2025.10.27

会社設立

合資会社とは?メリット・デメリットや形態が異なる会社の種類について紹介

合資会社とは

読了目安時間:約 7分

合資会社は、出資者として無限責任社員と有限責任社員の両方が、それぞれ少なくとも1名ずつ必要となる法人形態の一つです。

合同会社と同じ「持分会社」に分類されますが、出資者の責任範囲や構成の仕組みに違いがある点が特徴です。

本記事では、合資会社の基本的な仕組みや特徴について解説します。
あわせて、合資会社を設立する際のメリット・デメリット、および他の会社形態との違いについても紹介します。

本記事を参考に、合資会社の制度や特徴を正しく理解していただければ幸いです。

合資会社とは?

合資会社とは?

合資会社は、設立の際に2名以上の出資者が必要となる法人形態です。
その内訳としては、「無限責任社員」と「有限責任社員」がそれぞれ1名以上含まれていなければなりません。

合資会社の主な特徴として、次の2点が挙げられます。

  • 持分会社の一種であること
  • 無限責任社員と有限責任社員で構成されること

以下では、それぞれの特徴について詳しく解説します。

持分会社の一種であること

合資会社は、「持分会社」と呼ばれる会社形態の一種です。
持分会社とは、株式会社のように株式を発行するのではなく、社員(出資者)が出資とともに会社運営に一定の関与を持つ仕組みを備えています。

この持分会社には、合同会社・合名会社・合資会社の3種類があります。

合資会社は、法人全体の中では設立数が少ない形態です。
2006年の会社法施行前には、最低資本金制度の影響で比較的設立しやすい点から選ばれることもありましたが、現在では株式会社や合同会社も資本金1円から設立できるようになったため、資本金面での違いはほとんどなくなっています。

合資会社では、無限責任社員と有限責任社員の双方が出資者(社員)となり、会社の運営は主に定款で定められた業務執行社員や代表社員の判断に基づいて行われます。
このような社員による柔軟な経営体制は、同じ持分会社である合同会社にも共通する特徴です。

参考:法務局|持分会社(合同会社・合名会社・合資会社) – 法務局 – 法務省

無限責任社員と有限責任社員で構成されること

合資会社の大きな特徴の一つは、「無限責任社員」と「有限責任社員」という、責任の範囲が異なる2種類の社員が存在する点です。

有限責任社員は、出資した金額の範囲内でのみ会社の債務に責任を負い、それを超える負担を個人として求められることはありません。
一方で、無限責任社員は、会社が債務を履行できない場合には、その不足分を自らの財産で弁済する義務を負うことがあります。

責任の範囲という観点から見ると、すべての社員が無限責任を負う「合名会社」と、全員が有限責任社員で構成される「合同会社」の中間的な性質を持つ会社形態といえます。

参考:J-Net21中小企業ビジネス支援サイト|有限責任と無限責任について教えてください。 | ビジネスQ&A

合資会社は簡単に設立できる?

合資会社は簡単に設立できる?

合資会社は、他の会社形態と比べて比較的シンプルな手続きで設立できる点が特徴です。
株式会社のように定款の認証を公証人役場で受ける必要がなく、登録免許税などの初期費用も比較的少額で済む傾向にあります。

また、合資会社は合同会社や合名会社と同様に「持分会社」に分類されるため、設立の流れに共通する部分も多く見られます。

たとえば、社員全員が出資者として経営に関与する点や、出資形態に一定の柔軟性がある点が挙げられます。なお、会社法上は「財産以外の出資」も可能とされていますが、実務上は労務提供のみを出資とする場合には慎重な対応が必要です。

合資会社設立の基本的な流れは、次のとおりです。

  1. 無限責任社員または有限責任社員の候補者を確保し事業の計画を立てる
  2. 出資者(社員)となる予定の者が協議し、定款を作成する
  3. 出資を実行する
  4. 必要な書類を準備し、法務局で設立登記を行う

登記が完了すると、合資会社としての法人格が発生し、正式に事業を開始することができます。

参考:法務局|持分会社(合同会社・合名会社・合資会社) – 法務局 – 法務省

合資会社を設立することのメリット

合資会社を設立することのメリット

合資会社を設立するメリットとしては、主に以下の点が挙げられます。

  • 出資額の柔軟性
  • 設立コストを抑えやすい
  • 定款の内容を比較的自由に決められる
  • 決算公告の義務がない

それぞれのメリットについて解説していきます。

出資額の柔軟性

株式会社や合同会社では、設立時に資本金を用意することが一般的ですが、合資会社の場合も出資は必須です。ただし、法律上は金額の下限は定められていないため、比較的柔軟に出資額を設定できます。

出資方法については、原則として現金で行いますが、不動産や設備などの物的資産を提供する「現物出資」、「労務出資」や「信用出資」といった形も認められています。現物出資を行う場合には、評価方法や登記手続きに注意が必要です。

