2026.06.8

会社設立

海外在住でも日本で会社設立はできる?非居住者の登記と口座開設

海外在住でも日本で会社設立はできる?非居住者の登記と口座開設のアイキャッチ画像

読了目安時間:約 13分

目次

海外在住の非居住者でも日本で会社設立はできる?法的なルールを解説

海外に拠点を置きながら日本国内でビジネスを展開したいと考えた際、「非居住者 会社設立 日本」というキーワードで検索し、法的に可能なのか疑問に抱く方は少なくありません。

結論から申し上げますと、海外在住の非居住者であっても、日本で会社を設立することは法的に十分に可能です。かつては厳しい制限がありましたが、現在では制度が見直され、海外在住の日本人や外国人起業家にとって日本法人の設立ハードルは大きく下がっています。

2015年の法改正により「役員全員が海外在住」でも設立可能に

非居住者の会社設立において大きな転換点となったのが、2015年(平成27年)3月に実施された法務省による商業登記法の運用変更です。

以前は、「代表取締役のうち最低1人は日本国内に住所を有していなければならない」という厳格なルールが存在していました。そのため、海外在住者だけで日本法人を立ち上げることはできず、必ず日本国内に住む協力者を代表取締役に据える必要がありました。

しかし、この運用が変更され、日本国内に住所を有する代表取締役を置く要件が完全に撤廃されました。これにより、海外在住の起業家にとって、より柔軟な法人設立の道が開かれています。

要件項目 2015年3月以前の旧ルール 現在のルール(現行法)
代表取締役の住所 最低1人は日本国内に住所が必要 全員が海外在住でも可能
取締役の住所 制限なし(全員海外在住でも可) 制限なし(全員海外在住でも可)
発起人(株主) 制限なし 制限なし(全員海外在住でも可)

現行のルールでは、出資者となる発起人(株主)が全員海外在住であっても問題ありません。さらに、取締役や代表取締役が全員海外在住であり、日本に住所や住民票を持っていなかったとしても、日本法人の設立登記自体は法的に100%可能となっています。

この規制緩和の背景には、外国企業や外国人起業家による日本への投資を促進し、グローバルなビジネス環境を向上させるという政府の狙いがあります。この運用変更に関する詳細は、法務省の公式サイト(代表取締役の住所の要件に関する取扱いについて)でも確認することができます。

ただし、法的に登記が可能であることと、実際の設立手続きがスムーズに進むかどうかは別の問題です。非居住者のみで手続きを進める場合、実務上のさまざまなハードルが存在します。

設立登記自体は非居住者のみでも可能ですが、資本金の払い込みや法人口座の開設、オフィスの賃貸契約などにおいて、日本国内の協力者が事実上必要になるケースがほとんどです。手続きを滞りなく進めるためには、事前に司法書士や税理士などの専門家に相談し、実務的なサポートを受けることを強くお勧めします。

法的には不要でも実務上「日本国内の協力者」がほぼ必須となる理由

2015年の法改正により、代表取締役の日本居住要件が撤廃されました。そのため、役員全員が海外在住であっても、非居住者が法人登記を行うことは法的に可能となっています。

しかし、実際の設立手続きを進めるうえでは、法的な要件とは別の「実務上の壁」がいくつも存在します。ここでは、なぜ日本国内の協力者がほぼ必須となるのか、その理由を詳しく解説します。

【最大の壁】資本金を払い込むための日本の銀行口座がない

非居住者が会社設立を日本で進める際、最初に直面する最大の難関が「資本金の払込先となる銀行口座の確保」です。会社を設立するには、定款で定めた資本金を銀行口座に払い込み、その証明書を法務局へ提出する必要があります。

しかし、日本の金融機関ではマネーロンダリング対策などの観点から、非居住者の個人口座開設を厳格に制限しており、原則として開設することができません。また、設立登記が完了する前の段階では、当然ながら「会社名義の法人口座」も存在しないという矛盾が生じます。

本来、資本金の払込先は「発起人または設立時取締役の個人口座」でなければならないというルールがあります。口座を作れない非居住者にとって、このルールと実務の矛盾が、会社設立プロセスを完全にストップさせてしまう大きな壁となるのです。

