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会社(法人化)と個人事業主はどっちが得なの?違いやおすすめな人の特徴についても解説

読了目安時間:約 8分
会社(法人化)と個人事業主はどっちが得かは、まず両者の仕組みやメリット・デメリットを理解することが重要です。
事業の成長や運営のしやすさを考えたときに、自分にとってどちらの形態が適しているのかを正しく見極めて選択することが、ビジネスの成功につながります。
本記事では、会社(法人化)と個人事業主はどっちが得なのか、そして「会社と個人事業主の違い」や「会社(法人化)と個人事業主がおすすめな人の特徴」について解説します。
目次
会社(法人化)と個人事業主はどっちが得なの?

会社(法人化)と個人事業主はどっちが得なのかどうかは、状況によって異なります。
具体的には、以下の5つの点が特に重要な比較要素になります。
- 事業開始時の手続きの違い
- 税金の種類や負担率の違い
- 必要経費として計上できる範囲の差
- 対外的な信用力
- 社会保険への加入義務の有無
上記の項目を踏まえて、自分のビジネスにとってどちらの形態が適しているかを検討するようにしましょう。
また、法人と個人事業主それぞれの基本的な特徴を理解しておくと、どちらを選ぶべきかをより判断しやすくなります。
それぞれの基本的な特徴については、以下にて解説していきます。
会社(法人)とは?
会社(法人)とは、法的に人と同様の権利を認められた団体を指し、目的や性質に応じて、大きく二つのタイプに分類されます。
- 利益を追求する法人(株式会社や合同会社など)
- 利益を目的としない法人(NPO法人や公益法人など)
個人で事業を行っている人が法人を設立して登記することで、その事業が法的に個人とは別の法人格として認められます。
そのため、法人化によって「自分」と「会社」は法的に別の人格として扱われます。
もともと個人でおこなっていた事業を法人として新たに設立した会社に引き継いでいくことを「法人化」または「法人成り」と呼びます。
個人事業主(フリーランス)とは?
個人事業主とは、特定の企業や団体に所属せず、自らの責任で事業を行う人を指します。
事業を開始したら、税務署に「開業届」を提出することが原則として義務付けられています。仮に提出していない場合でも、事業を行っていれば税法上は個人事業主として扱われ、所得がある場合には確定申告が必要です。
ただし提出を怠ると、青色申告の特典が受けられないなど不利益が生じるため、速やかな提出をおすすめします。
また、「フリーランス」という言葉は法律上の定義はなく、個人で請負契約や業務委託契約などに基づいて働く人の総称として使われることが多い呼称です。
そのため、フリーランスと個人事業主は本質的には重なり合う概念であり、開業届の有無や青色申告の可否とは直接関係ありません。
なお、個人で事業を営む人の中には法人を設立して会社経営者として活動する人もおり、見た目はフリーランスに似ていても法的な立場が異なる場合があります。
会社と個人事業主の違い

