2025.09.15

法人化

法人化して一人社長になるメリット・デメリットとは?タイミングやポイントも紹介

法人化(法人成り) 一人社長

読了目安時間:約 7分

法人化して一人社長になることで、取引先や金融機関から形式的な信頼性が高まる場合や、事業内容や所得状況によっては税負担が軽減される場合もあります。

一方で、法人化にはメリットとデメリットがあり、事業の状況や将来の見通しを踏まえて慎重に判断することが重要です。

本記事では、法人化して一人社長になる際のメリット・デメリットについて解説するとともに、「法人化すべきタイミング」や「注意すべきポイント」についても紹介します。

本記事が、法人化を検討する際の参考になれば幸いです。

法人化して一人社長になるメリット

法人化して一人社長になるメリット

法人化して一人社長になるメリットとして、以下の6つが挙げられます。

  • 有限責任になる
  • 節税効果が期待できる
  • 社会的信用度が高まりやすい
  • 事業の選択肢が広がる
  • 全ての意思決定を1人でおこなえる
  • 長期間赤字繰越が可能になる

有限責任になる

株式会社や合同会社といった法人形態では、出資者が負う責任は出資額に応じた有限責任とされており、原則として出資した以上の責任を負うことはありません。

一方、個人事業主は無限責任を負う立場にあり、事業で発生した債務について個人の財産をもって返済する義務があります。

このように、法人化することで法的にはリスクを限定できる点はメリットの一つです。ただし、実際の経営状況や資金調達の方法によって負担の範囲は異なるため、事前に十分な検討が求められます。

節税効果が期待できる

法人化して一人社長になることで、税務面で有利になる場合があります。

個人事業主の場合、所得に応じて累進課税制度に基づく所得税が課され、所得が増えるほど税率も上がります。これに対し、法人の場合は法人税率が適用されますが、法人税には段階的な税率があるものの、一定規模以上の利益になると、結果的に個人での課税よりも負担が軽くなるケースがあります。

例えば、所得がおおむね800万円を超える頃になると、法人化によって税率面で有利になることが多いとされています。ただし、実際にどの水準でメリットが出るかは、家族構成や控除の状況、役員報酬の設定方法などによって異なります。

また、法人化により経費として認められる範囲が広がる場合があります。たとえば、役員報酬や退職金、一定の条件を満たした生命保険料、出張に伴う日当などが経費に算入できる可能性があります。これにより課税所得を抑えられることもありますが、各経費の取り扱いには税法上の要件や限度があるため、事前に専門家へ確認することが重要です。

このように、利益が大きく見込まれる場合や将来的に事業を拡大したい場合には、法人化を検討する価値があります。

参考:国税庁|所得税の税率

社会的信用度が高まりやすい

法人化して一人社長になることで、登記情報が公開されるなど制度的な裏付けが加わり、事業の透明性や対外的な信頼性が高まりやすい傾向があります。

そのため、取引先や金融機関との関係構築においてプラスに働く場合があり、融資交渉や営業活動、人材採用においてもメリットとなるケースが見られます。

一方、個人事業主は開業手続きが比較的簡易である反面、制度的な情報公開が限定的なため、状況によっては法人と比べると第三者からの信用評価が得にくい場合もあります。ただし、実績や事業内容によっては個人事業主でも十分な信頼を築くことが可能です。

事業の選択肢が広がる

法人化して一人社長になるメリットの一つに、事業の選択肢が広がる点があります。

例えば、建設業や飲食業、運送業、人材紹介業などは行政からの許認可を必要とする分野です。多くのケースでは、法人としての組織体制があることで、許可申請やその後の取引において有利に働く場合があります。

一方で、個人事業主として許可を取得できる業種も存在します。ただし、法人化した場合の方が事業規模や継続性の面で信用を得やすく、結果的に審査や手続きをスムーズに進められることがあります。

また、個人で取得した許認可は、法人設立後に改めて申請手続きが必要になるケースもあるため、将来的に法人化を見据えるのであれば、早めに検討しておくことが効率的と言えるでしょう。

参考:国土交通省|建設産業・不動産業:建設業の許可とは

全ての意思決定を1人でおこなえる

法人化して一人社長として起業する場合、自分自身で意思決定を行いやすいという利点があります。

会社設立の際には、社名や業務内容など、事前に決めておくべき重要な項目がいくつかあります。共同で起業する場合は、関係者間で十分に話し合い、意見を調整する必要があります。

一方で、一人で起業する場合は、自分の判断で必要事項を決めることができるため、スケジュールの調整や手続きの進め方を比較的柔軟に行える場合があります。ただし、法人化手続きや法務・税務面では専門家の助言を受けることが望ましいです。

