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会社設立
法人設立届出書の項目別の書き方とは?入手方法や提出方法などについても解説
読了目安時間:約 8分
会社を設立したあとは、税務署に対していくつかの届出書類を提出する必要があります。
その中でも代表的なものの一つが「法人設立届出書」です。
法人設立届出書は、法人の設立を税務署に正式に報告するための書類であり、記載内容に不備があると受理が遅れたり、追加で確認を求められる場合もあります。
初めて作成する方にとっては記入方法で迷うことも多いため、あらかじめ基本的な書き方を理解しておくことが大切です。
この記事では、「法人設立届出書」の各項目の書き方をはじめ、入手方法や提出方法についても詳しく解説します。
これから法人設立の税務手続きを進める方は、ぜひ参考にしてみてください。
法人設立届出書とは?

法人設立届出書とは、新たに法人を設立した際に、その法人の設立を所轄の税務署へ報告するための書類です。
法人税法およびその施行規則に基づき、株式会社や合同会社などの法人を設立した場合には、税務署へ提出することが求められています。
また、法人の設立内容は、国税だけでなく地方税の課税対象にも関係するため、都道府県や市区町村にも「法人設立・設置届出書」として届け出る必要があります。
なお、法人設立届出書を提出しなかった場合に直接的な罰則はありませんが、提出しておくことで、税務署からの案内や申告関連書類の送付、新設法人向けの情報提供などをスムーズに受けられるメリットがあります。
円滑な税務手続きを進めるためにも、早めの提出が望ましい書類です。
参考:国税庁|C1-4 内国普通法人等の設立の届出
法人設立届出書の項目別の書き方

