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起業・開業
不動産屋の開業に必要なもの&費用は?事業を軌道に乗せるための土台作り

読了目安時間:約 7分
不動産屋の開業は1人からでも可能ですが、知識や経験、不動産業界ならではの準備が不可欠です。
本記事では、不動産屋を開業するために必要なものや、開業にかかる費用についてまとめました。
地域で長く愛される不動産屋にするために、やっておくべき開業準備を把握しておきましょう。
目次
不動産屋を開業するために必要なもの
不動産屋を一人で開業するときには、どんな要素が必要なのでしょうか。
まずは以下のような力が備わっているかを考えてみましょう。
- 不動産屋開業のための資格
- 人脈
- 情報収集能力
不動産開業のための資格
不動産屋を開業するには、少なくとも「専任の宅地建物取引士」を1人以上設置する必要があります。
不動産取引の重要事項の説明、契約書の作成など、不動産の専門家として業務を行うための資格です。
一人で起業するのであれば宅地建物取引士を持っていることが求められます。ただし、開業者本人が資格を持っていない場合でも、資格を取得している従業員を雇用することで開業は可能です。
ただ社会的信用を考えたときに、不動産屋の経営者として宅地建物取引士の資格をもっている方が望ましいといえるでしょう。
人脈
不動産屋で成功するには、人脈も大切な要素のひとつとなる場合があります。
人脈があれば物件情報の入手やトラブル対応力、仕入れや売却ルートの広がりなども期待できるかもしれません。
インターネットやSNSでの集客や情報収集だけではなく、丁寧に人間関係を築いておきましょう。
情報収集能力
不動産屋の経営では、物件情報やエリアに関するデータの収集はもちろん、顧客のニーズをしっかりと見極める観察力や優れたコミュニケーション能力が不可欠です。これらのスキルを駆使して、顧客の求める条件を把握し、最適な提案をすることが求められます。
また、不動産の売買は顧客にとって大きな決断を伴うため、ほとんどの場合、複数の業者と比較した上で契約を結びます。そのため、競合他社と差別化を図るために、ライバルの営業方法や提供するサービス内容をリサーチし、どのような特徴や強みを打ち出すべきかをしっかりと考え、実行することが重要です。
不動産屋を1人で開業するメリット
不動産屋を1人で開業するのは、以下のようなメリットがあります。
- 資金ショートのリスクが低い
- 会社員より自由度が高い
- 客単価が高く利益が大きい
資金ショートのリスクが低い
不動産仲介業は、物件の仲介手数料が収入の主な柱となるビジネスモデルです。一般的には、在庫を抱えるリスクが低いため、物販業などと比較すると資金ショートのリスクは相対的に低いと言えます。
開業直後は利益が安定しない可能性はありますが、初期の段階で固定費を抑えることは重要です。しかし、事業規模や戦略によっては、広告宣伝費、事務所の賃料、営業活動費などが発生するため、自己資金の準備や慎重な資金計画が不可欠です。
会社員より自由度が高い
不動産屋を自分で開業した場合、働き方の自由度が高まるのは事実です。大手の不動産屋に就職した場合に比べ、時間や業務の進め方を自分で決定できる裁量が増えます。
しかし、その自由度と引き換えに、集客、契約、事務手続き、顧客対応など、事業運営に関する全ての責任を自身が負うことになります。裁量を持って働くことは重要ですが、相応の責任と自己管理能力が求められます。
客単価が高く利益が大きい
不動産仲介業は、一件あたりの仲介手数料が高額になる場合があり、成約に至れば比較的大きな利益を得られる可能性があります。これは他の業種と比較して、軌道に乗れば収益性が高まる可能性を示唆しています。
ただし、成約件数は市場の状況や個人の営業力に大きく左右されるため、安定した収入を確保するには、継続的な努力と市場の変化への適応が必要です。一人の開業でも十分にやっていける可能性はありますが、成功のためには相応の準備と戦略が求められます。
不動産屋を開業するデメリット
不動産屋を開業する際のデメリットとして考慮すべき点の一つに、将来的な市場の変化が挙げられます。日本の人口減少、特に若年層の減少は、長期的に見て不動産市場に影響を与える可能性があり、新規の不動産取引件数が減少することも考えられます。
一般的に、人生において不動産屋を利用する頻度は限られていると考えられます。そのため、既存の顧客との関係性を維持し、リピートや紹介を増やすことが重要になります。
