2026.06.23

起業・開業

休眠会社を買い取って起業するリスクとメリット!新規設立との費用・手間を比較

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読了目安時間:約 13分

起業や法人化を検討する際、一から会社を設立するのではなく、すでに存在している「休眠会社」を買い取るという選択肢があります。休眠会社の買収による起業は、過去の業歴や実績を引き継ぐことができるため、新規設立に比べて取引先からの信用獲得や、銀行口座・許認可の引き継ぎを有利に進められる可能性があります。

一方で、休眠会社の買収には特有のリスクも潜んでいます。帳簿に載っていない簿外債務や未払税金を引き継いでしまう危険性や、過去の申告状況によっては税務上のペナルティを受けるケースも考えられます。また、長期間放置されていた株式会社の場合、法務局によって「みなし解散」の対象とされていることもあり、事業再開には複雑な手続きが必要になる場合があります。

本記事では、休眠会社を買収して起業する際のメリットとデメリットを、新規設立の手間や費用と比較しながら網羅的に解説します。表面的なコストや手軽さだけでなく、潜在的なリスクを正しく理解することが成功の鍵となります。

ご自身のビジネスにとって最適なスタートを切るための判断材料として、ぜひご活用ください。なお、個別のケースにおけるリスク評価や最終的な意思決定にあたっては、税理士や司法書士などの専門家へご相談されることをおすすめします。

目次

2. 休眠会社とは?買収して起業する仕組み

起業を検討する際、一から会社を設立するのではなく、すでに存在している法人を引き継ぐという選択肢があります。その代表的な手法が、休眠会社を買収して起業する方法です。

休眠会社の定義と現状

休眠会社とは、長期間にわたり営業活動を停止しているものの、法務局での登記上は依然として存続している法人のことを指します。実態としては事業を行っていなくても、法人格そのものは残っている状態です。

このような会社は、経営者の高齢化や後継者不在、あるいは事業の失敗など、さまざまな理由で放置されています。ただし、株式会社において最後の登記から12年が経過すると、法務局の職権によって自動的に解散したものとみなされる「みなし解散」の対象となるため注意が必要です。

参考:法務省:休眠会社・休眠一般法人の整理作業について

みなし解散の対象となった会社を継続させるには、煩雑な手続きと追加の費用が発生します。そのため、買収を検討する際は、登記簿謄本を取得して最後の登記日を必ず確認するようにしてください。

なぜ休眠会社がM&A(買収)の対象になるのか

活動を停止している休眠会社が、なぜM&A(買収)の対象として取引されるのでしょうか。それは、会社を処分したい「売り手」と、有利な条件で事業をスタートしたい「買い手」のニーズが合致するからです。

売り手である創業者やオーナーにとっては、会社を正式に解散・清算するためには数万円の費用と煩雑な手続きがかかります。そのため、誰かに買い取ってもらえるなら手間を省けると考えるケースが多く見られます。

一方で、買い手となる起業家にとっては、休眠会社の買収は「過去の社歴」や「既存の許認可」を引き継げるという大きなメリットがあります。設立から年数が経過している会社は社会的信用が高く見られやすいため、新規設立に比べて取引先との口座開設や、特定の許認可を必要とする事業を有利に進められる可能性があります。

ただし、休眠会社の買収には帳簿に載っていない簿外債務や未払税金を引き継いでしまうリスクも潜んでいます。過去の業歴がプラスに働く一方で、税務ペナルティや金融機関のブラックリスト登録など、マイナス遺産を抱え込む危険性もある点には十分留意してください。

以下は、休眠会社を買収して起業する場合と、新規で会社を設立する場合の基本的な比較です。

比較項目 休眠会社を買収して起業 新規設立(株式会社)
初期費用 買収費用(数万〜数十万円)+登記費用 法定費用(約20万〜25万円)+資本金
社歴・信用 設立年が古く、信用を得やすい場合がある ゼロからのスタート
許認可・口座 法人の銀行口座や許認可を引き継げる可能性がある すべて新規で取得・開設が必要
潜在的リスク 簿外債務、未払税金、融資不可などのリスクあり 過去の負債やトラブルのリスクはなし

