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会社設立
共同経営で会社設立するリスクとは?失敗を防ぐ株主間契約の基本
読了目安時間:約 15分
目次
共同経営での会社設立:魅力と背中合わせの現実
友人や信頼できるビジネスパートナーと複数人で起業する「共同経営」での会社設立は、多くの起業家にとって魅力的な選択肢です。
一人で起業する場合と比較して、初期の自己資金を厚くできるだけでなく、営業と開発などお互いの異なるスキルを補完し合うことで、事業展開のスピードを飛躍的に高めることができます。
しかし一方で、「共同経営は失敗しやすい」「友人同士での起業は避けるべき」といった厳しい現実を耳にする機会も多いのではないでしょうか。
創業期は強固な信頼関係で結ばれていても、事業が成長しフェーズが変わるにつれ、経営方針や利益配分、事業へのコミットメントの差などを巡って意見が対立することは決して珍しくありません。
特に、会社法上の決議ルールを十分に理解しないまま、平等性を重視して安易に出資比率を決めてしまうと、後々取り返しのつかない事態を招く恐れがあります。
会社設立前に知っておくべきリスクと「株主間契約」の重要性
共同経営において最も警戒すべきリスクの一つが、経営陣の間で意見が真っ向から対立し、会社の意思決定が完全にストップしてしまう「デッドロック」と呼ばれる状態です。
意思決定の停滞は、変化の激しいビジネス環境において、会社にとって致命的なダメージとなりかねません。
このような事態を防ぐためには、出資比率を適切に設定する(51%や67%といったデッドラインを意識する)とともに、会社設立の段階で「株主間契約」を締結しておくことが実務上非常に重要となります。
株主間契約とは、定款や会社法だけではカバーしきれない、共同創業者間の細かな取り決めを定める契約のことです。あらかじめ最悪の事態を想定し、解決策をルール化しておくことで、無用なトラブルを回避し、事業そのものに集中できる環境を構築できます。
共同経営における出資比率の決定は、会社法上の決議要件(普通決議や特別決議)に直結するため、極めて慎重な検討が必要です。安易な「50%対50%」の均等出資は避け、誰が最終的な意思決定権を持つのかを明確にしておくことが、企業存続の鍵となります。
本記事では、共同経営での会社設立を検討されている方に向けて、出資比率の考え方から、将来のトラブルに備えた契約のポイントまでを詳しく解説します。以下の項目を中心に、実務上押さえておくべき要点を確認していきましょう。
- 出資比率のデッドライン(51%・67%)の正しい理解と設定
- 意見対立時(デッドロック)を解消する具体的なルール作り
- 将来の創業者離脱に備えた株式の取り扱い・買取方針
- 事業を停滞させないための事前合意事項の整理
会社設立の手続きや契約書の作成においては、法務・税務の専門的な判断が求められます。本記事の内容を参考にしつつ、最終的な出資比率の決定や契約内容については、弁護士や税理士などの専門家にご相談されることをお勧めいたします。
2. 共同経営での会社設立が「危険」と言われる3つのリスク
友人やビジネスパートナーと複数人で起業する「共同経営」での会社設立は、お互いの強みを持ち寄り、資金や労力を分担できるという大きなメリットがあります。
しかし、その一方で「共同経営はうまくいかない」「絶対にやめたほうがいい」という声を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
実際、共同経営での会社設立において、事前に対策をしておかないと、人間関係の悪化だけでなく会社そのものの存続を揺るがす致命的なトラブルに発展するリスクが潜んでいます。
ここでは、共同経営をスタートする前に必ず知っておくべき「3つの重大なリスク」と、その防衛策について詳しく解説します。
① 意見対立による意思決定の完全停止(デッドロック)
共同経営で最も恐ろしいリスクの一つが、経営方針や人事、資金調達の場面で意見が真っ向から対立し、会社の意思決定が完全にストップしてしまう「デッドロック」と呼ばれる状態です。
