2026.09.12

会社設立

二以上事業所勤務届とは?副業で会社設立した役員の手続き

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読了目安時間:約 7分

目次

導入文

本業で社会保険に加入していても、副業で設立した法人から役員報酬を受け、両方の法人で被保険者資格を取得する場合は、二以上事業所勤務届の提出が必要です。二以上事業所勤務届とは、同時に2カ所以上の適用事業所で社会保険に加入する人が、主な手続き先となる事業所を選択して届け出る書類です。

ただし、単に副業を始めただけで提出対象になるわけではありません。社会保険の加入要件は事業所ごとに判断されるため、副業法人での勤務実態や役員報酬などを踏まえて確認する必要があります。

新設法人では、二以上事業所勤務届に加え、原則として「新規適用届」と「被保険者資格取得届」も必要です。本人が提出する二以上事業所勤務届の期限は、事実発生から10日以内とされています。

保険料は2社の報酬月額を合算して決定し、各社の報酬割合に応じて按分されます。決定した標準報酬月額や按分後の保険料額は、本業・副業双方の事業所へ通知される点にも注意が必要です。

この記事では、対象者の判断方法、提出期限、手続きの順番、保険料の計算例、本業の勤務先に副業を知られる可能性まで整理します。個別の加入判断に迷う場合は、年金事務所や社会保険労務士などの専門家へご相談ください。

二以上事業所勤務届とは?誰が提出する書類なのか

二以上事業所勤務届は、同時に2カ所以上の適用事業所に使用され、それぞれで健康保険・厚生年金保険の被保険者資格を取得する本人が提出する書類です。正式名称は「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」です。

二以上事業所勤務届で何が決まる?

届出により、社会保険事務の窓口となる「選択事業所」を決めます。さらに、各事業所の報酬を合算した標準報酬月額と、その報酬割合に応じて各事業所が負担・給与控除する保険料額が決定されます。

たとえば、本業の勤務先で社会保険に加入している人が副業会社の役員となった場合、副業会社でも被保険者資格を取得するなら対象です。会社を設立した事実だけではなく、両方の法人で被保険者資格を取得するかどうかが判断のポイントです。

副業をしていれば必ず対象になる?

単に副業をしているだけでは、二以上事業所勤務届の対象になりません。社会保険の加入要件は勤務時間や報酬などを事業所ごとに判定するため、2社の勤務時間・賃金を合計して初めて要件を満たしても、原則として二以上事業所勤務者には該当しません。

個人として業務委託報酬を受ける場合、副業先で被保険者資格を取得しない場合、設立法人から役員報酬を受け取らない場合も通常は対象外です。ただし、役員の加入要否は勤務実態や常用的な使用関係も踏まえて判断されるため、年金事務所や社会保険労務士へ確認すると安心です。

誰がいつまでに提出する?

日本年金機構の案内による提出者・期限・方法は、次のとおりです。

  • 提出者:被保険者本人
  • 提出期限:事実発生から10日以内
  • 提出先:選択事業所を管轄する事務センターまたは年金事務所
  • 提出方法:電子申請、郵送、窓口持参
  • 提出手数料:無料
二以上事業所勤務届の対象者、提出者、期限、費用をまとめた概要図

【状況別の分岐】副業で会社を設立したら届出が必要?

二以上事業所勤務届が必要なのは、本業と副業先のそれぞれで社会保険の被保険者資格を取得する場合です。副業法人を設立しただけで、一律に提出が必要になるわけではありません。

あなたの状況はどれ?判断早見表

まず、社会保険の加入要件を勤務先ごとに判定します。2社の労働時間や賃金を合算して要件を満たすだけの場合は、原則として対象になりません。

副業の状況 届出の目安 確認事項
本業+業務委託 原則不要 雇用契約でないか
副業法人・無報酬 対象外の可能性 報酬と勤務実態
副業法人から役員報酬 両社で資格取得なら必要 新規適用届など
2社で雇用 各社で加入なら必要 選択事業所
合算で要件を充足 原則不要 各社単独の要件
非適用の個人事業 通常不要 雇用形態と適用状況