休眠会社の買収を検討する際は、表面的なメリットだけでなく、過去の財務状況や法務リスクを徹底的に調査するデューデリジェンスが不可欠です。

  • 登記簿謄本を取得し、最後の登記日(みなし解散の対象でないか)を確認する
  • 過去の決算書や税務申告書を確認し、未払税金や青色申告の取消がないかチェックする
  • 金融機関からの借入履歴や、帳簿外の債務(簿外債務)が存在しないか調査する
  • 引き継ぎたい許認可が、現在の法制度でも有効に引き継げるか所管官庁に確認する

休眠会社の買収による起業は、成功すれば大きなアドバンテージを得られますが、リスク判断が非常に難しい手法でもあります。最終的な買収の判断や手続きの進行については、必ず税理士や司法書士、M&Aの専門家にご相談されることを強くお勧めいたします。

休眠会社が買い手に移転する大まかなイメージ図

3. 休眠会社を買い取って起業する4つのメリット

起業を検討する際、ゼロから新しく法人を設立するだけでなく、すでに存在している休眠会社を買収して起業するという選択肢があります。

休眠会社とは、過去に事業を行っていたものの、現在は活動を停止している法人のことです。これをM&Aなどの手法で引き継ぐことで、新規設立にはない特有のメリットを享受できる可能性があります。

ここでは、過去の業歴や実績を引き継ぎ、有利に事業をスタートさせたい起業家に向けて、4つの主なメリットを詳しく解説します。

1. 社歴(歴史)による社会的信用の獲得

休眠会社を引き継ぐ最大の魅力の一つは、設立年が古い会社として事業をスタートできる点です。新規設立会社に比べて、取引先や金融機関からの社会的信用を得やすいという特徴があります。

特にBtoB(企業間取引)においては、大手企業や官公庁との新規取引口座を開設する際、「設立から3年以上経過していること」といった社歴が独自のスクリーニング基準になっているケースが少なくありません。設立から数十年の歴史がある法人格であれば、それだけで一定の安心感を与える材料となります。

ただし、社歴が古いからといって無条件に信用されるわけではありません。休眠期間中の決算状況や過去の取引実績なども総合的に見られるため、実際の取引開始にあたっては、事業計画の妥当性もしっかりとアピールする必要があります。

2. 許認可や法人口座の引き継ぎによるスピード開業

事業を行う上で必須となる許認可や、開設のハードルが高まっている法人口座をそのまま維持できる可能性がある点も、休眠会社を買収する大きなメリットです。

建設業、宅地建物取引業(宅建業)、人材派遣業など、特定の許認可を取得するには、人員要件や財産要件を満たし、数ヶ月の審査期間を経る必要があります。もし、これらの許認可を有効な状態で保有している休眠会社を引き継ぐことができれば、新規取得にかかる膨大な時間と手間を大幅にカットできる可能性があります。

また、近年はマネーロンダリング対策の強化により、新規設立法人が銀行の法人口座を開設する審査が非常に厳しくなっています。既存の法人口座を引き継ぐことができれば、事業開始直後からスムーズな資金決済が可能になります。

ただし、代表者や株主が変更されることで、許認可の変更届出や金融機関での再審査が必要になる場合があります。引き継ぎの可否については、事前に管轄の行政機関や金融機関へ確認し、行政書士などの専門家に相談することが重要です。

  • 保有している許認可の有効期限が切れていないか
  • 代表者変更後も許認可の要件(専任の技術者など)を満たせるか
  • 法人口座が凍結されておらず、現在も利用可能な状態か
  • 金融機関に対して代表者変更の届出と再審査の手続きがスムーズに行えるか

3. 実際の資金以上の「大きな資本金」の活用

資本金額が大きい休眠会社を安価で買い取ることで、手元に実際の資金が少なくても「資本金の大きな会社」として見せることができる点もメリットです。

例えば、資本金1,000万円の株式会社を新規で設立しようとすれば、当然ながら発起人は1,000万円の現金を自己資金として用意し、出資金として払い込む必要があります。しかし、過去に増資が行われ、すでに資本金が1,000万円として登記されている休眠会社を買収する場合、株式の買い取り費用(数万〜数十万円程度)を支払うだけで、その法人格を手に入れることができます。