特に危険なのが、出資比率を「50%対50%」という均等な割合で設定してしまうケースです。一見すると平等で公平なように思えますが、意見が割れた際にどちらも単独で決議を可決できず、会社が機能不全に陥ってしまいます。
会社法において、株式会社の意思決定は原則として株式の保有割合(議決権割合)に基づいて行われます。そのため、経営の主導権を確保するためには、以下の「デッドライン」を意識した出資比率の設定が不可欠です。
| 出資比率(議決権) | 決議の種類 | 単独で決定できる主な事項 |
|---|---|---|
| 51%(過半数)以上 | 普通決議 | 役員の選任・解任、役員報酬の決定、配当の決定 |
| 67%(3分の2)以上 | 特別決議 | 定款の変更、会社の合併・解散、事業譲渡、新株発行 |
日常的な会社経営の最終決定権を握るためには、少なくとも代表者が51%以上の株式を保有することが鉄則です。さらに、会社の根幹に関わる重要な決定を単独で行い、他方の拒否権を排除したい場合は、67%以上を確保する必要があります。
参考:会社法 第309条(株主総会の決議)|e-Gov法令検索
しかし、出資比率に差をつけても、取締役会などで意見が対立しデッドロックに陥る可能性はゼロではありません。そのため、あらかじめ対立を解消するためのルールを定めておくことが重要です。
具体的な対策としては、まず当事者間で誠実に協議を行い、それでも解決しない場合は中立的な第三者(専門家や社外取締役)の判断を仰ぐプロセスを設けます。
さらに高度な対策として、一方の株主が提示した価格で株式の売買を強制する「ロシアンルーレット条項」や、双方が入札額を伏せて提示し、高値を出した方が相手の株式を買い取る「テキサスシュートアウト条項」などを契約に盛り込む手法もあります。
どうしても対立が解消できない場合の最終手段として、会社を円滑に解散・清算するためのルールまで事前に合意しておくことが、最悪の泥沼化を防ぐ鍵となります。
② 創業メンバーの途中離脱と株式の散逸
会社設立当初は同じ目標に向かって意気投合していても、数年後に家庭の事情や価値観の違い、事業へのモチベーションの低下などにより、共同創業者の片方が会社を去るケースは珍しくありません。
この時、離脱するメンバーが「会社の株式を持ったまま」辞めてしまうと、会社にとって非常に大きなリスクとなります。
例えば、株式を保有したまま競合他社に転職されてしまったり、音信不通になって連絡が取れなくなったりする可能性があります。株式が外部に散逸してしまうと、将来の資金調達(ベンチャーキャピタルからの出資など)やM&A、重要な意思決定の際に大きな障害となります。
このような事態を防ぐために、共同経営での会社設立時には、必ず創業者同士で「株主間契約(創業者間契約)」を締結しておく必要があります。
株主間契約とは、株主同士の権利義務や、株式の取り扱いに関するルールを定めた契約のことです。特に「メンバーが離脱した際の株式の買い取りルール」は必須項目と言えます。
将来の離脱に備えて、株主間契約書に定めておくべき主なポイントは以下の通りです。
- 離脱時の株式譲渡義務(会社を辞める際は、残るメンバーまたは会社に株式を譲渡する)
- 株式の買取価格の算定方法(簿価、時価、あるいは設立時の出資額など明確な基準)
- 退職後の競業避止義務(一定期間、同業他社への就職や競合事業の立ち上げを禁止する)
- 株式の譲渡制限(第三者へ勝手に株式を売却・譲渡できないようにする)
口約束だけでは法的な強制力がなく、いざトラブルになった際に「株は返さない」「高額で買い取れ」といった揉め事に発展しがちです。設立のタイミングだからこそ、冷静に「もしもの時のルール」を書面で残しておくことが不可欠です。
契約書の作成や具体的な条項の設計については、自社に合った適切な内容にするためにも、企業法務に詳しい弁護士などの専門家に相談することを強く推奨します。
③ 貢献度と報酬(分配)の不一致による不満
