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法人にとって事業が順調に伸びることは、歓迎すべきことです。しかし、利益が出過ぎてしまうと困った事態が発生する恐れがあります。それは、法人税が上がってしまうことです。利益が出過ぎると課税所得額もアップするため、想定以上に法人税の額が上がり、慌ててしまうケースは少なくありません。せっかく事業を成長させることができたのであれば、節税を行い、できるだけ納税の負担を抑えたいと考えるのは当然のことです。では、利益が出過ぎた法人にはどのような節税対策が有効なのでしょうか。
今回は、利益が出過ぎた法人が検討すべき節税対策や利益が出過ぎた際の注意点などについてご説明します。
目次
利益が出過ぎた法人ができる節税対策はさまざまですが、大きく分けると次の3つに区分することができます。
・経費を増やすことでできる節税対策
・給与を増やすことでできる節税対策
・資産を変動させることでできる節税対策
それぞれの具体的な内容をご紹介します。
経費を増やせば、当然、課税所得額は圧縮されるため、節税効果を得られます。利益が出過ぎたときにできる経費増加の節税対策には次のようなものがあります。
事業を成長させるうえで、顧客に商品やサービスなどを伝える広告宣伝は必要不可欠です。また、広告宣伝は企業のブランディングにも効果を発揮しますが、利益が少ない場合、なかなか広告宣伝費にはコストをかけにくくなります。したがって、利益が出過ぎたときこそ、広告宣伝活動を充実させるべきです。
事業の内容によって適した広告宣伝手法は変わりますが、電車やバスの車内、駅構内などへの広告掲出のほか、ビルの看板やデジタルサイネージなど、屋外広告の出稿を検討してもよいでしょう。また、ホームページをリニューアルしたり、Web広告、SEO対策などを強化することも可能です。
広告宣伝活動に注力すれば、節税対策をしながら、さらに事業の成長を目指せます。
福利厚生費も経費として処理できる支出です。事業の成長には従業員の頑張りが欠かせません。そのため、法人として利益が出過ぎた場合には、福利厚生として、従業員の日頃の努力を労い、社員旅行や年度末の慰労パーティーなどを企画することも可能です。
社員旅行やパーティーという形で従業員に労いの気持ちを形に表すことで、仕事に対するモチベーションを高める効果も期待できるため、業績がさらに向上する可能性もあるでしょう。
ただし、福利厚生費として処理するためには、全員が参加できることが前提でなければならず、特定の社員や役員だけを対象とした旅行やパーティーなどは、福利厚生費として経費計上できない点には注意が必要です。
また、社員旅行の場合は、旅行期間が4泊5日以内で、参加率が50%以上の場合、福利厚生費として処理できるとされています。しかしながら、社員旅行を企画する際は、社員全員に平等に参加の機会を与えなければなりませんが、社員の個別の事情によって参加が難しいケースもあるのではないでしょうか。
実は、国税庁では、従業員の参加割合が50%未満であっても、旅行期間や旅行費用が社会通念上のレクリエーション旅行から逸脱していなければ、福利厚生費として認めることを示しています。そのため、特定の社員だけを対象としていなければ、参加率が50%以下であっても、費用や日数などが社員旅行として適当な範囲に収まっているのであれば経費として計上が可能です。
出張に必要な交通費や宿泊費は、当然、旅費交通費として経費計上が可能です。しかし、交通費や宿泊費とは別に支給する出張手当も損金計上が認められています。出張手当は、遠方に移動することで生じる費用負担、肉体的・精神的疲労をカバーする目的で支給される手当です。
出張手当を支給するためには、旅費規程において出張手当について定める必要がありますが、出張手当は消費税の課税対象となるため、仕入税額控除の適用対象となり、消費税の面でも節税効果を得られます。
さらに、出張手当は常識の範囲内で金額を設定していれば、所得には該当しないため、出張した役員や社員の所得税や社会保険料の負担が増えることはありません。法人が負担する社会保険料にも影響を与えないため、利益が出過ぎた場合には、出張手当の支給も検討するとよいでしょう。
法人が契約に基づいて1年以内にサービスの提供を受ける場合、1年分の費用を前払いし、その費用を支払った日の属する事業年度に一括して経費に計上することができます。この制度を短期前払費用の特例といいます。
具体的には、土地や建物の賃料、システムのリース料、保険料などが短期前払費用の特例の適用対象となっています。一方、サービスの提供を受ける内容が変動する費用については、短期前払費用の特例として処理することはできません。
また、短期前払費用の特例は、継続性があることも要件として定められているため、利益が出過ぎた年だけ適用し、翌年は前払いをしないという運用はできない点に注意が必要です。
利益が出過ぎた法人の場合、節税対策として決算賞与を支給することも検討すべきでしょう。決算賞与は、定期給与とは異なり、利益が大きく出た場合にのみ、従業員に利益を還元する給与です。さらに、決算賞与の支給は節税対策としても効果を発揮します。
決算賞与を支給すれば、従業員のモチベーションアップにもつながるため、利益が出過ぎた場合には決算賞与の支給も検討してみることをおすすめします。ただし、決算賞与を損金として計上するためには、次の要件を満たさなければならない点に注意しましょう。
・事業年度終了日までに社員一人ひとりに決算賞与の支給額を通知すること
・事業年度終了日の翌日から1ヶ月以内に全員に通知内容と同じ額を支給すること
・支給額は通知日の属する事業年度に未払金として計上していること
利益が出過ぎたときには、設備投資や在庫処分なども有効な節税対策となります。