日本国内の協力者(第三者)の口座を借りて資本金を払い込むスキーム

この「口座がない」という問題を解決するために、現在実務上広く用いられているのが、日本国内の協力者の口座を利用するスキームです。法務省の通達により、発起人や取締役以外の「第三者の口座」への資本金払込が容認されるようになりました。

これにより、日本国内に居住し、すでに日本の銀行口座を持っている協力者(共同創業者、ビジネスパートナー、信頼できる知人など)を選定し、その口座に海外から資本金相当額を送金することで手続きを進めることが可能です。具体的な手順は以下のようになります。

  • 日本国内に居住し、日本の銀行口座を持つ協力者を選定する
  • 発起人から協力者へ、資本金の受領権限を委任する委任状を作成する
  • 海外の口座から、協力者の日本の口座へ資本金相当額を送金する
  • 協力者の口座の「通帳のコピー」または「取引明細書」を取得する
  • 払込証明書を作成し、通帳コピー等と合わせて登記申請書類とする

このように協力者の口座を借りることで、非居住者であっても適法に資本金の払込証明を行うことができます。ただし、送金手数料や為替レートの変動による着金金額の過不足には十分注意が必要です。着金額が資本金の額を1円でも下回ると、登記申請が受理されません。

資本金の払込先に関する特例については、発起人等から権限の委任を受けた第三者の口座を利用することが認められています。詳しくは法務省の商業・法人登記手続に関する案内や、専門家にご確認ください。

その他、国内協力者がいないと滞る実務

資本金の払込以外にも、非居住者のみで会社設立を進めようとすると、さまざまな実務上のトラブルが発生しやすくなります。特に物理的な拠点の確保や、公的機関とのやり取りにおいて、国内協力者の存在は欠かせません。

たとえば、日本国内でのオフィスや店舗の賃貸契約です。法人の本店所在地を定めるためには物件を借りる必要がありますが、非居住者単独では入居審査が通らないことが多くあります。国内の協力者が共同代表となったり、連帯保証人としてサポートしたりする体制が求められます。

また、会社設立後には、税務署、年金事務所、地方自治体などから重要な郵送物が届きます。これらを迅速に受け取り、必要な手続きを行うための窓口としても、国内協力者が必須です。設立手続き中の書類のやり取りや、法務局からの補正指示など、緊急時の現地対応をスムーズに行うためにも、日本国内のパートナーの確保を強くおすすめします。

実務上の課題 非居住者単独の場合の状況 国内協力者がいる場合の解決策
資本金の払込 日本の口座がなく払込不能 協力者の口座を代理利用
オフィス賃貸契約 審査通過が非常に困難 協力者が契約名義や保証人に
官公庁の書類受取 海外への転送に時間とコスト 国内で即時受取・対応可能
緊急の現地対応 時差や距離により対応遅延 協力者が窓口となり迅速に対応

このように、非居住者が日本でビジネスを成功させるためには、法的な手続きだけでなく、実務を円滑に進めるための体制構築が重要です。各手続きの詳細は複雑になるため、最終的な判断やスキームの構築にあたっては、国際税務や法人設立に詳しい税理士・司法書士などの専門家へ相談することをご検討ください。

印鑑証明書の代わりに必要な「サイン証明書(署名証明書)」とは?