3つ目のリスクは、実務の負担割合と、出資比率や役員報酬のバランスが崩れることによる人間関係の破綻です。
会社設立の準備段階では「利益は折半しよう」「給料も同じ額にしよう」と決めることが多いかもしれません。しかし、実際に事業がスタートすると、営業で売上を立てる側とバックオフィスを担当する側など、役割によって業務量や会社への貢献度に必ず差が生じてきます。
事業が軌道に乗り、利益が出始めると、「自分の方が長時間働いて売上も作っているのに、なぜ報酬が同じなのか」「相手はほとんど出社していないのに、株主だからと多額の配当を持っていくのは納得がいかない」といった不満が爆発しやすくなります。
共同経営のトラブルの多くは、業務の不透明さと「お金と感情のもつれ」から生じます。設立前に役割分担と評価基準を明確に言語化しておくことが、関係崩壊を防ぐ最大の防御策です。
このリスクを回避するためには、あらかじめ「出資(資本)」と「経営(労働)」を切り離して考える視点が必要です。株主としての配当(出資割合に応じたリターン)と、役員としての報酬(労働や貢献度に応じた対価)のルールを明確に分けて設定しましょう。
また、定期的に役員報酬の見直しを行えるよう、お互いの業務範囲や目標設定、評価基準を明確にしておくことも重要です。「誰が何をどこまでやるのか」「目標を達成できなかった場合はどうするのか」を事業計画に落とし込み、定期的に擦り合わせる場を設けることが求められます。
共同経営は、信頼関係がベースにあるからこそ、お金や評価の話を後回しにしてしまいがちです。しかし、会社を長く存続させ、成長させていくためには、初期段階でこうしたシビアな条件面を徹底的に話し合い、ルール化しておくことが何よりも大切です。
税務や法務の観点から最適な報酬設計や契約書の作成を行うためにも、設立前から税理士や専門家を交えて客観的なアドバイスを受けることをおすすめします。

3. 共同経営で絶対に避けるべき「50%対50%」と意識すべき出資比率
友人やビジネスパートナーと複数人で起業する場合、出資比率の決定は最も慎重に行うべき項目のひとつです。共同経営での会社設立において、出資比率はそのまま「会社の意思決定権」に直結します。
創業期は関係性が良好なため、「平等にしよう」と深く考えずに比率を決めてしまうケースが少なくありません。しかし、この安易な決定が後々大きなトラブルに発展する可能性があります。
ここでは、共同経営で絶対に避けるべき出資比率と、経営の主導権を握るために必ず意識しておきたい「2つのデッドライン」について詳しく解説します。
なぜ「50%対50%」の均等出資は会社を潰すのか?
共同経営で最も避けるべき危険な設定が、「50%対50%」の均等出資です。気心の知れた仲間との創業期ほど、「対等な立場で頑張ろう」という思いから、出資比率を半分ずつにしがちです。
しかし、ビジネスを進める中では、事業の方向性や資金の使い道などで必ず意見の食い違いが生じます。もし出資比率が完全に50%ずつであった場合、意見が対立した瞬間に会社の意思決定が完全にストップしてしまいます。
このように、株主間や取締役間で意見が対立し、会社としての決定ができなくなる状態を「デッドロック(膠着状態)」と呼びます。デッドロックに陥ると、新しい事業への投資も、役員の変更もできなくなり、最悪の場合は会社を解散せざるを得ない事態に追い込まれます。
そのため、共同経営を行う際は、必ずどちらか一方が最終的な決定権を持てるように出資比率に差をつけることが鉄則です。
日常の経営権を握る「51%(過半数)」のデッドライン
経営の主導権を確保するために、まず意識すべき第一のラインが「51%(過半数)」です。株式会社において、発行済株式総数の過半数を持つことは、株主総会における「普通決議」を単独で可決できることを意味します。
普通決議では、役員の選任や解任、役員報酬の決定、配当の決定など、日常的な会社経営に関わる重要な事項を決めることができます。
つまり、51%以上の株式を保有していれば、パートナーと意見が割れた場合でも、最終的には自身の判断で会社を動かすことが可能です。共同経営においては、代表となる人物が最低でもこの51%を確保しておくことが、経営のスピードを落とさないための最低条件と言えます。