長期間赤字繰越が可能になる

法人化することで、欠損金(赤字)を将来の利益と相殺できる繰越期間は最長10年とされており、個人事業主の3年に比べて長期間の相殺が可能です。

事業開始直後は収益が安定せず、黒字転換までに数年かかるケースもあります。そのような場合でも、赤字を長期間繰り越せることで、将来の利益と相殺できる可能性があり、結果として税負担を抑えられることがあります。

参考:国税庁|青色申告制度

法人化して一人社長になるデメリット

法人化して一人社長になるデメリット

法人化して一人社長になるデメリットとして、以下の4つが挙げられます。

  • 事務処理に手間がかかる
  • 赤字でも納税が必要になる
  • コストがかかる
  • 個人と法人の資産を区別する必要がある

事務処理に手間がかかる

法人化して一人社長になると、確定申告を含む各種の事務処理に一定の手間がかかる場合があります。

法人特有の書類である貸借対照表や損益計算書などの作成には、会計の知識が求められ、こうした複雑な事務作業への対応は、一人会社を立ち上げる際の負担となることもあるでしょう。

ただし、税理士や会計ソフトを活用することで、正確な書類作成や申告も無理なく対応できる可能性があります。そのため、初めて法人を設立される方にとっては、事務作業の流れや必要書類を理解しておくことがスムーズな運営のポイントとなります。

赤字でも納税が必要になる

一人で法人を立ち上げる際には、利益が出ていない場合でも一定の税金が発生する点に注意が必要です。

例えば、「法人住民税の均等割」は、会社の所得に関係なく課税されます。また、「消費税」は原則として取引の際に顧客から預かった消費税を納税する仕組みとなっており、赤字の場合でも納税義務が生じることがあります。

ただし、設立初年度や一定の条件を満たす場合には、法人であっても消費税の免税対象となることがあります。免税を受けられるかどうかは、事前に自社の状況を確認しておくことが重要です。

コストがかかる

法人化して一人社長になる場合、手続きや初期費用がかかる点に注意が必要です。

例えば、法人登記に際して法務局に支払う登録免許税は、最低6万円からかかります(資本金額によって増減する場合があります)。

また、定款の作成や登記申請などの手続きを専門家に依頼せず自分で進める場合、手間や時間がかかることもあります。

そのため、事前にスケジュールや必要な書類、手続きの流れをしっかり確認しておくことが大切です。

個人と法人の資産を区別する必要がある

法人化して一人社長となる場合、法人と個人の資金を明確に区別して管理することが重要です。

個人事業主の場合、得た利益はそのまま個人の収入として自由に活用できますが、法人の場合は会社の資金は法人のものであり、代表者個人の自由な資金とは区別されます。代表者は原則として役員報酬の形で報酬を受け取り、会社資金の使用は適切な手続きやルールに従う必要があります。

そのため、銀行口座やクレジットカードも法人用と個人用で分け、日々の資金管理をルールに沿って行うことが推奨されます。

法人化して一人社長になるべきタイミング

法人化して一人社長になるべきタイミング

法人化して一人社長になるタイミングとしては、以下のようなケースが一般的に目安として挙げられます。

  • 課税所得が800万円を超えるタイミング
  • 年間売上が1,000万円を超えるタイミング
  • 事業拡大を考えているタイミング

課税所得が800万円を超えるタイミング

法人化を検討するタイミングの一つとして、課税所得が800万円を超えた場合が挙げられます。

個人事業主の場合、所得税は累進課税制度により、所得が増えるほど税率も高くなります。そのため、年間所得が概ね800万円前後を超えると、法人化することで税制上のメリットが得られる可能性があります。

ただし、実際の有利・不利は所得構成や経費、家族の所得状況などによって異なるため、法人化を検討する際は税理士に相談してシミュレーションすることが重要です。
また、資本金1億円以下の中小法人では、法人税率が比較的低く抑えられることが多く、個人事業主の所得税と比較して税負担の軽減につながる場合もあります。

参考:国税庁|所得税の税率

年間売上が1,000万円を超えるタイミング

年間売上が1,000万円を超えるタイミングで法人化を検討するケースがあります。
個人事業主の場合、課税売上高が1,000万円を超えると、原則として2年後から消費税の納付義務が発生します。

法人を設立した場合、法人は個人とは別の事業体となるため、設立後の売上は法人として新たにカウントされます。そのため、条件によっては法人設立後しばらくの間、消費税の納付が免除される「免税事業者」として扱われる場合があるのです。