海外在住の非居住者が日本で会社設立を行う際、実務上の大きな壁となるのが印鑑証明書の準備です。

日本国内に住んでいれば市役所で簡単に取得できる書類ですが、海外に居住している場合は事情が異なります。

ここでは、印鑑証明書の代わりに必須となる「サイン証明書(署名証明書)」の役割や取得方法、法務局へ提出する際の注意点について詳しく解説します。

サイン証明書(署名証明書)が日本の印鑑証明書の代替になる理由

日本に住民票がない非居住者は、日本の市区町村で印鑑登録を行うことができません。

そのため、会社設立時の定款認証や法務局への登記申請で求められる「印鑑登録証明書」を取得できず、そのままでは手続きを進めることが不可能です。

そこで、印鑑証明書の代わりとなる公的な書類として用いられるのが「サイン証明書(署名証明書)」です。

サイン証明書とは、書類への署名(サイン)が間違いなく本人のものであることを、現地の政府機関や公的機関が客観的に証明する書類を指します。

日本の印鑑証明書が「登録された実印による押印」を証明するのに対し、海外では「本人の自筆サイン」を証明することで同等の法的効力を持たせています。

なお、中国や台湾など、日本と同様に印鑑文化が根付いている一部の地域においては、事情が異なります。

これらの国ではサイン証明書の代わりに、現地の公証処などで発行される「押印公証書」を代替書類として使用するケースが一般的です。

サイン証明書の具体的な取得方法とプロセス

サイン証明書は、非居住者が現在住んでいる国や地域の公的機関で取得する必要があります。

取得場所は大きく分けて2つあり、居住国にある日本大使館・領事館(在外公館)、または現地の公証人役場(Notary Public)のいずれかを利用します。

取得場所 主な対象者 特徴とメリット
日本大使館・領事館 海外在住の日本人 日本語で手続きでき、日本の法務局での認知度も高いためスムーズ
現地の公証人役場 外国人・海外在住の日本人 現地の言語で手続き可能。在外公館が遠方の場合でも利用しやすい

取得のプロセスとしては、本人が直接窓口へ赴く必要があります。代理人による手続きは原則として認められていません。

手続きの際は、パスポートなどの身分証明書と、日本での会社設立に必要な署名すべき書類(定款や就任承諾書など)を持参します。

そして、担当官や公証人の目の前で本人が直接サイン(署名)を行います。事前にサインをした書類を持参しても無効になるため注意が必要です。

その場で署名が本人のものであることが確認されると、証明書が発行されたり、書類に直接割印や認証文が付与されたりして、公的な証明書類として完成します。

日本の法務局へ提出する際の重要な注意点

取得したサイン証明書を日本の法務局へ提出し、登記申請を行う際には、いくつかの厳格なルールが存在します。

まず、外国語で作成されたサイン証明書には、必ず「日本語の訳文」を添付しなければなりません。

翻訳は専門の翻訳会社に依頼することもできますが、設立者本人が翻訳しても問題ありません。

ただし、訳文の末尾には翻訳を行った者の氏名と住所を明記し、誰が翻訳の責任を負うのかを明らかにする必要があります。

さらに、書類間の表記の一致には細心の注意を払う必要があります。

サイン証明書に記載されている「氏名」や「住所(アルファベット等の表記)」が、パスポート、設立登記申請書、定款の記載と完全に一致していなければなりません。

一文字でもスペルミスや表記揺れ(大文字・小文字の違い、スペースの有無など)があると、法務局での登記申請が却下される原因となります。

海外からの手続きは書類の再取得に多大な時間とコストがかかるため、提出前に表記に相違がないか入念に確認することが不可欠です。

  • サイン証明書の氏名・住所がパスポートの記載と完全に一致しているか
  • 定款や就任承諾書とサイン証明書の表記に揺れ(大文字・小文字、スペース等)がないか
  • 外国語の証明書に日本語訳が添付され、翻訳者の氏名・住所が記載されているか
  • 証明書の発行日から、登記申請時点で法務局が定める有効期限(通常3ヶ月以内)を過ぎていないか

外国人の署名証明書等の取扱いについては、法務省の通達により厳格な確認が求められます。手続きの詳細は法務省の商業・法人登記に関する案内ページ等で最新の情報を確認し、必要書類の要件を満たしているか慎重に準備を進めてください。

非居住者による登記手続きは、通常の国内での会社設立に比べてイレギュラーな対応が多く、法務局の担当者によっても判断が分かれるケースがあります。

最終的な書類の妥当性や手続きの可否については、ご自身だけで判断せず、国際的な登記実務に詳しい司法書士や行政書士などの専門家に事前相談しながら進めることを強くおすすめします。

書類へのサインや公証手続きをイメージした画像

非居住者が日本で会社設立(登記)を完了するまでの5つのステップ

海外に住む非居住者が日本で会社設立を行う場合、国内居住者とは異なる特有の手続きが発生します。2015年の法改正により「代表取締役のうち最低1人は日本国内に住所を有していなければならない」という要件が撤廃され、役員全員が海外在住であっても登記自体は可能となりました。