労務出資とは、自分の労働力や技能そのものを出資として認めるものであり、信用出資は個人の社会的信用や人脈を会社運営に活用させることを目的とした出資形態です。

なお、労務出資と信用出資は無限責任社員に限って認められており、有限責任社員には適用されないので注意が必要です。出資方法や責任範囲に関して不明な点がある場合は、専門家に相談することをおすすめします。

参考:法務局|現物出資について

設立コストを抑えやすい

合資会社は、合同会社などの他の持分会社と同様に、株式会社に比べて設立時の費用を抑えやすい点がメリットの一つです。

具体的には、登録免許税の目安として、株式会社ではおおよそ15万円程度、合資会社では6万円程度とされています。また、株式会社の設立では公証役場で定款の認証が必要となり、最大5万円程度の費用がかかる場合があります。

これに対し、合資会社では定款認証が不要であるため、認証費用はかかりません。ただし、印紙代や登記に必要な書類取得費用など、その他の手続き費用は発生します。

このように、設立にかかる初期費用を比較すると、合資会社は比較的コストを抑えて会社を立ち上げやすい形態といえます。小規模事業の立ち上げを検討されている方にとって、一つの選択肢として考慮する価値があります。

参考:国税庁|No.7191 登録免許税の税額表

定款の内容を比較的自由に決められる

株式会社では、経営方針や重要な事項を決定する際に「株主総会」の開催が法律上求められます。
一方、合資会社は、合同会社など他の持分会社と同様に、株主総会の開催義務はありません。

合資会社では、社員間の取り決め(定款)に基づき、経営に関する意思決定が行われます。
このため、意思決定の方法や組織運営については、会社法の規定に反しない範囲で柔軟に定款で定めることが可能です。

こうした特徴により、株式会社に比べて、定款で定めた範囲内で経営の進め方を調整しやすい点が合資会社の特徴の一つです。

参考:法務省|定時株主総会の開催時期について

決算公告の義務がない

決算公告とは、企業がその会計年度の財務状況などを社会に対して開示するための手続きです。

株式会社の場合、株主総会で決算が承認された後、速やかにその内容を公告することが会社法で義務づけられており、通常は年に1回公告をおこなう必要があります。

これに対して、合資会社には会社法上、決算公告の義務はありません。そのため、公告手続きにかかるコストや手間を省略できる場合があり、経営運営の柔軟性という点で利点となることがあります。

合資会社を設立する場合の注意点

合資会社を設立することのデメリット

合資会社を設立する際の注意点として、以下の3点が挙げられます。

  • 社員構成に制約がある
  • 株式による資金調達はできない
  • 社会的信用度の特性

それぞれのデメリットについて解説していきます。

社員構成に制約がある

合資会社を設立するには、無限責任社員と有限責任社員の双方がそれぞれ1名以上必要で、合計で最低2名の社員が不可欠です。
そのため、個人のみでの設立はできません。

また、設立後に社員の一人が退職した場合には、会社の存続を維持するために新たな社員を迎え入れる必要があります。
このように、社員構成に関する制約があることは、合資会社の運営上の留意点の一つです。

株式による資金調達はできない

合資会社は株式を発行することができないため、株式市場への上場はできません。そのため、資金調達の手段として株式の発行を利用することはできず、資金の拡大には銀行からの借り入れや、既存社員による追加出資などが必要となります。

また、株式制度を採用していないため、株式会社のように株式の譲渡を通じて経営権を承継することはできません。一方、株式会社では株式を売買することで所有権を移転できるため、経営権の承継が比較的円滑に行われる場合があります。

参考:日本政策金融公庫|融資制度を探す

社会的信用度の特性

合資会社は、株式会社や合同会社に比べると設立件数が少なく、一般の方には馴染みが薄い法人形態です。そのため、取引先や金融機関など、相手によっては名称や仕組みに関する理解が十分でない場合があります。

ただし、これは必ずしも信用度が低いことを意味するわけではなく、事業内容や経営状況、契約・信用管理の方法などによって信頼性を示すことが可能です。

合資会社と形態が異なる会社の種類

合資会社と形態が異なる会社の種類

合資会社とは異なる会社形態として、主に以下の3種類があります。

  • 種類①:株式会社
  • 種類②:合同会社
  • 種類③:合名会社

それぞれの項目について解説していきます。

参考:持分会社(合同会社・合名会社・合資会社) – 法務局 – 法務省

種類①:株式会社

株式会社は、日本における法人形態の中で最も一般的な会社形態です。多くの企業が採用しており、比較的社会的認知度が高い傾向があります。

株式を発行して資金を調達し、経営を行う仕組みであり、会社法の改正(2006年)により、理論上は資本金1円から設立できるようになりました。ただし、実務上は事業運営に必要な資金を確保することが重要です。

