2025.10.1

法人化

マイクロ法人設立で後悔してしまう理由とは?対策や注意点についても徹底解説

マイクロ法人 後悔

読了目安時間:約 7分

節税や社会保険料の調整を目的にマイクロ法人の設立を検討する方は増えています。
しかし、設立後に「想定していたより負担が大きい」と感じる方も少なくありません。

社会保険料の増加や手続きの複雑さ、法人維持にかかるコストなど、設立前に把握しておくべきポイントが多く存在します。
事前の準備が不十分なまま始めてしまうと、思わぬ負担や対応に追われることもあるのです。

この記事では、マイクロ法人設立後に注意が必要な点や、検討段階で確認しておきたいポイントを解説します。
また、「後悔しないための対策」や「設立前に確認すべき注意点」についても、わかりやすく紹介します。

ご自身にとってマイクロ法人が本当に適しているかを判断するための参考にしてみてください。

マイクロ法人設立で後悔してしまう理由

マイクロ法人設立で後悔してしまう理由

マイクロ法人を設立することで節税や社会保険料の最適化などのメリットを感じる方も多い一方で、実際に運営を始めてから「思っていたより手間やコストがかかる」と感じるケースもあります。

ここでは、設立前に理解しておきたい7つの注意点を紹介します。

  • 設立や維持に一定のコストがかかる
  • 経理や申告などの事務作業が発生する
  • 赤字でも税金が発生する
  • 将来の年金額に影響することがある
  • 個人資金とは区別が必要
  • 取締役や出資者が複数いる場合、意思決定に調整が必要
  • 廃業に手間やコストがかかる

設立や維持に一定のコストがかかる

マイクロ法人を設立する際には、初期費用や維持費が発生するため、あらかじめ全体のコストを把握しておくことが大切です。

法人設立時には、主に以下のような費用が必要になります。

必要なコスト内容
登録免許税合同会社で約6万円、株式会社の場合は最低でも15万円程度
定款作成や認証手続き5万円〜10万円ほどの費用がかかることも
印紙代電子定款を選べば不要ですが、紙で作成する場合は4万円が必要

また、設立後も次のような維持費が継続的に発生します。

  • 法人住民税の均等割
  • 税理士への顧問料
  • 会計ソフトの利用料
  • 登記関連費用や書類の郵送費などの事務経費

これらの費用は、法人を維持する限り一定の負担が生じるため、「予想より出費が大きかった」と後悔する人もいます。そのため、設立前に事業規模や目的に応じたシミュレーションを行うことが重要です。
適切な計画を立てておくことで、想定外の支出を防ぎ、安定した運営がしやすくなります。

参考:国税庁|No.7191 登録免許税の税額表

経理や申告などの事務作業が発生する

マイクロ法人は、個人事業主と比べると会計処理や税務申告に関する手続きが増える傾向にあります。

具体的には、以下のような業務対応が必要になります。

  • 法人税、法人住民税、事業税、消費税の申告
  • 決算書や勘定科目内訳書、法人事業概況説明書の作成
  • 年末調整および源泉徴収票の発行
  • 法定調書合計表の提出
  • 税務署や地方自治体への各種届出書類の提出

さらに、経費の取扱いや役員報酬の設定、消費税の課税・免税区分の判断など、専門的な知識が求められる場面も少なくありません。

そのため、多くのマイクロ法人では、正確な申告や効率的な経理体制を整えるために、税理士へサポートを依頼するケースが一般的です。専門家に依頼することで、法令遵守を徹底しつつ、本業に専念できるというメリットも得られます。

参考:国税庁|C1-1 法人税及び地方法人税の申告(法人税申告書別表等)

赤字でも税金が発生する

マイクロ法人を設立した場合、たとえ赤字決算であっても「均等割」と呼ばれる法人住民税を支払う必要があります。

均等割の金額は、資本金の額・従業員数・所在地によって異なりますが、一般的な小規模法人(資本金1,000万円以下・従業員数が少ない場合)では、年間5万円前後から7万円程度が目安となります。

設立初年度から収益が発生しない場合でも、この均等割は原則として納付義務が発生します。そのため、資金繰りが厳しい状況では精神面・経済面の両方で負担を感じることもあるでしょう

ですから、収益が安定するまでの間は、固定的な税負担として資金計画に組み込んでおくことが重要です。(最新の税率は所在自治体の公表資料で必ず確認してください。)

参考:総務省|地方税制度|法人住民税 – 総務省

将来の年金額に影響することがある

マイクロ法人を設立すると、原則として厚生年金と健康保険への加入が必要になります。
特に役員報酬を設定することで、保険料額を調整することができます。ただし、厚生年金の将来受け取れる年金額は、報酬額と加入期間に応じて計算されるため、報酬を低く設定すると保険料は抑えられますが、将来の年金額にも影響することがあります。