しかし、実務上は資本金の払い込みや必要書類の準備において、いくつかのハードルが存在します。ここでは、非居住者が日本で法人を設立し、登記を完了するまでの具体的な5つのステップを詳しく解説します。

設立手続きの全体フロー

非居住者による会社設立は、事前の準備から法務局への登記申請まで、大きく5つの段階に分かれます。各ステップにおいて、海外在住ならではの注意点を確認しながら進めることが成功の鍵となります。

特に、日本国内の協力者(共同代表やビジネスパートナーなど)の有無が、手続きの円滑さを大きく左右します。全体の流れを把握し、余裕を持ったスケジュールを組むようにしましょう。

ステップ1:会社の基本情報の決定

まずは、設立する法人の基本事項を決定します。商号(会社名)、事業目的、本店所在地、資本金額、そして役員構成を決める必要があります。

非居住者の場合、本店所在地の確保が最初の課題となります。実体のあるオフィスを借りるのが理想ですが、賃貸契約には日本の保証人や国内の銀行口座が求められることが多いため、バーチャルオフィスやシェアオフィスを活用するケースも増えています。

また、事業目的は許認可が必要なビジネスを行う場合、その要件を満たすように記載しなければなりません。将来の日本国内での事業展開も見据えて、明確に定めておきましょう。

ステップ2:必要書類の準備とサイン証明書の取得

会社の基本情報が決まったら、定款や就任承諾書などの設立に必要な書類を作成します。ここで非居住者特有の重要書類となるのが「サイン証明書(署名証明書)」です。

日本に住民票がない非居住者は印鑑登録証明書を取得できないため、代わりに居住国の公証人(公証役場)や自国の大使館・領事館で発行されるサイン証明書を用意します。この際、証明書内の氏名や住所の表記が、パスポートや定款の記載と完全に一致している必要があります。

外国語で作成されたサイン証明書を日本の法務局に提出する際は、必ず日本語の訳文を添付しなければなりません。翻訳者名も明記する必要があるため、漏れのないように準備しましょう。

  • 定款(会社の基本ルールを定めた書類)
  • 就任承諾書(役員への就任を承諾する書類)
  • 発起人のサイン証明書(または押印公証書)およびその日本語訳
  • 役員のサイン証明書およびその日本語訳
  • パスポートのコピー(本人確認書類として)

ステップ3:定款の認証

株式会社を設立する場合、作成した定款を日本の公証役場で認証してもらう必要があります。合同会社の場合は定款の認証手続きは不要ですが、定款の作成自体は必須です。

非居住者が自ら日本の公証役場に出向くことは難しいため、実務上は日本の行政書士や司法書士などの専門家に委任して手続きを進めるのが一般的です。専門家に依頼することで、印紙代4万円が不要になる電子定款認証を利用できるメリットもあります。

専門家を代理人として定款認証を行う場合、非居住者からの委任状が必要となります。この委任状にも、実印の押印に代わるサイン証明書の添付が求められるため、あらかじめ複数枚取得しておくとスムーズです。

ステップ4:資本金の払い込み

定款認証が完了したら、資本金を銀行口座へ払い込みます。ここが非居住者にとって実務上最大の難関となる「口座開設の壁」です。非居住者は日本の銀行で個人の新規口座を開設することが非常に困難だからです。

かつては発起人(出資者)個人の口座への入金が必須でしたが、現在では規制が緩和され、発起人以外の口座への払い込みも認められています。そのため、日本国内に口座を持つ共同代表者や協力パートナーなどの第三者に依頼し、その口座へ海外から資本金を送金・入金する方法が主流です。

送金後は、通帳の表紙、1ページ目、そして入金履歴が分かる明細ページをコピーし、「払込を証する書面」としてまとめます。

ステップ5:法務局への登記申請

すべての書類が揃い、資本金の払い込みが完了したら、本店所在地を管轄する法務局へ設立登記の申請を行います。この登記申請書を窓口へ提出した日(または郵送・オンラインで受け付けられた日)が、正式な「会社設立日」となります。