新たな設備などの導入は、生産性の向上に効果的です。利益が出過ぎた場合は、積極的に設備投資を検討した方がよいでしょう。高額な設備は減価償却資産に該当するため、利益が出過ぎたタイミングで設備投資を行っても、全額を損金算入することはできず、該当年度に大きな節税効果を得ることはできません。しかしながら、設備投資には税制優遇措置があり、一定の要件を満たすことで、節税効果を得ることができます。
設備投資で活用できる税制優遇措置は特別償却または税額控除です。特別償却は、通常の減価償却費に特別償却額を損金として加えることができる制度のことで、設備投資の初年度に大きな額の減価償却費を計上できます。
一方、税額控除は、事業用資産を取得した際に法人税や所得税から一定額を控除できるという制度です。税額控除額は資産の取得価額の7%であり、控除上限額は納税額の20%となりますが、控除しきれなかった場合は、控除しきれなかった分の1年間の繰り越しが認められています。さらに税額控除の場合は、減価償却額に影響を与えないため、長く節税効果を得られる点もメリットです。
特別償却も税額控除も節税に効果を発揮するため、自社の状況に応じ、適切な方法を選択するとよいでしょう。
粗利益は、売上高から売上原価を差し引くことで算出しますが、売上原価には在庫が含まれています。そのため、不要な在庫を処分すると、売上原価が増加して粗利益を圧縮させ、節税効果を得られます。
通常の在庫の場合、翌期の売上につなげることができますが、売上につながらない不要在庫は節税のためにも処分するとよいでしょう。在庫は棚卸資産となるため、賃借対照表上では資産として計上しなければならず、不要な在庫はキャッシュフローにも悪影響を与えています。したがって、業績が上がったときに不要在庫を処分すれば、キャッシュフローの改善効果も得られます。
不要な固定資産の処分も、利益が出過ぎた法人の節税対策には有効です。不要な固定資産を廃棄した場合には、固定資産除却損として特別損失に計上することができます。また、廃棄するためにかかった費用も固定資産除去損に加えることが可能です。不要な固定資産を売却した場合、売却価額が帳簿価額に満たないケースもあるでしょう。その場合は、帳簿価額に満たない部分を固定資産売却損として特別損失に計上することも可能です。
損金に算入できる額が増えるため、不要な固定資産は利益が出過ぎたタイミングでの処分を検討すると節税効果を得やすくなります。
資本金が1億円以下、かつ従業員数が500人以下で青色申告事業者である法人の場合、少額減価償却資産の特例制度を活用できます。10万円以上の減価償却資産を取得した場合、該当する資産の法定耐用年数に合わせて減価償却をする必要があり、取得価額をまとめて損金計上することはできません。しかし、要件を満たす中小企業の場合は、10万円以上30万円未満の減価償却資産は、取得した年度に一括して損金に算入することが認められています。この制度は少額減価償却資産の特例といいます。
ただし、少額減価償却資産の特例を活用できるのは、年間300万円が限度です。パソコンなどは、1台10万円以上30万円未満となるものが多いはずです。また、ソフトウェアなどの無形減価償却資産も対象となるため、利益が出過ぎたタイミングで上手に減価償却資産の入れ替えなどを進めるとよいでしょう。
法人で利益が出過ぎた場合、できるだけ税金を抑えようと、さまざまな対策を実施しようとする傾向が見られます。しかし、利益が出過ぎたからといって手当たり次第に節税対策を実施することは非常に危険です。法人で利益が出過ぎたときには次の点に注意するようにしましょう。
今回ご紹介した節税対策も含め、全ての節税対策が自社に適しているとは限りません。例えば、設備投資をする場合でも、設備投資にかかる費用全額を該当年度の損金に算入できるわけではないため、新たな費用や得られる効果を十分に検討したうえで実施する必要があります。
また、短期前払費用の特例も節税効果は得られますが、一度短期前払費用の特例を活用した場合は、次年度以降も前払いを続けなければなりません。利益が出ているときは問題ありませんが、業績が悪化した場合などは前払いが負担になる恐れがある点も考慮する必要があります。
せっかく利益が上がったのに税金も高くなり、手元に残るお金が減ってしまうのは損になると思い、何とか税金の負担を抑えようと節税対策に躍起になってしまう場合も見られます。今回ご紹介したように、経費を増やせば、当然、課税所得額は減るため法人税は低くなります。しかし、経費を増やそうと社員旅行を実施し、パソコンを入れ替え、広告宣伝にも多額の費用を注いだ場合、キャッシュフローが悪化する恐れも出てきます。特に、手元にキャッシュが少ない場合などは、過度な節税対策は行わず、手元資金を充実させることを重視した方がよいケースもある点に注意が必要です。
利益が出過ぎたときには、何とか法人税の負担を抑えようと、節税対策を重視してしまう傾向にあります。しかし、近い将来に事業の拡大を考え、金融機関に融資の申請を検討している場合などは、節税対策がかえってマイナスに作用する可能性もあります。
節税対策によって利益を圧縮すると、融資を申請する際に業績の伸びを証明できず、融資を受けにくくなってしまう恐れがあるのです。したがって、利益が上がったときには、目先の損得だけでなく、法人としての中長期的な事業計画に則り、適切な節税対策を選び実行することが大切です。
利益が出過ぎたときは、法人税の課税額が大きくなるため、利益が大きいからこそできる施策を実施すると、節税効果を得られます。しかし、企業の状況によって適した節税対策は異なり、また、節税ではなくキャッシュを増やした方がよいケースもあります。
利益が出ることは歓迎すべきことです。しかし、利益が出過ぎたことで誤った対策を実施すると今後の事業運営に悪影響を与える恐れも出てきます。利益が出過ぎた場合は、税理士に相談し、自社に合った節税対策などのアドバイスを受けることをおすすめします。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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