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創業融資
スタートアップ創出促進保証制度とは?対象要件と申込方法
読了目安時間:約 7分
目次
スタートアップ創出促進保証制度とは
スタートアップ創出促進保証制度とは、創業者が経営者保証を付けずに、民間金融機関から信用保証協会付き融資を受けるための制度です。2023年3月15日に全国の信用保証協会で取り扱いが始まり、創業への挑戦や、事業に失敗した後の再挑戦を後押ししています。
日本政策金融公庫が資金を直接貸し付ける制度ではなく、申し込み先となる民間金融機関が融資し、信用保証協会が保証します。原則として会社の代表者が連帯保証人になる必要はなく、担保も不要です。
また、信用保証協会が融資額の100%を保証する「責任共有制度対象外」の保証です。ただし、これは金融機関に対する保証であり、融資を受けた会社自体の返済義務が免除されるわけではありません。
申し込みは金融機関を通じて行い、金融機関の融資審査と信用保証協会の保証審査を受けます。対象要件を満たしていても、事業計画や返済可能性などの審査結果によっては利用できない場合があります。
経営者保証なしで創業資金を調達したい方は、制度の対象者、自己資金要件、保証条件、申込手順を一体で確認することが重要です。制度の詳細は中小企業庁の案内を確認し、取引予定の金融機関や信用保証協会、必要に応じて税理士などの専門家へ相談してください。
対象者は誰?法人設立前・設立後の要件
スタートアップ創出促進保証制度の対象者は、これから会社を設立する人、設立後5年未満の会社、分社化に関係する会社、一定の法人成り企業です。個人事業主のままでは原則として対象外で、法人設立予定または会社であることが前提となります。
ケースごとの対象要件は?
対象となる時期や5年未満の起算日は、創業形態によって異なります。まずは次の区分に当てはめて確認してください。
| 区分 | 主な対象要件 | 期限・起算日 |
|---|---|---|
| 会社設立前 | 未創業の個人 | 原則2か月以内に設立 |
| 設立後の会社 | 未創業者が設立 | 設立日から5年未満 |
| 分社化 | 事業を継続して新設 | 新会社設立から5年未満 |
| 法人成り | 個人事業を新会社へ承継 | 個人の創業から5年未満 |
会社設立前に申し込む場合は、現在事業を営んでいない個人が、原則として保証申込時から2か月以内に会社を設立し、事業を開始する具体的な計画を持つ必要があります。認定特定創業支援等事業による支援を受けた場合は、設立期限が6か月以内に延長されます。
設立後は、事業を営んでいなかった個人が設立した会社で、申込時点において設立日から5年未満なら対象になり得ます。設立日は登記事項証明書などで確認し、申込時点で期間を超えていないか確認しましょう。
分社化や法人成りでも利用できる?
既存会社が現在の事業の全部または一部を継続しながら、新会社を設立する分社化も対象になり得ます。新会社が中小企業者に該当し、事業開始の具体的計画を持つことが必要で、設立後は新会社の設立日から5年未満かで判定します。
法人成りでは、事業を営んでいなかった個人が個人事業を始め、その事業を新会社へ承継した場合が対象です。5年未満の期間は会社設立日ではなく、個人として創業した日から数えます。
対象会社には株式会社、合同会社、合名会社、合資会社が含まれます。最終的な該当性は創業経緯や承継内容によって判断されるため、申込金融機関や信用保証協会、必要に応じて税理士などの専門家へ確認してください。

自己資金はいくら必要?10分の1要件の判定方法
スタートアップ創出促進保証制度の自己資金要件は、保証申込受付時点で税務申告を1期終えているかによって異なります。すべての申込者に一律で10分の1以上の自己資金が必要なわけではありません。
税務申告を1期終えていない場合はいくら必要?