また、同業者間の競争は今後も激しくなる可能性があり、その中で自身の強みを活かし、差別化を図っていくことが、事業を継続していくための重要なポイントとなります。
不動産仲介は一件あたりの客単価が高いとはいえ、成約がなければ収入は得られません。そのため、安定した経営のためには、継続的な集客努力と、変化する市場ニーズに対応できる柔軟性が求められます。
開業を検討する際には、短期的な視点だけでなく、長期的な視点を持ち、不動産市場の動向や社会の変化を考慮しながら、持続可能な事業計画を立てることが重要と言えるでしょう。
不動産屋を開業する準備
不動産屋を開業するための具体的な準備について、確認していきましょう。
- 不動産屋の開業資金を理解する
- 業務形態を決める
- 事務所を設置する
- 宅地建物取引士を設置する
- 宅地建物取引業免許の申請
- 保証協会への加入と営業保証金の供託
- 事業の宣伝広告を行う
不動産屋の開業資金を理解する
不動産屋を開業するための資金について、ご説明します。
賃貸物件を事務所として借りるとしたら、賃貸契約による費用がかかります。
他には保証金や資格の取得などで、開業にかかる費用は以下のようなものが想定できます。
必要なもの | 詳細 |
---|---|
事務所の賃貸契約 | 敷金 礼金 保証金など |
事務所の備品 | 家具 OA機器 通信環境の工事費 |
営業保証金 | 1,000万円 (協会加入時は60万円) |
宅地建物取引士の登録 | 登録手数料 37,000円 (最新情報を要確認) |
業界団体への加入 | 団体により費用が異なる |
その他 | 名刺 印鑑自動車など |
このような費用がかかると把握し、準備をスタートさせていきましょう。
業務形態を決める
不動産屋をスタートさせる時は、元手がかかりにくい仲介業を選ぶ人が多いようです。
どんな業務形態で開業するのかを決めておきましょう。
賃貸仲介業
マンションやアパートなどの賃貸物件を探しているお客様の仲介をし、仲介手数料を報酬として受け取る業務です。
比較的単価は高くはありませんが、ニーズがあるため多くのお客様に物件を紹介していきます。
売買仲介業
マンションや事務所など、売買を希望するお客様の仲介を行う業務です。
賃貸仲介よりも単価が高額となりますが、件数はそれほど多くない傾向にあります。
賃貸管理業
入居者からの家賃の回収や駐車場の管理や清掃など、管理業務は多岐にわたります。
問題がなければいいのですが、家賃滞納の対応など頭を抱える業務に向き合わなければならない時があります。
不動産コンサルティング業
不動産に関する知識や経験をもとに、運用方法を提案する業務です。
購入や売買、資産運用や税金対策など、幅広い知識が求められます。
事務所を設置する
宅地建物取引業法により、不動産屋を開業するには適切な事務所を用意する必要があります。
自宅やレンタルオフィスでも開業そのものは可能ですが、お客様の信頼を得るという意味では事務所がある方が望ましいでしょう。
事務所を新たに借りるのであれば、近隣の競合調査や客層のニーズなどの把握が重要です。
また、初期費用だけでなく、数ヶ月分の運転資金も準備しておくと良いでしょう。
宅地建物取引士を設置する
お伝えしている通り、宅地建物取引士は開業時に必ず必要な資格です。
不動産に関する専門知識を持つ国家資格者として、公正な取引が行われているかをチェックする役目があります。
業務従事者5人につき1人以上の設置が義務となっていますので、従業員数が増えれば宅地建物取引士の数も必要です。
受験料は8,200円、5年に1度の更新料として16,500円などの費用がかかります。(宅地建物取引士資格の受験料は改定されることがあるため、受験予定の年度で必ず公式サイト等から最新の情報を確認してください。)
宅地建物取引業免許の申請
宅地建物取引業免許は、個人・法人を問わず、不動産取引業を営む際に必須の免許です。免許は知事または国土交通大臣が発行し、適切な管理体制や従業員の資格設置が審査基準に含まれます。
免許を受けるには、「宅地建物取引士を設置していること」「事務所の形態を整えていること」などが条件となります。
参考:建設産業・不動産業:宅地建物取引の免許について | 国土交通省
保証協会への加入と営業保証金の供託
宅地建物取引業者が営業を開始する際には、供託所に保証金を預ける義務があります。
消費者保護の観点によるもので、不動産取引で損失を受けた場合に弁済できるようにするためのものです。
