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新設法人の電子帳簿保存法対応|創業時に整える保存ルール
読了目安時間:約 8分
目次
導入文
法人の電子帳簿保存法対応では、メールやクラウド、ECサイトなどで授受した請求書・領収書を、電子データのまま保存できる体制を設立時から整えることが重要です。PDFを印刷して紙のファイルに綴じるだけでは、電子取引データの保存義務を満たせません。
電子帳簿保存法とは、税務関係の帳簿や書類を電子データで保存するためのルールを定めた法律です。制度は「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」「電子取引データ保存」の3区分に分かれ、前二者は原則として任意ですが、電子取引データ保存は法人税の保存義務者である法人に義務付けられています。
紙で受け取った書類と、電子的に授受した書類では、必要な保存方法が異なります。設立直後は取引件数が少なくても、請求書の受領経路や保存先が増えると管理が複雑になりやすいため、早い段階でルールを統一しておくことが大切です。
この記事では、保存対象となるデータと保存要件、新設法人が利用できる検索機能の特例、設立直後に整える実務フローを順に確認します。自社の運用に当てはめる際は、必要に応じて税理士などの専門家にも相談しましょう。
法人の電子帳簿保存法対応は何から始める?
電子帳簿保存法に法人が対応する際は、まず電子取引データを電子のまま保存する体制を整えます。3つの保存区分のうち、法人税の保存義務者に義務付けられる電子取引データ保存を優先しましょう。
| 保存区分 | 対象 | 対応 |
|---|---|---|
| 電子帳簿等保存 | 電子作成した帳簿・書類 | 原則任意 |
| スキャナ保存 | 紙の請求書・領収書 | 任意 |
| 電子取引データ保存 | 電子授受した取引書類 | 法人は義務 |
電子帳簿等保存は、会計ソフトなどで最初から電子作成した帳簿・書類をデータで保存する制度です。スキャナ保存は、紙で受領・作成した請求書や領収書をスキャンして保存する制度であり、いずれも任意です。
一方、電子取引データ保存では、次の手段で授受した請求書・領収書・契約書などを確認します。
- メールに添付されたPDF請求書
- クラウド請求書サービスのデータ
- ECサイトの領収書・購入明細
- インターネットバンキングの取引情報
- クレジットカードのWeb明細
電子取引データは、印刷した紙だけを保管しても十分ではありません。受領データに加え、自社がメールやクラウドで交付した請求書などの電子データの控えも保存対象です。
設立時に利用するメール、決済、請求書発行サービスを洗い出し、データの保存先と担当者を決めておくと運用しやすくなります。紙で受領・作成した書類まで無理に電子化する必要はないため、自社の取引方法に応じて整備し、判断に迷う場合は税理士へ確認しましょう。

電子保存が必要な請求書・領収書はどれ?
電子帳簿保存法の法人対応では、メールやWebサービスなどを通じて電子的に授受した取引情報を、原則として電子データのまま保存します。紙に印刷して保管するだけではなく、元のデータを残す必要があります。
電子取引データに該当する具体例
請求書や領収書という名称だけでなく、取引日・金額・取引先などを確認できる電子データが対象になり得ます。設立直後から、次のデータを漏れなく回収する運用が必要です。
- メール本文の請求・契約情報、添付されたPDF請求書・領収書
- クラウドサービスで授受した請求書、ECサイトの領収書・購入明細
- クレジットカード、交通系ICカード、決済アプリの利用明細
- EDI取引データ、ペーパーレスFAX、インターネットバンキングの振込・入出金情報
- DVDなどの記録媒体で受領した取引書類
- 電子交付された雇用契約書・労働条件通知書
メール本文と添付ファイルはどちらを保存する?
メール本文に取引情報が記載されていればメール自体を、添付ファイルに記載されていれば添付ファイルを保存します。本文と添付ファイルの両方で取引内容が構成される場合は、内容を確認できる状態で両方を保存する運用が適切です。
保存場所は、パソコン、社内サーバー、クラウドストレージなどから選べます。受信担当者のメールボックスだけに残さず、経理担当者が確認できる保存先へ集約しましょう。
設立費用や創業関連書類も対象になる?