資本金の大きさは、企業の体力や信用力を測る指標の一つとして見られがちです。特に、特定の許認可(建設業の特定建設業許可など)では一定以上の資本金が要件となるため、こうした会社を引き継ぐことは戦略的な起業手法と言えます。

なお、帳簿上の資本金が大きくても、休眠に至る過程で資金が流出し、純資産がマイナス(債務超過)になっているケースもあるため、買収前の財務調査(デューデリジェンス)は税理士や公認会計士に依頼することをお勧めします。

4. 法人設立手続きの省略と事業開始の迅速化

すでに法人格が存在する休眠会社を活用すれば、ゼロから会社を立ち上げるよりもスピーディーに事業を開始できる可能性があります。

新規で株式会社を設立する場合、定款の作成から始まり、公証役場での定款認証、資本金の払込、そして法務局への設立登記申請といった多くのステップを踏む必要があります。一方、休眠会社の買収であれば、基本的には株式譲渡契約の締結と、役員変更や本店移転などの変更登記を行うだけで事業を再開できます。

項目 新規設立(株式会社) 休眠会社の買収
設立・取得の実費 約20万〜25万円(定款認証代、登録免許税など) 株式買収費用(数万〜数十万円)+変更登記の登録免許税
手続きの手間 定款作成、公証役場での認証、資本金払込、設立登記 株式譲渡契約の締結、役員変更・本店移転等の変更登記
事業開始スピード 準備から登記完了まで約2〜4週間程度 契約完了後、変更登記を行えばすぐに開始可能

新規設立にかかる登録免許税などの法定費用については、法務局の商業・法人登記に関する案内ページも参考にしてください。

このように、休眠会社の活用は手続きのショートカットになりますが、12年間登記が行われていない株式会社は、法務局によって「みなし解散」の処理がされている場合があります。その場合は会社を継続するための煩雑な手続きが必要になるため、事前に法務局で登記簿謄本(履歴事項全部証明書)を取得し、現在の登記状態を司法書士に確認してもらうことが確実です。

休眠会社を買い取る4つのメリットをまとめた比較表

4. 知っておくべき休眠会社買収の重大なリスク・デメリット

過去の業歴や許認可を引き継ぎ、スムーズな起業を実現する手段として、休眠会社の買収は魅力的な選択肢です。しかし、活動を停止していた法人を引き継ぐことには、新規設立にはない特有の危険性が潜んでいます。

安易に休眠会社を買収して起業を進めると、想定外の負債やトラブルに巻き込まれる恐れがあります。ここでは、買収前に必ず知っておくべき4つの重大なリスクとデメリットを詳しく解説します。

1. 簿外債務や未払税金などのマイナス遺産の引き継ぎ

休眠会社を買収する際、最も警戒すべきなのが「マイナス遺産」の引き継ぎです。法人の株式を買い取って経営権を取得するということは、その会社が抱えるすべての権利と義務を引き継ぐことを意味します。

決算書などの帳簿に記載されている負債であれば事前に把握できますが、厄介なのは帳簿に載っていない「簿外債務」です。例えば、過去の従業員に対する未払いの残業代、取引先との間で発生していた損害賠償請求、社会保険料の未納などが後になって発覚するケースがあります。

また、法人税や消費税などの未払税金が残っていた場合、新経営者がその支払い義務を負うことになります。会社の歴史や信用を買うつもりが、前経営者の負の遺産まで背負い込む結果にならないよう、事前のデューデリジェンス(買収監査)が不可欠です。

  • 過去数年分の決算書および勘定科目内訳明細書の精査
  • 税務署や自治体で納税証明書を取得し、滞納がないかの確認
  • 労働トラブルや未払給与・残業代の有無に関する徹底したヒアリング
  • 法人名義の借入金や連帯保証の有無の確認