提出する主な書類は以下の通りですが、会社の形態や機関設計によって必要な添付書類は異なります。法務省の商業・法人登記手続に関する案内も参考にしながら、最新のルールに沿って準備を進めてください。書類に不備があると補正(修正)を求められ、設立日が遅れる原因となるため注意が必要です。

提出書類 概要と注意点
設立登記申請書 会社の基本情報を記載したメインの申請書。登録免許税の収入印紙を貼付する。
定款(認証済み) 株式会社の場合は公証人の認証を受けた定款データ(CD-R等)または謄本。
払込を証する書面 資本金が国内協力者等の口座に確実に振り込まれたことを証明する通帳コピー等。
役員の就任承諾書 就任する役員全員分が必要。非居住者の場合はサイン証明書を添付する。
サイン証明書・訳文 印鑑証明書の代替。外国語の場合は必ず日本語訳(翻訳者名記載)をセットにする。

【専門家への相談を推奨】
非居住者による登記申請は、サイン証明書の要件確認や資本金の払込先の確保など、国内居住者の設立に比べて専門的な判断が求められる場面が多々あります。手続きの遅滞や思わぬトラブルを防ぐためにも、国際法務に詳しい司法書士や税理士への事前相談を強くおすすめします。

非居住者が日本で会社設立を完了するまでの5つのステップを示すフローチャート図

会社設立後の最大の難関「法人口座開設」が極めて困難な理由

近年、「非居住者 会社設立 日本」というキーワードで情報収集を行い、実際に日本国内での起業に踏み切る海外在住者が増えています。法改正により設立登記のハードルは下がりましたが、登記が完了した後に最大の難関が待ち受けています。

それが、日本の金融機関における「法人口座の開設」です。会社として法的に存在していても、銀行口座が作れなければ事業をスタートさせることはできません。ここでは、なぜ非居住者法人の口座開設が極めて困難なのか、その理由とリスクを詳しく解説します。

登記はできても「会社名義の銀行口座」が作れないリスク

日本の会社法上、役員全員が海外に住む非居住者であっても、会社設立の登記を完了させることは可能です。しかし、法務局での登記手続きと、金融機関での口座開設審査は、まったく別の基準で行われています。

実務の現場では、非居住者のみで会社を設立したものの、その後の法人口座開設審査で日本の銀行から軒並み断られてしまうケースが多発しています。口座が開設できないと、企業としての経済活動が実質的にストップしてしまいます。

具体的に、日本国内に会社名義の銀行口座がない場合、以下のような日常的な事業運営に致命的な支障をきたします。

業務カテゴリ 法人口座がないことによる具体的な支障
売上・入金 日本国内の取引先から売上代金を回収できない
経費・支払 オフィス賃料、システム利用料、外注費などの決済ができない
税金・公金 法人税や消費税、社会保険料の口座振替や納付が困難になる
人事・労務 日本国内で雇用した従業員への給与振込ができない

法人口座を持たない法人は、日本のビジネス環境において信用を得ることができず、取引先から契約を敬遠される原因にもなります。登記さえ完了すればすぐに事業を始められるわけではないという点に、十分な注意が必要です。

金融機関が非居住者法人の口座開設に慎重になる背景

日本の銀行が非居住者を代表とする法人の口座開設に対して非常に厳しい態度をとるのには、明確な理由があります。最大の要因は、国際社会全体で取り組んでいるマネーロンダリング(資金洗浄)およびテロ資金供与対策の強化です。

国際的な枠組みであるFATF(金融活動作業部会)からの要請を受け、日本の金融庁は各金融機関に対して審査の厳格化を強く求めています。参考として、金融庁が公表しているマネーロンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドラインに基づき、銀行は「疑わしい取引」を未然に防ぐ義務を負っています。

また、事業の実態確認が極めて難しいことも、銀行側が審査を慎重に行う大きな理由です。代表者が日本国内に居住していない場合、銀行の担当者がオフィスを訪問して実地確認を行ったり、対面で事業計画のヒアリングを行ったりすることが困難になります。

その結果、「実態のないペーパーカンパニーではないか」「犯罪の温床になるダミー会社ではないか」という懸念を払拭しきれず、審査落ちの判断が下されやすくなるのが実情です。

