 社長が急死すると、会社は廃業しなければなりませんか?

株式会社は、社長が亡くなっても自動的に廃業するわけではありません。代表者が不在になった場合は後任を適法に選任し、社内の指示系統や支払いの担当者を確認して、業務を続ける体制を確保する必要があります。

Q. 社長の子どもが、そのまま次の社長になれますか?

親子関係や株式の相続だけでは、会社の代表権は得られません。後継者が取締役でなければ原則として先に取締役に選任し、そのうえで定款や機関構成に応じた代表取締役の選定手続を進めます。

Q. 遺産分割が終わるまで、代表者を選べませんか?

必ずしも遺産分割の完了を待つ必要はありません。相続株式の議決権が必要な場合、共同相続人は原則として権利を行使する人を1人定め、会社に通知します(会社法106条)。相続人間で意見が分かれる場合は、指定方法や議決権行使の適法性を弁護士に確認してください。

まとめ

社長が急死した際の事業承継では、支払い・業務の停止防止、適法な代表者選任、相続株式の議決権確保を優先します。登記完了や遺産分割を待たず、金融機関・専門家へ連絡してください。

必要な手続きや銀行・保証債務への対応は、契約、会社の機関構成、相続状況によって異なります。判断に迷う場合は、事業承継・M&Aの支援内容も参考に、税理士など専門家へ相談しましょう。

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

事業承継・M&A、融資や補助金による資金調達など、中小企業の経営サポートに特化して活動。
税理士法人松本は国の認定支援機関で、M&A支援機関登録制度の登録支援機関。元銀行員が在籍し、金融機関の目線を踏まえた資金調達を支援しており、融資の調達実績は累計50億円以上。

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