税務申告が1期未終了の場合は、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要です。判定式は「自己資金÷創業資金総額≧10分の1」となります。
例えば、創業資金総額が1,000万円なら、原則として100万円以上の自己資金を用意します。借入希望額だけではなく、自己資金を含めた創業資金全体を分母にする点に注意してください。
| 申込時の状況 | 判定方法 | 計算例 |
|---|---|---|
| 税務申告1期未終了 | 自己資金÷創業資金総額 | 100万円÷1,000万円=10% |
| 設立済み・売上あり | 資本金÷(資本金+借入金等) | 200万円÷1,000万円=20% |
| 税務申告1期以上終了 | 一律要件なし | 財務内容などを審査 |
設立済みで売上高を計上している場合、制度用の創業計画書では「資本金÷(資本金+借入金等)≧10分の1」で確認する形式があります。資本金200万円、借入金等800万円なら、自己資金割合は20%です。
税務申告を1期以上終えていれば自己資金は不要?
税務申告を1期以上終えている会社には、一律の10分の1要件は課されません。ただし、自己資金がなくても審査に影響しないという意味ではありません。
金融機関と信用保証協会は、財務内容や返済可能性などを審査します。自己資金の金額だけで判断せず、申告済みの決算内容と資金計画を整合させることが重要です。
自己資金として記載できるものは?
創業計画書では、次の資産や支出済みの資金を自己資金欄に記載する形式です。金額と資金の出所を整理しておきましょう。
- 普通預金
- 定期性預金
- 有価証券
- 入居保証金
- すでに設備へ充当した資金
通帳履歴などの確認資料が必要かどうかは、金融機関や信用保証協会によって異なります。申込前に取扱金融機関へ確認し、自己資金の範囲に判断が必要な場合は税理士などの専門家にも相談してください。

保証限度額・金利・保証料はいくら?
スタートアップ創出促進保証制度の保証限度額は3,500万円、保証期間は10年以内です。ただし、限度額と実際に借りられる金額は同じではなく、金融機関と信用保証協会の審査結果により融資額が決まります。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 保証限度額 | 3,500万円 |
| 保証割合 | 100% |
| 資金使途 | 運転資金・設備資金 |
| 保証期間 | 10年以内 |
| 据置期間 | 原則1年以内 |
| 貸付金利 | 金融機関所定 |
| 保証料率 | 創業関連保証料率+0.2% |
| 担保・保証人 | いずれも不要 |
| 申込窓口 | 金融機関 |
制度上の保証割合は100%ですが、借入企業の返済義務がなくなるわけではありません。また、創業関連保証・再挑戦支援保証と併用しても、スタートアップ創出促進保証制度を含む3制度合計で3,500万円が上限です。
保証料と据置期間はどのように決まる?
保証料率は全国一律ではなく、各信用保証協会所定の創業関連保証料率に0.2%が加算されます。自治体の制度融資や保証料補助により実負担が変わる可能性があるため、金融機関または管轄の信用保証協会への確認が必要です。
据置期間は原則1年以内ですが、一定のプロパー融資があれば3年以内に延長できます。プロパー融資とは、信用保証協会の保証を付けず、金融機関が独自に行う融資です。
3年以内にできるのは、原則として同じ金融機関が本制度の融資と同時にプロパー融資を実行する場合、または保証申込時点で同金融機関にプロパー融資残高がある場合です。
- 希望額ではなく、必要資金を運転資金と設備資金に分けて整理する
- 適用金利、保証料率、自治体の補助の有無を申込金融機関へ確認する
- 据置期間3年を希望する場合は、プロパー融資の条件を確認する
なお、新会社設立のための資本金や株式取得資金を対象外と案内する信用保証協会があります。申込前に資金使途を金融機関へ具体的に伝え、対象になるか確認してください。

申し込みから融資実行まで、実務ではどう進む?
スタートアップ創出促進保証制度は、金融機関への事前相談から始まり、書類準備、金融機関と信用保証協会の審査、契約、融資実行の順に進みます。信用保証協会へ直接申し込むのではなく、金融機関を窓口にする点が重要です。
申し込み手続きは、どのような順番で進めますか?