会社と個人事業主の違いについては、以下の9つが挙げられます。
- 違い①:手続き
- 違い②:事業開始までの手続き
- 違い③:税金
- 違い④:経費にできる範囲
- 違い⑤:社会的信用度
- 違い⑥:社会保険加入義務
- 違い⑦:責任範囲
- 違い⑧:赤字の繰越
- 違い⑨:事業の廃止
それぞれの違いについて解説していきます。
違い①:手続き
個人で事業を始める場合は、税務署に「開業届出書」を提出するだけで手続きが完了します。
この手続きには費用もかからず、準備も比較的簡単で、時間もほとんど必要ありません。
これに対し、法人を設立する際には、まず法務局で登記の申請を行う必要があります。
その際には定款や登記申請書をはじめとする複数の書類を整える必要があり、登録免許税や資本金の準備など、一定の費用も伴います。
手続きが受理されてから法人設立が完了するまでには、通常およそ10日前後かかります。(地域や時期により変動あり)
このように、個人事業主としての開業は手軽に行える一方で、法人設立にはより多くの時間と費用が必要となります。
違い②:事業開始までの手続き
個人事業主として事業を始める際には、事業用の備品や道具を購入する必要がありますが、開業そのものに関しては特別な費用がかかることはありません。
一方、法人を設立する場合は、会社の形態に応じた法定費用が必要になります。たとえば、株式会社を設立する際にはおおよそ22万円、合同会社では約10万円の費用が最低限かかります。
また、法人用の印鑑の作成や社会保険の手続きも必要となり、追加で出費も必要になります。
さらに、法人化する場合には資本金の準備も求められます。
2006年施行の新会社法により、資本金1円からの設立が理論上可能になりましたが、資本金は企業の信用力を示す指標ともなり得るため、実際にはある程度の金額を用意しておくことをおすすめします。
一般的には、創業後3ヶ月間収益がなくても事業が継続できる程度の資本金を確保しておくのがひとつの目安になります。
違い③:税金
個人事業主と会社(法人)として運営する場合では、納める税金の種類や赤字に陥った際の対応が大きく異なります。
大きな違いとして、経費を差し引いた後に残る「所得」に対して課される「所得税」と「法人税」の税率が挙げられます。いずれも所得の金額に応じて税率が変動しますが、その仕組みが異なります。
個人事業主の所得税は「超過累進税率」が適用され、課税所得が4,000万円を超えると最高45%の税率となります。
一方、法人については、法人税率は原則23.2%ですが、資本金1億円以下の中小法人等では所得800万円以下の部分に15%を適用できるなど、法人規模や課税所得額によって実効税率は異なります。
このように、一定の売上規模を超えると、個人事業主として継続するよりも法人化した方が、結果として納税負担が軽減される可能性があります。ただし、法人税率のほか、地方法人税や住民税、事業税を含めた実効税率は約30%前後となるのが一般的であり、比較検討することが重要です。
参考:所得税の税率|国税庁
違い④:経費にできる範囲
個人事業主と会社(法人)のどちらも、ビジネスに関連する支出は基本的に経費として認められます。
例えば、オフィスの賃貸料や光熱費、カフェでの打ち合わせにかかる飲食費などが該当します。
しかし、法人においては、交際費として処理できる金額に上限が設けられているので、あらかじめ注意が必要です。
また、個人事業主の場合、売上から経費を差し引いて事業所得を算出しますが、「給与」という考え方がなく、自身の生活費などを経費にはすることはできません。
一方、法人を設立している場合、自分への給与、すなわち役員報酬は「給与所得」となり、経費として処理できます。
さらに、ボーナスや退職金も経費として認められるので、税負担の軽減に大きな効果があります。
参考:必要経費の知識|国税庁
違い⑤:社会的信用度
会社(法人)は、会社法などの法令に則って厳密に管理・運営される仕組みになっているので、社会的な信頼性が高くなります。
そのため、銀行のプロパー融資では、財務情報の開示や透明性が評価され、審査に通りやすくなる傾向があります。
また、採用活動の面でも、法人は社会保険の整備や福利厚生制度、明確な就業規則といった点で優位に立つので、優秀な人材を惹きつけやすいという強みがあります。
一方で、個人事業主として事業を営むことに支障はないものの、法人と比べると社会的な信用は一般的に劣るとされます。
さらに、信用リスクを避けるために個人事業主との取引を控える取引先もいるので、そうしたケースでは新たなビジネスの機会が制限される可能性もあります。
違い⑥:社会保険加入義務
個人事業主の場合、社会保険の加入は特定の業種を除き原則として任意です。しかし法人は原則として社会保険の適用事業所となるため、代表者1人であっても加入義務が生じます。
社会保険に加入することで、会社は保険料のうち原則として半分を負担する必要があります。これにより人件費が増加し、加えて加入・手続きに関する業務も発生するため、会社設立時にはこれらの負担を考慮する必要があります。
違い⑦:責任範囲
個人事業主は事業に関して無限責任を負いますが、法人は出資額を限度とした有限責任です。
無限責任とは、仮に事業がうまくいかず借金が生じた場合、そのすべてを事業主個人が返済しなければならないことを意味します。
これに対して、有限責任の法人では、会社が債務を抱えたとしても、出資した金額以上の責任を個人が負うことはありません。
このように、トラブルが発生した際に発生するリスクは、法人形態のほうが圧倒的に軽減されます。
参考:有限責任 | 会社法 | 用語解説 | CIAC.JP
違い⑧:赤字の繰越
青色申告を適用している場合、個人事業主は赤字を最大3年間繰り越して、将来の所得と相殺することができます。一方、法人も損失の繰越控除が認められており、税務上の損失繰越期間は最大10年間と、個人よりも長く設定されています。
このように、赤字が長期間にわたって発生する可能性のある事業では、赤字の繰越期間が長い法人形態の方が、税務上のメリットを受けやすいと言えるでしょう。
参考:所得税法 | e-Gov 法令検索、基本通達・法人税法|国税庁
違い⑨:事業の廃止
個人事業主が事業を廃止する際には、開業のときと同様に、税務署に「廃業届」を提出するだけで基本的な手続きは完了します。
一方、法人の場合は、届け出先が多岐にわたるため、手続きがかなり複雑になります。
具体的に、雇用者を抱える株式会社が廃業する場合では、以下のような一連の対応が必要です。
- 法務局に対して、解散登記や清算人選任登記、清算結了登記などの申請
- 税務署など関係する行政機関へは、異動届や廃業届などの提出が必要
- 年金事務所へは「健康保険・厚生年金保険の適用事業所全喪届」の届出
- ハローワークには「雇用保険適用事業所廃止届」などの提出
- 労働基準監督署には、労働保険の確定保険料申告書や保険料の還付請求書の提出
このように、法人の廃業は多方面に渡る手続きを踏まなければならず、個人事業主と比べて手間がかかってしまいます。
会社(法人化)がおすすめな人の特徴