判断のポイントは、副業収入の有無ではなく、両方の事業所で被保険者資格を取得するかどうかです。該当する場合は、選択事業所を決めて二以上事業所勤務届を提出します。

役員報酬を受け取る会社員が特に注意すべき理由

すべての法人事業所は、事業主だけの法人を含め、健康保険・厚生年金保険の強制適用事業所です。ただし、法人が適用事業所であることと、役員本人が必ず加入することは分けて判断します。

本人の資格取得は、役員報酬の有無、継続的な経営関与、勤務実態、常用的使用関係を踏まえて判断されます。「役員報酬が月額○円未満なら加入不要」という全国一律の基準はないため、無報酬・名目的・非常勤の役員は、管轄年金事務所や社会保険労務士へ確認してください。

判断後の「次の一手」

副業法人でも資格を取得するなら、法人側と本人側の手続きを進めます。資格取得しない可能性がある場合は、自己判断で処理せず勤務実態などを整理して確認しましょう。

  • 副業法人の新規適用届と資格取得届を準備する
  • 両社で資格取得する場合は二以上事業所勤務届を準備する
  • 判断が難しい場合は、役員報酬と勤務実態を年金事務所へ伝える
  • 本業の就業規則を確認し、副業の許可・届出を別途行う
副業で会社を設立した人が二以上事業所勤務届の要否を判断するフローチャート

副業法人の設立後、社会保険手続きはどの順番で進める?

副業法人では、原則として「新規適用届」「被保険者資格取得届」「二以上事業所勤務届」の順に手続きを進めます。新規適用届と資格取得届は同時に提出できます。

実務上の手続きはどの3段階?

最初に、副業法人を健康保険・厚生年金保険の適用事業所とするため、新規適用届を提出します。事業主だけの法人も原則として対象ですが、役員本人の加入可否は勤務実態や常用的使用関係を踏まえて判断されます。

  1. 副業法人が「新規適用届」を提出する
  2. 副業法人が役員本人の「被保険者資格取得届」を提出する
  3. 本人が「二以上事業所勤務届」を提出する

第3段階は、本業と副業法人の双方で資格を取得したことが前提です。本人が、事実発生から10日以内に提出します。

選択事業所と非選択事業所はどう決める?

本人が主な手続き窓口とする会社を選択事業所、もう一方を非選択事業所として届け出ます。選択事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所が、その後の事務を担当します。

  • 両社とも協会けんぽか
  • 一方が健康保険組合か
  • 健康保険料率や付加給付に違いがあるか

健康保険組合に加入している場合の注意点は?

健康保険組合の事業所を選択すると、年金事務所に加えて、その健康保険組合にも手続きが必要になる場合があります。健康保険料は原則として選択事業所側の保険料率を基に総額を計算するため、保険料や給付の違いを事前に確認しましょう。

設立から届出まではどのように進む?

例えば9月1日から副業法人の役員報酬の支給対象となる場合、同日が資格取得の事実発生日です。新規適用届と資格取得届を準備・提出し、9月10日までを目安に本人が二以上事業所勤務届を提出します。

決定後は、本業・副業双方に標準報酬月額と按分保険料が通知され、各社が給与計算へ反映します。加入判断や健康保険組合独自の手続きは、年金事務所や社会保険労務士へ確認すると安心です。

副業法人の設立から社会保険料の給与控除までの時系列図

二以上事業所勤務届の書き方・提出先・必要書類

二以上事業所勤務届には、本人情報、各事業所の資格・報酬情報、選択事業所などを記載します。提出前に本業先と副業法人の資格取得届を確認し、事実発生から10日以内に手続きしましょう。

届書に記載する主な内容

本人の氏名、生年月日、基礎年金番号等に加え、各事業所の名称、所在地、事業所整理記号、資格取得年月日、報酬月額を記載します。あわせて、選択事業所・非選択事業所と加入する健康保険制度を明らかにします。

  • 本人の氏名・生年月日・基礎年金番号等
  • 両事業所の名称・所在地・事業所整理記号
  • 各社の資格取得年月日・報酬月額
  • 選択する事業所・健康保険制度の情報

提出先と必要書類はどこで確認する?

提出先は、選択事業所の所在地を管轄する事務センターまたは年金事務所です。基本となる届書を準備し、健康保険組合を選択する場合は、組合への提出書類も個別に確認してください。

どのような方法で提出する?

