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法人は、さまざまな費用を経費として計上することが認められています。中には、こんな費用を経費にできるのかと思う項目もあるかもしれません。ぶっちゃけ、法人として経費計上が認められている項目をどれだけ把握しているかによって、法人税の負担が変わってくる可能性もあるのです。
では、法人の場合、どのような費用を経費として扱えるのでしょうか。
今回は、法人が経費に計上できる支出や上手な節税対策について分かりやすくご説明します。
目次
法人が経費として扱える費用には次のようなものがあります。
正社員やアルバイト、パートなどに支払う給与や賞与は、人件費として経費計上が可能です。また、残業手当や住宅手当、家族手当、通勤手当などの各種手当も人件費に含めることができます。
社員の給与だけでなく、法人になると役員に支給する報酬も一定条件を満たせば、経費として計上することが可能です。
退職する社員や役員に支払う退職金も、人件費の一部であり、経費として計上できる費用です。退職時にまとまった金額を一時金として支給する退職一時金制度の場合、企業が独自に資金を積み立て、退職規定に応じて退職する社員に一時金を支給します。退職一時金を支給した場合、支給額は経費として計上が可能です。
また、退職年金として、企業が社員の在職期間中に一定の額を積み立て、退職時に退職金として支払う企業型確定拠出年金や確定給付企業年金などの積立金も、経費として計上することができます。
オフィスや店舗、工場などの家賃、駐車場の家賃などは、経費として取り扱うことが可能です。また、家賃のほか、管理費や共益費、礼金、更新料も経費に該当します。ただし、退去時に返却が見込まれる敷金については、原則として経費に計上することはできません。
減価償却とは、固定資産の取得費用を耐用年数に応じて、経費として計上することです。具体的には、事業のために使用する資産のうち、使用期間が1年以上で取得価額が10万円以上の資産のうち、時間の経過により価値が減少するものが減価償却の対象となります。法人の場合、オフィスや店舗などの建物、製品の製造に使用する機械設備、社用車、パソコン、複合印刷機などが固定資産に該当します。
雑誌や新聞などへの広告掲載料や折り込みチラシの印刷代金、屋外看板の掲出料金、SNS広告の出稿料、ホームページの制作費用など、宣伝のためにかかった費用も広告宣伝費として経費に計上できます。
そのほか、会社案内や商品カタログ、社名入りのカレンダー、ノベルティグッズの制作費用、販促目的のイベント開催費用なども広告宣伝費として経費計上が可能です。
オフィスや店舗、工場などで使用した水道料金や電気料金、ガス料金などは、水道光熱費として経費に計上することができます。また、暖房に必要な石油代なども水道光熱費として取り扱うことが可能です。
営業活動のためにかかった交通費や宿泊費などは、旅費交通費として経費に計上します。具体的には、電車やバスの料金、タクシー代などのほか、出張時に使用する新幹線の料金や航空券の料金、レンタカー代、高速道路料金、移動先で使用したコインパーキング代なども旅費交通費に含まれます。
また、法人の場合、出張の日当も経費として計上することが認められています。
取引先など、事業に関連する取引先や仕入れ先などと良好な関係を維持するために必要となった支出は、接待交際費として経費に計上することができます。例えば、取引先を招いて開いた会食の費用のうち1人当たりの金額が1万円以上であったもの、取引先にお中元やお歳暮を贈るためにかかった費用などが接待交際費に該当します。そのほか、取引先を招待したゴルフコンペの開催費用、取引先の新規店舗オープンに当たって贈ったお祝いのお花代なども接待交際費として計上できます。
ただし、接待交際費を経費として計上できるのは資本金が100億円以下の法人に限定されます。また、資本金100億円以下の法人であっても、接待交際費として1年間に経費計上できる額は決められている点に注意が必要です。例えば、資本金1億円以下の法人の場合、接待交際費の上限は、接待飲食費の50%または年間800万円までのいずれかとなります。