会社の命運を握る「67%(3分の2以上)」のデッドライン
さらに強固な経営権を確保するための第二のラインが、「67%(3分の2以上)」です。この割合を保有していると、株主総会における「特別決議」を単独で可決できるようになります。
特別決議とは、定款の変更、会社の合併や解散、事業譲渡など、会社の根幹や命運に関わる極めて重要な事項を決定するための決議です。
逆に言えば、パートナーに3分の1(約33.4%)超の株式を持たせていると、これらの重要事項に対して「拒否権」を与えてしまうことになります。67%以上を保有することで相手の拒否権を完全に排除し、会社の将来に関するあらゆる決定権を掌握することが可能になります。
出資比率と株主総会での決議権限の関係を整理すると、以下の表のようになります。
| 保有割合 | 決議の種類 | 単独で決定できる主な事項 | 共同経営における意味合い |
|---|---|---|---|
| 51%(過半数) | 普通決議 | 役員の選任・解任、配当の決定など | 日常的な経営の主導権を握る最低ライン |
| 67%(3分の2以上) | 特別決議 | 定款変更、合併・解散、事業譲渡など | 相手の拒否権を排除し完全な決定権を持つ |
| 50%(均等) | – | 単独では何も決定できない | 意見対立時に膠着状態に陥る危険な比率 |
共同経営における出資比率は、一度決めてしまうと後から変更することが非常に困難です。将来の増資やパートナーの離脱リスクも見据え、設立前に中小企業庁の支援窓口や、会社法に詳しい税理士・司法書士などの専門家に相談し、慎重に決定することを強くお勧めします。

4. もし意見が対立したら?デッドロックを解消する4つのルール
複数人で共同経営 会社設立を進める際、どれほど信頼し合っているパートナーであっても、事業の方向性や資金繰りを巡って意見が対立するリスクはゼロではありません。
特に、出資比率を「50%対50%」の均等割にしてしまった場合や、重要事項の決定に必要な議決権を満たせない場合、会社の意思決定が完全にストップしてしまう「デッドロック(膠着状態)」に陥る危険性があります。
デッドロックが発生すると事業が停滞し、最悪の場合は会社の存続に関わるため、あらかじめ「株主間契約」で解決のルールを定めておくことが不可欠です。
ここでは、意見が対立してしまい、どうしても譲り合いができない場合に備えて導入を検討すべき、4つの具体的な解消ルールを解説します。これらのルールは、定款ではなく当事者間で結ぶ「株主間契約書」に明記するのが一般的です。
① 段階的な協議プロセスと第三者の介入
デッドロックが発生した際、いきなり強硬手段に出るのではなく、まずは段階を踏んで解決を探るプロセスを定めておくことが基本となります。
第一段階として、当事者間での「誠実協議」を行う期間(例:30日間など)を設定します。お互いの主張を冷静に整理し、妥協点を見出せるかを探るための冷却期間とも言えます。
それでも解決に至らない場合の第二段階として、中立的な第三者を交えて判断を仰ぐルールを設けます。社外取締役、顧問弁護士、税理士、あるいは業界の有識者など、双方が信頼できる第三者を「調停役」として指定しておくことで、客観的な視点から解決の糸口を見つけやすくなります。
② ロシアンルーレット条項の導入
協議を重ねてもどうしても意見がまとまらず、共同経営を解消せざるを得ない場合の解決策として「ロシアンルーレット条項」があります。
これは、一方の株主(提案者)が、相手方の株式を買い取るための「1株あたりの価格」を提示する仕組みです。提示された側は、その価格で「自分の株を相手に売り渡す」か、あるいは「相手の株を同じ価格で買い取る」かのどちらかを選択しなければなりません。
提案者は、もし不当に安い価格を提示すると、逆にその安い価格で自分の株を買い取られてしまうリスクを負います。そのため、自ずと双方が納得しやすい「適正で公平な価格」が提示されやすくなるという心理的なメリットがあります。