司法書士・行政書士・税理士から電子交付された請求書や、定款作成・登記関連サービスの領収書も対象になり得ます。ECサイトで購入したオフィス用品・パソコンの領収書、クラウド会計や法人カードの利用明細も同様です。
設立準備段階の支出は、事業との関係や会社負担の有無を確認できるよう、契約・決済データと併せて整理してください。個人負担と会社負担の判断に迷う場合は、税理士などの専門家へ確認することをおすすめします。

新設法人は検索機能を用意しなくてもよい?
新設法人の第1期・第2期は通常、一定の条件を満たせば電子取引データの検索機能を用意する必要はありません。ただし、税務職員から求められた際に、対象データをダウンロードできる状態にしておくことが前提です。
電子帳簿保存法で法人が電子取引データを保存する場合、原則として取引年月日その他の日付・取引金額・取引先の3項目で検索できる機能が必要です。さらに、日付・金額の範囲指定と、2項目以上を組み合わせた検索にも対応します。
ただし、税務職員によるデータのダウンロード要求に応じられる場合、範囲指定と組み合わせ検索は不要です。検索機能自体が不要となる主な条件は、国税庁の電子取引関係Q&Aで次のように示されています。
| 法人の状況 | 検索機能 | 前提 |
|---|---|---|
| 第1期・第2期 | 通常は不要 | ダウンロード対応 |
| 基準期間あり | 売上高5,000万円以下なら不要 | ダウンロード対応 |
法人の基準期間は原則として前々事業年度であるため、新設法人の第1期・第2期には通常、基準期間がありません。基準期間が生じた後も、その期間の売上高が5,000万円以下であれば同様の取り扱いを受けられます。
「検索機能が不要」と「電子帳簿保存法への対応が不要」は同じ意味ではありません。
検索要件が免除されても、次の対応は引き続き必要です。
- 電子取引データ自体を保存する
- 改ざん防止措置を講じる
- ディスプレイなどで内容を確認できる状態にする
- 税務調査時の提示・ダウンロード要求に対応する
- 法定保存期間を守る
したがって、電子帳簿保存法に法人設立時から対応するには、検索不要でもデータを漏れなく保管し、速やかに提出できる運用が欠かせません。適用条件の判断に迷う場合は、所轄税務署や税理士へ確認してください。

【実務の流れ】法人設立から30日以内に整える保存ルール
電子帳簿保存法に法人が対応するには、設立直後から30日以内を目安に、受領経路・保存場所・命名方法・社内規程を順番に整えます。担当者と保存期限を明確にし、取引開始時から同じルールで運用することが重要です。
設立直後:電子取引の受領経路を洗い出す
まず、請求書や領収書を受信するメールアドレスを確認し、電子データが届く経路を一覧化します。ECサイト、法人カード、銀行口座などの利用サービスに加え、自社が請求書を発行・交付する方法も確認してください。
受領データだけでなく、取引先へ電子交付した書類の控えも管理対象です。経理担当者が決まっていない場合でも、電子データの保存担当者を一人以上定めておきます。
設立1週間以内:保存場所とフォルダ構成を決める
クラウドストレージ、会計ソフト・請求書保存サービス、社内サーバーなどから、継続して閲覧できる保存場所を選びます。閲覧権限と削除権限は、経理担当者や管理者など必要な人に限定しましょう。
- 2026年度/売上/請求書
- 2026年度/仕入・経費/領収書
- 2026年度/契約書
フォルダは年度・取引区分・書類種別の順に統一すると、担当者が変わっても保存先を判断しやすくなります。
設立2週間以内:ファイル名と保存頻度を統一する
ファイル名は「20260907_株式会社〇〇_110000_請求書.pdf」のように、日付・取引先・金額・書類種類を含めます。西暦と和暦は混在させず、「受領当日」「毎週金曜日」など保存頻度も具体的に決めてください。