ただし、インボイス制度に登録している場合は、売上規模にかかわらず消費税の納税義務が生じるため、免税にはならない点に注意が必要です。

参考:国税庁|納税義務の免除

事業拡大を考えているタイミング

法人化して一人社長になるタイミングの一つとして、事業拡大を検討している場合が挙げられます。

個人事業主と法人では、資金調達の方法や取引先からの評価のされ方に違いがある場合があります。そのため、「案件を増やしたい」「将来的に事業規模を広げたい」と考えている場合は、法人化を選択肢の一つとして検討する価値があります。

また、法人を設立することで、金融機関からの融資や補助金・助成金の申請の際に有利になるケースや、社会的信用の向上につながる場合もあります。これにより、大手企業との取引や新規顧客の獲得に結びつく可能性がある点も考慮できます。

法人化して一人社長になる際のポイント

法人化して一人社長になる際のポイント

法人化して一人社長として事業を行う際には、以下の5つのポイントを押さえておくことが重要です。

  • 役員報酬の決め方を把握しておく
  • 相続についても考えておく
  • 外注や業務委託を有効活用する
  • 競合との差別化を図る
  • 複数の取引先を確保しておく

それぞれのポイントについて解説します。

役員報酬の決め方を把握しておく

役員報酬は従業員の給与とは取り扱いが異なり、会社法では原則として「定款」や「株主総会の決議」に基づき定めることが必要です。そのため、設定の自由度には一定のルールがあります。

また、役員報酬の額は、法人税や所得税、社会保険料などの負担に影響するため、会社と社長個人のバランスを考慮して決めることが重要です。

報酬額の設定方法や税務上の扱いについては、税理士などの専門家に相談されることをおすすめします。

参考:国税庁| 役員に対する給与

相続についても考えておく

法人化して一人社長として会社を運営する場合、将来的な相続や事業承継について事前に考えておくことが重要です。

たとえば、経営者自身が病気や万が一の事態に直面した場合でも、事業を円滑に継続できるように準備しておくと安心です。具体的には、会社を誰に引き継ぐのか、またどのような手続きを行うのかといった事業承継の方法を整理しておくと良いでしょう。

このような準備については、税理士や弁護士などの専門家に相談し、適切な方向性を確認しておくことをおすすめします。

外注や業務委託を有効活用する

法人化して一人社長として事業を運営する場合、外注や業務委託を適切に活用することが有効な選択肢のひとつです。

一人で全ての業務を抱え込むのではなく、必要な部分を専門家に依頼することで、業務効率を高めることができます。また、従業員を直接雇用する場合には、給与や社会保険料の負担、労務管理などの責任も伴います。外注や業務委託を利用することで、必要な業務だけを柔軟に依頼でき、経費として計上できる点もメリットのひとつです。

ただし、経費計上や契約形態については、税務上の取り扱いに注意が必要な場合もあるため、事前に専門家に相談することをおすすめします。

競合との差別化を図る

一人社長として事業の利益を伸ばすには、競合と同じことを追うのではなく、自社ならではの強みを意識することが大切です。

具体的には、新しい商品やサービスをゼロから作るのが難しい場合でも、既存の仕組みやアイデアを工夫して付加価値を高めることで、価格設定やサービス内容で差別化を図ることが可能です。
特に、他社が模倣しにくい要素を意識して取り入れると、価格競争に巻き込まれにくくなる傾向があります。

また、大手企業が参入しにくいニッチな市場に注目すると、細やかな顧客ニーズに応えることで、競争上の有利なポジションを作りやすくなる場合があります。

複数の取引先を確保しておく

安定した収益を継続的に得るためには、特定の企業に依存しすぎず、複数の取引先との関係を築くことが望ましいとされています。

特定の取引先との信頼関係を深めることにはメリットがありますが、万が一その企業との契約が終了した場合に、収益に影響が出る可能性がある点には注意が必要です。

複数の取引先を確保しておくことで、急な売上変動に対応しやすくなるほか、取引条件の検討や交渉の際に選択肢を持つことができます。

法人化して一人社長になるかどうか検討しよう!

法人化して一人社長になるかどうか検討しよう!

今回は、法人化して一人社長になる場合のメリット・デメリットを紹介しました。

法人化すると、取引先や金融機関からの信頼度が相対的に向上し、資金調達の選択肢が広がる場合があります。ただし、設立にかかる初期費用や日常的な維持コストも発生するため、注意が必要です。

また、税制上の優遇が受けられるケースもありますが、所得の状況によっては個人事業主の方が税負担を抑えられる場合もあります。法人化のメリット・デメリットは個々の状況によって異なるため、具体的な判断を行う際は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

本記事を参考に、法人化して一人社長になるかどうかを検討してみてください。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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