2. 税務ペナルティや青色申告取消のリスク

休眠会社は、事業活動を停止している間も税務申告の義務が完全に免除されるわけではありません。過去に適切な税務申告が行われていなかった場合、買収後に思わぬ税務トラブルに見舞われる可能性があります。

特に注意したいのが、2期連続で期限内に確定申告書を提出しなかったことによる青色申告の承認取消です。青色申告が取り消されていると、欠損金の繰越控除など、税務上の重要な優遇措置を受けることができません。

再度承認を受けるには再申請が必要となり、一定期間は青色申告の恩恵を受けられないデメリットが生じます。さらに、過去の無申告や不適切な申告が税務調査で発覚した場合、無申告加算税や延滞税などの重いペナルティが課されるリスクもあります。

税務面でのクリーンさを担保するためには、買収前に税理士などの専門家に依頼し、過去の申告状況を厳密にチェックすることが重要です。

3. 融資審査の不利(ブラックリスト、創業融資の対象外)

起業時の資金調達において、休眠会社の買収が不利に働くケースも少なくありません。過去にその法人が倒産を経験していたり、借入金の返済遅延によって金融機関のブラックリストに登録されていたりする場合、新たな融資を受けることは極めて困難になります。

また、起業家にとって大きな支えとなる「創業融資」の優遇制度が利用できない点も重大なデメリットです。日本政策金融公庫の新規開業資金などは、原則として新たに事業を始める方や事業開始後間もない方を対象としています。

設立から長年が経過している休眠会社は、実質的な稼働状況にかかわらず社歴が古いため、これらの有利な創業融資制度の対象外と判断される可能性が高いのです。

資金調達の観点 新規に法人を設立する場合 休眠会社を買収する場合
創業融資(優遇制度) 要件を満たせば積極的に利用可能 設立年が古いため原則として対象外
金融機関からの信用 過去の事故歴はなくゼロからのスタート 過去の金融事故や滞納歴が審査に悪影響を及ぼす

4. 「みなし解散」による登記手続きの複雑化

長期間放置されていた株式会社を買収する際に見落としがちなのが、「みなし解散」のリスクです。会社法では、最後の登記から12年が経過している株式会社は事業を廃止したものとみなされ、法務局の職権によって解散の登記がなされる制度があります。

法務省の休眠会社・休眠一般法人の整理作業の対象となり、すでに「みなし解散」の登記が入れられている場合、そのままでは通常の事業活動を再開できません。

会社を継続させるためには、株主総会の特別決議を経て「会社継続の登記」を行うなど、煩雑な手続きが必要となります。これには登録免許税などの追加費用がかかるうえ、解散したとみなされてから3年以内に手続きを行わなければ、会社を継続すること自体ができなくなります。

休眠会社を利用して起業する際は、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)を事前に取得し、現在の登記状態を正確に把握するとともに、最終的な判断や手続きは司法書士や税理士などの専門家に相談することを強くお勧めします。

休眠会社買収における重大なリスクのチェックリスト

5. 休眠会社の買収 vs 新規設立!費用(コスト)の違いを徹底比較

休眠会社の買収による起業と、一から会社を立ち上げる新規設立では、初期費用や将来的なリスクに大きな違いがあります。

過去の業歴や実績を引き継ぐことで、許認可の取得や取引口座の開設を有利に進めたいと考える起業家にとって、休眠会社の活用は魅力的な選択肢の一つです。しかし、表面的な金額だけで判断すると、後から思わぬ出費に悩まされる可能性があります。

ここでは、新規設立と休眠会社買収にかかる具体的な費用相場と、見落としがちな「隠れたコスト」について詳しく比較します。

新規設立にかかる費用(実費)

会社を新規設立する場合、設立する法人の形態によって法定費用(実費)が異なります。代表的な形態である株式会社と合同会社を比較すると、以下のようになります。

株式会社を設立する場合、公証役場での定款認証手数料(約5万円)と、法務局での設立登記にかかる登録免許税(最低15万円)などが必要となり、合計で約20万〜25万円が目安となります。