会議のためにかかった費用は、会議費として経費に計上することができます。貸会議室を利用した場合は、会議室の利用料金が会議費に該当します。そのほか、会議の際に提供した弁当代やドリンク代なども経費計上が可能です。
接待交際費として飲食代を経費に計上するためには、取引先など、外部の事業関連者が参加していることが条件となります。しかし、会議費は外部の関係者の参加に関係なく、会議費として経費に計上することができます。取引先を囲んでランチミーティングをする場合などでも、1人当たりの費用が1万円以下であれば、会議費として処理することができるのです。なお、会議費に上限は設定されていません。
取得価額が10万円未満のインクジェットプリンターやパソコン、デスク、棚、チェア、コピー用紙、トナーカートリッジ、インクカートリッジ、マウス、ファイル、ペンなどは消耗品費として経費計上が可能です。そのほか、オフィスや店舗で使用するティッシュペーパーやトイレットペーパー、清掃用具なども消耗品費として取り扱うことが可能です。
オフィスや店舗、工場などで使用する固定電話の料金、インターネット回線料金、業務用の携帯電話料金などは、通信費として経費に計上できます。そのほか、クラウドサービスを利用している場合の利用料、切手代、はがき代なども通信費として扱うことが可能です。
オフィスや店舗、工場などに課される固定資産税や都市計画税、不動産取得税、登録免許税、社用車の自動車税、印紙税、法人事業税などの税金は、経費として計上できます。また、国や地方自治体に各種証明書の発行を依頼する際にかかる発行手数料、商工会や同業者団体、町内会の会費なども公課として経費計上が可能です。そのほか、延滞税や不納付加算税は経費に計上できますが、交通反則金や罰金類は経費に計上できません。
事業で使用する車両の購入代金は、車両運搬具として経費に計上できます。ただし、車両運搬具として取り扱うことができるのは普通自動車や軽自動車、バイク、トラック、バスなどです。例えば建設業を営む法人が購入する可能性があるパワーショベルやブルドーザーなど、建設用の機械は経費に計上できるものの、車両運搬具としては計上しません。
また、ETC車載器やカーナビ、オーディオなど、車両と一体となって使用するオプション品の料金も車両本体の取得に付随する費用として、車両運搬具に含んで経費計上ができます。
車両運搬具は、10万円以上となるケースがほとんどであるため、経費として一括処理するのではなく、減価償却資産として耐用年数に合わせて減価償却処理をしていくこととなります。
事業用車を保有している場合は、自動車税や自賠責保険料、任意保険料、車検代、ガソリン代、駐車場代などを車両関連費として計上することができます。そのほか、エンジンオイルを交換したり、車のメンテナンスをする際にかかった費用も、車両関連費として扱うことが可能です。
自動車税は車両関連費として計上することもできますが、租税公課に含めても問題ありません。同様に、高速道路代やガソリン代も旅費交通費に含めても、車両関連費として処理することも可能です。ただし、一度使った勘定科目は継続して使わなければならない点に注意が必要です。
福利厚生費は従業員の健康や生活の安定、仕事に対するモチベーションアップなどを目的に支出する費用のことです。例えば、健康保険料や厚生年金保険料の会社負担分は、法定福利費として経費に計上が可能です。
法人として経費に計上できる支出は、業務に関連する支出のみです。業務に関連しない支出まで、経費として計上することはできません。万が一、プライベートな支出まで経費に計上した場合、税務調査の対象となり、ペナルティを科される恐れがあります。一方、税制上の範囲内で税負担を軽減する節税は、合法的に税の負担を軽減することです。ぶっちゃけ、上手に節税をできれば、税務調査のリスクも抑えつつ、税の負担も軽減できるため、事業も円滑に運営できるようになります。ここでは、経費を使った上手な節税対策をいくつかご紹介します。