一時的なコスト削減に目を向けすぎると、将来的に年金が十分に受け取れず、「もっと支払っておけばよかった」と後悔してしまうケースも少なくありません。

そのため、社会保険料の負担を抑えることだけでなく、長期的な生活設計や年金見込みも考慮して報酬や加入内容を検討することが重要です。必要に応じて、税理士や社会保険労務士に相談しながら判断することをおすすめします。

参考:日本年金機構|厚生年金保険

個人資金とは区別が必要

マイクロ法人を設立すると、法人で得た利益は法人の資産として管理され、個人の資産とは区別されます。そのため、個人の生活費として資金を使う場合には、法人から「役員報酬」として受け取る必要があります。

役員報酬は原則として会計年度の開始から3か月以内に金額を決定し、毎月同額を支払う必要があります(定期同額給与の原則)。このルールに従うことで、法人の経費として適切に処理することが可能です。

つまり、法人化により資金の出入りには一定のルールがあるため、個人の自由に使える範囲は法人の会計上の手続きに沿って調整する必要があります。ただし、ルールを守れば個人の生活費として受け取ることもできます。

参考:国税庁|No.5211 役員に対する給与

取締役や出資者が複数いる場合、意思決定に調整が必要

法人を設立し、他の役員や出資者がいる場合、代表取締役であっても経営判断には一定の制約が生じることがあります。
特に出資者がいる場合、その出資額や持ち分に応じて意思決定に関与する権利があるため、重要な経営判断を行う際には出資者との調整が必要になることがあります。

そのため、自分の理想や方針を重視して法人を設立した場合でも、場合によっては経営判断において他者の意向を考慮する場面が生じることがある点に注意が必要です。

廃業に手間やコストがかかる

マイクロ法人を廃業する際には、いくつかの手続きが必要となります。

具体的な流れとしては以下の通りです。

  • 株主・社員や取引先への通知
  • 株主総会(社員総会)での解散決議
  • 清算人の選任とその登記
  • 法人の解散登記申請
  • 資産や負債の棚卸し
  • 解散に伴う法人税の申告
  • 資産の売却・清算・分配手続き
  • 債権回収および残余資産の処理
  • 株主総会での最終決算の承認
  • 清算結了の登記
  • 清算に関する確定申告の実施

手続きの期間は法人の状況によって異なりますが、2か月以上を要する場合があります。

また、解散手続きに伴い、登録免許税や官報公告費が発生するため、廃業にかかる手間やコストに負担を感じる人もいるでしょう。これらの手続きは、必要に応じて専門家に依頼することも可能です。具体的な費用や期間については、税理士に相談するとスムーズに進められます。

税理士松本|会社設立専門の税理士・社労士・行政書士がフルサポート

マイクロ法人設立で後悔しないための対策

マイクロ法人設立で後悔しないための対策

マイクロ法人設立で後悔しないための対策については、以下の4つが挙げられます。

  • 設立目的を明確にする
  • 専門家に依頼する
  • 法人と個人事業主の違いを把握する
  • 設立に必要なコストをシュミレーションする

それぞれの対策について解説していきます。

設立目的を明確にする

マイクロ法人を設立する際は、まず「なぜ法人をつくるのか」という目的を明確にしておくことが大切です。

法人化には、節税や社会保険の選択肢拡大など、メリットと感じられる点もあります。しかし、これらの理由だけで安易に法人を設立すると、期待していた効果が得られなかったり、法人運営に伴う日常的な手続きや事務作業の負担を感じやすくなったりする場合があります。

一方で、「この会社で何を実現したいか」という目的や方針を明確にしておくと、運営に伴う負担も前向きに捉えやすくなります。

そのため、日々の運営を安定させ、法人設立の判断に後悔しないためにも、設立の動機や目的を事前に整理しておくことが重要です。

専門家に依頼する

マイクロ法人を設立する際には、専門家に相談するのを検討すると安心です。
特に初めて法人を設立される方は、制度や手続きに関する誤解が生じやすく、自己判断だけでは不十分な場合があります。

例えば、以下のような点について専門家のアドバイスが役立ちます。

  • 年収や所得の水準から見た法人化のメリット・デメリット
  • 社会保険の加入義務や負担額の見通し
  • 役員報酬や経費の適切な設定方法
  • 法人と個人の収支・帳簿の区分
  • 設立後に必要な手続きや注意点

税理士などの専門家と継続的に関わることで、税務リスクを適切に管理しながら、適正な税務上のメリットを受けられる可能性があります。
相談や顧問契約には費用がかかりますが、制度の理解や業務効率の向上につながる投資として考えられます。

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法人と個人事業主の違いを把握する

法人と個人事業主では、資金管理や税務処理の仕組みが異なります。そのため、事前に違いを理解しておくことが重要です。

たとえば、法人の代表であっても、法人の銀行口座に入った資金を自由に個人で使用することはできません。生活費や個人的な支出に充てる場合は、「役員報酬」として正式に設定し、給与として受け取る必要があります。

また、経費として認められる支出には制限があり、事業に直接関連するもののみが対象となります。事業と関係のない支出を経費として計上すると、税務上の指摘を受ける可能性があるので注意が必要です。