法人設立届出書には、国税庁が定める様式に基づき、主に以下の項目を記入する欄があります。
- 項目1:日付・税務署名
- 項目2:本店又は主たる事務所の所在地
- 項目3:納税地
- 項目4:法人名・法人番号・代表者氏名・代表者住所
- 項目5:設立年月日・事業年度
- 項目6:設立時の資本金または出資金の額
- 項目7:消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日
- 項目8:事業の目的・「支店・出張所・工場等」
- 項目9:設立の形態
- 項目10:事業開始見込みの年月日
- 項目11:「給与支払事務所等の開設届出書」提出の有無
- 項目12:関与税理士
- 項目13:添付書類等
- 項目14:税理士署名押印
以下では、それぞれの項目の内容や記入時の注意点を、実務に即して解説します。
項目1:日付・税務署名
法人設立届出書に記載する日付は、提出日を基準にした和暦で記入するのが原則です。
書類を税務署に直接持参する場合や郵送する場合には、税務署側で受領日が確認され、受付印が押されます。
なお、提出日の日付を記入する際は、実際の提出日とずれが生じないよう注意しましょう。
記入内容に不安がある場合は、提出時に税務署窓口で確認するか、事前に税理士へ相談すると安心です。
また、「税務署長 殿」と記載する欄には、法人の納税地を管轄する税務署名を正確に記入します。
納税地は、法人の本店所在地を所管する税務署を指します。
どの税務署が該当するか分からない場合は、国税庁の公式サイトにある「税務署の所在地・案内」検索機能を活用すると便利です。
参考:国税庁|税務署の所在地などを知りたい方
項目2:本店又は主たる事務所の所在地
法人設立時に法務局へ提出した登記申請書に記載されている「本店の所在地」は、会社の公式な住所として扱われます。
一方で、「主たる事務所」とは、実際の業務運営や管理を行う中心的な拠点を指し、本店所在地と異なる場合もあります。
法人設立届出書には、登記申請で届け出た本店住所をそのまま記入するのが原則です。
また、電話番号欄には本店で利用している固定電話番号を記載するのが望ましいとされています。
もし固定電話が未設置の場合は、日中い連絡が取れる代表番号(仮設電話・代表者携帯など)を記載してください。
項目3:納税地
法人税法第16条では、法人の納税地は「本店または主たる事務所の所在地」と定められています。
そのため、通常は法人設立届出書に本店所在地を記載すれば問題ありません。ただし、登記上の本店所在地が自宅であり、実際の業務を行っている場所が異なる場合など、本店と主たる事務所が一致しないケースもあります。
こうした場合の対応例としては、以下が考えられます。
- 会社法に基づき、本店所在地を実際の業務実態に合わせて変更する(登記および税務署への届出が必要)
- 所轄の税務署に相談し、納税地の判断について指導を受ける(法人税法第18条に基づく)
特に、複数の拠点や事業を持つ法人の場合、納税地の適正な判断が重要です。判断に迷う場合は、本店所在地を管轄する税務署に確認することをおすすめします。
参考:e-Gov 法令検索法人税法(昭和四十年法律第三十四号)
項目4:法人名・法人番号・代表者氏名・代表者住所
「法人名」の欄には、登記簿に記載されている正式名称を省略せずに記入し、フリガナも正確に記載してください。
「法人番号」は、国税庁の「法人番号公表サイト」で確認できます。会社名や所在地で検索する場合、類似の名称を持つ企業が表示されることもあるため、住所や設立日なども併せて確認し、自社の番号と一致していることを確認しましょう。
法人番号が公表サイトに反映されるタイミングは、設立登記完了後の午後以降または翌営業日となることが一般的です。その後、国税庁から送付される「法人番号指定通知書」でも正式な番号を確認できます。
なお、法人設立届出書を提出する時点で法人番号が未確認の場合は、空欄のまま提出して問題ありません。
「代表者氏名・代表者住所」の欄には、会社の代表者のフルネームと住所を記入し、連絡可能な電話番号も併せて記入してください。固定電話でも携帯電話でも問題ありません。
参考:国税庁法人番号公表サイト
項目5:設立年月日・事業年度
「設立年月日」欄には、登記事項証明書に記載されている会社設立の日付を記入します。
一般的に、この日付は法人の登記申請をおこなった日です。
一方、「事業年度」は、会社の会計期間を示すもので、定款にその期間が明記されている場合は、定款の内容に従って記載します。事業年度は、税務上の損益計算や納税の基準となる期間であり、会社法の「会社計算規則 第59条第2項」および「法人税法 第13条」により、原則として1年を超えない範囲で設定する必要があります。
定款に事業年度の記載がない場合は、設立時に任意で設定した期間(原則1年以内)を法人設立届出書に記載することが一般的です。
参考:e-Gov 法令検索|会社計算規則(平成十八年法務省令第十三号)
項目6:設立時の資本金または出資金の額
登記事項証明書に記載されている資本金の金額を、そのまま法人設立届出書に記入します。
資本金(出資金)とは、法人が事業を開始・運営するための元手となる資金で、設立時に会社へ拠出された金額を指します。
株式会社の場合は、会社法により資本金は1円以上必要ですが、合名会社や合資会社では、金銭出資だけでなく「労務出資(労働力の提供)」も認められる場合があります。このため、登記上の資本金が0円になることもあります。
いずれの場合も、登記事項証明書に記載された資本金の金額は正式な情報ですので、法人設立届出書には必ずその内容を正確に転記するようにしましょう。