法人は、個人事業主と違い、経営者など、役員に対して支払う報酬も経費に計上することが可能です。役員報酬を損金算入できれば、その分、課税所得額を圧縮できるため、節税対策につながります。しかしながら、役員報酬を経費として扱うためには一定の要件を満たす必要がある点には注意しなければなりません。
また、法人税の負担を軽減しようと役員報酬の額を高くし過ぎると、役員個人が負担する所得税、住民税、社会保険料などの負担は増加します。そのため、役員報酬を決定する際には、損金算入することで得られる節税メリットと、役員報酬を増やすことで生じる役員個人の税負担のバランスを考えることが重要です。
出張をする際にかかる交通費や宿泊費は、旅費交通費として経費に計上ができますが、出張時には出張をしなければ発生しなかった金銭的負担が生じます。例えば、自宅に戻れば自炊ができるものの、出張先では外食をしなければ食事をとることができず、普段よりも食費が嵩んでしまうでしょう。また、出張では、日常的な業務とは異なる対応が求められるため、肉体的、精神的な負担も増加します。
出張手当とは、このような出張時の金銭的な負担の軽減、肉体的・精神的な負担の慰労を目的に支給される手当のことです。個人事業主の場合、旅費交通費は経費計上ができるものの、出張手当を経費として計上することは認められていません。
出張手当を支給するためには、旅費規程を策定する必要がありますが、社会通念上妥当な金額の範囲であれば、経費として計上でき、節税につなげることが可能です。
法人になると、役員や社員が居住する住宅を社宅とし、会社が一部の家賃を負担し、会社負担分を経費に計上することが可能です。経費として計上するためには、会社名義で契約し、役員や従業員から一定以上の賃料を受け取らなければならないなど、いくつかの条件を満たさなければなりません。しかしながら、オフィスや店舗ではなく、住居用の家賃を経費に計上できるとなれば、法人税の節税につながるだけでなく、役員個人の支出を軽減できるという魅力もあります。また、社員の家賃負担も抑えられるため、福利厚生面の充実となり、社員採用時のアピールポイントともなるでしょう。
資本金が1億円以下の青色申告事業者で、常時使用する従業員の数が500人以下の中小企業は、10万円以上30万円未満の減価償却資産を一括して経費に計上できる制度があります。この制度を少額減価償却資産の特例といいます。少額減価償却資産の特例を使用すると30万円未満の減価償却資産であれば、法定耐用年数に応じて減価償却処理をせずに、取得年度にまとめて経費計上できるため、節税効果を得られます。
少額減価償却資産の特例として一括して経費に計上できる金額は、年間300万円までと上限が設定されている点には注意が必要です。しかし、利益が大きく出た年などは、30万円未満の減価償却資産をまとめて取得すると、より高い節税効果を得られるでしょう。
法人が経費にできる項目と、上手な節税対策についてご説明してきました。法人の場合、個人事業主に比べて、経費として計上できる範囲が広くなります。そのため、ぶっちゃけると、経費計上できる支出やお得な経費計上の方法を把握しているかどうかによって、法人の納税額は変わってくるケースが多いのです。
節税は、脱税ではなく、合法的な税金の負担軽減対策であり、節税によって不要な税負担を軽減できれば、その分、事業を拡大させたり、利益を従業員に還元したりすることができます。法人としてより上手に節税対策を進めたいと考えている場合は、税の専門家である税理士への相談がおすすめです。
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この記事の監修者
税理士法人松本 代表税理士
松本 崇宏(まつもと たかひろ)
お客様からの税務調査相談実績は、累計5,000件以上。国税局査察部、税務署のOB税理士が所属し、税務署目線から視点も取り入れ税務調査の専門家として活動。多数の追徴課税ゼロ(いわゆる申告是認)の実績も数多く取得。
税理士法人松本は国税OB・元税務署長が所属する税理士法人です。
全国からの税務調査相談実績 年間1,000件以上
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