実務上は、次の6ステップで進めます。書類の不足や計画数値の不整合は追加確認につながるため、事前相談の段階から情報を整理しておきましょう。
- ステップ1:金融機関へ事前相談する
会社所在地または開業予定地を営業区域とする金融機関に、事業内容、必要金額、資金使途、設立日または設立予定日、自己資金額、売上・利益の見込み、希望返済期間を伝えます。 - ステップ2:対象要件と自己資金を確認する
創業前、設立後、法人成り、分社化のどれに該当するかを確認します。税務申告が1期未終了なら自己資金10分の1要件を計算し、必要な許認可や法人設立時期も確認します。 - ステップ3:創業計画書と必要書類を準備する
制度専用の創業計画書に加え、見積書、契約書、許認可関係書類など、資金使途と開業準備を裏付ける資料をそろえます。審査過程で追加資料を求められる場合もあります。 - ステップ4:金融機関が融資審査と保証申込を行う
金融機関が事業計画と返済可能性を確認し、信用保証協会へ保証を申し込みます。面談、追加説明、資料の差し替えが必要になることもあります。 - ステップ5:信用保証協会の審査を受ける
信用保証協会が対象要件、資金使途、事業の実現可能性などを確認します。保証承諾後も、最終的な融資条件は金融機関との契約内容によります。 - ステップ6:契約・融資実行
金融機関と金銭消費貸借契約を締結し、保証料や返済条件を確認したうえで融資が実行されます。融資金は申請した運転資金・設備資金に使用します。
審査期間には全国一律の標準がなく、金融機関、信用保証協会、申込内容によって異なります。資金が必要となる直前ではなく、余裕を持って相談してください。
申込前に整理しておく事項は何ですか?
会社の設立段階や既存借入の有無により、確認すべき資料が異なります。自社に該当する項目を整理し、金融機関へ具体的に説明できるようにしておきましょう。
- 会社設立前:設立予定時期と自己資金を整理し、早めに相談する
- 設立後5年未満:決算期数、試算表、既存借入、今後の資金繰りを整理する
- 認定特定創業支援等事業の利用者:市区町村で証明書の取得方法と支援内容を確認する
- プロパー融資も検討できる会社:据置期間3年以内の適用可能性を金融機関へ相談する
要件を満たしても融資が確約されるわけではありません。申込資料や許認可の判断に迷う場合は、金融機関のほか、税理士や行政書士などの専門家にも確認してください。

創業計画書には何を書く?審査に備えるポイント
スタートアップ創出促進保証制度の申し込みでは、制度専用の「創業計画書(スタートアップ創出促進保証制度用)」を提出します。項目を埋めるだけでなく、事業内容、必要資金、調達方法、収支予測の金額と前提条件を一致させることが重要です。
創業計画書の基本情報には何を記載する?
会社名、代表者名、所在地、設立日または設立予定日、業種、資本金、出資者と出資額、従業員数を記載します。取扱商品・サービス、必要な許認可と根拠法、開業動機・目的、代表者の経験・知識・技術・ノウハウも具体的に説明します。
必要資金と調達方法はどう整理する?
必要資金は設備資金と運転資金に分け、何にいくら使うのかを明確にします。調達額の合計が必要資金の合計と一致しているか、見積書などとも照合してください。
- 設備資金:不動産取得費、内装工事費、敷金・保証金、機械設備、什器備品など
- 運転資金:仕入資金、人件費、家賃、広告費、その他の経費
- 調達方法:自己資金、金融機関からの借入れ、親族・知人からの借入れ、その他の資金
収支計画と取引条件はどこまで具体化する?
今後1年間について、売上高、雑収入、仕入高、外注工費、人件費、その他費用、利益を記載します。売上予測は「顧客数×単価×購入頻度」など、第三者に計算根拠を説明できる形にしてください。
主な販売先・受注先と予定額、回収方法・回収期間、主な仕入先・外注先と予定額、支払方法・支払期間も整理します。売上発生から入金までに必要となる運転資金が、資金計画と矛盾していないか確認しましょう。
借入状況と裏付け資料はどう準備する?