参考:国税庁|4 資本金等の額及び資本等取引
項目7:消費税の新設法人に該当することとなった事業年度開始の日
この欄の記入方法は、会社設立時の資本金額や消費税の取扱いに応じて異なります。
資本金が1,000万円以上の法人では、設立日を基準として「基準期間」の欄に記入するのが一般的です。
一方、資本金が1,000万円未満の場合は、空欄のままにすることも可能ですが、税務署から確認が入る場合もあります。
消費税については、原則として基準期間における課税売上高が1,000万円を超える場合に納税義務が生じます。設立当初の法人には基準期間の売上がないため、資本金の額により課税事業者かどうかが判定されます(消費税法第12条の2)。
具体的には、設立時の資本金が1,000万円以上の場合は、設立当初から課税事業者となるケースが一般的です。
項目8:事業の目的・「支店・出張所・工場等」
「事業の目的」に関する欄は複数に分かれており、それぞれ適切に記入する必要があります。
まず、上部にある「定款等に記載しているもの」という欄には、会社設立時に定款へ明記した事業内容を記載します。提出時には定款の写しも添付するため、欄のスペースが限られる場合は、主な事業内容を簡潔にまとめて記入してください。
「現に営んでいる又は営む予定のあるもの」の欄には、定款に記載した事業と同一の場合は、前欄の内容を参照する旨を記載することも可能です。定款に記載されていないが、今後開始する予定の事業がある場合は、具体的に内容を追記してください。
また、「支店・出張所・工場等」の欄には、本店以外に営業所や出張所、工場などがある場合は、その名称と所在地を記載します。支店等がない場合は、空欄のままで差し支えありません。
参考:日本公証人連合会|定款等記載例(Examples of Articles of Incorporation etc)
項目9:設立の形態
法人設立届出書の「設立の形態」欄では、以下の5つの選択肢から、法人の設立状況に最も該当するものを選んで○印を付けます。
- 個人事業を法人化して設立した場合
- 合併により法人が設立された場合
- 新設分割(分割型・分社型・その他)によって設立された場合
- 現物出資によって法人が設立された場合
- その他(新規設立など)
例えば、もともと個人事業を営んでいた方が法人化する場合は「個人事業を法人化」を選択します。この際、必要に応じて、過去に確定申告を提出した税務署名や整理番号を記入することもあります。
完全に新規で法人を設立する場合は「その他」を選び、括弧内に「新設法人」や「新規開業」などと記載すると分かりやすくなります。
いずれの場合も、自社の設立形態に合った選択肢を正確に記入することが重要です。書き方に迷う場合は、税理士に相談すると安心です。
項目10:事業開始見込みの年月日
事業開始日には、法人や個人事業で実際に事業や業務を開始した日、または開始が見込まれる日を記入します。
開業準備中(店舗の内装や設備の設置など)で、まだ売上や取引が発生していない場合は、準備期間として事業開始日には含まれません。
どの日を記入すべきか迷う場合は、最初に事業としての具体的な活動(サービス提供や契約締結など)が行われる予定の日を目安にするのが安全です。
項目11:「給与支払事務所等の開設届出書」提出の有無
会社から給与や役員報酬を支払う予定がある場合は、受給者が代表者1人だけであっても、原則として「法人設立届出書」に加えて「給与支払事務所等の開設届出書」の提出が必要です。
この欄では、提出状況に応じて「有」「無」を選択します。
- すでに開設届出書を提出済み、あるいは法人設立届出書と併せて提出する場合は「有」を選択
- 当面給与や役員報酬を支払う予定がなく、金額も0円の場合は「無」を選択
判断に迷う場合は、税理士など専門家にご相談ください。
項目12:関与税理士
法人設立に関与した税理士がいる場合は、その氏名と所属事務所の所在地を記入します。
記載の範囲について明確な基準はありませんが、顧問契約を結んでいる場合や、法人設立届出書の作成を依頼するなど、法人の状況を把握している税理士であれば記載することが推奨されます。
一方、数回の相談や簡単なアドバイスにとどまる場合は、必ずしも記載する必要はありませんが、税務署から確認を求められる可能性があることを念頭に置き、判断してください。
関与税理士がいない場合や該当が不明な場合は、この欄を空欄のまま提出しても問題ありません。
項目13:添付書類等
この項目では、法人設立届出書に添付する関連書類について説明します。
法人設立届出書の提出時には、原則として「定款等の写し」を添付します。
さらに、会社の設立形態や出資状況によっては、所轄の税務署から以下の書類の提出を求められる場合があります。
- 株主名簿
- 設立時点における貸借対照表
- 現物出資がある場合には、出資者の氏名や出資金額などを記載した明細書
添付書類の具体的な内容について不明な場合は、事前に所轄の税務署へ確認することをおすすめします。
参考:国税庁|法 人 設 立 届 出 書
項目14:税理士署名押印
法人設立届出書を税理士に作成・代理してもらう場合は、作成担当の税理士の氏名と押印を記載します。税理士が関与した場合は、署名・押印が必要となるケースが一般的です。
一方で、法人代表者が自ら作成する場合は、この欄を空欄のままにしても差し支えありません。
将来的に税理士に作成を依頼する予定がある場合は、提出前に署名・押印の有無を確認しておくと安心です。
法人設立届出書の入手方法