③ テキサスシュートアウト条項の導入
ロシアンルーレット条項と似た目的を持つもう一つの手法が「テキサスシュートアウト条項」です。双方が会社を去る意志がなく、お互いに相手の株式を買い取って単独経営に移行したいと望んでいる場合に有効です。
この仕組みでは、双方が「相手の株式を買い取りたい価格」を封印入札(入札額を伏せて同時に提示)の形式で提示します。そして、より高い価格を提示した方が、相手の株式をその価格で買い取る権利を得ます。
資金力に差がある場合には不利に働く可能性もありますが、手続きが非常にシンプルであり、迅速かつ明確にデッドロックを解消できる点が大きな特徴です。
④ 最終手段としての「解散・清算ルール」
上記のどの手段を用いても対立が解消しない、あるいは双方が株式の買い取りに必要な資金を用意できない場合、最終的な選択肢となるのが会社の解散と清算です。
デッドロック状態のまま会社を放置すると、取引先や従業員に多大な迷惑をかけるだけでなく、税務申告の滞りなど法的なトラブルに発展する恐れがあります。そのため、「一定期間協議が整わない場合は、会社を解散する」という条件をあらかじめ合意しておくことが、泥沼化を防ぐ防波堤となります。
なお、会社の解散や清算には厳格な法的手続きが必要となります(参考:会社法 第8編 解散 | e-Gov法令検索)。残余財産の分配方法なども含め、円滑に会社をたたむためのルールを定めておきましょう。
デッドロック解消に向けた各手法の特徴は、以下の表の通りです。
| 解決手法 | 概要・仕組み | メリット・特徴 |
|---|---|---|
| 段階的な協議 | 当事者間協議後、第三者を交えて解決を図る | 関係悪化を防ぎ、穏便な解決が期待できる |
| ロシアンルーレット条項 | 一方が価格提示し、他方が売買を選択する | 適正で公平な価格設定が働きやすい |
| テキサスシュートアウト条項 | 封印入札を行い、高値提示者が買い取る | 手続きが迅速で、白黒が明確につきやすい |
| 解散・清算ルール | 会社を解散し、残余財産を分配してたたむ | 泥沼化を強制的に終わらせる最終手段となる |
共同経営における株主間契約は、非常に高度な法的知識を要します。将来のトラブルを未然に防ぐためにも、契約書を作成する際は、必ず企業法務に強い弁護士や司法書士などの専門家に相談して最終判断を仰ぐようにしてください。
- 定款とは別に、当事者間のみを拘束する「株主間契約書」を作成する予定か
- 協議の期限(例:30日以内)など、具体的なタイムスケジュールを定めているか
- 調停役となる第三者(専門家など)の選定方法を事前に合意しているか
- 株式買取時の価格算定基準(純資産方式など)を明確にしているか
- 万が一の解散に備え、残余財産の分配ルールを話し合っているか
5. 創業メンバーの途中離脱に備える「株主間契約」の必須項目
共同経営 会社設立において、希望に満ちた創業期には想像しにくいかもしれませんが、最も深刻なトラブルの一つが「創業メンバーの途中離脱」です。
意見の食い違いや家庭の事情などでメンバーが会社を去る際、その人物が株式を保有したまま放置されてしまうと、その後の経営や資金調達において極めて大きな障害となります。
経営にタッチしない外部の人間が議決権を握っている状態は、ベンチャーキャピタルなどの投資家や金融機関から敬遠される最大の理由となります。
このような事態を未然に防ぎ、残されたメンバーで事業を継続できるようにするため、設立時に「株主間契約(創業者間契約)」を締結しておくことが不可欠です。以下に、契約に盛り込むべき必須項目を解説します。
① 退任時の株式売渡義務(リバース・ベスティング)
創業メンバーが途中で退任した場合、保有している株式を会社や他の創業メンバーに強制的に買い取らせる規定です。これを「リバース・ベスティング条項」と呼びます。
もしこの規定がない場合、退任したメンバーは「何も仕事をしていないのに会社の利益の分配(配当)を受け取る権利」や「株主総会での議決権」を持ち続けることになります。