二以上事業所勤務届は、電子申請、郵送または窓口持参で提出できます。電子申請はe-Govを利用し、GビズIDによって電子署名を省略できる場合があります。

郵送で控えが必要な場合は返送方法を事前に確認しましょう。記載方法に不安があるときは、窓口持参ならその場で確認しやすくなります。

記入・提出時に注意することは?

各事業所の資格取得届と、二以上事業所勤務届の報酬月額を一致させることが重要です。役員報酬だけでなく、通勤手当や住宅・食事などの現物給与も、報酬に含まれるか確認してください。

また、10日の提出期限を数える基準となる「事実発生日」を曖昧にしないようにします。提出が遅れた場合は自己判断せず、管轄年金事務所や社会保険の専門家へ個別対応を確認しましょう。

二以上事業所勤務届の主な記載項目を示した記入例

社会保険料はいくら?報酬合算と按分の計算例

二以上事業所勤務届を提出した場合、社会保険料は本業と副業法人の報酬を合算して計算し、各社の報酬割合で分けます。各社が別々の標準報酬月額を使って計算するわけではありません。

2社の報酬月額はどのように合算する?

各事業所の報酬月額を合計し、標準報酬月額表の等級に当てはめて合算後の標準報酬月額を決定します。合算した報酬額と標準報酬月額は、等級による区分があるため一致しない場合があります。

その標準報酬月額から総保険料を求め、各社の報酬月額の割合で按分します。詳しい仕組みは日本年金機構の案内でも確認できます。

社会保険上の報酬には何が含まれる?

報酬には、基本給や役員報酬だけでなく、通勤手当、住宅手当などの各種手当、食事・住宅などの現物給与も含まれます。名称ではなく、労務の対価として継続的に受けるものかで扱いを確認します。

一方、臨時に支払われるものや、原則として年3回以下の賞与は月例報酬に含めず、賞与として別に扱います。報酬の範囲は算定基礎届のガイドブックも参考になります。

厚生年金保険料は各社でいくら負担する?

A社の報酬月額20万円、B社10万円、合算後の標準報酬月額30万円として計算します。厚生年金保険料率を18.3%とすると、按分結果は次のとおりです。

計算項目 計算式 金額
保険料総額 30万円×18.3% 54,900円
本人負担総額 54,900円÷2 27,450円
A社の本人負担 27,450円×20万円÷30万円 18,300円
B社の本人負担 27,450円×10万円÷30万円 9,150円

各社の給与計算には、独自に確定した按分額ではなく、日本年金機構等から通知された保険料額を反映します。給与控除の端数は、労使間に特約がなければ50銭未満を切り捨て、50銭以上を切り上げます。

健康保険料は、加入先、都道府県、年度、年齢などによって異なるため、固定額では示せません。実際の控除額は通知書を確認し、不明点があれば年金事務所や社会保険労務士へ相談してください。

A社とB社の報酬を合算して社会保険料を按分する計算図

二以上事業所勤務届を出すと本業に副業が知られる?

二以上事業所勤務届を提出すると、本業の勤務先に副業法人の存在を知られる可能性は高いと考えられます。制度上、本業会社へ完全に伏せたまま手続きを進めることは困難です。

標準報酬月額と保険料額は双方の会社へ通知される?

決定した標準報酬月額と各事業所の保険料額は、本業・副業双方の事業所へ通知されます。本業会社にも、二以上事業所勤務者になった事実と、自社が負担・給与控除する保険料額が伝わります。

たとえば、副業法人の役員報酬を合算した結果、本業会社で控除する社会保険料が変われば、人事・給与担当者が通知に基づいて処理します。二以上事業所勤務届は、副業を伏せるための手続きではない点に注意が必要です。

副業法人の役員報酬額まで通知される?

日本年金機構の案内で明記されている通知内容は、決定した標準報酬月額と各事業所における保険料額です。役員報酬額そのものが通知書にどこまで直接表示されるかは、手続時点の最新様式を確認してください。

ただし、合算後の標準報酬月額や按分された保険料額から、他社報酬の存在やおおよその規模を推測される可能性があります。具体的な通知内容は、管轄の年金事務所などへ事前に確認すると安心です。

就業規則上の副業手続きも必要?