法人設立届出書は、所定の様式に従って作成する必要があります。書類は税務署の窓口で直接受け取ることが可能で、また国税庁の公式ウェブサイトにある「内国普通法人等の設立の届出」ページからPDF形式でダウンロードすることも可能です。
なお、都道府県や市区町村に提出する法人関連の届出書については、自治体ごとに様式や提出方法が異なる場合があります。多くの自治体ではホームページ上に書式が掲載されていますが、詳細が不明な場合は、各自治体の窓口に問い合わせするのが良いでしょう。
参考:国税庁|C1-4 内国普通法人等の設立の届出
法人設立届出書の提出先

法人を設立した後は、所轄の税務署に「法人設立届出書」を提出する必要があります。
提出は設立日から2か月以内が目安とされており、書類は会社用の控えを含めて複数部作成することが一般的です。税務署の窓口に持参すると、控えにも受付印をもらえます。郵送での提出にも対応しています。
また、法人設立届出書の提出先は税務署だけでなく、都道府県の税事務所や市町村の法人住民税を担当する部署にも、それぞれ提出が求められます。届出書の様式や提出先は地域によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
参考:国税庁|No.5100 新設法人の届出書類
法人設立届出書の提出方法

法人設立届出書の提出方法には、主に次の2つがあります。
- 紙で提出する方法
- e-TAXを使用して電子申請する方法
それぞれの方法について解説していきます。
紙で提出する方法
紙で法人設立届出書を提出する場合は、税務署への提出用と会社で保管する控え用として、各1部ずつ用意するのが一般的です。
提出方法としては、税務署の窓口に直接持参する方法と、郵送で提出する方法のいずれかを選べます。
窓口で提出する場合は、控え書類に受付印を押してもらえるため、その場で提出状況を確認できます。郵送の場合は、返信用封筒(切手貼付済)を同封すると、受付印付きの控えを後日受け取ることが可能です。
設立直後は手続きが多く忙しくなることもあるため、あらかじめ書類の準備や段取りを整えておくと、よりスムーズに手続きを進められます。
e-TAXを使用して電子申請する方法
電子申請ツール「eLTAX」を活用すると、「法人設立届出書」や必要な添付書類を印刷して都道府県税事務所や市区町村役場へ持参・郵送する手間をある程度軽減できます。
このシステムを利用すれば、オンライン上で手続きを進められるため、事務作業の負担を抑えることが可能です。
また、税理士の中にはeLTAXを用いて手続きを代行する場合もあります。創業時に税理士へ依頼すれば、書類作成や提出作業にかかる時間を節約でき、立ち上げ期の業務に専念しやすくなります。必要に応じて、専門家への依頼も検討するとよいでしょう。
参考:電子申請・届出とは – eLTAX – 地方税共同機構
法人設立届出書の期限

法人設立後に各行政機関へ提出する書類には、それぞれ提出期限が定められています。
地方自治体によって異なりますが、「法人設立届出書」は一般的に法人の設立日からおおむね1か月以内を目安に提出するケースが多く見られます。
一方、国税庁管轄の税務署へ提出する届出書は、会社の設立登記日から原則として2か月以内が提出期限です。そのため、地方自治体への提出期限のほうが早くなる場合があるため、スケジュール管理には注意が必要です。
なお、地方自治体によっては提出期限を過ぎた場合の対応が異なるため、事前に確認しておくことをおすすめします。実務上は、税務署への届出時期にあわせて地方自治体にも同時に提出するケースも少なくありません。
参考:国税庁|No.5100 新設法人の届出書類
忘れずに法人設立届出書を提出しよう!

本記事では、法人設立届出書の項目別の記入方法についてご紹介しました。
会社を設立すると、その法人としての活動に伴い法人税などの各種税金の納付義務が生じます。その関連手続きの一つとして、所轄の税務署への「法人設立届出書」の提出が求められます。
この届出書には提出期限が定められており、設立後は期限内に準備・提出を進めることが望ましいです。
また、法人設立時にはこの届出書以外にもさまざまな書類の提出が必要となる場合があります。事前に必要な書類を整理し、漏れのない対応を行うことが大切です。
法人設立後は、本記事の内容を参考にして、必要な届出書類の提出を適切に進めることをおすすめします。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