設立30日以内:事務処理規程とバックアップを整える
国税庁のひな型を参考に、訂正・削除防止に関する事務処理規程を作成します。保存担当者と保存手順、訂正・削除時の手続き、不正な変更を防ぐルールを盛り込み、実際の業務も規程に合わせます。
障害や誤削除から復旧できるよう、別媒体またはクラウドへのバックアップも設定します。バックアップは法律上の必須要件ではありませんが、長期保存に備えて推奨されるため、運用に不安があれば税理士などへ確認してください。

電子取引データは何年保存する?改ざん防止の方法も解説
法人の電子取引データは、原則として対象事業年度の確定申告書提出期限の翌日から7年間保存します。ただし、青色申告の事業年度で欠損金が生じた場合などは、10年間の保存が必要です。
| 対象 | 保存期間 |
|---|---|
| 通常の電子取引データ | 原則7年間 |
| 青色申告で欠損金が生じた年度など | 10年間 |
| 交付した適格請求書の写し・電磁的記録 | 7年間 |
インボイス発行事業者が交付した適格請求書の写しや、電子交付したデータも7年間保存します。電子帳簿保存法に法人が対応する際は、保存期間だけでなく、次のいずれかの改ざん防止措置も必要です。
- タイムスタンプが付されたデータを受け取る
- 受領後、速やかにタイムスタンプを付す
- 訂正・削除履歴が残る、または訂正・削除できないシステムを使う
- 訂正・削除防止の事務処理規程を作成し、その規程に沿って運用する
専用システムの導入負担が大きい小規模な新設法人は、事務処理規程による対応を検討できます。保存件数が増えた段階で、会計ソフトや証憑保存システムへの移行を検討するとよいでしょう。
さらに、ディスプレイやプリンタを用意し、保存データを速やかに確認・出力できる状態にします。詳しい要件は国税庁の電子帳簿保存法一問一答を確認し、自社の運用に不安があれば税理士へご相談ください。

自社に合う保存方法はどれ?状況別の選び方
保存方法は、取引件数、データの受領経路、経費を扱う人数、今後の事業規模に合わせて選びます。電子帳簿保存法に法人が対応する際は、現在の負担だけでなく、取引増加後も同じルールで運用できるかを確認することが重要です。
取引件数が少ない一人会社はどう保存する?
クラウドストレージに年度・書類種別ごとのフォルダを作り、ファイル名を「日付・取引先・金額」の順に統一する方法が取り組みやすいでしょう。あわせて訂正・削除防止に関する事務処理規程を作成し、定期的にバックアップします。
メールやECサイトからの購入が多い場合は?
毎週・毎月などダウンロード日を決め、保存漏れを防ぎます。ECサイトの閲覧期限が切れる前に領収書や購入明細を保存し、メールの自動転送や保存サービスとの連携も検討してください。
複数の従業員が経費を使う法人は?
領収書データの提出先と提出期限を統一し、個人のメールボックスや端末だけに残さない運用が必要です。閲覧・削除権限を設定し、経費精算システムやクラウド会計の導入を検討します。
- 提出先となる共有フォルダやシステムを指定する
- 提出期限とファイル名の付け方を社内で統一する
- 削除権限を必要最小限の担当者に限定する
今後、取引件数や売上が増える法人は?
第3期以降は、基準期間の有無と売上高を毎期確認してください。検索要件の対象になる前にシステム移行を検討し、日付・金額・取引先で検索できる形式へ早めに統一すると、運用変更の負担を抑えられます。
保存方法や検索要件の判定は事業年度や運用状況によって異なるため、導入前に税理士などの専門家へ確認すると安心です。

電子帳簿保存法対応で新設法人が間違えやすい点
電子帳簿保存法に法人が対応する際は、紙への印刷やメール保存だけで完了したと誤認しないことが重要です。新設法人でも、電子取引データの保存や改ざん防止などの要件は原則として適用されます。
PDFを印刷すれば元データを削除してもよい?