このように、法人化には適切な資金管理や会計処理の理解が不可欠です。事前に仕組みやルールを把握することで、安心して事業運営を行うことができます。

設立に必要なコストをシュミレーションする

マイクロ法人の設立を検討する際は、法人化によって税金や手取りにどのような変化が生じるかを、あらかじめおおまかに試算して把握しておくことが望ましいです。

漠然としたイメージだけで判断するのではなく、現状の個人事業としての収支と、法人化後のシナリオを比較しながら検討することで、より納得感のある意思決定につながります。

具体的には、以下のような観点で事前に確認するとよいでしょう。

  • 現状の個人事業としての手取りと、法人化後に想定される手取りの比較
  • 役員報酬の設定に応じて変動する社会保険料の負担額
  • 法人運営に必要な年間コスト(法人住民税、会計ソフト利用料、税理士への顧問料など)
  • 消費税の納税義務の有無(免税期間やインボイス制度への対応を含む)

これらを踏まえて検討することで、「法人化による経済的なメリット・デメリットの目安」や「法人化のタイミング」について、より客観的に判断することが可能です。必要に応じて、税理士など専門家に相談しながら試算すると安心です。

参考:国税庁|No.6501 納税義務の免除

マイクロ法人を設立する際の注意点

マイクロ法人を設立する際の注意点

マイクロ法人を設立する際の注意点として、以下の4つが挙げられます。

  • 会社に副業がバレるリスクがある
  • 個人事業主と並行する際は明確に区別する
  • 社会保険料が増えてしまう可能性がある
  • ペーパーカンパニーは作らない

それぞれの注意点について解説していきます。

会社に副業がバレるリスクがある

マイクロ法人を設立する際、本業の会社に副業が知られる可能性について注意が必要です。

会社員として働きながらマイクロ法人を立ち上げる場合、法人の役員報酬に応じて社会保険の加入が必要になることがあります。

社会保険の手続きによっては、本業の勤務先に情報が通知されるケースもあるでしょう。
副業の存在を会社に知られたくない場合は、マイクロ法人の設立や保険対応に詳しい税理士などの専門家に相談すると、適切な手続きやリスク管理の方法を確認できます。

個人事業主と並行する際は明確に区別する

マイクロ法人と個人事業主を並行して運営する場合は、それぞれの事業内容や業務範囲を明確に区分しておくことが重要です。もし同じ業種で両方の事業を展開した場合、税務署から「意図的に収益を操作して税負担を軽減しようとしている」とみなされる可能性があります。

同じような業務を法人と個人で行う場合でも、収益や経費の管理を適切に行い、帳簿上で明確に区分しておくことで、税務上のリスクを抑えることができます。

不明点がある場合は、税理士に相談して、どのように事業内容や会計処理を整理すべきか確認することをおすすめします。

参考:国税庁|税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)

社会保険料が増えてしまう可能性がある

マイクロ法人を設立し役員報酬を受け取る場合、社会保険への加入義務が生じます。

会社勤めをしながら法人を運営し役員報酬を受ける場合、本業の給与と合わせて社会保険料が計算されるため、保険料の負担額が変わる可能性があります。

社会保険料は、報酬額や扶養状況に応じて変動しますので、役員報酬の設定によっては負担が大きくなる場合があります。一方で、報酬額を極端に低く設定すると、税務署が報酬の妥当性を確認することがあります。

こうした点について不安がある場合は、事前に税理士に相談することで、適切な報酬設定や社会保険の手続きを進めることが可能です。

参考:日本年金機構|事業主の方 社会保険事務担当の方

ペーパーカンパニーは作らない

「ペーパーカンパニー」とは、登記上は会社として登録されているものの、まだ事業活動を行っていない法人を指す場合があります。

このような法人は、税務当局から事業実態が十分に確認できない場合、節税目的などの法人運営の意図について確認を求められることがあります。

すべての売上がない法人がペーパーカンパニーに該当するわけではありませんが、法人としての活動内容や事業計画を明確にしておくことが重要です。たとえ収益がまだ発生していなくても、事業の意思や実績を示せるようにしておくと安心です。

後悔しないように慎重に判断しよう!

後悔しないように慎重に判断しよう!

今回は、マイクロ法人設立で後悔する理由や注意すべきポイントについてご紹介しました。

マイクロ法人を設立する場合、制度や手続きの内容を十分に理解しておかないと、想定外のコストや手続きの煩雑さに直面することがあります。

法人設立を検討する際は、まず「法人を作る目的」を明確にし、ご自身の所得状況や事業の方向性、今後の計画を踏まえたうえで、メリットとデメリットを客観的に比較することが重要です。

また、必要に応じて税理士などの専門家に相談し、具体的なアドバイスを受けることで、スムーズな法人運営やコストの見通しを立てやすくなります。

この記事を参考に、慎重に検討したうえでマイクロ法人設立を判断しましょう。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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