株式が社外に流出した状態では、迅速な意思決定が阻害されるだけでなく、将来の資金調達において致命的なマイナス評価を受けます。
そのため、設立から一定期間(一般的には3〜4年程度)内に自己都合で退任する場合や、懲戒解雇などで会社を去る場合には、保有株式を「額面価格」などの極めて安価な価格で強制的に譲渡させるルールを定めておきます。
期間の経過とともに、買い取られる株式の割合が減っていく(例:1年経過で25%は保持できる等)設計にするなど、会社への貢献度に応じた柔軟な条件設定も可能です。
② 株式の譲渡制限と先買権(優先買取権)
会社法に基づき、定款で「株式の譲渡制限」を設けることは非公開会社において一般的ですが、株主間契約ではさらに踏み込んだルールを定めます。
その代表が「先買権(優先買取権)」です。これは、ある株主が自分の株式を第三者に譲渡しようとする際、他の株主がその第三者と同じ価格・条件で、優先的に株式を買い取ることができる権利です。
この規定により、見知らぬ第三者や競合他社が突然株主として経営に介入してくるリスクを排除できます。
創業時の信頼関係で結ばれたメンバーだけで経営をコントロールし続けるためには、株式の外部流出を物理的に防ぐ防波堤として機能します。定款の定めと併用することで、より強固な防衛策となります。
③ 共同売却請求権(タグアロング)と強制売却請求権(ドラッグアロング)
会社が成長し、将来的にM&A(企業の合併・買収)による会社売却を目指す場合、少数株主の存在がM&A成立のハードルになることがあります。
買収先の企業は、経営権を完全に掌握するために「株式の100%取得」を希望することが多いためです。この際、株主間で意見が割れて売却が頓挫するのを防ぐため、以下の2つの権利を規定します。
| 権利の名称 | 概要 | 目的 |
|---|---|---|
| 共同売却請求権 (タグアロング) |
大株主が第三者に株式を売却する際、少数株主も「同じ条件で買い取ってほしい」と請求できる権利。 | 大株主だけが有利な条件で売り抜け、少数株主が不利な状況で取り残されるのを防ぐ。 |
| 強制売却請求権 (ドラッグアロング) |
一定割合以上の株主が会社売却に合意した場合、反対する少数株主にも強制的に株式を売却させる権利。 | 少数株主の反対によってM&Aが白紙になるのを防ぎ、円滑な会社売却を実現する。 |
これらの条項は、将来のエグジット戦略をスムーズに進めるための潤滑油となります。中小企業庁の事業承継・M&A関連情報などでも、株式の分散がM&Aの大きな阻害要因になることが指摘されており、事前の対策が非常に重要です。
④ 離脱後の裏切りを防ぐ「競業避止義務」
会社を退任したメンバーが、在籍中に得た顧客リストや独自のノウハウ、技術を持ち出し、すぐに類似の競合事業を立ち上げてしまうケースは少なくありません。
これを防ぐために、退任後一定期間は競合する事業を行ったり、競合他社に就職したりすることを禁止する「競業避止義務」を定めます。あわせて、在籍中の情報を外部に漏らさない「秘密保持義務」も明記します。
ただし、日本国憲法で保障されている「職業選択の自由」との兼ね合いがあるため、無制限に活動を縛ることはできません。
「退任から2年間」「会社が事業を展開している特定の地域・分野に限定する」など、合理的な範囲で制限を設けることが、法的に有効な契約とするためのポイントです。
株主間契約の作成は専門家へ相談を
株主間契約は、会社法や労働法などの高度な法的知識が求められます。インターネット上の雛形をそのまま流用すると、自社の実態に合わず、いざという時に法的な効力を発揮しない恐れがあります。契約書の作成やレビューは、企業法務に詳しい弁護士などの専門家に依頼することを強く推奨します。
株主間契約を締結する際の実務チェックポイント
最後に、共同創業メンバー間で株主間契約を話し合い、作成する際の確認事項をまとめました。設立登記を行う前に、全員で内容をすり合わせておくことが理想的です。
- 退任時の株式買取価格は明確に定義されているか(例:額面価格、直近の純資産額ベースなど)