一方、合同会社の場合は定款認証が不要であり、登録免許税も最低6万円で済むため、約6万〜10万円の実費で設立が可能です。

新規設立の最大のメリットは、過去の負債やトラブルを引き継ぐリスクが一切なく、完全にクリーンな状態で事業をスタートできる点にあります。費用は明確であり、想定外の追加コストが発生することは基本的にありません。

休眠会社買収にかかる費用と「隠れたコスト」

休眠会社を買い取って起業する場合、会社そのものの買収費用(株式譲渡の対価など)は、数万円から数十万円程度が相場とされています。資本金が大きく、歴史のある会社を安価で手に入れられる点は大きなメリットです。

しかし、休眠会社の買収においては、買収費用以外の「隠れたコスト」に十分注意しなければなりません。会社を引き継いだ後、自分の事業に合わせて会社情報を書き換えるための登記変更費用が発生します。

例えば、「商号変更(社名変更)」「本店移転」「役員変更」などの登記手続きを行う必要があり、それぞれの手続きに対して法務局で登録免許税(各1万〜3万円程度)がかかります。これらを合わせると、登記変更だけで数万円〜10万円以上の実費が追加で必要になるケースも珍しくありません。

さらに深刻なのが、帳簿に記載されていない簿外債務や、過去の税金の滞納、未払給与などが後から発覚するリスクです。

万が一、多額の簿外債務や未払税金を引き継いでしまった場合、新規設立にかかる費用をはるかに上回るコストを負担することになります。

また、過去に適切な税務申告が行われていなかった休眠会社の場合、青色申告の承認が取り消されていたり、無申告加算税などのペナルティが科されたりする可能性があります。さらに、社歴が古いことで、起業家にとって有利な創業融資の要件から外れてしまうデメリットにも注意が必要です。

加えて、最後の登記から12年が経過している株式会社は、法務局によって自動的に解散したとみなされる「みなし解散」の対象となっている場合があります。詳しくは法務省の休眠会社の整理作業に関する案内をご確認ください。みなし解散となっている会社を継続させるには、さらに複雑な手続きと費用がかかります。

比較項目 新規設立(株式会社) 休眠会社の買収
初期費用の目安 約20万〜25万円(実費) 数万〜数十万円+登記変更費用
簿外債務のリスク なし(クリーンな状態) あり(過去の負債を引き継ぐ可能性)
創業融資の利用 要件を満たせば利用可能 社歴が古いと対象外になる可能性
許認可・実績 一から取得・構築が必要 既存のものを引き継げる可能性あり

休眠会社の買収は、事業開始のスピードアップや許認可の引き継ぎなど魅力的な面がある一方で、事前の徹底した調査(デューデリジェンス)が不可欠です。検討する際は、以下のポイントを必ず確認しましょう。

  • 過去の決算書や税務申告書に不審な点(未払金や滞納)がないか
  • 法人名義の銀行口座や許認可が現在も有効な状態か
  • 12年以上登記が放置され「みなし解散」の対象になっていないか
  • 自社の事業計画において、創業融資を利用する必要があるか

休眠会社の買収を成功させるためには、法務・税務両面からの専門的なチェックが欠かせません。リスクを最小限に抑えるためにも、最終的な判断を下す前に、必ず税理士や司法書士、M&Aに詳しい専門家に相談することをおすすめします。

新規設立と休眠会社買収の費用内訳比較表

6. 休眠会社の買収 vs 新規設立!手間(プロセス)の違いを徹底比較

過去の業歴や実績を引き継ぎ、融資や許認可の取得、取引口座の開設を有利に進めたいと考える起業家にとって、休眠会社の買収は魅力的な選択肢の一つです。しかし、実際に事業をスタートさせるまでの手間やプロセスは、一から会社を立ち上げる場合と大きく異なります。

ここでは、休眠会社を買収して起業する場合と、新規に会社を設立する場合の手続きの流れや、完了までにかかる時間と手間の違いについて詳しく比較・解説します。

新規設立の手間とスケジュール

会社を新規設立する場合、手続きのステップは比較的明確に決まっています。株式会社を例に挙げると、まずは会社の基本ルールとなる定款を作成し、公証役場で定款の認証を受ける必要があります。その後、発起人の個人口座へ資本金を払い込み、管轄の法務局へ設立登記を申請するという流れになります。