さらに、トラブル発生時の「連絡の不通リスク」も銀行から嫌気されます。口座の不正利用が疑われる場合や、重要な確認事項が生じた際、海外在住の代表者とは時差や言語の壁があり、スムーズに連絡が取れない可能性があります。金融機関はこうした管理上のリスクを重く見ています。

このように、非居住者のみでの法人口座開設には幾重もの高い壁が存在します。日本国内に共同代表となる居住者を置くべきか、あるいはどのような対策を講じるべきかについては、会社設立手続きを始める前に、国際税務や法人設立に強い税理士・司法書士などの専門家に相談して慎重に判断してください。

非居住者法人が「法人口座開設の壁」を突破するための3つの対策

海外に居住する非居住者が、日本で会社設立を完了させた後、実務上最大の難関となるのが法人口座の開設です。日本の金融機関はマネーロンダリング対策(AML)を厳格化しており、代表者が海外在住のままだと、口座開設を断られるケースが後を絶ちません。

資本金の管理や取引先との決済を行う上で、法人口座は不可欠です。この壁を突破し、日本国内でビジネスを円滑にスタートさせるための現実的な3つの対策を解説します。

対策①:日本在住の協力者を「共同代表」または「取締役」に就任させる

法人口座を開設する上で、最も確実性が高いアプローチです。日本国内に住民票を持つ信頼できるパートナーを、共同代表や取締役などの役員として登記します。

金融機関は、トラブル時に国内で連絡が取れる責任者の存在を重視します。そのため、日本在住の役員が窓口や担当者として銀行の対面審査・面談に臨むことで、金融機関側の懸念を大きく払拭できます。

なお、口座開設が完了した後に、日本在住の役員が辞任し、株式を海外在住の代表者に譲渡する手続きをとるケースも見受けられます。しかし、役員や株主の変更があった場合、銀行への事前・事後報告が義務付けられていることが多いため注意が必要です。

報告を怠ると、最悪の場合は口座の凍結や強制解約といったペナルティを受けるリスクがあるため、手続きの際は税理士や司法書士などの専門家に相談しながら進めることを推奨します。

対策②:経営・管理ビザを取得して代表者自身が日本に居住する

代表者自身が日本に移住し、中長期在留者(住民票を持つ居住者)となる方法です。住民票と印鑑証明書を取得した上で、本人が「居住者」として法人口座開設を申請するため、審査のハードルは劇的に下がります。

ただし、外国籍の代表者が経営・管理ビザを取得するには、いくつかの高いハードルが存在します。具体的には、500万円以上の投資(出資)または2名以上の常勤職員の雇用、そして事業を営むための独立したオフィスの確保などが求められます。

また、ビザの申請から取得までには数ヶ月の期間を要するため、その間は事業を本格的にスタートできないタイムラグが発生します。資金計画や事業スケジュールに余裕を持たせた上で検討すべき選択肢です。

対策③:審査が比較的柔軟な金融機関(ネット銀行・ゆうちょ銀行)を選ぶ

金融機関によって、非居住者法人に対する審査の基準や柔軟性は異なります。メガバンク(三菱UFJ・三井住友・みずほ)や地方銀行は審査が非常に厳しく、非居住者のみの役員構成では口座開設が困難なケースが一般的です。

一方で、GMOあおぞらネット銀行や住信SBIネット銀行などのネット銀行は、非居住者役員の法人であっても、オンラインでの面談や事業実態の厳格な確認をもって口座開設を認める場合があります。この場合、事業の透明性を証明する書類の提出が極めて重要になります。

また、全国に店舗網を持つゆうちょ銀行は、比較的口座開設の相談に乗ってもらいやすい傾向があります。ただし、どの金融機関を選ぶにしても、ペーパーカンパニーではないことを客観的に証明するための準備が欠かせません。

金融機関の種類 審査の傾向 特徴と対策のポイント
メガバンク・地方銀行 非常に厳しい 非居住者のみの構成では開設困難。日本在住の共同代表がほぼ必須。
ネット銀行 比較的柔軟 事業計画書等で実態を証明できれば、オンライン完結で開設の可能性あり。
ゆうちょ銀行 相談しやすい 全国の窓口で相談可能。ただし事業実態の証明書類は厳格に求められる。