- リバース・ベスティングの対象期間と、期間経過に伴う買取割合の変動スケジュールは妥当か
- 株式譲渡時の先買権(優先買取権)を行使する具体的な手続きと期限が明記されているか
- ドラッグアロング条項を発動するための「賛成株主の割合(例:議決権の3分の2以上)」は適切か
- 退任後の競業避止義務の期間(例:1〜2年)や対象となる事業領域が、不当に広すぎないか
これらの契約条項は、決して仲間を疑うためのものではなく、将来の不測の事態から「会社」と「残されたメンバー」を守るための保険です。事業が軌道に乗る前の段階から、しっかりとルールを定めておきましょう。

6. 共同経営の「株主間契約書」を作成する流れと注意点
共同経営 会社設立を成功に導くために、最も重要なリスクヘッジとなるのが「株主間契約書」の作成です。複数人で出資して会社を立ち上げる場合、口約束だけでは将来のトラブルを防ぐことはできません。
ここでは、実際に株主間契約書を作成するタイミングや、実務上で注意すべきポイントを詳しく解説します。
契約書を作成するベストタイミングは「会社設立前」
株主間契約書を作成するのに最も適したタイミングは、ずばり「会社設立前」です。これから一緒に事業を創り上げていくという、お互いの関係が最も良好でモチベーションが高い時期だからです。
会社設立後に作成しようとすると、日々の業務に追われて後回しになりがちです。また、事業が軌道に乗り始めたり、逆に資金繰りが悪化したりすると、お互いの利害が対立して冷静な話し合いが難しくなる傾向があります。
関係が良好で対等な立場にある設立前だからこそ、退任時の株式の扱いや意見対立時のルールといった「シビアな条件」を冷静に協議できるのです。設立準備のスケジュールには、契約書の作成期間もしっかりと組み込んでおきましょう。
株主間契約に盛り込むべき重要項目
契約書には、将来起こり得るあらゆるリスクを想定したルールを明記しておく必要があります。特に、意思決定の主導権を握るためのデッドライン(出資比率51%や67%)を意識した上で、以下の項目をしっかりと取り決めておきましょう。
意見が対立して会社の意思決定がストップしてしまう「デッドロック」状態に陥った場合の解決策や、共同創業者が途中で離脱(退職)した場合の株式の取り扱いは、必ず盛り込むべき重要事項です。
- 出資比率と議決権の取り扱い(普通決議・特別決議の要件確認)
- デッドロック時の解決プロセス(第三者を交えた協議ルールなど)
- ロシアンルーレット条項やテキサスシュートアウト条項の導入
- 最終手段としての会社解散・清算の条件
- 創業者が離脱・退任する際の株式買取ルールと価格算定方法
デッドロックを解消するための具体的な手法としては、以下のような仕組みを契約書に組み込むことが一般的です。
| デッドロック解消手法 | 仕組みと特徴 |
|---|---|
| 段階的な協議プロセス | 当事者間で誠実協議を行い、解決しない場合は中立的な第三者(専門家など)を交えて判断を仰ぐ方法。 |
| ロシアンルーレット条項 | 一方が株式の買取価格を提示し、もう一方が「その価格で買い取る」か「売り渡す」かを選択する仕組み。 |
| テキサスシュートアウト条項 | 双方が入札額を伏せて提示し、より高い価格を提示した方が相手の株式を買い取る仕組み。 |
テンプレートの丸写しは危険!専門家に依頼すべき理由
インターネット上には、株主間契約書のテンプレートやひな形が多数公開されています。経済産業省が公開しているモデル契約書などは非常に参考になりますが、これらをそのまま丸写しして使用するのは大変危険です。
なぜなら、最適な契約内容は、自社のビジネスモデル、出資比率、創業メンバーの役割、そして将来のビジョンによって全く異なるからです。ひな形をそのまま使うと、自社の実態に合わず、いざトラブルが起きた際に法的効力を発揮しない恐れがあります。
特に、株式の強制買取条項や価格算定のルールなどは、会社法などの関連法令と照らし合わせて、法的に有効な形で規定しなければなりません。専門的な知識が不可欠であるため、当事者だけで完結させるのはリスクが伴います。