会社(法人化)がおすすめな人の特徴については、主に以下の4つが挙げられます。
- 法人向けにビジネスを展開したい人
- 事業を拡大させたい人
- 大規模な資金調達をしたい人
- 年間利益が800万円を超えそうな人
それぞれの特徴について解説していきます。
法人向けにビジネスを展開したい人
会社(法人化)がおすすめな人の特徴として、法人向けにビジネスを展開したい人が挙げられます。
一部の企業では「法人格を有する取引先のみ」といった条件を設ける場合があるため、法人向け取引を拡大する際は法人化が有利になるケースがあります。
場合によっては法人化していないことで商談の機会を逃してしまうリスクがあるため、法人向けにビジネスを展開したい人は会社(法人化)がおすすめです。
事業を拡大させたい人
事業の成長を本格的に目指すのであれば、個人事業主よりも法人化を選ぶほうが有利な傾向にあります。規模の拡大を図る際には、業務を担う人材を増やし、対応できる仕事の範囲や量を広げることが重要なポイントとなります。
もちろん、個人事業主でも従業員を雇うことは可能ですが、一般的に法人のほうが社会的な信頼が高いと見なされるので、人材募集において有利に働く場合があります。
個人事業はどうしても安定性に欠ける印象を持たれやすく、優秀な人材の採用に苦戦するケースも少なくありません。
そのため、幅広い層からの求人を促すには、法人としての体制を整え、信頼感のある組織であることを示すことが効果的と言えます。
大規模な資金調達をしたい人
本格的にビジネスを展開し、より多くの資金を確保したいと考えている方には、法人化がおすすめです。
法人化することで、銀行や金融機関からの信頼度が増す傾向にあります。その結果、資金の借り入れがしやすくなるケースが多いです。
また、株式会社として設立すれば、株式の発行を通じて、ベンチャーキャピタルや銀行など、さまざまな投資家からの出資を受けやすくなります。
年間利益が800万円を超えそうな人
個人事業として活動している中で、年間の利益が800万円に近づいてきた場合は、法人化を前向きに検討する良いタイミングと言えます。
理由として、課税対象となる所得が800万円を超えると、所得税の税率が一段階上がる境目に差し掛かることが挙げられます。
日本の所得税制度では、所得が増えるにしたがって税率も上がる「累進課税方式」が採用されています。
例えば、課税所得が800万円までなら税率は23%ですが、900万円を超えると33%に上がります。
一方、法人の所得に対する税率は原則23.2%程度にとどまるので、税金の負担を抑えやすくなるのです。
ただし、地方法人税・住民税・事業税を含めた実効税率は約30%前後となるのが一般的なため、法人化する際は税理士に相談することを推奨します。
個人事業主がおすすめな人の特徴

個人事業主がおすすめな人の特徴については、以下の2つが挙げられます。
- 利益が伸びていない人
- 事業拡大を考えていない人
それぞれの特徴について解説していきます。
利益が伸びていない人
個人事業主がおすすめな人の特徴として、利益が伸びていない人が挙げられます。
具体的には、年間で約800万円の利益が出ていない段階で無理に法人化を考える必要はありません。
法人を設立する際には、相応の時間と労力がかかるだけでなく、以下のような初期費用も必要になります。
- 定款認証の印紙代や手数料
- 登録免許税
- 法人税
- 社会保険料
- 事務所賃料
- 税理士への顧問料
事業がまだ軌道に乗っていない段階でこれらの費用を負担するのは、経営の負担を大きくしてしまうリスクがあります。
このように、まずは個人事業主としてしっかりと基盤を築き、事業の成長を優先するのがおすすめです。
事業拡大を考えていない人
個人事業主がおすすめな人の特徴については、事業拡大を考えていない人が挙げられます。
実際に、事業拡大を本格的に目指す場合、法人化は有効な選択肢となり得ます。
しかし、特に事業を拡大する計画がないまま法人化を選んだとしても、信頼性の向上や経費計上の幅が広がるといったメリットを十分に活かすことは難しいのも事実です。
さらに、取引先が法人であることを前提とする企業とは異なり、一般の消費者を対象としたBtoCの業態であれば、法人化せずに個人事業として続けても、大きな支障は生じないと言えます。
適切な事業形態を選ぼう!

今回は、会社(法人化)と個人事業主はどっちが得なのかについて紹介しました。
会社か個人事業どちらの形態が自分のビジネスモデルや将来の展望に合っているか、しっかりと見極める必要があります。
特に、収入が増えてくると法人化によって税負担を軽減できる可能性があるので、その点も踏まえて検討するようにしましょう。
また、会社と個人事業主には、それぞれ異なるメリットやデメリットがあるので、ビジネスの成長段階に応じて、柔軟に事業形態を見直すことが求められます。
今回の記事を参考にして、適切な事業形態を選ぶようにしましょう。
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この記事の監修者

税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。