PDFの請求書や領収書を印刷しても、紙だけを保存する方法では電子取引データ保存の義務を満たしません。印刷物を経理処理に使う場合でも、元のPDFや電子データを削除せず保存します。
メールの受信箱に残すだけの運用も避けましょう。担当者の退職、誤削除、アカウント停止に備え、会社が継続して管理できるクラウドストレージなどへ移す必要があります。
新設法人なら保存要件や対応が免除される?
新設法人で不要となる可能性があるのは、一定の場合の検索機能です。保存、改ざん防止、見読可能性、税務職員から求められた際のダウンロード対応まで免除されるわけではありません。
猶予措置も無条件の免除ではなく、保存要件に従えない相当の理由が必要です。事前申請は不要ですが電子データ自体の保存は必要であり、対応できない事情が解消した後は、原則的な要件に沿って保存します。
設立手続きと保存ルールを別々に管理してよい?
税務・社会保険の手続きと証憑の保存ルールは、設立時から一体で整理しましょう。法人設立届出や申告関係書類、社会保険関係の通知についても、受領方法と保管場所を確認します。
- 電子メールや各種サイトから受領したデータを会社管理の保存先へ移す
- 税務書類・労務書類ごとに法令上の保存期間を確認する
- 顧問税理士や社会保険労務士とデータ共有方法を決める
保存対象や運用方法は取引・雇用の状況によって異なります。詳細は国税庁の電子帳簿保存法一問一答を確認し、税理士や社会保険労務士へ相談してください。
まとめ|電子帳簿保存法のルールを創業時から習慣化しよう
電子帳簿保存法に法人として対応するには、設立時から電子取引の受領経路を洗い出し、保存ルールを日常業務に組み込むことが重要です。メール、クラウド請求書、ECサイト、インターネットバンキングなどを確認しましょう。
- 電子データの保存場所を決める
- ファイル名の付け方と保存頻度を統一する
- 訂正・削除防止に関する事務処理規程を作成する
- バックアップとアクセス権限の管理を行う
新設法人の第1期・第2期は通常、検索機能が不要でも、電子取引データの保存義務までなくなるわけではありません。データを電子のまま保存し、改ざん防止や画面・書面への出力に対応できる状態を維持してください。
取引量が少ない創業期に運用を整え、増加が見込まれる場合は会計ソフトや証憑保存システムの導入も検討しましょう。早期に仕組み化すれば、保存漏れや担当者ごとの処理のばらつきを抑えやすくなります。
制度は改正される可能性があるため、国税庁の電子帳簿等保存制度特設サイト、電子帳簿保存法一問一答、電子取引関係Q&A、事務処理規程のひな型で最新情報をご確認ください。自社の運用判断に迷う場合は、税理士などの専門家へ相談し、必要に応じて司法書士・行政書士にも確認しましょう。
よくある質問
Q. メールで受け取ったPDF請求書は、印刷して保存すればよいですか?
紙に印刷して保管するだけでは、電子取引データの保存義務を満たしません。元のPDFを削除せず、会社が継続して管理できる保存先に電子データのまま保存する必要があります。
Q. 新設法人の第1期・第2期は、電子帳簿保存法への対応が免除されますか?
新設法人の第1期・第2期は通常、ダウンロード要求に対応できるなど一定の条件を満たせば、検索機能が不要となります。ただし、データの保存や改ざん防止、内容を確認できる状態の確保などは必要です。
Q. 電子取引データは何年間保存する必要がありますか?
原則として、対象事業年度の確定申告書提出期限の翌日から7年間保存します。青色申告の事業年度で欠損金が生じた場合などは、10年間の保存が必要です。
Q. メール本文と添付ファイルはどちらを保存すればよいですか?
取引情報がメール本文にあればメール自体を、添付ファイルにあれば添付ファイルを保存します。両方で取引内容が構成される場合は、内容を確認できる状態で双方を保存するのが適切です。
Q. 小規模な新設法人は、どのように改ざん防止へ対応できますか?
訂正・削除防止に関する事務処理規程を作成し、その規程に沿って運用する方法を検討できます。保存担当者や手順、訂正・削除時の手続きなどを定め、判断に迷う場合は税理士へ確認しましょう。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計1,000件以上。
国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。