株主間契約書は会社の将来を左右する重要なルールブックです。作成にあたっては、企業法務に強い弁護士などの専門家に相談し、自社専用にカスタマイズされた契約書を作成することを強くおすすめします。
専門家を交えることで、当事者同士では言い出しにくいシビアな条件も、第三者の視点から客観的に提案してもらうことができます。初期費用はかかりますが、将来の致命的な経営トラブルを防ぐための必要経費と捉え、適切なサポートを受けながら進めましょう。
7. まとめ:リスクをコントロールして共同経営の強みを最大化しよう
友人やビジネスパートナーと複数人で起業する共同経営での会社設立は、互いの強みを掛け合わせて事業を加速させる大きな魅力があります。
資金調達の負担を分担できたり、一人では成し得ないスピードで事業を展開できたりと、シナジー効果を最大限に発揮できるのが共同経営の強みです。
しかし、これまで見てきたように、意見の対立や創業メンバーの離脱といった特有のリスクが潜んでいることも事実です。これらのリスクを放置したまま見切り発車で設立手続きを進めることは推奨できません。
出資比率の設計と株主間契約が成功の鍵
共同経営のリスクをコントロールする上で最も重要なのは、適切な「出資比率の設計」と、ルールを明文化する「株主間契約」です。
特に、意思決定が完全にストップしてしまう「50%対50%」の均等出資は避けなければなりません。日常的な経営の主導権を握るための51%(過半数)、あるいは会社の根幹に関わる特別決議を単独で可決できる67%(3分の2以上)というデッドラインを意識して、代表者が十分な議決権を確保することが基本となります。
その上で、意見対立によるデッドロック(膠着状態)や、将来のメンバー離脱に備えて、あらかじめ株主間契約書を締結しておくことが不可欠です。
| リスクのケース | 株主間契約で定めるべき対策例 |
|---|---|
| 意見対立によるデッドロック | 段階的な協議プロセスや、第三者を交えた解決ルールの設定 |
| 膠着状態が解消しない場合 | ロシアンルーレット条項やテキサスシュートアウト条項による株式買取 |
| 創業メンバーの退職・離脱 | 残存メンバーや会社が、離脱者の保有株式を強制的に買い取るルールの設定 |
| 事業継続が困難な場合 | 最終手段としての円滑な会社解散・清算ルールの事前合意 |
このような取り決めを事前に書面で残しておくことで、万が一のトラブル時にも事業へのダメージを最小限に抑え、経営の安定性を保つことができます。
専門家のサポートを得て、安心して事業に集中しよう
株主間契約書の作成や、それに伴う定款の設計は、法務や税務の専門的な知識が求められます。会社設立の手続き全般については、法務省の商業・法人登記に関する案内なども参考にしつつ、インターネット上のひな形をそのまま流用するのではなく、自社の状況に合わせたカスタマイズが必要です。
共同経営を成功させるためには、設立前の段階で「最悪の事態」を想定し、ルールを明確にしておくことが何よりも重要です。
リスクヘッジの仕組みが整っていれば、お互いに安心して事業に専念でき、共同経営本来のメリットであるシナジー効果を存分に発揮できるはずです。
- 代表者が51%以上、できれば67%以上の出資比率を確保しているか
- 意見対立時(デッドロック)の解決プロセスを話し合っているか
- 創業メンバーが離脱した際の株式の取り扱いを決めているか
- これらのルールを口約束ではなく「株主間契約書」として明文化しているか
- 契約書や定款の内容について、専門家(弁護士や税理士など)のレビューを受けたか
共同経営での会社設立を検討される際は、ぜひ起業支援に強い税理士や、企業法務に詳しい弁護士・司法書士といった専門家に一度相談してみてください。
客観的な視点からリスクを洗い出し、最適な設立スキームを提案してもらうことで、強固な経営基盤を持った会社をスタートさせることができるでしょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