株式会社の特徴の一つとして「所有と経営の分離」があります。会社の所有者である株主が経営を任せる取締役を選出する仕組みですが、実際には株主と取締役が同一である場合も多く、個人で株式会社を設立して運営することも可能です。

参考:J-Net21中小企業ビジネス支援サイト|新会社法って何ですか?資本金1円でも会社が設立できると聞きました。

種類②:合同会社

合同会社は、社員1名から設立可能で、設立手続きや費用面において株式会社より比較的簡便な会社形態です。

合資会社などと同じ「持分会社」に分類されますが、社員全員が有限責任を負う点が特徴です。
また、出資者自らが経営に関与する仕組みであるため、株式会社に比べて運営方法を柔軟に定めやすく、定款で利益の分配方法も自由に設定できます。

これらの特徴から、比較的小規模な事業やスタートアップなどで選ばれることがあります。

種類③:合名会社

合名会社は、持分会社に分類される法人形態の一つで、全ての出資者が無限責任を負う点が特徴です。社員全員が経営権と代表権を持ち、出資者自らが経営に関与する仕組みとなっています。

合名会社は法人格を有しており、会社としての所得は法人税の対象となります。また、合資会社で有限責任社員が全員退任し、無限責任社員のみが残った場合は、会社の構成が変化するため、法律上自動的に合名会社へ移行します。

合資会社における事業承継のポイント

合資会社における事業継承のポイント

合資会社における事業承継のポイントとしては、以下の3点が挙げられます。

  • 計画的な準備
  • 持分承継に関する定款・契約の整備
  • 事業承継税制の活用

それぞれのポイントについて解説していきます。

計画的な準備

合資会社における事業承継は、事前の準備や計画が重要です。後継者がスムーズに事業を引き継げるよう、教育や業務の引き継ぎ体制を整え、事業承継の方法を整理しておくことが望まれます。

また、出資持分の相続に関しては、評価額によって相続税が発生する場合がありますので、事前に税務上の対策を検討しておくことが有用です。

さらに、相続によって持分を取得した相続人が払い戻し請求権を行使して社員となる場合、出資額や損益の配分に影響が出ることがあります。こうした場合は、定款の定めなどを活用し、事前に配分のバランスを調整しておくことが推奨されます。

持分承継に関する定款・契約の整備

合資会社では、社員が死亡した場合に備えて、持分の承継に関するルールを定款にあらかじめ定めておくことが重要です。

会社法では、定款に相続に関する規定を設けている場合、相続人は故人の持分を承継する手続きを行うことができます。ただし、合資会社の社員としての地位を引き継ぐには、原則として他の社員の同意が必要です。そのため、定款で明文化しておくことで、承継手続きや事業の継続をスムーズに進めやすくなります。

参考:e-Gov 法令検索|会社法

事業承継税制の活用

事業承継税制とは、企業の後継者が先代経営者から株式や資産を引き継ぐ際に、相続税や贈与税の納税を一時的に猶予、または一定の条件を満たす場合に免除できる制度です。

中小企業等に該当する合資会社も、この制度の対象に含まれ、事業承継時の税負担を軽減する手段の一つとして利用できます。

事業承継税制には、「一般措置」と「特例措置」の2種類があります。特に特例措置は、平成30年度の税制改正により創設され、中小企業の円滑な事業承継を支援するため、2027年12月31日までの期間限定で優遇内容が拡充されています。

特例措置を利用するには、「経営承継円滑化法」に基づく認定を受ける必要があります。認定を受けた後、所定の手続きを行うことで相続税や贈与税の納税が猶予されます。ただし、猶予期間中は「年次報告書」や「継続届出書」の提出など一定の手続き義務があるため、運用には注意が必要です。

また、猶予されている相続税・贈与税は、後継者が死亡するなど、一定の要件を満たした場合に限り免除されることがあります。制度の詳細や適用可否については、専門家に相談しながら検討することが望ましいでしょう。

参考:国税庁|事業承継税制特集

合資会社の特徴を正しく理解しよう!

合資会社の特徴を正しく理解しよう!

今回は、合資会社の特徴について解説しました。
合資会社とは、無限責任社員と有限責任社員をそれぞれ1名以上含む、計2名以上の社員によって設立される会社形態です。

合資会社のメリットとしては、設立費用が株式会社に比べて抑えられることや、定款で社員間の役割や利益配分などを柔軟に定めやすい点が挙げられます。一方で、無限責任社員は会社の債務に対して個人財産で責任を負うため、経営リスクを十分に理解したうえで設立を検討することが重要です。

これから合資会社の設立を検討する場合は、会社形態ごとの特徴やリスク、税務上の扱いなどを専門家と相談しながら判断することをおすすめします。


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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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