審査が柔軟な銀行であっても、事業の実態が確認できなければ審査落ちとなります。申請時には、以下のような書類を不備なく揃え、事業の具体性と正当性をアピールすることが重要です。

  • 会社案内、パンフレット、または事業内容が詳細にわかるWebサイト
  • 取引先との契約書、発注書、請求書(すでに取引実績や予定がある場合)
  • 具体的な売上見込みや資金繰りが記載された事業計画書
  • オフィス(本店所在地)の賃貸借契約書
  • 許認可が必要な事業の場合は、取得済みの許認可証の写し
銀行の窓口やオンラインバンキングのイメージ画像

記事の総括

2015年の法務省による取扱いの変更により、代表取締役の全員が日本に住所を有しない非居住者であっても、日本法人の設立登記は法的に可能となりました。(参考:法務省「代表取締役の住所の要件に関する取扱いについて」

これにより、海外に居住しながら日本国内でビジネスを展開したい日本人や外国人にとって、制度上の門戸は大きく開かれました。しかし、法律上で登記が可能であることと、実際に会社を機能させて事業をスタートできるかは別の問題です。

実務においては、資本金を振り込むための口座手配や、本店所在地となるオフィス物件の賃貸契約など、非居住者単独では突破が難しい壁がいくつも存在します。特に最大の難関である「法人口座開設」において、日本国内の協力者なしで進めるのは極めて困難です。

さらに、印鑑登録証明書が取得できない非居住者の場合、現地の公証役場や大使館でサイン証明書(署名証明書)を取得し、正確な日本語翻訳を添付して法務局へ提出するなどの特殊な手続きが求められます。

また、昨今はマネーロンダリング対策の強化により、金融機関の口座開設審査が非常に厳格化しています。銀行審査をクリアし、事業の実態を証明するためには、緻密な事業計画書の作成といった専門的な実務知識が不可欠です。

スムーズな日本進出を実現するためには、自己判断で手続きを進めるのではなく、海外案件や非居住者の登記・ビザ申請に強い専門家へ初期段階から相談することが成功の近道です。

非居住者の日本での会社設立に精通した司法書士、行政書士、税理士であれば、以下のような複雑な実務をトータルでサポートしてくれます。最終的な手続きの判断や実行にあたっては、必ず実務経験が豊富な専門家のアドバイスを受けるようにしてください。

  • 資本金払込に必要となる日本国内の協力者(第三者口座)の確保と調整
  • サイン証明書(署名証明書)の取得サポートと正確な日本語翻訳の作成
  • 本店所在地となるオフィス物件の賃貸契約や、登記可能なオフィスの選定
  • 厳しい銀行審査をクリアするための、説得力のある事業計画書の作成
  • (外国籍の方の場合)経営管理ビザなど、日本での就労・滞在資格の申請準備

税務・労務等のバックオフィス支援から
経営支援まで全方位でビジネスをサポート

本気で夢を追い求めるあなたの会社設立を全力サポート

  • そもそも個人事業と会社の違いがわからない
  • 会社を設立するメリットを知りたい
  • 役員報酬はどうやって決めるのか
  • 株式会社にするか合同会社にするか
といったお悩みを抱えている方は、まずは初回電話無料相談をご利用ください。
会社設立の専門家が対応させていただきます。

税理士法人松本の強み

  • 設立後に損しない最適な起業形態をご提案!
  • 役員報酬はいくらにすべき?バッチリな税務署対策で安心!
  • 面倒なバックオフィスをマルっと支援!
  • さらに会社設立してからも一気通貫で支援

この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

あわせて読みたい記事

会社設立ブログをもっと見る

相見積もり大歓迎!
他社と比べても自信があります。

本気追い求める
あなたの会社設立全力サポート

月間先着10者限定

創業応援 無料キャンペーン

  1. 01

    有料相談11,000無料!

  2. 02

    会社設立報酬実質無料!

  3. 03

    届け出サポート22,000円が無料!

  4. 04

    会計サポート3ヶ月分無料!