営業保証金の供託は本店1,000万円、支店各500万円が原則ですが、支店の合計金額が法令によって規定されています。また、公益社団法人の不動産保証協会に加入して弁済業務保証金分担金を納付すると、本店60万円、支店30万円に軽減されます。加入条件や金額は協会によって異なりますので、あらかじめ確認することをおすすめします。
参考:営業保証金について |(公社)全日本不動産協会・不動産保証協会東京都本部
事業の宣伝広告を行う
いよいよ開業という段階まで準備が進んできたら、集客のための宣伝方法についても考えておきましょう。
ウェブサイトの開設やSNSアカウントの登録で集客をする人が多くなるでしょう。
ただし、ウェブサイトやSNSアカウントを開設・登録しただけでは、必ずしも顧客の目に触れるとは限りません。そのため、ターゲットとする顧客層を明確にし、その層に効果的にリーチするための戦略を立てる必要があります。
法人か個人事業主かを選ぶ
不動産屋を開業するという段階で迷うのが、法人にするのか、個人で事業を行うのかという点です。
どちらが良い、好ましいと言い切れるものではなく、それぞれにメリットやデメリットがあります。
法人 | 個人 | |
---|---|---|
責任 | 有限責任 | 無限責任 |
社会的信用 | 高い | 低い |
社会保険 | 協会けんぽ 厚生年金 | 国民健康 保険国民年金 |
税金 | 法人税 法人住民税 法人事業税 消費税 など | 所得税 個人住民税 個人事業税消費税 など |
設立手続き | 定款作成・認証 法人登記 | 開業届提出 |
法人化すれば社会的信用を得られますが、社会保険や税金の支払いが負担になってしまうかもしれません。
開業時は個人事業主としてスタートし、タイミングがきてから法人化するケースも多いです。
法人として不動産屋を開業する
法人を設立するには、いくつかの手続きが必要になります。
定款という会社のルールブックのようなものを作成し、公証役場で認証を受けます。
会社の印鑑を作成する、株式会社の場合は資本金を払う、法人登記を行うというように、複数の手続きが必要です。
会社形態などにもよりますが、一般的に会社設立には2~3週間程度かかるといわれています。
スケジュールを逆算し、焦らずに開業の準備ができるようにしていきましょう。
不動産屋には資金繰りが重要
廃業していく不動産屋があるのも事実であり、失敗例として多いのが資金繰りや計画性のなさによるものです。
開業時にかかる費用だけでなく、売上を確保できるまでにかかる家賃などの運営資金を準備しておかなければいけません。
「人脈があるから」といっても、いつまでもお客様を紹介してもらえるわけではありません。
数年後のビジョンをもって、目標のためにどう資金を使うのかを考えていきましょう。
不動産屋の経営に税理士を
不動産屋の開業や経営にあたり、税理士を検討してみませんか?
税関連の事務などは経営者でもできるものであり、必ずしも有資格者が必要ではないかもしれません。
しかし税理士は以下のように業務の負担を減らし、経営のお力になれます。
- 確定申告の負担を減らせる
- 法人化のサポートができる
確定申告の負担を減らせる
開業をしたら確定申告を行う必要があります。
会社員であれば会社に任せておけばよかったものですが、自身で経営をするとなると毎年の業務となり、作業が負担と感じる方も多くいらっしゃいます。
確定申告は1年間の収支を税務署に報告するものであり、この所得によって翌年の住民税など納税額に関わってくるものです。
正しく申告しなければ税務調査の対象になる可能性もありますので、税理士に依頼するのがおすすめです。
法人化のサポートができる
個人事業主か法人か、という悩みの段階から、税理士の意見を聞いてみましょう。
「年収がいくら以上になったら法人化すべき?」「節税のコツは?」など、状況に合わせた具体的なアドバイスが可能です。
いざ法人化をするとなれば、役員報酬の設定や融資の検討、決算月の決定など、決めていかなければいけない項目が多くあります。
長く会社を続けていけるよう、税理士の力を借りるといいでしょう。
税理士法人松本にご相談ください
不動産屋を開業するには、事務所の設置や宅地建物取引士の資格取得など、準備するべき項目がいくつかあります。
宅地建物取引士の資格取得には時間がかかりますので、開業を視野に入れているのであれば早めに動いていけるようにするといいでしょう。
開業届の提出や確定申告、会社設立などのお悩みは、税理士法人松本でお力になれます。
不動産屋の開業に関して、お困りのことがあれば是非ご相談ください。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。