書類の準備から登記申請、そして登記が完了して会社の登記事項証明書(登記簿謄本)が取得できるようになるまで、法務局の商業・法人登記手続きを含めて全体で約1ヶ月程度の期間を見込むのが一般的です。

近年ではオンラインでの設立手続きも普及しており、必要な書類やプロセスが標準化されているため、専門家(司法書士など)に依頼すれば、スケジュール通りにスムーズに事業を開始しやすいという特徴があります。

休眠会社買収の手間と「デューデリジェンス」の重要性

一方で、休眠会社を買収する場合、定款認証や設立登記といった「ゼロから会社を作る手間」は省けます。しかし、その代わりに必須となるのが、会社の内部状況や安全性を徹底的に調査する「デューデリジェンス(買収監査・信用調査)」です。

休眠会社には、過去の取引による簿外債務(帳簿に載っていない隠れた借金)や、未払いの税金、社会保険料の滞納などのマイナス遺産が潜んでいるリスクがあります。これらのリスクを見落としたまま買収してしまうと、事業開始後に多額の負債を抱え込む致命的なトラブルに発展しかねません。

安全な休眠会社の買収を成功させるためには、以下のような項目を専門家とともに慎重に確認する必要があります。

  • 過去の決算書および税務申告書の内容(青色申告の取り消しがないか等)
  • 簿外債務、未払給与、税金や社会保険料の滞納の有無
  • 過去の倒産歴や金融機関とのトラブル(ブラックリスト登録)の有無
  • 長期間放置されたことによる法務局の「みなし解散」登記がされていないか
  • 引き継ぎたい許認可が現在も有効であり、名義変更等が可能か

これらの調査には、税理士や弁護士、公認会計士といった専門家のサポートが不可欠です。相手企業との交渉や調査に時間がかかるため、結果として新規設立以上の手間と期間(数ヶ月単位)を要するケースが多いのが実情です。

比較項目 新規設立 休眠会社買収
主な手続き 定款作成、認証、資本金払込、設立登記 株式譲渡契約、役員変更登記、デューデリジェンス
所要期間の目安 約2週間〜1ヶ月程度 数ヶ月以上かかることが多い
リスク調査の手間 不要(クリーンな状態からスタート) 必須(簿外債務や税務リスクの徹底調査)
必要な専門家 司法書士、行政書士など 税理士、弁護士、M&A専門家など

注意:長期間放置された株式会社の「みなし解散」について
最後の登記から12年が経過している株式会社は、法務局の職権によって「みなし解散」の登記がされている場合があります。この状態から会社を復活(継続)させるには複雑な手続きと追加費用が必要になるため、買収を検討する際は必ず事前に法務局で登記簿謄本を確認してください。

休眠会社の買収は、社歴や許認可を引き継げるという強力なメリットがある反面、見えないリスクを洗い出すためのプロセスが非常に重くなります。起業を急ぐ場合や、リスク調査に十分な予算と時間を割けない場合は、新規設立を選んだ方が結果的にスムーズなケースも少なくありません。最終的な判断は、M&Aや法人設立に詳しい税理士などの専門家に相談しながら慎重に進めることをお勧めします。

7. 休眠会社の買収で失敗しないための対策

すでに活動を停止している休眠会社を買収して起業することは、過去の業歴や実績を引き継ぐことで、取引口座の開設や許認可の取得を有利に進められる可能性があります。しかし、その裏には目に見えないリスクも潜んでいます。

手軽に歴史ある法人格を手に入れられる反面、過去のマイナス遺産をそのまま引き継いでしまう危険性があるため、慎重な手続きが求められます。ここでは、休眠会社の買収で失敗しないための具体的な対策を解説します。

専門家によるデューデリジェンスの徹底

休眠会社を買収する際、最も警戒すべきは帳簿に記載されていない「簿外債務」や未払税金、社会保険料の滞納などを会社ごと引き継いでしまうリスクです。そのため、買収前には専門家によるデューデリジェンス(買収監査)が欠かせません。