社会保険の届出は、本業会社が副業を許可する手続きではありません。二以上事業所勤務届とは別に、勤務先の社内ルールに沿った申請や相談が必要です。

  • 副業の事前申請・許可に関する規定
  • 競業避止義務や秘密保持の定め
  • 労働時間・健康管理に関する申告事項

無断副業による社内トラブルを避けるため、社会保険手続きの前に就業規則を確認し、人事・労務担当者への相談も検討してください。判断に迷う場合は、社会保険労務士などの専門家へ相談しましょう。

年金機構から本業会社と副業法人へ社会保険料が通知される関係図

副業会社を設立した役員が確認したいQ&Aと手続きチェックリスト

勤務先に在籍したまま副業会社の役員になる場合、役員報酬の有無だけでなく、各法人で社会保険の被保険者資格を取得するかを確認することが重要です。最後に、二以上事業所勤務届に関する疑問と手続きの要点を整理します。

よくある質問

Q. 役員報酬が少額でも二以上事業所勤務届は必要ですか?
A. 一律の金額基準だけでは判断できません。勤務実態や常用的使用関係を踏まえ、副業法人でも被保険者資格を取得するか確認してください。

Q. 役員報酬がゼロなら必要ですか?
A. 無報酬で被保険者資格を取得しない場合は、通常、二以上事業所勤務届の対象にはなりません。ただし、勤務実態などの個別事情があるため、管轄の年金事務所へ確認すると安心です。

Q. 提出期限の10日を過ぎた場合はどうしますか?
A. 放置せず、速やかに管轄の年金事務所へ相談してください。必要に応じて、資格取得時まで遡って処理される可能性も考慮する必要があります。

Q. 選択事業所は本業会社にする必要がありますか?
A. 原則として本人が選択します。ただし、健康保険組合や共済組合が関係する場合は取扱いが異なることがあるため、提出前に確認してください。

手続き漏れを防ぐ最終チェックリスト

  • 副業法人から役員報酬を受け取るか確認した
  • 副業法人でも被保険者資格を取得するか確認した
  • 副業法人の新規適用届を提出した
  • 被保険者資格取得届を提出した
  • 選択事業所を決めた
  • 事実発生から10日以内に二以上事業所勤務届を提出した
  • 日本年金機構等からの通知内容を両社の給与計算に反映した
  • 本業の就業規則・副業規定を確認した

両方の法人で社会保険の被保険者資格を取得する場合は、副業法人側の加入手続きと二以上事業所勤務届の提出が必要です。報酬は合算して標準報酬月額が決まり、按分された保険料額は両事業所へ通知されます。

まずは役員報酬と勤務実態を整理し、期限内に必要な届出を進めましょう。判断に迷う場合は年金事務所へ確認し、税務・設立・労務を含む対応は税理士、司法書士、行政書士、社会保険労務士などの専門家へ相談してください。

副業会社を設立した役員向けの社会保険手続きチェックリスト

よくある質問

Q. 副業で法人を設立しただけで二以上事業所勤務届は必要ですか?

法人を設立しただけでは、提出が必要とは限りません。本業と副業法人の両方で社会保険の被保険者資格を取得する場合に対象となるため、役員報酬や勤務実態を基に判断します。迷う場合は年金事務所や社会保険労務士へご相談ください。

Q. 二以上事業所勤務届は誰がいつまでに提出しますか?

被保険者本人が、事実発生から10日以内に提出します。提出先は選択事業所を管轄する事務センターまたは年金事務所で、電子申請・郵送・窓口持参に対応しています。

Q. 副業法人を設立した場合、社会保険手続きはどの順番で進めますか?

原則として、副業法人の「新規適用届」「被保険者資格取得届」、本人の「二以上事業所勤務届」の順に進めます。新規適用届と被保険者資格取得届は同時に提出できます。

Q. 2社で勤務する場合の社会保険料はどのように計算されますか?

両社の報酬月額を合算して標準報酬月額を決定し、各社の報酬割合に応じて保険料を按分します。実際の給与計算には、日本年金機構等から通知された保険料額を反映します。

Q. 二以上事業所勤務届を出すと本業の会社に副業が知られますか?

決定した標準報酬月額と各事業所の保険料額が双方へ通知されるため、本業の勤務先に副業法人の存在を知られる可能性は高いと考えられます。社会保険の届出とは別に、本業の就業規則や副業に関する申請・許可のルールも確認してください。

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この記事の監修者

松本 崇宏

税理士法人松本 代表税理士

松本 崇宏(まつもと たかひろ)

お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

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