既存借入は事業性借入だけでなく、非事業性借入も記載し、経営者本人が負担する保証債務も申告します。契約書や返済予定表で借入残高と毎月返済額を確認し、申告漏れを防いでください。
開業準備の裏付けとして、設備・機械器具の見積書や発注書、店舗の賃貸借契約書、敷金・保証金の支払資料、商品・原材料の仕入資料を用意します。許認可証または申請状況が分かる資料、取引予定先との契約書・発注書も、計画の実現性を示す資料になります。
必要書類は申込先によって異なるため、最終的には金融機関の案内を優先してください。記載方法や許認可の判断に迷う場合は、税理士や行政書士などの専門家にも確認すると安心です。

融資後のガバナンスチェックと利用時の注意点
スタートアップ創出促進保証制度は、経営者保証を付けずに民間金融機関から創業資金を調達できる一方、融資実行後も一定の対応が必要です。対象要件や自己資金、返済計画だけでなく、借入後のガバナンス確認まで含めて利用を判断しましょう。
原則として会社設立後の3年目と5年目に、中小企業活性化協議会によるガバナンス体制の確認・助言を受けます。決算申告書などを基に「ガバナンス体制の整備に関するチェックシート」を作成し、会社から金融機関へ提出した後、金融機関の確認を経て信用保証協会へ提出する流れです。
- 必須書類である決算書を準備する
- 必要に応じて所有資産明細書、賃貸借契約書を用意する
- 金銭消費貸借契約書・借用書を整理する
- 必要に応じて「中小企業の会計に関する基本要領」チェックリストを準備する
- 税理士法第33条の2に基づく添付書面の要否を確認する
必要書類は会社の状況によって異なるため、決算時から契約書や資産・借入関係の資料を整理しておくと確認に備えやすくなります。具体的な提出時期や様式は、取引金融機関や信用保証協会へ確認してください。
信用保証協会による100%保証は、会社の返済義務を免除する仕組みではありません。これは金融機関に対する保証割合を示すものであり、会社は融資条件に従って返済を続ける必要があります。
制度の要件を満たしても融資が確約されるわけではないため、創業計画、必要資金、自己資金、返済可能性を一体で検討することが重要です。判断に迷う場合は金融機関へ早めに相談し、税務・会計は税理士、設立手続きは司法書士、許認可は行政書士などの専門家にも確認しましょう。

よくある質問
Q. 個人事業主のままスタートアップ創出促進保証制度を利用できますか?
個人事業主のままでは原則として対象外で、法人設立予定または会社であることが前提です。法人成りの場合は、個人として創業した日から5年未満であることなどが要件となるため、金融機関や信用保証協会へ確認してください。
Q. 自己資金は必ず創業資金総額の10分の1以上必要ですか?
税務申告が1期未終了の場合は、創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要です。税務申告を1期以上終えている会社には一律の要件はありませんが、財務内容や返済可能性などは審査されます。
Q. スタートアップ創出促進保証制度では最大いくら借りられますか?
保証限度額は3,500万円ですが、限度額まで必ず借りられるわけではありません。実際の融資額は、金融機関と信用保証協会による事業計画や返済可能性などの審査を経て決まります。
Q. 申し込みは信用保証協会へ直接行いますか?
信用保証協会へ直接申し込むのではなく、民間金融機関を窓口として申し込みます。金融機関の融資審査と信用保証協会の保証審査を経て、契約後に融資が実行されます。
Q. 経営者保証なしなら、会社が返済できなくても返済義務はありませんか?
経営者保証は原則不要ですが、融資を受けた会社の返済義務が免除されるわけではありません。信用保証協会による100%保証は金融機関に対する保証割合を示すものであり、会社は融資条件に従って返済を続ける必要があります。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