具体的には、税理士や公認会計士に依頼し、財務・税務の観点から過去の決算書や申告書を精査してもらいます。適切な税務申告が行われておらず、青色申告の承認が取り消されていたり、無申告加算税などのペナルティを科されていたりするケースも少なくありません。

また、過去の倒産歴や金融機関とのトラブルによってブラックリストに登録されている場合、買収後に新たな融資の審査に通らない可能性もあります。起業時の資金繰りに直結するため、入念な調査が必要です。

  • 過去の決算書・税務申告書による未払税金・簿外債務の有無の確認
  • 青色申告の承認状況や税務ペナルティの有無の確認
  • 金融機関における過去の取引履歴やブラックリスト登録の有無
  • 法務局での登記簿謄本の確認(みなし解散の対象になっていないか)

特に法務面での注意点として、長期間放置されている株式会社の扱いがあります。最後の登記から12年が経過している株式会社は、法務局によって「みなし解散」の登記がされている場合があり、会社を継続するには面倒な手続きが発生します。

法務省:休眠会社・休眠一般法人の整理作業について
最後の登記から12年を経過している株式会社は、法務大臣の官報公告後、2か月以内に事業を廃止していない旨の届出等をしない場合、解散したものとみなされます。

契約書(表明保証条項など)でのリスクヘッジ

専門家によるデューデリジェンスを徹底したとしても、意図的に隠蔽された簿外債務などを完全に洗い出すことは困難な場合があります。そこで、万が一買収後に隠れた問題が発覚した場合に備え、契約段階での法的な自己防衛策が不可欠です。

株式譲渡契約書を締結する際には、必ず「表明保証条項」を盛り込むようにしましょう。これは、売り手側が買い手に対し、対象会社に簿外債務や未払税金、法務上の瑕疵(欠陥)が存在しないことを表明し、保証する重要な条項です。

もし買収後に表明保証違反(隠れた債務や未払給与など)が発覚した場合には、売り手に対して損害賠償請求や契約解除を求めることができるため、強力なリスクヘッジとなります。

休眠会社の買収による起業は、大きな資本金や既存の許認可を活用してスピーディーに事業を開始できるメリットがあります。しかし、最終的な契約内容の精査や買収の決断については自己判断で進めず、必ずM&Aに詳しい弁護士や税理士などの専門家にご相談ください。

休眠会社買収で失敗しないための対策チェックリスト

8. まとめ:休眠会社買収での起業が向いている人・向いていない人

この記事の総括

ここまで解説してきたように、休眠会社を買収して起業する手法には、過去の社歴を活用した信用獲得や、事業開始のスピードアップといった独自のメリットがあります。しかし同時に、簿外債務の引き継ぎや融資審査での不利な扱いなど、見過ごせないリスクも潜んでいます。

これらのメリットとリスクを天秤にかけた場合、休眠会社の買収が向いている起業家と、そうでない起業家は明確に分かれます。ご自身の事業計画や資金力と照らし合わせて、慎重に判断することが重要です。

休眠会社買収での起業が向いている人 新規設立が推奨される人(向いていない人)
特定の許認可をすぐに引き継ぎたい人 クリーンな状態で安全・確実に起業したい人
過去の社歴や資本金の大きさを重視する人 創業融資などの優遇制度を活用したい人
専門家(税理士・弁護士等)を雇う資金力がある人 設立にかかる初期費用や手間を最小限に抑えたい人

専門的な許認可がすぐに必要な場合や、専門家のサポートを得て徹底的なデューデリジェンス(買収前の企業調査)を行える資金力がある方には、休眠会社の買収は有力な選択肢となります。

一方で、簿外債務などの予期せぬトラブルを避け、安全かつ確実に起業したい場合は、株式会社や合同会社の新規設立が強く推奨されます。最終的な判断を下す前には、必ずM&Aや会社設立に詳しい税理士・司法書士などの専門家にご相談いただき、最適な起業手法を選択してください。

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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